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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第2章  資源・エネルギー基盤の強化
第4節  食料資源の確保と開発
1  現状と問題点及び対応の方向


昨年,アメリカの輸出規制によつて我が国の食生活上重要な大豆の供給に混乱をまねいたことは記憶に新しい。

一昨年来の世界的な異常気象による不作とソ連の穀物等の大量買付けを契機として世界的に食料需給がひつ迫し,これに伴い穀物等の国際価格が高騰し,食料資源の海外依存度の高い我が国の農産物の需給と価格に大きな影響をもたらした。

最近に至り,アメリカ,カナダ等主要生産国の生産拡大,南半球諸国での作柄が良好であつたこと,価格の高騰による消費の伸び悩み等により,小麦,とうもろこし,大豆等の国際価格は2月末のピーク時に比べかなり低下してきており,国際的な需給関係はある程度緩和する傾向にある。

世界の食料需給の長期的展望については適確な予測は困難であるが,次のような注目すべき幾つかの問題を指摘することができる。

その第1は,世界人口の増加である。世界の食料需要増大の最も大きな要因である人口の動向を見ると,20世紀とりわけ1950年以降の増加が著しく,1971年には世界人口は,37億人に達した。ちなみに過去14か年間の動向を見ると 第1-2-16図 のようになつており,この間の平均増加率は2%にのぼり,この増加率では倍増期間は35年である。更に,1人当たりの摂取カロリー量は, 第1-2-17図 に見られるように,今後世界人口の約3分の2を占める開発途上国においてかなりの増加が予想される。

第1-2-16図 世界の人口及び食料農業生産指数の推移

第1-2-17図 各国の1人1日当たり食料消費量の推移

第2は,世界的な畜産物需要の増大である。世界各国とも所得水準の向上による畜産物需要の増大は著しく,これに伴い飼料穀物の主体をなしているとうもろこしの貿易量が急増しており1967年から1972年の5か年間について見ると年率6%程度の増加を示している。畜産物需要は,先進国を中心として今後も一層増大するものと見られ,これが食料需給ひつ迫の大きな要因になると見られる。

第3は,気候変動の農業生産への影響である。世界の農作物生産はなお,気象条件に左右される面が大きく,高緯度地域では降水量と気温に,低緯度地域では降雨量と降水時期に大きな影響をうけ,このため世界の農業生産は大きく変動している。世界の気象に関する気象庁の調査結果「近年における世界の異常気象の実態調査とその長期見通しについて一昭和49年3月」によれば,北半球では1940年ごろから極を中心に寒冷化の傾向が続いており,異常気象の現れやすい状態にあるとしている( 第1-2-18図 )。

第1-2-18図 北半球における気温の推移

したがつて,今後とも気候変動が農業生産に大きな影響を与える場合も考えなければならない。

以上のように,需要面では,人口の増大,畜産物需要の増大に伴う飼料穀物需要の増大による食料需要が急増すると見られるのに対し,供給面では,農業生産は気候変動の影響をさけ難く,不安定性を免れないこと等からみて,世界の食料需給は,どちらかといえば変動の大きい不安定な状態で推移する公算が大きいものと見られる。

このような世界の食料需給事情のもとで,我が国の食用農産物の自給率は,昭和47年度においても73%とかなりの水準を維持しているものの,40年度の81%から7年間に8ポイント低下した( 第1-2-10表 )。

第1-2-10表 食用農産物の自給率の推移

我が国は,米,青果物,畜産物などは,ほとんど自給しているものの,小麦,大豆,砂糖,更には畜産用濃厚飼料や油脂原料の大部分を海外に依存しており,その安定的確保が,国民生活の安定を維持するうえで重要な問題となつている。

我が国の食料供給を担つているもののうち,まず農業の現状を見ると,近年,高度経済成長の過程において,耕地面積は工場用地や宅地などへの転用により減少し,また,農業就業人口の急速な減少にもかかわらず農家戸数は,兼業化の進展もあつて緩慢な減少であり,農地価格の著しい高騰も加つて農家の経営耕地規模の拡大はそれほど進展していない。

このような農業構造問題を反映して,施設園芸,畜産などの施設型農業の発展が見られるが,麦,大豆等普通畑作物などの土地利用型農業は停滞し,耕地利用率は年々低下しており,食料供給という観点からみて多くの問題を内包している。

次に,水産業について見ると,沿岸海域の汚染や臨海地域の開発に伴う漁業権の放棄などにより,「獲る」漁業活動の主体が沿岸から遠洋へと移行している。しかし,遠洋漁業も国際海洋法をめぐつて提起されている200海里経済水域や北洋漁業に対する規制問題などに見られるように,楽観をゆるさぬ厳しい状況下にある。

このように,我が国の食料資源の安定的確保が重要な課題となつており,それに対応するため国内自給を基本としつつ,輸入先の多角化,更には新しい方向として開発輸入の推進など,食料の安定的供給のための対策が進められている。開発輸入は,開発途上地域における未利用地の開発や関連インフラストラクチャーの整備,新技術の導入等に対する援助を行うことによつて,相手国における食料増産と国民生活の向上に貢献するとともに,増産によつて生み出された輸出余力によつて我が国食料資源の確保に資するという方式である。


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