ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第1章  科学技術に課せられた役割
第2節  科学技術の取り組むべき課題
3  社会開発基盤の強化


真の国民福祉を達成するためには,人間生活の質的な向上を図るための社会開発基盤の充実,すなわち,快適で安全な人間環境の確立と人間生活に密着した社会システムの充実が必要である。このため,科学技術においては,前者については安全や環境に関する科学技術及びライフサイエンスの振興が,また後者については医療,交通等のシステムの機能を十分に発揮させ,その提供するサービスの質を育めるための科学技術の適用が求められている。

また,現代のように複雑化,多様化しつつある社会において快適で安全な人開環境を実現させるには,総合的観点から政策立案を図る必要があり,ソフトサイエンスの研究開発やテクノロジー・アセスメントの導入が要請されている。


(快適で安全な人間環境の確立)

環境問題の解決に当たつては,環境を支配する諸法則を明らかにし,環境条件の変化が自然及び人間に及ぼす影響を未然に察知してその対策を講ずるとともに,更に人間の活動に一層好ましい環境条件を求め,その実現を図ることを目標にしなければならない。このためには既に発生した問題の対処にとどまらず,長期的観点に立つて新たな環境破壊の未然防止や積極的な環境保全に役立つ体系的な科学技術の確立を目指した研究開発とその成果の応用が要請されている。

近年における社会・経済の高度化や多種多様な新技術の出現に伴つて,産業災害や生活の場における事故などを引き起こす諸要因は複雑化,多様化し,広範なものとなりつつある。また,自然災害も相変わらず多発しており,社会的,経済的条件の複雑化は,この自然災害を増幅させる可能性を持つている。このような危険から我々の生活を守るためには,災害の発生機構,有毒物質の毒性の発現機序など基礎的問題の解明のほか社会的,経済的要因や人間の心理など人文科学分野を含む多くの分野に及ぶ研究を必要とし,更にそれらを総合した安全を確保する体系的な科学技術の確立が望まれている。

現在,人間が直面している重要な社会問題の1つに高令化社会への対応,がん等の制圧,安全な食品や有効かつ安全な医薬品の確保,化学物質や家庭用品の安全性の追求等人間の健康,安全に関する問題がある。このような問題を解決して健康で質的に豊かな社会の実現を図るためには,ライフサイエンスの発展が必要である。すなわち,生物学のみならず物理学,化学など各分野にわたる現代最高水準の科学技術を駆使したライフサイエンスの進展によつて,これらの成果が保健・医療,環境保全,食料の確保,新しい工業プロセスの開発等へ応用されることが期待される。更に,広く見ればライフサイエンスは,人類の将来又は人間活動と自然との調和等を展望する際に重要な指針を与えるものである。


(社会システムの充実)

現代社会において科学技術は,公共的色彩が濃く地域的広がりのある種々の社会システムー例えば,交通システム,医療システムーに組み込まれ,人間生活の向上に貢献している。今後の社会の進展とともに,国民の福祉向上にとつてこのような社会システムの重要性がますます高まるので,これらの社会システムにおける人間福祉達成という本来の目的達成の効率を一層高めることを目的とした科学技術の研究開発及びその成果の総合的,有機的な適用が要請されている。

例えば,医療システムの場合は,良質の医療サービスを広く提供することが求められており,そのためには,ハード技術,ソフト技術を総合的に結合して,自動化をとり入れた病院システム,へき地医療システム等の諸システム,更にはそれらを結合した地域医療システム等を確立して,限られた医療資源を有効利用することが要請されている。

また,交通システムにおいては,従来からの交通手段の効率的利用,管制システムの改良や導入,新しい交通手段の開発をはじめこれらを組織的に組み合わせて地域住民の交通需要に応じ,安全の確保及び環境保全を図ることが要請されている。

更に,環境の監視や汚染源のコントロールなどを行うとともに,長期的な環境改善計画樹立のためのデータバンク的役割も担った総合的環境監視システムの確立を目指した研究開発が必要となつている。

この他にも,物流,都市廃棄物処理システムなどの飛躍的効率向上のため,研究開発が要請されている。


(複雑化,多様化への対応)

内外における政治,経済の激動,人間の活動範囲の拡大,情報量の著しい増大等は我が国社会・経済を以前にも増して多様化,複雑化させている。

ごのような複雑な現代社会における諸問題は,その要因が互いに絡み合つているので,それらの諸要因と相互関係を明らかにし,総合的,体系的な解決策を樹立することが必要となつている。したがつで,情報科学,行動科学,システム工学等を基礎として自然,人間,社会間の矛盾から発生する複雑な諸問題の最適解を得るための総合的科学的手法であるソフトサイエンスに関する研究開発とその応用が求められている。また,科学技術の社会へのインパクトが大きくなつている現代においては,科学技術のもたらす副次的な好ましくない影響を事前に発見し,社会・経済に及ぼす影響を総合的に把握し評価し適正な科学技術の適用を図るため,テクノロジー・アセスメントの一層の向上とその実施が必要である。

以上,本章においては,社会の発展のため解決すべき重要問題として,資源・エネルギー問題及び国民生活の質に関する環境,安全,交通等の問題があることを指摘し,これらの解決のための科学技術の課題として次の三つがあることを述べた。

(1)エネルギー資源,鉱物資源,食料資源等の安定確保と有効利用を図り,社会の資源・エネルギー基盤を強化すること
(2)資源・エネルギーの供給拡大と国民生活の質の向上に大きな利用の可能性を秘めた原子力,宇宙,海洋という新領域を開拓すること
(3)ライフサイエンスの推進,環境の保全及び安全の確保を図るとともに医療システム,交通システム等の充実を図り,社会開発の基盤を強化すること

更に,科学技術の社会・経済に及ぼす影響が大きなものとなつていることにかんがみ,今後科学技術活動を進めるにあたつては,自然,人間,社会の調和を確保するよう留意すべきであることを指摘した。

第2章以下においては,上記の科学技術の取り組むべき諸課題を現状分析と問題の指摘によつて一層具体的に明らかにすると,ともに,それらの課題実現のために科学技術が進みつつある方向及びその方向に沿つた研究開発の動向について述べることにする。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ