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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第4節  環境の保全
1  現状と問題点


環境問題は,現代社会が直面する最も大きな問題の一つである。

近年,大気汚染,水質汚濁等環境を巡る諸問題の深刻化に伴つて,環境に対する関心の高まりには著しいものがある。

また,環境の考え方は,1972年のストックホルムにおける第1回国連人間環境会議の開催に見られるように今や全地球的なレベルにまでの広がりをみせている。

第1-4-12表 公害健康被害救済措置の現況


我が国は,かねてから言われているとおり,狭少な国土に極めて大規模な産業活動や活発な生活諸活動を擁しているので,公害が発生しやすく,環境が破壊されやすい条件下にあるといえる。全国各地で公害をめぐるトラブルは多数発生しており,しかもその数は増加しつつある。これは,環境の質に対する国民の意識の育まりもさることながら,環境破壊が国民生活に対する重大な脅威となつていることを物語るものである。

環境破壊の人間に及ぼす影響のうち,健康に関する面だけを取り上げてみても事態の重大なことが分かる。例えば, 第1-4-12表 に見るとおり国の公害健康被害救済制度による認定患者は,患者が順次認定の申請を行つてきていることや,新たな地域を指定したため,その地域の患者が加わつたことによるもので,年々継続的に増えつづけている。

最近,一部の大気汚染については若干改善の兆しがうかがえるが,環境の破壊は一般的に進行が緩慢であり,蓄積されていくものであるので,明確な現象がは握される時には既に取返しのつかないことが多く,楽観は許されない。

今後,「青い空,澄み切った空気」,「豊かな緑」といつた国民生活の質の面が重視されていくのに伴い自然の保全,人間の健康の維持等を前提として人間の諸活動の維持,発展を図つていくことが要請されている。

こうした中で科学技術が果たしていくべき役割は大きい。

これまでも社会の進展,自然の保全,人間の福祉に対しては,相対立する要請を同時に満たすため,科学技術は地味ではあるが大きな役割を果たしてきたが,なお十分とはいえない。

しかし,先述したとおり,国民生活の質の面の重視に伴い,環境保全に対する科学技術の使命は大きなものとなつている。

既に,このような認識の下に科学技術会議は,その第5号答申において,1970年代に振興すべき新たな科学技術分野として,環境科学技術を位置付け,その重要性を明らかにしている。

こうして,環境を保全する科学技術の振興の気運が盛り上り,この分野における研究活動が活発化しつつある。

ここで注目されるのは,研究開発に取り組むに当たつてのいくつかの新たな方向が重視されていることである。

第1は,生態系という観点からの方向である。すなわち,我々がその中で生きている自然環境を生態系として全体的,包括的にとらえ,生態系を支配する法則性,人間活動が生態系に及ぼす影響等を解明し,人間の営みと自然との調和の条件を探究するとともに,これを人間活動に反映させるというものである。こうした方向は,科学技術会議第5号答申においても「自然環境とその浄化能力に配慮するなど,人間を含めた生態学的な考え方を重視する。」として既に指摘されている。

第2には,環境問題と資源問題を一体化したものと認識して解決に取り組む方向である。環境の破壊は,多くの場合人間の営みを伴つて生ずる諸々の物質や熱が「ムダなもの,不要なもの」として外部に排出され,その量が自然の浄化能力を超えることにより発生する。

このことは,他面において貴重な資源が捨てられていることを意味している。したがつて,捨てられているこれらの資源の有効利用に努めることは,環境問題の解決に大きく貢献するとともに資源問題の解決にも寄与するものであり,とりわけ資源の乏しい我が国においては一層重要な意味を持つものであるといえよう。これについては既に,資源調査会の報告「将来の資源問題‐人間尊重の豊かな時代ヘー」等において,環境と資源を一体として考えることの重要性が指摘されている。

第3は,技術の体系的適用によつて環境の破壊を防止しようとする方向である。

個々の環境破壊因子の発生源に着目して,その無害化を図ることにはこれまで多くの努力が傾注され,成果を収めている。

しかし,因子発生がますます大量化,多様化,広域化するのに伴つて個々の無害化のみではなく,社会に一定のシステムを形成して総合的に環境保全を図つていく必要がある。既にこういつたものとして第2節で見たように東京都や大阪市では環境監視システムが一部実用化され,また,廃棄物処理システム等の開発についても積極的な取組みがなされている。


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