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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第2節  社会システム充実のための科学技術の適用
4  都市廃棄物処理



(1) 現状と問題点及び研究開発の方向

現在大都市を中心に発生している“ごみ戦争″のように社会問題等にまで発展した例を取るまでもなく,廃棄物処理は国民生活の重大問題である。

本来,廃棄物処理は廃棄物を大気,大洋,大地という物質の自然循環系に組み入れても環境を害さないように物理的,化学的,生物学的に処理することと,更には廃棄物の資源化とを両立させる方式でなくてはならない。

しかし,現在の各都市における廃棄物処理はそれから程遠い状態にある。

すなわち多数の労力により,収集,運搬を行い焼却あるいは埋め立てるという体系になつている。このような現行の各プロセスにおいて様々な問題が発生している。

まず,ごみの発生面では国民生活の高度化,多様化や生産,流通形態の変革に伴う都市ごみの排出量の急増( 第1-4-11図 参照),ごみ質の多様化と新種ごみ(プラスチックなどの合成化学製品,家庭用電気製品等の粗大ごみ等)の登場などの問題が起こつている。

収集と輸送面では,ごみの分別が困難になついることと,収集,輸送費用が全経費の7〜8割を占めるようになつたうえ,輸送事情が悪化し収集輸送効率が年毎に低下していることなどが挙げられる。

第1-4-11図 我が国の都市ごみの排出量の推移(全国)

処理,処分の面では,処理能力の不足や焼却時における有害ガスの発生の問題,ごみ焼却の清掃工場の立地難,更には埋立地の確保難等の問題がある。

一方,都市ごみには多くの回収,再生可能な資源が含まれている。したがつて,廃棄物の資源化回収,エネルギー化(蒸気発生や発電)が行われれば,現行の廃棄物の焼却,埋立て等に関する問題を軽減あるいは解消するだけでなく,資源に恵まれない我が国にとつて極めて好ましいものである。

このためには,ごみの物質的な特性,発生状況,地域の特質に従つて,収集,輸送,破砕,選別,資源化,処理等の各段階の組合わせを合理化した全体の体系の最適経路の確立,すなわち連続した合理的な無公害の廃棄物処理システムを確立することが望まれる( 第1-4-12図 参照)。

そのため,地域社会に適合した体系樹立のための基本設計の開発が重要な課題となる。また個々の収集,輸送,破砕,選別,熱分解,焼却等の要素技術を研究開発する場合でも,常にトータル・システムを考えて進める必要がある。

このようなトータル・システム実現のため,各方面において,研究開発に力が注がれているので,以下,基本設計の開発,収集・輸送技術,破砕・選別技術,資源化・処理技術の研究開発の動向を概観する。

第1-4-12図 廃棄物処理体系図


(2) 研究開発の動向
1 システムの基本設計の開発

廃棄物処理の基本設計について,通商産業省工業技術院では焼却,埋立てを中心とした現在の都市ごみ処理システムに代わる新しい高次元の処理システムの開発が必要であるとの観点から,48年度より3か年計画で「資源再生利用技術システムの研究開発」を取り上げ,システムを構成すべき要素技術のうち革新的な中心課題についてフィージビリテイ・スタデイを実施し,これらの革新的な要素技術と既存の要素技術との最適な組合わせにより,社会システムになじみ易いトータル・システムの開発設計を行つている。

また,厚生省でも「中小都市の廃棄物処理システムの設計研究」を昨年度から3か年計画で取り上げ,モデル都市を抽出して事例研究を行つている。

科学技術庁においてもこの基本設計に関連して,水圏,大気圏,陸圏の形成とその維持に大きな役割を演じてきた微生物とその作用に注目し,「微生物利用の廃棄物処理に関する技術開発」に関する調査に取り組んでいる。


2 収集,輸送技術

廃棄物処理のうちでも大きなネックとなつている収集,輸送を改善する技術として種々の方式の研究開発が進められている。まず,公害や交通難を解決するパイプライン方式が脚光を浴びている。パイプラインによる収集,輸送は,一般にごみを流体として取り扱うため,省力化ができ,騒音や悪臭などの公害を出さず,更に環境を汚さないなどの利点がある。しかし,反面ルート設定が固定するなど欠点もあり,地域社会の要請にどのように調和させるかが課題となつている。

この方式としては,現在各家庭から中間収集センターへ運ぶ短距離輸送及び中間収集センターから処理場へ運ぶ長距離輸送の2種類が考えられている。

短距離の場合,中高層住宅のダストシュート等から出るごみを真空圧を利用して収集センターまで吸い寄せる真空収集パイプラインがある。これについては,外国からの導入技術を基礎にした研究開発や純国産技術の開発が民間で活発に行われている。長距離の場合は,これとは逆に空気の圧力を利用する圧送方式とごみをカプセルに詰めてパイプ内を搬送するカプセル方式が有力視され研究開発が進められている。

このほか,粉粒体を水と混ぜパイプ中を水力輸送するスラリー輸送方式をごみの輸送に応用する技術も最終処理が湿式の場合には有効であると考えられ,工業技術院公害資源研究所で流動特性など基礎的な研究開発が行われている。

また,完全密封のコンテナ方式では,ごみ収集車の荷台にコンテナを積んで収集,輸送を行い稼働率を高めるコンテナ・トラックや,ごみの広域処理及び廃棄物の遠隔地転送を可能とする鉄道コンテナ等の研究開発が行われている。更にベルトコンベア輸送なども検討されている。

一方,粗大ごみを容易に粉砕,圧縮する収集車や収集時に台所ごみ等の水分を除く脱水デイスポーザの研究開発も行われている。


3 破砕,適別技術

高度な都市生活から廃棄されるごみには,いろいろな形態のものがあり,かつ多様な物質が含まれている。これら雑多な廃棄物は破砕,選別によつて最終処理に適した状態に変える必要があり,そのための技術として各種の方式が研究開発されている。


(イ) 破砕技術

破砕技術には常温による衝撃力,せん断力を利用するもの,低温におけるぜい性を用いるものなどがあり,それぞれ研究開発が行われている。常温破砕は最もはん用性があるが,大きな動力を要すること,騒音,粉じん発生があることなどが問題になつており,これらを解決するための研究開発が行われている。

最近注目を集めている低温破砕技術は,液体窒素などの冷媒を用いて廃棄物を零下150〜200°Cにして破砕を行うものである。物質によつてその温度のぜい化特性が異なるため,温度を段階的に変えていくことにより選別も同時に行うことが可能である。このほか,廃棄物の切断にレーザービームを応用する技術の研究開発も行われている。


(ロ) 選別技術

選別技術には比較的多くの方式があり,現在でも水を用いて比重差により可燃物と不燃物とを分離するプラントや鉄分を分離するプラントが実用化されている。今後はプラスチックの選別,紙の選別,金属の選別,ガラスの選別などの技術開発が期待されている。

工業技術院のプロジェクトとして,1)半湿式選択選別技術,2)風力選別技術,3)磁場利用による選別技術などの研究開発が行われている。アメリカではこうしたーつ一つの単位操作を組み合わせて総合的な選別システムを作りあげて成功している例もある。


4 資源化,処理技術

廃棄物の資源化形態として考えられるものは,1)収集時の形態のまま再使用する,2)収集後,破砕等の物理的操作を加えて資源化可能なものを分離し,物質として再利用する,3)化学的に変換(熱分解,コンポスティング)し燃料や肥料として使用する,4)焼却して熱や電気エネルギーとして利用するに大別できる。

これらを組み合わせることと従来からの埋立処理とによつてほぼ完全に廃棄物の資源化又は処理が可能となると思われる。このうち主要な技術として,熱分解,焼却熱利用,コンポステイング(たい肥化処理),埋立技術を取り上げ,以下これら技術の研究開発の動向を概観する。


(イ) 熱分解

熱分解は,廃棄物から空気を断つて加熱し,燃料油あるいは燃料ガスを得るもので,その方式としては常圧熱分解(乾留),ガス化等がある。常圧熱分解は,常圧あるいはそれに近い圧力で熱分解し,ガス,油,炭素等を得るものである。ガス化は,ごみに空気,酸素,水蒸気,又はこれらの混合気を送入し,一酸化炭素,水素を主成分とするガスを得るものである。

これに関する研究開発としては,工業技術院では北海道工業開発試験所において流動床熱分解,公害資源研究所において固定床熱分解を用いる基礎研究が行われている。更にこの二つのタイプの分解炉を連係させるシステムも検討されている。また,プラスチック廃棄物の熱分解の研究開発も盛んであり,工業技術院公害資源研究所では実用プラントを建設し,本格的に研究に取り組んでいる。


(ロ) 焼却熱利用

ごみの焼却に伴つて発生する熱利用については,現在はボイラによる熱利用が主体であるが,今後は,発電への利用,工業用蒸気への利用,地域冷暖房,下水処理施設での熱利用が考えられ,研究開発,実験が進められている。

一方,都市ゴミの発熱量が高くなつてきたこと,及び溶融性物質であるプラスチックの量が増加してきたこと等により,燃焼方式を改良する技術開発も行われている。


(ハ) コンポステイング(たい肥化処理)

たい肥化処理には自然たい積法と高速たい肥化法とがあるが,現在,たい肥化処理はごみ発生量の1%程度行われているに過ぎない。しかし将来は,ごみ処理のうちでも最も自然な処理方法として見直されてくると考えられ検討が行われている。


(ニ) 埋立て

ごみ埋立処理はこれまで工業用地等の土地資源確保の面で大きな役割を果たしてきている。埋立処理は一面ではごみの中の腐敗性有機物を土壌中の微生物によつて分解して土壌化しようとする一種の生物処理と見なされるし,衛生的ごみ埋立てを微生物面よりとらえればごみのたい肥化処理の変形となる。このため有毒ガス発生や環境汚染等の公害発生の防止面を考慮した埋立技術の研究開発が行われている。

以上,資源再利用を含めての廃棄物処理の現状,技術開発の動向を概観してきたが,これまでの製品については生産と消費の過程だけを考えて設計製作が行われてきた。しかし,廃棄物処理が資源再利用の観点からクローズ・アップされてきた現在においては,生産の過程で既に廃棄物となつたときのことを考慮して,分解が楽にできるように製品を作る努力をする必要がある。そうすることによつて,破砕,選別などの分離技術等の進歩による資源の再生利用の推進が可能となろう。したがつて,資源の再生利用という観点を重視した生産技術の研究開発が一層望まれている。


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