ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第2節  社会システム充実のための科学技術の適用
3  防災のための予知・予測



(1) 現状と問題点及び研究開発の方向

異常な自然現象によつて生じる災害は,我が国においては,地震,集中豪雨はもとより,それらに伴つて起こる津波,山崩れ,地すべり等多種多様であり,これらの災害により毎年大きな人的,物的被害を被つている。( 第1-4-5表 )

第1-4-5表 自然災害による一般被害状況推移

これらの災害は,我が国が環太平洋地震帯の上にあること,アジアのモンスーン地帯の一角にあることなどの地理的条件,更には険しい地形,複雑でもろい地質といつた自然条件に関係するところが大きい。

また, 第1-4-6表 に示すとおり,近年の都市への人口,産業等の集中には著しいものがあり,都市の高密化に伴う潜在的災害要因とあいまつて,火災,爆発等の二次的災害の誘発による災害の大型化が危ぐされている。

したがつて,国民が安心して生活ができるよう,自然災害を防止する研究開発が急務となつている。

第1-4-6表 3大都市圏(首都圏,中京圏,京阪神圏)への集中度(昭和47年)

自然災害を防止する研究開発の方向としては,自然現象そのものを制御する方向と自然災害からの被害を最小限にする方向の二つが挙げられるが,問題解決の緊急性更には,現状の技術の進歩の度合等から見て,後者の方向によることがより効果的であろう。

このためには,自然災害をできるだけ迅速かつ正確に予知・予測し,この情報を警報,避難等の各段階に円滑に伝達し,被害を最小限にするシステムが重要である。また,建築物,土木施設,工作物等についてそれ自体を自然災害に耐えられるようにしておくための防災技術の開発を更に進める必要がある。特にエネルギー供給施設等については,自然災害が起きた場合に,それ自体自動的に防止機能が作動するようにしておくことなどの防災技術の開発が重要であるが,これについては 第4章第5節 「安全の確保」の項を参照されたい。

以下,ここにおいて,防災に関する予知・予測の研究開発の動向を述べることとする。


(2) 研究開発の動向

自然災害からの被害を最小限にするためには,現象究明,予知・予測,警報,避難等の各分野の科学技術が十分進歩し,これらの成果がシステム的に組み合わされることが必要である。

現在,防災に関するシステムの例としては,大雨,暴風,高潮,洪水,大雪及び波浪について,各観測所で測定されたデータが,ADESS(気象資料自動編集中継装量)により気象庁へ収集され,処理,予知・予測の結果,気象庁の警報が報道機関,都道府県等を通じ,地域住民へ伝達されているものが挙げられる。

しかしながら,自然災害の中でも特に問題となる地震,集中豪雨,豪雪及び強風については,各分野とも未だ解決されていない問題が多く残されており,今後この面の研究開発を強力に進めることが重要となつている。特に,自然災害をできるだけ迅速かつ正確に予知・予測する技術の開発は重要である。

まず,地震の予知・予測については,現在,測地学審議会建議の地震予知計画に沿つてこのような地殼岩石の変形に関連した地球物理学的諸現象について,常時,測地測量,地震観測,地殼変動観測,地磁気,地電流の観測を行い,地震発生との因果関係を明らかにすることにより実用化に役立てることを目標として推進されている。このうち,地震予知の実用化を図るうえで重要と思われる測地測量及び地震観測については,国土地理院が中心になつて精密な測地測量を全国的に行つており,また,気象庁を中心とし,大学,緯度観測所,国立防災科学技術センター等において,地震の観測網及びデータの収集網の整備が進められている。更に,これらの各機関の専門家によつて観測結果及びデータについて討議する場として国土地理院に地震予知連絡会が設けられている。

49年度から,第3次地震予知計画が,第2次計画に引き続き進められることになつているが測地測量については,より精密な測量を行うため,近時進歩を遂げた光波測量の手法を主体とした高密度の測地測量を反復して行うことが,また,地震観測については,観測点を数多く設け,データの自動処理化を図るとともに,深井戸観測,海底地震観測を強力に推進することが必要となつている。

集中豪雨については,地域的に限定された現象であるため,発生の機構,予知・予測技術などにまだ問題が残されている。このため,密度の濃いレーダー網の確立,観測手法の開発更には気象衛星による観測の研究開発が進められている。

豪雪などによる雪害については,多くの未解明の問題が残されており,雪氷の力学的性質の解明,豪雪,なだれの発生機構の解明,更にはなだれ等での危険度の判定法,雪氷測器の開発等が現在進められているが,更に的確な豪雪の予知・予測技術の開発,なだれの予知技術の改良等が今後の課題となつている。

強風については,気象衛星やレーダ等の観測技術の進歩によつて,台風の進路等はかなり明確に予測できるようになつているが,たつ巻や突風等については,まだ不明の点が多く予知・予測技術の開発が望まれている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ