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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第1節  調和を求める方法論の開発
1  ソフトサイエンス


今日我々は資源・エネルギー問題,環境問題,都市問題等の人間自身が引き起した複雑な社会問題の解決を迫られている。

これらの社会問題は,いろいろの要素が複雑に絡み合つて発生したものであり,諸要素の関連性を体系的に解明し,総合的・科学的手法を用いて取り組むことが不可欠となるに至つている。

このような要請に対応するものとして,ソフトサイエンスが登場した。これは,近年発達してきた情報科学,行動科学,システム工学等を基礎としその他の多くの学問分野の成果を活用するものである。 第1-4-1図 は,既存の知識体系とソフトサイエンスとの関連を明らかにするための分析結果を図示したものであり,これからもソフトサイエンスが多くの学問分野と深い関係を持つことが分かる。

第1-4-1図 ソフトサイエンスと他の学問との関連概念図

我が国においては,1971年4月,科学技術会議の第5号答申「1970年代における総合的科学技術政策について」等に基づき,その研究開発及び利用の促進のための施策が進められている。

特にソフトサイエンスの研究活動においては,その応用課題の事例研究を行うことにより,その推進を図ることが重要であるという観点から,科学技術庁においては,46年度から「日本型科学技術開発システムの基本設計」という課題を取り上げ委託研究を行つてきた。その他の省庁においてもそれぞれの行政目的に沿った各種の調査研究が行われるようになつており,そこにおいてソフトサイエンスの利用が図られるようになつてきている。その代表的なものとしては,46年度から3カ年間にわたり行われた総合研究開発調査がある。これは 第1-4-1表 に示すように,通商産業省,科学技術庁,経済企画庁が共同で推進してきたものである。

一方,民間のシンクタンクでも,ソフトサイエンスに関連する研究開発が最近かなり進められている。 第1-4-2表 は,民間のシンクタンクの研究プロジェクトの中から,ソフトサイエンスに関連する代表的な研究プロジェクトを抽出し,分野別に列挙したものである。

第1-4-1表 ソフトサイエンス関連の研究開発



第1-4-2表 民間のシンクタンクにおける研究開発課題

また,民間企業においても,科学技術庁計画局が48年度に行つた調査によると,全体の4割の企業がなんらかの形で「ソフトサイエンスを用いたことがある」としており,ある程度活用が図られるようになつてきている( 第1-4-2図 )。

その活動分野としては,公害に関するものが圧倒的に多く,続いて経営の最適化,エネルギー,交通,流通,防災等に関するものが多くなつている( 第1-4-3図 )。

ソフトサイエンスの実施による効果については,実施企業の過半の企業が「効果が上がったものが多い」としている一方,まだ適用経験が不十分なこともあつて「効果が分からない」と答えている企業が32%を占めている( 第1-4-4図 )。

第1-4-2図 ソフトサイエンスの実施状況

第1-4-3図 ソフトサイエンスを用いた研究活動のテーマ

第1-4-4図 ソフトサイエンスの実施による効果

このような情勢をふまえて,政府においては,民間との共同で昭和49年3月に総合研究開発機構を設立した。この機構の目的は,現代の経済社会及び国民生活の諸問題の解明に寄与するため,広範な分野の専門知識を結集して行われる総合的な研究開発の実施及び助成等を行い,国民の福祉の増進に資することである。この機構の業務内容は,1)総合的な研究開発を実施し,助成すること,2)総合的な研究開発に関する情報を収集,整理し,各方面の利用に供すること,3)総合的な研究開発に関する研究者に対する研修及び総合的な研究開発の企画調整に当たる者を養成すること,4)総合的な研究開発の成果を公開すること,5)総合的な研究開発に関する研究者に対する研究施設を提供すること,6)総合的な研究開発に関する研究機関との提携及び交流を行うことなどである。

これにより,ソフトサイエンスの研究活動の一層の活発化等が期待される。

諸外国では,特にソフトサイエンスを生み育ててきたアメリカが,ランドコーポレーシヨンをはじめとして多数の大規模な営利,非営利の研究機関を擁し,活発にソフトサイエンス活動を展開している。これらの機関の大部分は,その財政的基盤を政府の委託研究に依存し成長を遂げてきた。それに加え,大規模な財団等が存在しており,その助成を図つてきた。

ヨーロツパにおいても,イギリス,西ドイツ等のソフトサイエンスを指向する研究機関においてそれぞれ特色のある活動を通じて着実にその成果を挙げている。

また,ソフトサイエンスに関する国際的な動きも,近年,活発化している。その代表例としてローマクラブがある。これは,天然資源の不足,環境汚染の進行,爆発的な人口の増加等人類の危機に対し,その回避の方途を探索するため,世界の有識者が集まり設立されたものである。ローマクラブは,1968年4月における最初の会合以来,種々活発な活動を行つている。その第4回総会を東京で行い,その際,先進国だけではなく開発途上国の参加を得て「新たな世界像を求めて」という課題の下にシンポジウムを開催した。これには,地球の持続可能な成長を探るための分析事例が多数報告され,それらをもとに多角的な討議がなされた。

さらに,我が国を含め13か国からの共同出資によるIIASA(国際応用システム分析研究所)がオーストリアのウィーンに設立され,また欧州諸国の共同出資によるIIMT(国際技術管理研究所)がイタリアのミラノに設立された。これは最近活動を開始したにもかかわらず,すでに現代社会の複雑な諸問題の解決を図るためのソフトサイエンスに関する国際的な関心を高める役割りを果たしており,更にソフトサイエンスの研究開発,人材の養成等にも大いに貢献するものと期待されている。


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