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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第1章  科学技術に課せられた役割
第1節  解決を迫られている諸問題と科学技術
1  解決を迫られている諸問題



(資源・エネルギー問題)

エネルギー資源,鉱物資源などの資源は,社会におけるあらゆる活動の物的基盤であつて,その供給確保なしには我々の生活の向上はおろか,維持さえも困難なものとなる。

このように,我々の生活や社会経済活動にとつて不可欠の資源も,それを開発,利用する科学技術がなければ単なる天然物にとどまり,“資源"′として役立てることはできない。

また,これまでの人間社会の発展の経緯を見ても分かるように,資源の開発・利用技術は社会・経済の発展に大きく貢献し,これによつて実現した高度に発展した社会・経済においては,ますます多様かつ多量の資源が必要となつてくる。そのため,更に新たな資源開発・利用技術がこれにこたえることとなり,それが社会・経済をなお一層発展させることになる。

このような過程の繰り返しを経て形成された現代社会においては,石油,石炭を動力,熱あるいは光などのエネルギー源として利用するほか,合成化学原料としても利用し,また,鉄,銅,亜鉛などの鉱物資源や木材資源を生産,運輸,交通などのための機械・装置・設備,建築物及び様々な生活物資の原材料として利用することにより,更には農水産資源から多種多様な食料をつくり出すことによつて,社会のあらゆる活動及び生活の維持・向上が図られている。

我が国もこのように種々の資源を利用することによつて,社会・経済の発展及び国民生活の向上を実現してきた。しかし,国内資源が乏しいため,その大部分を海外からの輸入に依存してきた。したがつて,最近のエネルギー鉱物,木材,食料等の主要な資源の供給を巡る諸情勢の変化は,我が国の将来にとつて大きな問題であり,各方面からの対策が強く要請されている。とりわけ科学技術に対しては,資源の開発及び有効利用を通じてこの問題の解決に大きく寄与することが期待されており,その役割はかつてない程重要なものとなつている。

ここではまず,主要な資源問題を概観し,続いてその解決のための科学技術活動のあり方や課題を明らかにすることにする。

我が国のエネルギー消費は,昭和47年には石油換算3億2千万M(自由世界の総エネルギー消費の約7俗)に達し,我が国はアメリカに次いで自由世界第2位のエネルギー消費国となつでいる。現在,我が国が消費しているエネルギー資源の大部分は,石油,石炭,天然ガス等の化石燃料であり,その中で石油は総エネルギー消費量の78%を占めるに至つている。しかし,我が国の石油産出量は極めて少なく,国内消費のほとんどすべてを輸入に頼つており,しかもその大部分は中東地域をはじめとする開発途上国に依存している。ところが,それらの国々が,これまで国連で開発途上国が主張してきたいわゆる「天然資源に対する恒久主権」を,石油資源の将来の枯渇を背景として中東戦争を契機に行使し始めたため,安価かつ多量の石油を自由に入手できる時代は終えんすることとなつた。このことは我が国のエネルギー供給にとつて特に厳しい事態を招来している。

鉱物資源について見ると,我が国は,世界総消費量の10%前後に相当する多量の鉄,銅,亜鉛,ニッケル,鉛,錫,アルミニウム等を消費しており,海外依存度は100俗に達するものもあり,概して極めて高い。これらの資源についても,資源保有国のナショナリズムの一層の高まりなどが予想されるので,将来,石油と同様な事態に遭遇するおそれがある。

食料資源について見ると,我が国は,米や青果物等(よ別として,小麦,大豆,砂糖,更には畜産用濃厚飼料や油脂原料の大部分を海外に依存している状態にある。ところで,世界の食料需給について見ると,需要の面では,膨大な人口を抱えている多くの開発途上国では,いまだに食料不足の状態が見られるにもかかわらず依然として高率な人口増加が続いており,また,先進国を中心とした畜産物需要の増大による飼料穀物需要の増大が見込まれるなど食料需要が急増するものとみられる。生産の面では,主要生産国における生産拡大が行われているものの,需要の増大に対応した農地面積の大幅な拡大を急速に進めることは,自然的,経済的諸条件等の点で期待できず,また,気象変動による不作等の発生も懸念されており,今後の食料生産の増大は必ずしも容易ではない。

したがつて,世界の食料需給は,どちらかといえば変動の大きい不安定な状態で推移する公算が大きいものと見られる。

また,木材資源についても,その消費量の半ば以上を海外に依存しているが,世界的に木材需要が増大傾向にある一方,一部の木材供給国が自国の森林保護,木材加工業の育成あるいは国内木材価格の安定等の見地から木材輸出の規制を強めつつあるため,従来どおりの多量かつ安定的な外材輸入は次第に困難になるものと考えられる。

他の資源に比較すれば恵まれた資源である水資源も,最近,水資源開発の進展に伴う開発適地の減少,水質汚濁による水道用水の浄化の困難化,地盤沈下防止のための地下水利用の規制強化などによつて既に量的,質的に問題となつてきている。更に,今後,工業用水,生活用水等の需要の増大によつて,一部の地域においては深刻な水不足が発生するものと予想されている。

資源供給については,これまでもある程度不安定化が予想されてはいたが,以上のような資源保有国の資源政策の変化などによつて極めて厳しい情勢を迎えようとしている。これに伴い,経済性や環境汚染の防止の観点から従来からも強調されてきた資源の有効利用及び代替資源の開発の必要性が飛躍的に高まつている。このような資源問題の解決への貢献が,科学技術に対して強く要請されているのである。


(国民生活の質に関する問題)

科学技術の進歩発展は,国民生活の質の向上に大きく貢献してきた。例えば,産業技術の進歩は,経済の発展を通じて国民所得を増大させるとともに多種多様な生活物資を供給することを可能にした。医療技術の発展や医薬品の開発は,数多くの疾病の克服に貢献し,また,交通分野における技術の進歩は,迅速な人や物の交流あるいは流通を可能にした。更に,通信技術や電子計算機技術等の発展は,多種多様な情報の迅速な伝達を可能とした。

しかし,国民生活の質については環境,安全,医療・保健,交通・輸送,廃棄物処理等の面でまだ多くの問題が残されている。

環境の面について見ると,大気汚染は各分野における対策の進展によつて一部改善の兆しを見せてはいるが,全体としては依然として進行しており,大気汚染による公害被害救済認定者の数も増大している。水質汚濁も一部改善の傾向を示してはいるものの,依然として河川,湖沼,海洋において進行しており,生態系の異常化,レクリエーションや水源としての価値の減少,更には人体への障害などの原因となつている。また,都市開発に伴う緑の減少が見られ,道路開発などに伴った森林の破壊も問題とされている。

安全の面について見ると,交通事故による死亡者数は最近減少傾向にあるとはいえ,いまだに年間1万人以上に達しており,また,労働災害や産業災害による被害の発生も衰えを見せていない。更に,地震,豪雨などの自然災害も依然として国民を脅かしており,自然災害り災者数は昭和40〜47年で合計272万人に達している。これらの交通事故,労働災害,産業災害,自然災害等不慮の事故を死因とするものの全死因に占める割合は増大傾向にあり,昭和47年には約6%に達している。更に,上述の産業災害や自然災害は,工場の大型化,集中化や都市の過密化などの進行に伴つて,大きな二次的災害を発生させるおそれもある。

このほか,医療・保健,交通・輸送,廃棄物処理等の国民生活に密接な関連を持つ分野でも多くの個別的問題があるが,最近大きくクローズアップされてきているのは,それぞれの分野全体にかかわる次のような問題である。

医療・保健の面では,成人病の増大や老令化に伴う疾病構造の変化及び国民の健康に対する関心の高まりが医療需要を増大させるだけでなく質をも変化させているが,医師及びその補助者,医療施設等の医療資源が有効かつ適切にこれに対応できない状況にある。

交通・輸送の面では,大都市における通勤時の混雑やモータリゼーションの進行による道路交通の渋滞,輸送機関相互の有機的連絡の不備等により,時間の損失や肉体的・精神的疲労等の問題が生じている。

このほか,物的流通の円滑性の欠如は,物資の輸送コストの引下げ,鮮度の維持などへの障害の一因となつており,また,都市廃棄物の処理・処分体系の未整備などは,生活環境の悪化を招いている。

以上のような問題を解決するために,環境の保全,事故や災害からの安全の確保,医療,交通等に関する社会システムの充実など,様々な分野における国民生活の質の改善向上に役立つ科学技術の進歩発展が強く要請されている。


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