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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第3章  新領域の開拓
第3節  多目的利用を目指す宇宙開発
2  人工衛星


人工衛星は,そのミッションにより科学衛星,実用衛星に大別される。科学衛星は,電離層,宇宙X線,オーロラ粒子などの各種の科学観測を宇宙空間において行うものである。一方,実用衛星は,気象観測,通信,放送,資源探査などを行い,人間生活に直接利用されるものである。


(1) 科学衛星

我が国の飛しよう体による宇宙科学研究の成果にかんがみ,将来発展が期待される研究分野としては,電離層,磁気圏など地球周辺空間の探査,太陽・銀河系などからの宇宙放射線の観測,太陽系空間における太陽風,すい星,惑星,大気等の観測及び宇宙実験室による天文観測,物理実験,生物実験等があり,これらを踏まえて現計画に引き続く科学衛星の開発計画が国際協力も含めて検討されている。

我が国でこれまでに打ち上げられた科学衛星「しんせい」,「でんぱ」は,いずれも地球周辺空間の探査及び宇宙放射線の観測を目的としたものであり,多くの観測データを送信してきている。

この種の科学衛星は,機動性及び経済性に優れ,衛星についての工学的基礎研究にも適しており,衛星技術の一層の向上のための研究開発が進められている。


(2) 実用衛星
1 地球観測衛星

環境に関する自然的,人為的変化に関するデータ及び農林,鉱物資源のほか,国土,大気,水,海洋を含む広い意味での資源及び防災などに関するデータを広域的かつ連続的に測定,収集,処理,解析し管理を行うことは,資源利用と環境の調和を図る上で極めて重要である。このように地球資源的観点に立つて高空から観測することを地球資源の遠隔探査といい,このような観測を行う地球観測衛星は,地球資源の遠隔探査に対して大きな役割を果たすものである。地球資源遠隔探査について最も進んでいるものは,アメリカのNASAが中心となつて進めている地球資源探査計画(EREP)であり,地球資源遠隔探査のための技術の総合的な開発が1972年から行われている。これは,宇宙から地球表面の資源に関する観測を定常的に行うための試験計画で,高・中軌道人工衛星による広域面の観測とともに低軌道人工衛星及び航空機による狭域面の観測を行い,これらにとう載した測定器により,電磁波の放射及び反射を用いて地表及び大気層の天然資源の性状,自然現象,人為的環境変化の状態を宇宙及び空中から定時定域で隔測するための試験計画である( 第1-3-3表 )。

第1-3-3表 アメリカの地球資源探査計画(EREP)の概要


既に,現在までの計画の推進によつて,地球遠隔探査の実用化の見通しが確実化するに至つている。

我が国における地球遠隔探査の研究開発は,多大の先行投資が必要なこと,また,目的が公共的性格が強いこともあつてほとんどが国立研究機関で行われている。

その内容を見ると,総合的な研究開発の推進の観点から航空機による地球遠隔探査技術を取り上げ,その基本的要素であるデータベース設計,パターン処理,空中写真情報解析の調査研究を経済企画庁が実施している。人工衛星を使つての遠隔探査技術の開発は,科学技術庁が進めており,EREPの一環として打ち上げられたERTS-1による探査に我が国から提案された協カテーマが採択され,47年10月から同衛星からのデータが送られ,そのデータ利用分野の検討が進められている。更に,全米熱帯マグロ委員会(IATTC)の衛星応用海洋調査で,赤道東部太平洋における広域水温分布圏の作成に協力しているほか,漁業に人工衛星を利用する基本計画を設定するための調査研究業務を水産庁が推進している。

そのほか,我が国では航空機による調査を目的とし,マルチバンドカメラの開発,マルチバンド写真の映像重合,ハードコピーに関する研究,画像情報の自動解析に関する研究などを進めるとともにマルチバンドカメラ及びスキヤナーなどにより,各種の環境調査研究が活発に進められており,人工衛星による探査技術の発展に大きく貢献するものである。

しかしながら,これらの研究開発は地球遠隔探査の実用化という観点からすれば,緒についたばかりであり,上記の情勢にかんがみ,本格的な研究開発の着手について,科学技術庁資源調査会勧告第28号にもあるように,地球遠隔探査の内容,必要技術,自主開発,国際協力など技術開発方式,推進体制などを含めた地球遠隔探査に関する長期計画及び試験研究大型事業計画を国が立案し,統一ある方針の下に国が先導的役割を果たすことが期待されている。


2 通信衛星

現在,通信衛星は,国際通信で大きな役割を果たすに至つており,更に増大が見込まれる通信需要に対し,大容量の通信衛星の開発が進められている。

一方,我が国の国内通信事情を見ると,将来の増大する通信需要に対処して,通信衛星を利用することが必要と考えられている。

国内通信などの比較的狭い地域内の通信のための通信衛星はカナダで既に実用化しているほか,諸外国でも開発を進めており,我が国においても実用通信衛星の開発を目指している。このため,衛星通信システムを用いた準ミリ波等の周波数における通信実験を行うこと,衛星通信システムの運用技術の確立を図ること等を目的とした実験用中容量静止通信衛星を昭和51年度に打ち上げることを目標に開発を進めている。


3 放送衛星

放送衛星は難視聴の解消等に大きな役割を果たすものと考えられる。

この最終目標は,放送衛星からの電波を直接各家庭で個別に受信する方式であるが,当面,実現の見通しが得られているものは,比較的大きい受信空中線を用いた共同受信方式である。

我が国の放送事情を見ると,テレビ放送については地上局だけでは難視世帯の解消は不可能とされており,これを解消するためには放送衛星が極めて有効であると考えられており,また,教育用などにも利用できるものと考えられる。

このような要請に沿つて,各家庭で受信可能な大型放送衛星の開発を目指し,これに至る過程として昭和51年度打上げを目標に実験用中型放送衛星の開発が進められている。これにより衛星放送システムを用いた画像及び音声の伝送試験を行うこと,衛星放送システムの運用技術の確立を図ることとしている。


4 気象衛星

気象現象の変化は相当に早く,全地球的観測資料を得ることは,予報の精度の向上と期間延長には欠くことのできないものとなつており,静止気象衛星による観測は,台風,集中豪雨等の生活環境に大きな影響を与える気象攪乱系を常時連続監視するうえで最も有効な方法と考えられている。

このような認識から世界気象機関(WMO)は,世界気象監視計画(WW W)を決定し,その一環として地球大気開発計画(GARP)において静止気象衛星と軌道衛星による第一次GARP全球観測(FGGE)計画が,1977年から実施されることとなつている。

このFGGEは,静止気象衛星を我が国が1個,アメリカ2個, ESR O,ソ連がそれぞれ1個を打ち上げて全地球的大気観測網を確立し,所要の研究を推進するものであり,このため我が国は,昭和51年度打上げを目標に静止気象衛星の開発を進めている。


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