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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第2章  資源・エネルギー基盤の強化
第2節  鉱物資源の有効利用
3  研究開発の動向


以上のような観点から取り組まれている研究開発の動向を,1)省資源技術,2)資源代替技術,3)未利用資源の資源化技術,4)資源開発技術,5)環境保全技術に分け,概観する(これらの技術のほかにも,資源回収,再利用技術及び資源輸送技術が重要な技術として挙げられるが,第4章第2節「廃棄物処理」及び「物流」において触れる。)。


(1) 省資源技術

省資源技術は,資源の有効利用や代替物の開発等によつて,資源使用量を減少させる技術で,製品一単位当りの資源使用量(原単位)の減少を図り経済性を高めるための研究開発が生産部門等で進められてきた。

生産方法の改善の面では,例えば,銑鉄1トンを製造するに際して,ダストが0.01〜0.02トン発生するといわれているが,現在その9%以上が再生利用されており,また,銅,鉛,亜鉛等のダストについても同様である。また,銑鉄単位当たりの生産に使用されるコークス量は重油の吹き込みによる熱量の補充によつて年々減少してきたが,エネルギー資源全体としての節約の観点から見直しが望まれる。

材質を高めることにより鉱物資源の使用量を減少させる方法も省資源に有効である。例えば高張力鋼は鋼材使用量を大幅に減少させるものであり,船舶,橋梁等に効果を発揮している。現在は引張り強度50〜10Kg/mm2のものが実用化されており,更にロケットのモーターケース等には200kg/mm2級の超強力鋼が使用され,現在は,更に250〜300kg/mm2を目標に研究開発が行われている。

このような材質の強化を増大させる方向として,クラッド金属,サーメット系金属等が開発されているが,近年,結晶にほとんど欠陥がなく理論強度に近い強さを持つウイスカーを金属材料の一部に使用する研究がされており,その成果が期待されている。

第1-2-10図 は,ウイスカー使用の効果を原理的に示したものの一例である。これによれば,銀の中にアルミナのウイスカーを31%入れた材料と純銀とでは,前者の方が引張り強度が大幅に増大し,しかも,高温になつても強度が低下しないという特徴を有している。

第1-2-10図 種々の温度における純銀及び銀をアルミナ のウイスカーで強化した材料の引つ張り強さ

このほか,鉄鋼への添加剤をニッケルからニオブに置き換えた材料が,低温における強度が優れているため,極寒地におけるパイプラインに使用されている。しかも,その添加量は,ニッケルよりもはるかに少量で済むという特徴がある。

以上のほか,電気製品のIC化による銅電線使用量の減少やコンピュータによる抜取り技術等の実用化が行われているが,今後はこうした省資源技術があらゆる部門で開発されることが望まれている。


(2) 資源代替技術

資源代替技術は,1)既利用資源をより豊富でしかも低価格の他の資源に置き換えること(類似物質の代替)により,あるいは,2)人工的に他の資源を創出しこれと置き換えること(人工物質による代替)により,資源の枯渇や不足に対処する技術である。

1)の類似物質による代替技術としては,銅のアルミニウムへの代替及び一般炭のコークス化技術が挙げられる。

例えば,電線における銅のアルミニウムへの代替は昭和48年(1〜9月)にはその代替率が2%にまで上昇してきている。このような銅のアルミニウムへの代替は,このほかにも種々の分野で期待され,この面での研究開発が重要となつているが,今後は省エネルギーという面からもこのような材料の代替についての慎重な検討が必要となろう。

また, 一般炭のコークス化技術の開発については,現在,製鉄用のコークス炭は粘結性の高い石炭から造られているが,粘結炭の不足と一般炭の有効利用のため,ますます重要性を帯びてきており,我が国をはじめ世界各国で取り組まれている。

2)の人工物質による代替技術としては,人工ダイヤモンド,人工ルビー人工雲母等が実用化されている。

これらとは別に,プラスチックなどの例に見られるような性状の全く異なる人工物質を創出することにより,鉱物資源と代替する方法がある。この例の一つとして近年,ガラス繊維や炭素繊維でプラスチックを強化するFRPが注目されている。

また,プラスチックについては,資源の有効利用のためのプラスチック回収,再利用技術等の開発が重要となつており,この面での研究開発が行われている。


(3) 未利用資源の資源化技術

未利用資源としては,1)利用技術が確立されておらず用途がなかつたため未利用であつた資源,2)低品位であるため従来の技術では経済性がなかつたため利用されなかつた資源の2つが挙げられる。

1)の例としては,シラスがあげられる,シラスは南九州に広く分布している火山噴出物で,酸化硅素を主成分とする火山灰の堆積したものである。このシラスを有効に利用しようとする試みは,従来からも,種々行われてきたが,最近,工業技術院九州工業試験所は,シラスバルーン(微小中空ガラス球)を作る技術を開発しており,これをアルミニウム金属と混合して,更に軽い金属材料を作る研究を行つている。

また,シラスをべルーンにしないで,コンクリート用の細骨材(砂)にする研究や実用化も進められている。

このほかにも,黒曜石の建材等への利用技術の開発が,現在,進められている。

2)の低品位鉱の技術の開発については,近年の鉱物資源需給のひつ迫により,ますます重要性を帯びてきている。例えば,ニッケルについては,極端に偏在していること,更には,品位が年々低下していることなどにより低品位ニッケル鉱からニッケルを回収する技術の開発が重要となつており,近年,最初にフエロニッケルを取り出し,次にそれを処理することによりニッケルを回収する方法や薬品によりニッケルを回収する方法等の開発が行われている。

また,低品位銅鉱石については,ある種のバクテリアの選択的溶解作用を利用して銅を回収するバクテリアリーチング技術が実用化されており,我が国においてもいくつかの鉱山で利用されている。このバクテリアリーチングについては,近年,更に銅以外の金属への利用,バクテリアの繁殖速度の増大,バクテリアの酸化能力の増大等を目指して研究が進められている。

なお,2)に関連して,海水溶存資源,海底資源のような主として抽出採取技術が不備なため利用されていない資源が挙げられるが,これについては,第3章第2節「資源の開発,利用の海洋への拡大」で触れている。


(4) 資源開発技術

資源開発技術は,資源の発見を効率的に行うため資源探査技術と資源を効率的に採堀する採堀技術に分けられる。

資源探査技術としては,物理探査技術,地化学探査技術等がある。

物理探査技術には,磁力探査法,地震探査法,重力探査法,電気探査法,空中探査法等があるが,効率的探査のためには,近年,これらの探査法ならびにこれらの探査法の中の空中探査及びデータの効率的整理・解析のためのコンピュータの導入等を中心とした総合的探査技術の開発が重要となつている。今後は資源衛星による空中探査をも含めた総合的探査技術の推進とその成果が期待されている。

地化学探査技術は,主として地下水や河川水,土壌,草木,樹木等を化学分析し,地下資源の発見を行う技術で,物理探査技術に比し,比較的コストが安価であることなどその有用性により研究開発が重要となつており,前記物理探査技術との併用効果が期待されている。

採掘技術としては,坑道を掘削する機械の高性能化等の研究開発が行われている。また,採掘については,安全性の問題が極めて重要な問題となつており,国立試験研究機関を中心に,火薬発被保安技術等の研究開発が進められている。


(5) 環境保全技術

環境保全技術としては,資源の生産に伴う環境汚染の防止技術と資源の利用に伴う環境汚染の防止技術とに分かれるが,本項においては,前者について述べることとし,後者については第4章第4節「環境の保全」の項で触れることとする。

鉄鋼製錬については,焼結炉,高炉及び製鋼炉における硫黄酸化物の処理技術や回収,再利用技術の開発が進められている。一方,粉じんの処理のための集じん機については,一層の高性能化が望まれている。

銅製錬については,大別して,銅鉱の浮遊選鉱におけるシアン化物含有廃液の処理技術,銅イオンの除去技術及び亜硫酸ガスの回収技術の開発が挙げられる。これ等の技術開発のうち現在主として行われているシアン化物含有廃液の処理技術としては,再生循環使用する方法やシアン化物自体を回収する方法の開発,銅イオンの除去技術として,電解法による方法や薬品等を用いる沈澱採集法の開発がある。また,亜硫徴ガスの回収技術としては,希薄硫黄酸化物をいかに除去するかに研究の目標がおかれている。

アルミニウム製錬については,赤泥の有効利用技術及びふつ化水素の除去技術の開発が進められている。

赤泥の有効利用技術としては,セメント,アルミナ,明バン,鉄等の回収に関する研究が進められている。ふつ化水素の除去技術としては,従来,主として行われてきた希薄アルカリ溶液によりふつ化ナトリウムとして回収する方法があり,それによるとアルカリ損失が多い等の欠点があるため,この改善のための開発が行われている。

以上の他にも,水銀,鉛,カドミウム等の重金属についても回収技術の開発が行われている。


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