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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第3節  ライフサイエンスの振興
2  ライフサイエンス研究の動向


ライフサイエンスは,政府においては各省庁所管の研究所において,主として目的指向的研究を中心に研究開発が進められている。

また,大学においては,学部,付属研究所等において基礎的研究及び医学,農学等を中心とした応用的研究が取り組まれている。民間においては,総合的なライフサイエンス研究を目的とする研究所が設立されるなど,各方面の創意と工夫を生かした研究活動が活発であり,その成果の実用化も盛んである。

ライフサイエンスの研究範囲は,生命機構の解明,環境の保全,健康の維持と医療の向上,安全の確保,食料資源の確保並びに生物及びその機能の工業的利用といつた広い分野にわたつている。このうち,環境の保全及び安全の確保については,それぞれ第4節あるいは第5節において一部述べているので,以下においては,これらを除いた分野についてその研究の動向を概観することとする。


(1) 生命機構の解明

生命機構についての研究は,近年の分子生物学の発展による生物学の進歩に加えて,物理学,化学等の分野からのアプローチによつて遺伝,増殖,運動等の広範な面から取り組まれている。

注目されるのは,生体高分子(核酸,たんぱく質,多糖類等)についての研究が進み,遺伝子の複製機構,遺伝情報の発現機構,生体内の化学反応系の解明など分子レベルでの生命の基本的な仕組みが解明されつつあることである。例えば,DNA(デオキシリボ核酸)については,その複製の際にある数のヌクレオチド対を含む一定の単位が作られ,これが連絡してヌクレオチド鎖が延長するというDNA複製の新しいモデルが打ち出されたが,更にウイルスDNAの構造と転写の研究,RNA(リボ核酸)構造とRNAの情報の研究,ヒトの遺伝子に関する研究等多数の研究が進められている。

一方,多細胞生物に特有な発生,分化,生殖あるいは高等動物の免疫,恒常性,運動,思考等の複雑な現象についても研究が進められ,多くの知見が得られている。


(2) 保健・医療

医療については,がんの制圧を目指した研究が活発となつている。がんの発生原因の追求では,生命機構の解明と密接な連係を保ちつつ,発現機構の解明が取り組まれており,貴重な資料が得られつつある。がんの診断では,イツテルビウム等のアイソトープを使用した診断技術や尿中に含まれる成分の分析を基に検査技術などの開発が行われ,成果を収めている。治療の面ではよ,生体の免疫作用を利用した治療法が研究され,動物実験で成果を収めている例がある。

一方,制がん剤の開発は盛んであり,現に数種類が実用に供されている。

新たに核酸関連物質サイクロシチジンについては,動物実験において制がん効果が認められている。

他方,がん以外の分野でも難病・奇病といわれる疾病を含めて治療法等の研究が進められている。

人工臓器や補装具の面では,まず人工じん臓の開発が盛んであり,小型化,軽量化,易操作化の方向に向かいつつある。新たに中空糸を使用したもの,透折パックを使用したもの,循環式の透折液供給装置を設けたもの等が開発され,更に透折によらない吸着やろ過を利用する方式の開発が進められている。

これらのほか,人工心臓,人工血管,ふつ素化反応による人工血液等についても開発が取り組まれている。袖装具では,例えば上肢,下肢の重度の障害者に対してその生活能力の拡大,改善を図るため,動力補装具の研究等が行われている。保健衛生の面については,近年における顕著な都市化に対処し,心身の健康を維持するため,都市生活における精神的健康度に関する研究,都市社会の精神健康の増進に関する研究等が取り組まれている。


(3) 食料資源の確保

品種改良は,栽培や飼育が容易,良品質,高収量といつた優れた形質をもつ農作物や家畜を数多く生み出してきた。現在は,これまでの花粉と子房といつた器管レベルの交雑法から,細胞レベルの育種へと研究の範囲を広げている。器管レベルの研究としては,やく培養による純粋種の育成の研究等が行われている。

また,細胞レベルの研究としては,多細胞植物から単細胞を分離・培養してその遺伝特質を解明する研究や植物細胞から細胞壁を除き,細胞を融合させる細胞融合の研究等が進められている。このほか放射線の照射による突然変異の研究が進められて,一部は農林省のガンマーフィールドにおいて実用に供されている。

一方,微生物を利用したたん白資源の確保が進められている。すなわち,炭酸ガス,窒素,水素,酸素によつて繁殖し,たん白質源として利用し得る細菌を一つの例として,空中窒素の固定の解明,菌体収量の増加,たん白質含有量の増大を目途とした研究等が進められている。病害虫防除の面では,無害なウイルスの利用等生物を利用したいわゆる生物農薬の開発,性フェロモンの利用による害虫の捕集法の開発等が進められている。


(4) 生物機能の工業的利用

生物は極めて精妙な生体内の機構により驚異的な多くの作用を実現している。これは今日の電子計算機の思考能力とほ乳動物のそれとの比較などからも明らかである。最近,生命の持つこのような精妙なメカニズムを我々の生活に利用しようとする動きが盛んとなつており,その結果,複眼や網膜や生体情報処理等生物の持つ機能の解明が進められるとともに,その積極的な利用に向けての試みがなされている。現在,視覚情報処理や脳波の解明を行い,新たな情報処理装置の開発を目指す研究,たな機能を持つ電子材料の開発を目指す研の開発,生体高分子の持つ機能の出現機構研究等が取り組まれており,更にこの分野


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