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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第2章  資源・エネルギー基盤の強化
第1節  エネルギー源の多様化と有効利用
3  研究開発の動向


以上述べた諸施策の方向に沿つて行われている研究開発の動向を,エネルギーの合理的利用,エネルギーの安定供給の確保:環境保全に関する技術に分け概観する。


(1) エネルギーの合理的利用に関する技術

エネルギーの合理的利用に関する技術は,限られたエネルギー資源をより有効に利用すると同時にエネルギーの利用から派生する公害問題を極力少なくするという効果を持つており,それはエネルギーの利用効率及び輸送,変換効率を高める技術並びにエネルギーの消費を節約する技術とに分けられる。


(1) エネルギーの利用効率及び輸送,変換効率を高める技術
(イ) エネルギーの利用効率を高める技術

温排水として放出されているエネルギーを利用しエネルギーの利用効率を高めるとともに,温排水による海洋熱汚染を緩和するための熱併給発電は既に実用化を迎えている。これは熱エネルギーの発電への利用と石油化学コンビナートへのプロセスヒートの供給,地域冷暖房,海水の淡水化,そ菜の栽培や魚貝類の養殖などへの利用等とを組み合わせ熱の総合的有効利用を図ろうとするものである。後で述べる原子炉の多目的利用の研究開発も同様な目的で進められている。


(ロ) エネルギーの輸送効率を高める技術

電力の輸送に伴う送電ロスを少なくするとともに,土地利用や景観の面で環境と調和のとれた高密度大容量の新しい輸送技術開発が行われている。既に過疎地帯の高密度大容量架空線送電では500kv送電も実用化されているが,今後は空気絶縁の限界に近い1,000〜1,500kv送電実現のための研究開発が課題となつている。

このような送電電圧の昇圧化は電源の大規模化,集中化,電源立地の遠隔化に伴つて将来進展するであろうが,大電流化を行う方向もあり,現在,より高温に耐える絶縁物の開発が行われている。

一方,過密地域及びその周辺では環境対策等から送電線路の地中化が重要となつてくると考えられる。このための研究開発としては,強制冷却ケーブル,管路気中ケーブルが実用開発段階に達している。更に,極限技術を利用するものとして,液体窒素などで冷却して送電する極低温ケーブル及び液体ヘリウムなどで冷却して電気抵抗をゼロにして送電する超電導ケーブルが今後の主要な課題となつている。

石油の輸送については,輸送合理化と大量輸送のため石油パイプラインが計画されつつある。

なお電力の貯蔵については,需要の少ない夜間の余剰電力を“水の位置エネルギー”に変えて貯蔵し,翌日の需要に備える揚水発電が一部実用化されており,今後は流域間連続揚水,高落差揚水,海水揚水の研究開発が課題となつている。


(ハ) エネルギーの変換効率を高める技術

エネルギーの交換効率の向上を図る方法としてまず作動流体の高温化が挙げられる。この方式として,ガスタービン,それからの高温排気を利用するボイラ及び蒸気タービンを組み合わせ,プラント全体の熱効率を40%以上に向上させる蒸気・ガス複合サイクル発電が一部実用化されている。ガスタービンは,燃料として硫黄含有量が少ない灯油又は軽油が使用されるのでコスト高になるが,亜硫酸ガスの発生が少なく,大気汚染防止の点からも好ましいものである。

また,MHD発電,金属蒸気タービン等いわゆるトッピングサイクルの開発が期待されている。

MHD発電は,プラズマや液体金属のような高温の電磁流体を強力な磁場の中に高速で通過させて発電する技術であり,使用済みの高温排ガスを従来の火力発電プラントに結びつけることによつて,全体の効率を50〜60%まで高めることが期待され,鋭意研究開発が進められている。またこうしたMHD-汽力発電プラントは,発電プロセス自身が脱硫装置を兼ねた機構となつているため排気ガスにはS02がほとんど含まれず,大気汚染の防止という点からも効果的であるとされている。しかし,MHD発電については耐熱材料の開発,特に電極材料の耐熱性の向上,超電導磁石の材質や加工,極低温技術など多くの課題が残されている。

一方,排熱を有効に利用する方法として,低温タービン等いわゆるボトミングサイクルの開発も期待される。

また,エネルギーの変換効率向上には,直接発電方式の燃料電池がある。

これは化学反応の際の反応エネルギー (例えば水素と酸素が結合して水になる時の反応エネルギー)を直接電気エネルギーに変えて,変換の際のエネルギーのロスを少なくし発電効率を上げることができるものであり,騒音や大気汚染物質の排出が少ないと考えられ,現在,研究開発が行われている。

今のところ遠隔地の小容量無人電源として実用化されているが,将来の大容量化が期待されている。開発の課題は,反応を促進させるための安価で高性能な触媒の開発,燃料中に含まれる不純物などによる触媒劣化の防止及び寿命の延長を図ること等である。

比較的早期の実用化が期待されているものとしては,アメリカでプロジエクト「ターゲット計画」として研究開発が行われている天然ガス改質水素燃料電池がある。これは従来のガス事業体の配管に電池を接続して,家庭規模に分散した発電ができるということで我が国も実用試験に参加しており昭和48年から商品化の研究段階に入つている。更にこのほか,直接発電としては,アイソトープ電池,電気力学発電,熱電子発電等がある。


2 エネルギー消費を節約する技術

エネルギーの合理的利用の中で当面最も効果を期待できると考えられているものは,産業,運輸,民生等各消費部門での省エネルギー化であり,その中でも石油の節約が重要である。現在,石油製品の用途別使用割合は,およそ,運輸部門1%,民生用等1%,火力発電用燃料2%,産業部門における熱源用及び自家発電用燃料その他40%,石油化学工業の原料1%である。

運輸部門については,石油エネルギー需要の大部分は自動車用燃料であり,また自動車の単位輸送量当たりの燃料消費が大きいので石油消費原単位の小さいものへの転換,例えば自動車の小型軽量化,高効率エンジンなどの新技術開発及び大量輸送機関網の整備が望まれる。

民生部門については,エネルギー利用効率の高い器具の開発,建築物の断熱性及び住宅構造の改良,ヒートポンプのような合理的な熱移動,地域暖冷房や集中暖冷房などの方式の開発によつて省エネルギーを期待できる。

更に,石油全体の60%を占めている産業用石油エネルギーを有効利用できる技術開発が,今後省エネルギーの観点から大きく期待されている。火力発電については1で述べたとおりであるが,発電以外の産業分野においても石油の有効利用の可能性として,高効率燃料設備の採用及び燃焼ガスの撤底した熱回収が考えられる。そのような排熱回収による熱効率の向上とともにもう一つの大きな課題は資源の再循環と再利用である。非鉄金属の場合,新しく精錬するよりもスクラップを利用する方が必要なエネルギーは20%も少なくて済むといわれている。例えば自動車についても,設計の段階から材料の再循環と再利用を考えておくことによつて,省資源ばかりでなく省エネルギーも可能となろう。

石油化学工業においても,石油資源節約という観点に立つた新技術の開発が期待される。

更に,電力需要の現状をみると,産業用はその60%近くに達しているので,我が国の電力の省エネルギーは産業部門における省エネルギーによつて左右されるといつても過言でない。

電力の用途は,電動機等の動力用,電気炉等の熱源としての利用,化学工業等での電気分解用,更に照明用となつている。したがつて,エネルギー使用の少ない生産プロセスへの転換や機器のエネルギー利用効率の改善等を行うことはもちろんであるが,電力需要の主体をなすものはモータであるといわれているので,モータの効率上昇,力率向上,使い方の検討を被動側の機器の条件も加味して検討する必要がある。

また,電力の利用効率を高めるためには,電力利用は照明や動力などの分野に重点を置き,熱利用については高い熱効率を有するガスのような良質の化石燃料を利用するなど,利用目的に合わせて最も効率的な使用機器,使用パターンを選ぶなど各種のエネルギーの特性に応じた工夫が望まれる。


(2) エネルギーの安定供給の確保に関する技術

今後のエネルギー利用は,化石燃料の利用から次第に原子核エネルギーを利用した原子力に移行し,究極的には核融合,太陽エネルギー等の非枯渇資源を利用する方向になるであろうと考えられる。(原子力の項の詳細は 第3章第1節原子力開発参照 )


(原子力発電-軽水炉)

新エネルギー技術として,現在力の注がれているのは原子力発電である。すなわち各種の新エネルギー技術の開発現状から判断する限り原子力発電の発展には大きな期待がかけられている。世界的に原子力発電は,研究段階から実用段階に入り,各国で原子力発電所の建設が積極的に進められている( 第1-2-7図 参照)。

第1-2-7図 世界の原子力発電電力量の推移

我が国の場合,昭和60年までに開発が予定されているのは6,000万kwにのぼり,総発電設備容量の4分の1を占めるであろうとされている。現在我が国で採用されている原子炉のほとんどは軽水炉で,今後もこの傾向は続くものと考えられる。

我が国はその燃料として使われる濃縮ウランについて,現在のところ自由世界唯一の濃縮ウラン供給国であるアメリカに依存しているが,将来における安定確保を図るため遠心分離法によるウラン濃縮技術の研究開発をナショナル・プロジェクトとして強力に推進している。


(原子力発電-新型転換炉,高速増殖炉)

軽水炉型の原子力発電は核燃料の利用が十分でないので,中長期的には核燃料の有効利用の観点から将来の原子力発電の主流と考えられている高速増殖炉とその実用化までの過渡的段階としての新型転換炉の開発をナショナル・プロジェクトとして目下積極的に推進している。

他の先進工業国においても原子力開発の最大の焦点は,この高速増殖炉開発に向けられている。各国とも高速増殖炉開発は1980年代半ばに実用炉を完成させるという計画で進められている。


(海底石油,天然ガス)

今後の石油,天然ガス資源の開発対象は,大陸棚深部,大陸棚外沿部,更に深海底と自然条件の不利な地域に移行せざるを得ない。我が国の周辺海域から東シナ海にかけての広範囲な地域は,地質学的及び地球物理的に見て石油埋蔵の有望地域と見られているが,我が国の現在の技術水準では,探査,開発地域は,ごく限られた範囲とならざるを得ない。

このため今後の技術開発としては,地質構造調査,探査技術,大水深度における掘削技術の開発が重要となつているが,我が国の開発技術はアメリカをはじめ先進工業国と比べてかなり遅れている。このため作業最大水深200〜250mの大深度遠隔操作掘削装置などの開発が工業技術院の大型プロジェクトとして進められており,その成果及び今後の研究開発が期待されている。(詳細は 第3章第2節海洋開発参照 )


(石炭の新利用)

石炭の究極埋蔵量は総熱量の点で石油あるいは天然ガスより一桁多いので,利用法いかんでは石油枯渇に対処して有力なエネルギー源になると考えられている。エネルギーとしての使用の簡便性と無公害性を付与するための新しい技術として,石炭のガス化及び液化が注目されている。

石炭のガス化は当面高カロリーの天然ガス代替品を目指す合成天然ガスの製造がねらいであり,石炭の液化は主として合成原油を生産する技術である。これらはいずれもアメリカをはじめとして,イギリス,西ドイツで盛んに研究されている。また,石炭を低カロリーのガスにして脱硫し火力発電の燃料として使用する複合サイクルガス化発電は西ドイツでは既に稼動に入つている。

我が国におけるこれらの石炭のガス化,液化の研究開発は戦前から数多く行われ,基礎研究は相当程度確立している。ガス化技術は1980年代前半まで,液化技術は1990年ごろまでに実用化し得る見通しであるが,今後更に開発時期を早めるため研究開発が進められている。

国内炭の生産量は減少しているが,残つている炭鉱における炭種の液化,ガス化の可能性を調査する必要がある。これと同時に,資源保有国の工業化,技術蓄積にも役立てるとの観点に立つて,液化,ガス化の可能な非粘結炭,褐炭,亜炭等について共同研究開発を行うことが期待される。


(タール・サンド,オイル・シエール)

我が国にはほとんど存しないが,石油,石炭等とともに化石燃料の今後を担うものはタール・サンド及びオイル・シエールなどから生産される原油である。

タール・サンドは粘り気の強い石油を多量に含んだ砂で,世界最大の埋蔵量を有しているカナダでは既に試験的生産を始めている。またオイル・シエールは同じように粘着性のある石油を含んだ頁岩であり,埋蔵量の多いアメリカでは石炭のガス化に次いで研究開発に力を注いでいる。タール・サンドとオイル・シエールは未利用の化石燃料であり,埋蔵量が膨大であるので技術開発いかんでは重要な資源となりうる可能性がある。

我が国としては,このような代替資源の開発を推進するため,技術開発等の面において,国際協力を進めていくことが期待される。


(地熱エネルギー)

地熱エネルギーは,火山国である我が国の貴重な国産エネルギーであり,その開発可能量については現在既に着手されている基礎調査が完了した段階で明らかになると思われる。

地熱エネルギーの開発は,発電を中心に進められ,現在実用化段階に達している松川(2万2千kw),大岳(1万1千kw)両発電所については,発電が行われており,続いて大沼(秋田県),鬼頭(宮城県),八丁原(大分県),葛根田(岩手県),濁川(北海道)などが開発中である。これらが完成すれば約20万kw程度にはなると見込まれている。

世界的には,現在100万kwを若干上回る発電が行われており,このうちアメリカが41万kw,イタリアが40万kw,ニュージーランドが約20万kwを占めている。

以上,現在行われている地熱発電は地球の内部から自然に噴出する蒸気でタービンを回転させ発電するものである。

今後は,天然蒸気利用から更に進んで,地下の熱水を利用する発電方式,あるいは地下深部の高温岩体(マグマ)の保有する熱エネルギーを利用する方法が研究されることが期待されている。

なお・,地熱エネルギーの開発に関しては,景観の保全及び熱水処理,硫黄等含有物質除去等を図る技術の開発など環境の保全について検討する必要がある。

「新エネルギー技術研究開発計画」では,地熱エネルギーの探査,採取技術および超深度地熱発電,火山発電等地熱エネルギー開発の技術開発課題に取り組むことが計画されている。


(太陽エネルギー等)

地域における制約の少ないエネルギー源として,長期的に見て期待されているものに太陽エネルギー等の自然界のエネルギーがある。

地球が受ける太陽エネルギーは正に膨大であるが,密度は低いのでこのエネルギーを本格的に利用するには技術的経済的に課題が多い。太陽エネルギーの利用技術のうちで既に一部実用化されているものとしては,家庭用の温水器と特殊電源用の太陽電池がある。現在研究開発中のものを見ると中期的には,ビルや一般家屋の屋上に太陽エネルギー吸収装置を取り付け,各種民生用エネルギーとして利用し,既存エネルギーの節約を図る研究また長期的には,宇宙空間,大気圏における太陽電池による大規模発電や地上における太陽熱発電がある。

太陽エネルギー利用は気象条件によつて変動するので,現状では限られた範囲でしか利用できないが,早期実用化の見通しのある太陽冷暖房のうち暖房については,我が国では既に数軒の実験住宅が建設され,実用化のための研究に着手した段階にある。

科学技術庁においても昭和49年度から「太陽熱の家庭エネルギーへの有効転換技術に関する調査」を取り上げ,既存技術の組合わせを行い,それらを最も効率的に活用したモデルハウスを設計,建設し,太陽エネルギーの合理的利用の可能性の実証的調査に取り組むことを計画している。

「新エネルギー技術研究開発計画」では,集光,集熱,蓄熱技術等の基礎技術の研究開発を進めるとともに,太陽熱による冷暖房,給湯,太陽光発電,太陽熱発電等を総合的に検討し,経済性に富んだエネルギーシステムを開発していくこととしている。

太陽電池による発電についてアメリカでは,宇宙開発技術を活用して,宇宙空間軌道に太陽電池による発電所を打ち上げる計画が航空宇宙局(NAS A)を中心として共同研究グループで検討されている。

一方,太陽熱発電については,我が国は既に基礎研究に着手し,工業技術院の電子技術総合研究所において太陽エネルギーの吸収変換装置を完成している。

また,海洋エネルギーの利用については,我が国では現在波力発電が特殊電源用として実用化されており,一層の研究開発が進められている。温度差発電,潮汐発電,更には風力発電はいずれも立地に制約があり,我が国では現在のところ困難とされているが,今後の研究開発が期待される。


(核融合エネルギー)

原子核エネルギーを取り出すには,前述したウランなどの核分裂反応を利用する方法のほかに,重水素などの核融合反応を利用する方法がある。核融合炉は重水素などの原子核が融合してヘリウムを作る際に出るエネルギーを利用するもので,核分裂を利用する原子炉と違つて核分裂生成物の蓄積と廃棄物の処理,処分の問題が軽減されるとともに,燃料としての重水素の存在は無尽蔵であるので,将来のエネルギー源として最も期待されているものである。

しかし,これには多くの課題があり,特に電子温度,プラズマ密度,閉じ込め時間について必要な条件を満たすことが極めて困難な課題となつており,現在研究開発が強力に進められている。我が国は,昭和48年3月には電子温度700万度,エネルギー閉じ込め時間20ミリ秒のプラズマを発生させ世界第1線級の成果を挙げており,今後に予定されている磁場増強,周辺機器整備により更に成果が挙がるものと期待されている。


(水素エネルギー)

水素エネルギーは原子力,太陽エネルギー等の一次エネルギー源により得たエネルギーを蓄積,輸送,消費する場合の二次エネルギーとして重要視されてくると期待されている。

水素は原理的に

1) 原料は水であるため普遍的に得やすい
2) 燃焼生成物は水であり,クリーンである
3) 経済的かつ効率的なエネルギーの輸送ができる
4) エネルギー貯蔵の手段となる
5) 熱利用,動力利用,化学利用など多様な利用が可能である(第1-2-8図参照)

といつた利点がある。しかし,水素の製造,輸送,貯蔵,利用技術についでは,材料,安全性,低温ぜい性に関する多くの課題が残されており,これからの研究開発課題となつている。各要素技術を組み合せたトータルシステムの実現は,「新エネルギー技術研究開発計画」では1985〜1995年ごろとされている。

第1-2-8図 水素エネルギーシステム概念図


(水力資源)

水力は天然の循環資源であると同時に公害の少ないエネルギー源であるので,国産エネルギーとして総合的水資源開発の一環としての取組みが要請されている。これに関して,科学技術庁資源調査会の勧告も出されている。

我が国の包蔵水力は降水量及び地形から見て,理論包蔵水力が平均出力約7,700万kw,年間発電電力量で6,700億kwH程度と見られており,このうち通商産業省の調査により明らかにされているとおり,開発可能な包蔵水力は最大出カ4,900万kw,年間発電電力量1,300億kwHとなつている。この内訳は,既開発は約2,000万kw(820億kwH),未開発は工事中を含めて約2,900万kw(480億kwH)となつており,480億kwHは石油換算で約1,000万klに相当する。

したがつて,その開発を推進するための今後の課題は,水力を再評価し広域的な利水の要請とも組み合わせた流域間における揚水式発電システムと旧電力施設の再開発である。


(3) 環境保全に関する技術

現在のエネルギー利用体系は石油を中心とする化石燃料によつて成り立つている。原子力やその他のエネルギーへの転換が図られるとしても,これらは研究開発に長期を要すものもあり,直ちに役立つものでも量的に少ないものも多い。したがつて,今世紀中は化石燃料が主役を務めると見られ,その利用,に伴う環境汚染の防止対策が急がれる。

硫黄酸化物による大気汚染を防止するためには,低硫黄含有率の石油を使用することが望ましい。しかし,そのような原油の確保は種々の条件で困難であり,我が国は燃料の大部分を硫黄分1%以上の高硫黄原油がほとんどである中東原油に依存している。したがつて脱硫技術の確立が急がれている。

現在の脱硫技術は大きく分けて重油脱硫技術,排煙脱硫技術,ガス化脱硫技術の3つである。

重油脱硫技術には幾つかの方法が研究されているが,現在広く実用に供されているのは水素化脱硫である。これには常圧残油をそのまま脱硫装置にかけて脱硫する直接脱硫と,常圧残油を更に減圧蒸留装置にかけてその減圧留出油を脱硫する間接脱硫の2方式があるが,前者が脱硫率の面から技術開発の主流と見られている。現在,直接脱硫は金属成分による劣化作用に耐えられる触媒の開発が重要な課題となつていて,その研究開発が行われている。

しかし,脱硫には限度があり,大気汚染防止を完全には解決できない。

重油脱硫と並んで実用化段階にある脱硫技術として排煙脱硫技術がある。

これは排煙からSOxを除去し90%程度の高い脱硫率が得られる方法であり,相当実用化も進んでいる。この技術にも湿式法と乾式法の2つがあるが,いずれの方式も硫黄化合物を副生する。この硫黄化合物の処理については,石こうの生産等資源化技術の研究開発も行われている。

重油脱硫,排煙脱硫に次ぐ新しい脱硫技術として最近注目を集めているものは,ガス化脱硫である。これは常圧残油を減圧蒸留にかけて最後に残った減圧残油をガス化して脱硫する方式である。現在,メタンに富む高カロリーガスを得るものと低カロリーのガスを得るものとがあり,前者は発電用燃料として,後者は複合サイクル発電用燃料として研究開発が進められている。

一方,窒素酸化物については,当面,再循環ガス混燃方式と二段燃焼方式の研究開発が進められている。前者は排ガスの一部を循環し,燃焼を緩慢に行わせる方式であり,後者は燃焼を二段階で行わせる方式である。これらの方式により3%程度の排出量を削減できるが,まだ不十分である。このため排煙脱硝技術等の防除技術の研究開発が現在強力に推進されており,その成果が期待されている。

また,温排水対策としては,エネルギー変換効率の向上とともに,前述した熱併給発電の研究開発が行われている。以上のほか,原子力利用による環境汚染の防止についても研究開発が進められている (第3章第1節原子力開発の項を参照)

更に,エネルギー開発利用技術の革新性が高ければ,それに伴つて新たな環境汚染問題を起こさないとも限らないので,新エネルギー技術開発は,環境保全に特に意を払つて進められなければならない。


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