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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第2節  社会システム充実のための科学技術の適用
6  物流


生産と消費を結ぶ流通の近代化は,経済規模の拡大による取引量の増大,物価問題の激化等に伴い,ますます重要な課題となつてきており,科学技術はこの面でも大きな貢献を果たすことが期待されている。流通は,大きく分けて商的流通と物的流通(以下「物流」という。)になるが,本項では,科学技術の関与する度合が比較的強い物流(商品の物理的移動に関する機能の総称である)について述べることとする。


(1) 現状と問題点及び研究開発の方向

近年,我が国は,社会的にも経済的にも大きな変ぼうを遂げつつある。これに伴い国内における物流量は全体として増大するであろうが,物流活動において次のような種々の問題が生じている。

まず,労働力の不足の問題である。

我が国の物流量は,流通システム化推進会議によれば,今後年平均10%程度の伸びが予想される一方,労働力の伸びは年平均0.8%程度しか見込めない状況にあるとしている。

また,人口や産業の都市集中により,物流の都市集中が起こり,道路渋滞による末端配送が問題となつているとともに,トラック等から発生する排気ガス,騒音,振動等は,環境悪化の一因となつている。

現在,3大都市圏(首都圏,京阪神圏,中京圏)は,面積で全国の約15%を占めているに過ぎないが,この地域に人口,物流量とも4割以上が集中している。また,東京を例に取れば,域内物流量の9割以上はトラック輸送に頼つている。

このような状況を反映し,更には道路等の未整備に見られるような社会資本の立ち遅れもあつて,道路渋滞による配送問題,環境汚染問題が生じている。

これらの他にも省エネルギー問題等物流活動をめぐつて問題が生じている。

以上のような物流量の増大や労働力の不足に対処するための徹底した省力化,配送や環境汚染等の諸問題への対処などの要請へこたえていくとともに更には消費者の欲求の多様化及び高度化という要請にも総合的にこたえていくためには,全物流過程を一つのシステムとしてとらえ,その全体的,総合的効率化を図ること,すなわち,物流システム化を図ることが必要となつている。

物流システム化は,物流を構成する様々の機能を個々ばらばらの機能と考えるのではなく,一連の流れとして全体的にとらえ物流の効率化を図ることである。

物流活動を機能的に見てみると,輸送部分に当たる「リンク(線部分)的機能」,ターミナルに当たる「ノード(結節部分)的機能」,及びこれらを効率的にか働させるための情報機能の3つに分けて見ることができる。上記の要素はそれぞれリンク的機能には,輸送が,ノード的機能には,荷捌,包装,保管等が,リンクとノードの接合機能においては荷役等が相当する。

現在,このような機能を総合化する物流のシステム化を目指しているものの代表的なものとしては,物資別適合輸送,一貫コンテナ化,一貫パレット化等が挙げられる。

物資別適合輸送は,主として鉱石,石油,肥料,セメント,穀物等ばら積みの貨物に適した方法であり,例えば,鉄道輸送では,自動車,鉄鋼,石油,セメント等がこの方法で取.り扱われており,また,海運では,タンカーによる石油や専用船による鉄鋼,木材チップ等がその例である。

このような物資別適合輸送は,大量一括輸送による輸送効率の向上の百で,更には包装,荷役等の物流過程の生産性の向上の面で役立つている。

一貫コンテナ化及び一貫パレット化は,複数の商品をまとめてコンテナあるいはパレットに積載し,それを一単位として輸送,荷役,保管を行うもので,大量一括輸送による輸送効率の向上とともに,荷役の機械化が容易にできることなどそのメリットは大きい。 第1-4-16図 は,一貫パレット化と在来の方式の場合とのコストを比較したしのであるが,これによれば,従来の12〜62%のコスト低減が期待される。

また,このような物資別適合輸送量,コンテナ化及びパレット化の輸送量の推移は, 第1-4-7表 に示すとおりであるが,まだ全体に占める比率は低く,今後の一層の推進が必要となつている。

第1-4-16図 一貫パレット化の荷造包装めんの経済効果

第1-4-7表輸送量の推移

物流のシステム化を推進していくためには,第1に一貫パレット化,一貫コンテナ化に見られるように物流を構成する様々の機能を一連の流れとして全体的にとらえ,物流の効率化を図るための研究開発が重要である。研究開発に当たつては,生産性の向上のみを目的としたものでなく,環境問題,安全問題,資源・エネルギー問題等を十分考慮したものでなければならないことは言うまでもない。

第2には,その基盤作りとしての標準化に関する研究開発が重要となつている。すなわち,輸送,保管,荷役等の各機能の給合や運動を円滑にするためのパレット,コンテナ,包装,ラック,フォークリフト,倉庫等多くの物的流通手段の標準化技術の開発が重要である。

第3には,個々の機能に相当する部分の要素技術の開発が重要である。

物流の諸要素技術を見てみると,リンク的機能に関連した技術については,

1)鉄道,内航,道路,航空からなる従来の輸送手段を総合交通体系の観点から位置付けし直し,効率的かつ安全な輸送を実現するための研究開発及び,
2)新しい地域内及び地域間の輸送手段の開発が重要となつている。

ノード的機能に関連した技術では,包装,保管,荷役等の技術の開発が重要となつている。

更に,我が国が,情報化社会,消費者志向型社会に移行するに従つて,物流情報技術の開発が重要となつている。

以下,物流のシステム化のための研究開発の動向について,要素技術の最適組合わせに関する研究開発,標準化の推進,リンク的機能に関連した技術,ノード的機能に関連した技術及び物流情報技術に分け述べることとする。


(2) 研究開発の動向
1 要素技術の最適組合わせに関する研究開発

物流のシステム化の総合的発展のためには,その商品に適合した輸送手段の選択あるいは開発及びその商品に適合した包装,保管,荷役等の手段の選択あるいは開発,更には流通センターの配置といつた一連の要素技術の最適な組合わせの研究開発を行うことが重要である。

この要素技術の最適な組合わせについては,既に海上コンテナ輸送や国鉄のフレートライナー輸送に具体化されているが,このほか,通商産業省は,「流通システム化実施計画」の中で一貫パレット化についての系統立ったアプローチに基づく研究開発を行うことを検討している。


2 標準化の推進

物流に関する標準化は,工業標準化法に基づき日本工業規格(JIS)として制定されており,パレット,コンテナ,包装(モジール工法,用語,包装強度(試験方法)),木箱(輸出用),段ボール(試験方法等),フォークリフト,トラック,ショベル・ローダ,取引用伝票,取引コードの一部(都道府県コード等)等の基礎的な分野についてJISが制定されており,これらの普及推進を図ることが重要となつている。

また,これらJIS規格の制定に当たつては,物流システムの標準化を総合的にとらえること,更には国際標準化の進展も考慮して行われることが重要となつている。


3 リンク的機能に関連した技術

総合交通体系の確立の観点から,従来の輸送手段の位置付けの見直しについて,現在,運輸省において検討が行われている。

東海道ベルト地帯のような輸送の集中する地域あるいは現在の大都市内での輸送問題は,在来の鉄道,高速道路による対応では解決が困難となつている。これらに代わるべき新しい交通手段として考えられているものに,新貨物輸送システムがあり,これは物流量の増大に対処するとともに,環境汚染を防ぎ,交通渋滞を緩和し,更に生産性の向上を目指すものである。このシステムは,チューブ輸送システム,ベルトコンベアシステム,トウコンベアシステム及び軌道システムの4つに大別できる。

チューブ輸送システムは,地域間輸送を目指したものであり,チューブを敷設し,その中を貨物,コンテナあるいはトラックを載せた台車を走行させるものであり,リニアモーターにより走行させるリニアモーター方式,空気圧による圧送方式,更には真空吸引方式がある。リニアモーター方式については国鉄において,その他のものについては民間企業においてその実用化の研究開発が進められている。

ベルトコンベアシステムは,従来工場等の生産工程及び流通センターの荷投工程で用いられていたが,これを,高速化しあるいは天候による影響を避ける等のためフードを設置することなどにより,地域間輸送向けに適した方式へ改良することが検討されている。

トウコンベアシステムは,貨物を載せた台車をワイヤやチェイン等でけん引するもので,台車を上からつる高架式,床を走らせる方式,地下に埋設したチューブの中を通すものがあり,地域内輸送を目指して開発が進められている。

軌道システムは本章第2節交通の中で述べた軌道輸送システムを貨物輸送に応用しようとするものである。


4 ノード的機能に関連した技術

物流の生産性向上のためのノード的機能に関連した主要な技術としては,荷役技術,保管技術,包装技術が挙げられる。

荷役技術としては,現在,コンベアにより高速で運ばれる商品を自動的に読み取り,行き先別に仕分ける機器,倉庫内の地下に埋設してあるケーブルによつてけん引する無人けん引車,天井あるいは床にチェインを敷設し,このチェインによつて台車が走行するチェインコンベア,一貫パレット化の基盤となつているパレットの荷役を専用に行うフォークリフト,更には,車体は通路方向を向いたままフォークのみを左右に旋回し,ラックに差し込み得る高揚程が可能なフォークリフト等が実用化されている。現在これらの性能を一層高めるための研究開発が行われている。

保管技術としては,近年,パレット化の基盤となる高度に機械化され,無人に近い自動化倉庫が実用化されており,,中でも多段階にラックを設置し,その間をスタッカークレーンと呼ばれる荷役機器をコンピュータ制御によつて走らせる高層ラック倉庫が,注目されている。今後の方向としては消費者志向型のより高度な情報機能を有し,かつ荷役,包装及び流通加工と一体化した保管技術の開発が望まれており,これを目指した研究開発が進められている。

包装技術としては,その具備すべき条件として,作業が簡便であり,流れ作業の中で機械化,自動化が可能なこと,包装それ自体軽量で荷役取扱いが便利で,使用された後の廃棄物問題を起こさないものであること,輸送効率の向上に貢献し得ることなどが挙らげれ,これらの条件を満足するような包装技術の開発が望まれている。

近年,商品を合成樹脂フィルムで包み,フィルムを加熱し収縮させることにより,一貫パレット化等の場合と同様にユニットロード化を行うシュリンク包装と呼ばれる技術が注目されている。この技術の開発に当たつては,特に,使用済みフィルムの廃棄物対策と関連付けを十分考慮し行うことが望まれている。更に,理想的には,包装がなく裸でユニット・ロード化ができれば,より合理的であるが,欧米では,荷役機器の開発によりこれが可能となつており,最近注目されている。


5 物流情報技術

物流部門における情報技術は,原料供給者から原料倉庫へ,工場から製品倉庫へ,製品倉庫から問屋あるいは小売店へといつた物の流れの過程において適切な情報を与えることにより包装,保管,輸送等の面での効率化を可能にするなど物流の合理化に果たす役割が大きい。特に,近年の消費者志同型社会を目指した物流管理の改善の面では大きな役割を果たすものである。

近年,物流部門の内部でこのような努力がなされ,すべての物流拠点と大型のコンピュータとをオンラインで結んだ物流管理方式,コンピュータによる情報処理機能と自動制御機能を統合した倉庫自動化システム及び需要に応じ迅速かつ機動的に輸送サービスを提供するための輸送情報システム等の開発及び実用化が行われている。このほかにも,最近では,このような物流情報技術としては,小売店にコンピュータの端末器を置きリアルタイムで情報の処理,制御,収集を行うPOS(Point of Sales)システム,店頭で発注する商品のキーを押してカセットテープに音声をとり,その音声を電話線でセンターへ送り,コンピュータにダイレクトに入るEOS(Electric Ordering System),在庫管理を専門に行う在庫管理機などの開発及び実用化が行われている。

このような物流情報技術は,1企業の枠を越えて水平的,垂直的企業間で相互に関連し融合した情報システムとなることを要請されており,この面での研究開発が重要となつている。このため,運輸省は,国際貨物輸送情報システム及び国鉄の貨物情報システムの研究開発,整備を推進している。また,通商産業省は,一元的流通情報ネットワークの形成のための基礎研究及び応用実験を行うことを検討している。


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