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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第1章  科学技術に課せられた役割
第1節  解決を迫られている諸問題と科学技術
2  科学技術の対処とそのあり方


以上,資源・エネルギー及び国民生活の質に関する諸問題を概観してきた。これらの問題を解決し,豊かで潤いがあり,しかも活力に満ちた人間生活を実現していく上で,科学技術が貢献すべき課題は広範多岐にわたつているが,それらは次の三つに要約されるといえよう。

第1は,新資源や未利用資源の開発・利用,資源の代替,省資源等に関する研究開発やその成果の適用を積極的に進め,環境を保全しつつエネルギー,鉱物,食料,森林,水等の資源の安定的確保及び有効利用の実現に資することによつて,資源・エネルギー基盤の強化に貢献することである。

第2は,資源・エネルギー基盤の強化と同時に国民生活の質の向上に直接大きく貢献しうる可能性を秘めた新領域を開拓することである。すなわち,エネルギー供給の飛躍的拡大や放射線の医療,産業等への利用の発展等を目指す原子力開発,食料資源,エネルギー資源,鉱物資源の開発の場や,産業活動あるいは人間生活のためのスペースの海洋への拡大を目指す海洋開発,更には通信,放送,気象観測,地球観測(資源探査,環境監視)等のための宇宙空間の利用を目指す宇宙開発などに貢献することである。

第3は,環境の仕組みの解明や環境破壊防止手段の開発,人間一機械系の安全化,国民や地域住民の要請により十分にこたえ得る社会システムの開発等を積極的に進め,・一環境の保全,安全の確保及び医療,交通等の改善などを図り,社会開発基盤の強化に貢献することである。

次に,これら三つの課題に科学技術が取り組むに当たつて留意すべき点を,上記諸問題と関連付けながら述べることとする。

これまでの経済活動は,資源利用の拡大を基盤として,国民所得の増大や消費水準の向上など国民生活の安定・向上を達成する上で大きな貢献をしてきた。しかし,その過程で経済性や効率を重視するあまり一部の資源への依存を深め,その資源の枯渇を速めつつある。このような経済活動のあり方は,また自然の浄化能力の限界への配慮をも欠くこ,ととなり,人間や自然に対して様々な影響を与えている。すなわち,難分解性の化学物質,重金属などの汚染物質の流出は,河川,湖沼,海洋あるいは土壌を汚染し,SOx,COx,NOxなどの拡散は,大気汚染をもたらし,こうしたことが自然の物質循環系の異常,更には自然環境の破壊,人体への被害なζを生じさせている。

これらのことは,自然と人間との調和に対する配慮を欠いたことによる問題としてとらえることができるが,これを生じさせた一つの理由は,とかく経済の発展という目的を中心に進められてきた科学技術活動のあり方であつたといえよう。

同様なことが,人間と社会との間にも発生している。

交通の発達は,人間活動の空間的限界を拡大し,時間的制約を縮少するなど大いに人間生活の向上に寄与してきた。その結果,輸送効率や便利さの増大,高速度化等が実現されてきたが,一方において事故などによる死傷者の発生,排気ガスによる健康被害,騒音・振動等地域住民の生活への支障をもたらすなどの問題を起こしている。

また,多種多様な消費財の大量供給は,他面では,処理困難な生活廃棄物の増大という問題を招いている。社会における諸活動の能率の向上に役立った都市化は,過疎過密を引き起こし,これに伴う様々な問題をもたらし,また経済発展に大きく貢献した産業の大型化,機械化は,災害の規模拡大や人間疎外の問題を伴つている。これらの問題は,一つの面における社会の発展が,他面,社会の構成員である人間の生活の質的向上を阻害している問題,すなわち,社会と人間との間の不調和としてとらえることができる。

以上の例に見られる不調和の発生には,多くの要因が絡んではいるが,これまでの科学技術の適用の偏り,あるいは不適切さが関与している場合も多かつたものと考えられる。

したがつて,真の国民福祉を図るためには,これからの科学技術活動は,その自然,人間,社会に対する影響を広く考慮し,自然,人間,社会を一つの総合的な体系としてとらえ,その体系全体の調和を図りつつ発展させるという観点から進めなければならない。


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