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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第1節  調和を求める方法論の開発
2  テクノロジー・アセスメント


これまでは個々の技術について技術そのものの経済性,効率性等の観点から評価が行われることが多く,技術の進歩が,社会にどのような影響を及ぼすかということについて,最近まで,関心を持つ人は少なかつた。

ところが,技術が社会に広範に適用されるようになり,それに伴ない人間疎外,環境問題,資源問題等技術による種々の影響が社会の諸分野において顕在化するようになつてきた。そのため,このような問題に対する関心が非常に高まつてきた。

このような事情を背景にして,1971年4月,科学技術会議の第5号答申「1970年代における総合的科学技術政策について」は,「70年代は,科学技術が本来人間福祉のものでなければならないことを再認識し,計画の策定,研究開発の実施及び評価,研究成果の社会経済への適用など,政策実施のあらゆる機会を通じて,テクノロジー・アセスメントを導入することが必要である……。」とその必要性を強調した。

テクノロジー・アセスメントは,技術の持つている直接効果のみならず,副次的な影響や潜在的な可能性までも含めて技術を総合的に点検,評価し,技術を社会全体にとつて望ましい方向に制御しようとするものである。

第1-4-3表 アメリカにおけるテクノロジー・ アセスメントの代表的ケース・スタディ

既にアメリカにおいては, 第1-4-3表 に示すように多くの事例研究等が進められており,1972年にはテクノロジー・アセスメント法が制定されている。それに基づき,現在,テクノロジー・アセスメントを実施する機関の設立準備が進められている。

我が国においては,科学技術庁及び通商産業省工業技術院が中心となり,テクノロジー・アセスメントの導入に取り組んでいる。すなわち, 第1-4-4表 に示すように,事例研究を実施することにより方法論の開発を図り,その成果を基に,それぞれの行政に関連した技術課題について試験的実施を試みるとともに民間への普及啓発に努めている。

第1-4-4表 政府関係機関におけるテクノロジー・ アセスメントのケース・スタディ

更に,環境庁では,分析対象を環境への影響に限定した環境アセスメントを促進している。

民間においても,テクノロジー・アセスメント導入の必要性が強く認識されるようになつてきている。

すなわち,テクノロジー・アセスメントの早期導入への提言が有識者のグループにより行われ,民間シンクタンクにおけるテクノロジー・アセスメントの調査研究が活発化してきている。また,このことは科学技術庁計画局が,民間企業のテクノロジー・アセスメントの動向を明らかにするために昭和48年度に行つたアンケート調査においてもうかがわれる。この結果によれば,まず,技術が自然,人間,社会に及ぼす影響について予測,評価し,対応策の検討を行つたことがあるかどうかという問に対して,全回答企業514社中の約60%にあたる308社が検討を行つたことがあるとしている。

また,その検討の程度については,当事者,需要者以外の「第三者」への影響まで考慮に入れて検討を行つたという企業は,308社中の93%にあたる287社であつた。

更に,過去3年間に行つた予測,評価等の検討結果によつてなんらかの措置をとつた企業は延べ25社,一部修正が延べ192社で,計画どおり実施という企業は延べ333社であつた。

このようにテクノロジー・アセスメントに関連した活動が行われるようになつてきているが,今後は,更に一歩進めて,総合的,長期的視野からのテクノロジー・アセスメントの定着化が強く要請される。

しかし,その定着化には,種々の困難が予想されている。その一つには,テクノロジー・アセスメントを適切に行うための方法論及びデータが不十分であることが挙げられよう。

この点については,国際的にも大きな課題となつている。

OECDは,1971年10月の科学大臣会議において決定された基本方針に基づき,テクノロジー・アセスメントの推進を重点事業として取り上げ,これに積極的に取り組んでいる。特に,一般的方法論の開発が急務であるとの認識に立ち,その暫定案の作成に着手している。

このような活動とは別に,各国のテクノロジー・アセスメントの専門家レベルの情報交換の促進が図られるようになつてきている。すなわち,各国の専門家を構成員とする国際テクノロジー・アセスメント協会(ISTA)が1972年に設立され,1973年5月にオランダのハーグで第1回国際会議が開催された。この会議には約20か国から250名が参加し,活発な情報交換が行われた。


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