ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第2章  資源・エネルギー基盤の強化
第3節  水資源の体系的な開発・利用
3  研究開発の動向


以上のような観点からみると水資源の開発利用に関する諸活動は, 第1-2-15図 のように水資源管理,水利用,水質制御,水情報,水資源開発に分けることができるが,この分け方に従つて研究開発の動向について述べることとする。

第1-2-15図 水資源の研究開発に関する全体図


(1) 水資源管理技術

水資源管理は,河川管理と地下水管理に分かれる。

河川管理は,流水の制御等を行うことにより,各種の利水の要求を満足するばかりでなく,洪水防止,水域の環境や生態系の保全,レクリエーションのための水面の確保,舟運,下流部における塩害の防止など多目的な河川機能の利用を満足させるものでなければならない。

流水の制御に関しては,河川改修,ダム,遊水池,湖沼水位の調節,河口せき等一連の手段のシステム化により達成されている。

近年,流水制御施設の増大に伴い,水系を一貫したこれら施設の管理技術が重要となつており,降水,流量等の水文観測のための技術開発,観測網の改善に関する研究,河川における自然的・人為的な水収支メカニズムの研究が進められている。中でも,洪水時及び異常渇水時における迅速かつ的確な措置のための,気象及び水文学的な予測技術の開発が重視されている。

地下水管理は,今後の課題である。特に最近の過度な地下水のくみあげは地盤沈下等の弊害を発生しているので,その利用規制も次第に強化されている。地下水は,賦存量は大きくても流動速度が極めて小さく,大量の水を永久的に利用することはできないこと,地表水と密接な関連を有することなどの特徴を考慮した上で水資源としての位置付けを行い,適切な管理体制を整備することが望まれている。このため地下水流動のシミュレーションモデルの開発,地下水かん養方法の開発等の研究が行われている。

一方,水資源管理上,森林管理は重要な役割を担つている。すなわち,森林は,水源,荒廃山地の保全及び森林の施業などを適切に行うことによりその公益的機能の1つである山地の保水能力の向上及び洪水や土砂の流出,山地崩壊等の防止が図られ水資源管理の向上に貢献するものである。近年,その効果の評価についての研究が行われている。


(2) 水利用技術

水は主として発電用,農業用,上水道用及び工業用として利用されている。

発電分野では,ダム技術の発達及び電力需要の増大に伴い自然流入方式から貯水池方式に移り,河川流量の利用率も著しく向上した。また,著しい電力需要の増加に対応して,発電は火主水従になつたが,エネルギーの開発,有効利用及び昼夜間の電力供給の調整等のため,揚水式発電が脚光を浴びてきている。最近では,広域的な利水をも組み合わせた流域間における揚水式発電システムの研究開発が検討されている。

農業は,古くから地形を巧みに利用して,ため池や用水せき,用水及び排水路のシステムを作つてきたが,近年の土地改良事業の進展は農業用水の制御機能を著しく向上させた。また,最近の機械化,省力化による高生産性農業を目指した大規模ほ場整備に伴つて,パイプかんがいシステムの導入が試みられており,自動制御による水資源の高度利用化を図りつつある。また,特に都市化地帯における農業用水の合理化は,農業用水の新規都市用水の水源への転換という面からも重要性が高まつている。更に,果樹園芸地帯においても,スプリンクラーによる畑地かんがいシステムが普及しつつある。

上水道については,最近,量的な安定確保の必要性,水質汚濁の進行に対応した水質浄化機能強化の必要性などから,個々の自治体で作られていた上水道システムを統合強化した広域水道システムの方向に再編成されつつある。また,大都市区域においては,新規水源確保の困難性から,水洗用等特に厳格な水質を要求されない部分を下水処理水の再利用によつて置き換えようとする中水道システムが研究されており,下水処理再生利用実証プラントによる実験が各所で実施されている。これは,大都市における地下水の代替水源としてもその成果が期待される。

工業用水については,冷却用水が6%余りを占めている。そのため,工場内における回収,再利用が行われており,年々その回収率も向上してきている( 第1-2-7表 )。また,洗浄用水等についても,高次処理による再利用が望まれており,この面での研究開発も進められている。例えば,大口需要であるパルプ工場の廃水,再利用については,実用化に当たつての技術的問題点,経済性の解明等をパイロットスケールの現場実験により行うことが検討されている。

このような下水及び工場廃水の再利用については,高次処理技術の開発並びに汚泥の処理・処分方法の確立が急務となつている。水の処理技術については,それを大別すると,固液分離法,物理・化学的処理法,生物化学的処理法及び熱処理法の4つに大別できる。高次処理は,原水水質,処理水準及び規模によつてこの4方式を種々組み合わせて処理を行うものであり,各方面でその研究が取り組まれている。また,汚泥処理技術としては,汚泥資源化技術の開発が行われている。汚泥の資源化における大きな問題は重金属等の有害物質の混入であり,これを防止するには水の処理体系からの検討が必要であろう。更に,従来の汚泥処理技術は,多量のエネルギーと石灰を使用するので,この面での資源全体の有効利用の観点からの評価,再検討が望まれている。


(3) 水質制御技術

水質制御には,都市域の下水を集水し処理する下水道システム,上水道における浄水施設,工業における廃水処理等がある。これらの間には,密接な関係があるので,その有機的な関連を考慮して総合的に発展することが望まれている。

下水道については,現在,総人口普及率2%程度と低く,また工場廃水処理も不十分なために,水域の環境改善が遅れており,下水道整備が急がれている。下水道には,雨水を分離し処理する分流式と雨水をも含めて処理する合流式とがあるが,近年,これらの評価が問題となつており,この面での研究が進められている。更に,前述の高次処理技術の適用に関する研究が望まれており,現在,この面での研究も行われている。

浄水施設については,集中管理の自動化の採用が進められている一方,水質の低下による浄水能力の向上が課題となつている。

一方,水域における物質収支のメカニズムは,物理学的,化学的及び生物学的に非常に複雑であり,それに対応した水質制御は,単なる処理施設の整備だけでは達成できない。特にリン及び窒素化合物によつて引き起こされる富栄養化の問題は,湖沼,貯水池,海域で大きな問題となりつつあり,これは下水の処理基準を引き上げるばかりでなく,農業における肥培管理や畜産技術,漁業における養殖技術のあり方にも関連する。このように水質制御は,流域における物質収支のメカニズムを制御する側面も有しているので,研究開発も個別的な処理技術ばかりでなく,水域における物質の拡散,停滞等の水理学的現象,生態学的現象の解明等広範な研究活動が展開されている。

なお,工業における廃水処理技術については,第4章第4節「環境の保全]の項で触れている。


(4) 水情報に関する技術

降水量,河川水位,流量等に関する水文観測網は,治水,利水の分野ごとに充実されてきた。特に,洪水の予警報に関する情報システムは,ダムによる洪水調節及び水害防止の必要性から整備が進んでおり,遠隔自動測定,マイクロウェーブによる長距離のデータ伝送,コンピュータによる実時間処理等の情報のシステム化が図られている。

一方,気象情報に関しては,WMO(世界気象機関)の地球全体にわたる情報の収集,処理,伝送システムの一環として,国内的なシステム(気象資料自動編集中継装置,ADESS)が整備されつつあり,今後は水資源の計画,管理部門と連携したその機能の有効利用が期待されている。

水利用の進展によつて河川の低水時の管理が重要となるが,そのための水情報は水文データばかりでなく,各利水分野の取水及び排水地点ごとにおける測水データ,流域に存在するダムの貯水量,放水量等のデータについでも,水系全体として総合的には握する必要があり,今後このような観点からのシステム化が望まれている。

利水部門については,発電,上水道,工業用水等の量水システムが整備されている分野では,利水量情報のは握が常時正確に行われているが,量水システムが整備されていない農業用水,工業用水等については十分な実態は握がなされていない。今後,水利用計画の樹立あるいは渇水時の水利調整等のために,これらの分野の水情報のシステム化を図ることが望まれる。

水質情報システムには,水質制御施設の運用のためと水域環境の監視を目的とするものがある。前者は既に,上水道及び下水道部門でシステム化が図られている。後者については, 第4章第2節「環境監視」 の項で述べるとおり,現在,国,地方公共団体等で整備が進められているが,汚染因子の自動計測技術の開発等が課題となつている。


(5) 水資源開発技術

都市用水の増大に対処するためには,主としてダムの築造によらなければならないが,開発の容易な地域はほとんど開発しつくされており,現在は,地盤が悪いなど条件が良くない地域が残されているだけである。このため,ダム築造に関する研究は,従来よりも地盤,岩質,土質等のダム築造条件が良くないところでのフイルタイプダムを築造する技術を開発することが重要となつており,現在,透水性岩盤の改良方法,軟岩基礎処理方法等の研究やフイルタイプダムの設計施行法の研究が行われている。また,地震からの被害を防止するためのダムの耐震設計に関する研究が行われている。

また,水資源を確保するためには,湖沼,河口せき及び河口湖の利用が重要となつており,この面での調査,研究が行われている。

以上のほか海水淡水化技術については,将来の問題として,水資源全体の中における位置付けを考慮しつつ実用化を進めることが望まれている。(海水の淡水化技術については, 第3章第2節 「資源の開発,利用の海洋への拡大」の項参照)


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ