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第3部   政府の施策
第2章  政府機関等における研究活動
1  国立試験研究機関の研究活動
(2)  国立試験研究機関における研究成果


国立試験研究機関においては,国民の要請に応えて広範な分野にわたり研究を実施し,多くの成果を収めているが,以下,昭和46,47両年度を中心とした主要な研究成果について,その概要を述べる。

(1) 警察庁

〔血液,精液〕

血痕中における赤血球の形態変化を研究し,血痕付着時の推定に成功した。また,布片に付着した微量の精液斑から精子を見いだし,唾液斑等と区別して精液斑と確認することに成功した。

〔におい〕

試料空気中のにおい成分を液体窒素等で冷却捕集し濃縮する方法を開発した。次いで,濃縮された試料を加温気化してガスクロマトグラフ法により比較分析する方法の研究を行ない,数種の動物について同定に成功した。

〔重質油〕

ひき逃げ犯罪捜査等に関連して,重質油の鑑定を行なうことが必要であるが,ガスクロマトグラフ法等による微量重質油に関する系統的鑑定法の開発を進め,潤滑油類等一定の重質油の鑑定に成果を得た。

〔道路交通〕

道路網の有効な利用を図るためには,効果的な交通制御および面的な交通規制を行なう必要がある。このため,道路交通の実際を電子計算機中で再現するプログラムの開発を行なうとともに,航空観測による交通調査手法の開発を行なつた。

(2) 北海道開発庁

〔寒地土木〕

災害の防止に関しては,橋脚など河川構造物による局部洗梱に対する理論実験式の適応性を実証するとともに,斜面の崩壊・地すべり対策のため,地下水の排除工法を検討し,その設計への資料を得た。

橋梁部門では,閉じ断面げたの隔壁および対傾構の効果に関する実験研究を行ない,その設計指針を得た。寒冷地における農用地ならびに施設の整備に関しては,農地造成工法についての試験研究および特殊土壌地帯の農業用水路の実態調査を行ない,それぞれ設計,施工への資料を得た。北海道における港湾の設計・施工に関しては,越波による港内の静穏度変化について実態調査を行ない,設計資料を得た。土木材料ならびに施工の合理化に関しては,超早強ポルトランドセメントを用いたコンクリートの養生基準を作成した。また,生石灰パイルの軟弱地盤処理工法への適応性を確認するとともに,深い基礎に適用される鋼管セル型ウエル基礎の各種振動実験を行ない,実用設計への資料を得た。

(3) 科学技術庁

〔航空〕

VTOL機については,遷移飛行の研究を行ない,所要のデータを得た。

航空機の安全性については,自動着陸に関する研究を行ない,縦方向の自動着陸系を構成しうる段階に達した。ジェットエンジンについては,内部冷却式高温タービンの研究を行ない,1,175°Cの実機高温試験に成功した。これらのほか,エンジンの制御および低騒音化に関する研究を行ない,有用なデータを得た。エンジンに関する諸研究は,通商産業省の大型プロジエクト制度による航空機用ジェットエンジンの開発に貢献している。

〔宇宙〕

固体ロケットについては,スピン(回転)時の影響を取り除くための研究および必要に応じて着火,消火を反覆しうる体ロケットの研究を行ない,所期の成果を得た。液体ロケットについては,液体酸素ロケットエンジンの各要素(燃焼器,ポンプ等)の試験研究を行ない,成果を得た。また,誘導用検出器(センサ)については,デジタル零位方式積分ジャイロ系の研究および加速度計の研究を行ない,検出精度向上に成功した。

〔金属材料〕

従来の鉛快削鋼に比較して高速度切削性にすぐれ,かつ,鉛を使用しないので公害防止上有利なチタン快削鋼を開発した。また,機械的強さの標準データを提供するため,所要の試験研究を行ない,データシート第1集を刊行した。このほか,非鉄金属の連続直接電解製錬法,水中溶接法などの研究について多くの成果を得た。

〔放射線医学〕

速中性子線による悪性腫瘍の治療に関しては,速中性子線線量分布等の測定に必要な測定器の開発,生物学的な線量効果比の算定に関する研究および医療用サイクロトロンの運転に関する安全管理の調査研究を行ない,多くの成果を収めた。

また,放射線による万一の被ばく事故に対処するため,造血器(骨ずい)移植に関して,移植のさいに起こる拒絶反応機構の解明,移植後に起こる続発症の病理形態学的解明,造血細胞の形態および機能の解明を行なうとともに,採取方法,保存方法の研究などの調査研究を行ない,成果を収めた。

〔防災〕

地震に関する研究では,地震予知の一環として微小地震計測装置を製作した。また,大型耐震実験施設により,堤防,球型タンク等の振動実験を行ない,耐震設計のためのデータを得た。さらに地殼変動および地震に関する基礎研究として,過去百万年間におけるわが国の断層と地殼の活動や地震活動について調査研究を行ない,地震による沈降隆起の推定,地震予知および地形地質変動の読みとりのための資料を得た。気象調節に関しては,よう化銀の雲中種まき実験,雷雲の観測等を行ない,雲の細かな構造についてデータを得た。また,雷雲発生時の高層気象状態を解析し,雷雲や降ひようの予報について精度向上の見通しを得た。

都市雪害防止に関しては,街路用除雪機械の開発を進めているが,取扱いの便利な油圧式実験車とたて軸二段式集雪装置を開発した。また,屋根雪消雪のため,集中暖房用石油ボイラーの温水を自動的に循環させて消雪を行なう方法を開発した。

〔無機材料〕

窒化アルミニウム(AIN)に関する研究については,電子部品の構成要素として将来性のあるち密で絶縁性の高い薄膜の製作に成功した。

また,炭素に関する研究では,ダイヤモンドについて,従来よりも低い圧力,低い温度下における無触媒合成の可能性を明らかにした。さらに,電子材料,耐熱材料として期待されている酸化ジルコニウムについては,大型単結晶の無公害新合成法を開発した。

これらのほか,酸化ニオブ,カルコゲンガラスなどの研究分野についても成果を収めた。

(4) 法務省

〔防犯等〕

自動車事故事件を対象に,量刑の数量化に関する研究を行ない,また,精神病質少年非行者について,異常人格像の変化を精神病理学的に調査するなどの調査研究を行ない,おのおの基礎的資料を得た。

(5) 大蔵省

〔銀行券,郵便切手,諸証券印刷〕

銀行券の偽造防止に関して,地模様と主模様の両模様を高精度に刷り合わせできるドライオフセット凹版輪転印刷機を開発した。また,最近の電子写真によるカラーコピー法の発達が銀行券偽造に与える影響を調査し,偽造防止技術の高度化を図る種々の資料を得た。

印刷技術に関しては,世界で初めての階調凹版印刷技法を考案し,郵便切手等において実用化した。

製紙技術に関しては,すき入れ技術の高度化を図る研究を行ない,好結果を得た。

〔醸造〕

清酒製造場排水において汚濁の95%を占める洗米廃水に対処するため,ポリ塩化アルミニウム,ポリアクリルアマイドおよび塩化第2鉄を使用する簡便な凝集沈澱処理法を開発した。汚濁除去率は98%である。

清酒の新らしい防腐剤としてラウリル酸とバリン(アミノ酸の一種)の化合物を見いだした。

清酒醸造の過程を研究し,Cu,Zn,MnなどがFeとともに最も重要な作用をしていることを確認した。

蒸溜酒の優良品をつくるため,熟成機構を研究し,熟成香の本体と思われる物質(ケルカスラクトン)を分離証明した。

泡盛の醸造原料として外地砕米と内地古米の適性を比較した結果,外地砕米が大変特色のある製品をつくりだすことを認めた。

(6) 文部省

〔緯度観測〕

地球自転運動の変動について観測および研究を行なつた。極運動について,その主要項であるチャンドラーおよび年周項の変動が主としてその構成要素の物理的経過によつて支配されていることを確認した。またチャンドラー項の振幅変動は地表面のエネルギー放出により説明しうるものであることを確認した。これとともに,地球回転運動と地球表面現象との相関を統計的解析により研究し,最近強調されている準二年間の気象現象およびその他の地球物理現象と極運動の未解決項との間の有意な相関を認めた。天文観測の高精度化のため,電磁型レベルの改良等機器の開発や改良を行なつた。

(7) 厚生省

〔病原の究明〕

う蝕性連鎖球菌の産生する菌体外多糖はう歯誘発と関係があるが,この多糖を分析,精製し,過ヨード酸酸化,赤外吸収などの方法により,その構成の大要を明らかにした。

また,急性出血性結膜炎の病原体として,AHCウィルス(仮称)を同定した。

〔予防法の開発等〕

風しんワクチンの開発を進め,試作したワクチンについて,その生物学的性状の検討,野外接種による効果の解明および安全性の検討を行なつた。また,新しいはぶトキソイドを奄美大島において希望者に接種したが,ほとんど副作用のないことを確認した。これにより「はぶトキソイド基準」が定められ,はぶ咬傷に対する予防接種の道が開かれた。さらに,動脈硬化性疾患を食生活の改善により予防,治療するための脱コレステロール食品の開発を行なつた。このほか,医薬品,化粧品の微生物汚染への対策を確立するため,汚染の実態調査および試験法の研究を行ない,成果を収めた。

〔がん〕

肝がんと難治性肝炎,肝硬変との関連およびオーストラリア抗原との関連を研究した。その結果,肝がんとオーストラリア抗原との密接な関連性を認め,また,オーストラリア抗原の除去方法を確立し,難治性肝炎の発生防止に資した。また,がんに有効な新抗生物質の探索を行なつた。その結果,若干数のものを発見し,その精製方法の研究を進めた。さらに,がん化因子が胎児期あるいは乳児期に母体を通じて与えられるか否かについて動物実験により研究を行なつた。その結果,ラットの場合,がん原性物質が胎盤を通過して,あるいは乳汁を介して子に腫瘍を発生させること,成体における場合とは標的臓器が異なることおよび潜伏期の著しく短縮されることが認められた。

〔らい〕

らいの予防,診断および治療に大きな役割を果たすことが期待されるらい菌の培養について,その実現を目途として研究を進めた。現在,らい菌の動物移植は困難であるが,一定の条件下ではマウスにおいて菌の増殖することを確認した。また,らい菌の物質利用の仕方,培養可能抗酸菌との酵素系の相違などの諸点の解明を行なつた。

〔生活条件と健康〕

都市と農村における住民を対比しつつ環境条件との関連において健康阻害因子と増進因子とを検討し,また,居住する多数世帯全員について健康度調査を実施して都市および農村における最適健康生活条件の解明を図り,成果を得た。

〔精神衛生〕

都市への人口集中化等に件う環境条件の変化がストレッサーとして住民の精神衛生にどのような影響を与えているかを解明するため,社会的緊張をもたらすストレッサー等に関する実態調査を行ない,過密化による影響の概念を明らかにするとともに,地域特性を明らかにし,住民の精神衛生を阻害する因子を解明した。このほか,治療可能な代謝異常性精神薄弱の早期発見のため,フェニールケトン尿症等に対する新生児期スクリーニング法の開発を行なつた。また,仮死分娩による脳発達障害の予防に資するため,動物実験による研究を行ない,その結果,脳たん白質合成が妨げられることを認め,その機序の分析を進めた。

〔保健医療サービス〕

わが国としては先進的な運営を行なつているリハビリテーション施設を対象にその運営システムや機能訓練等に関する調査・分析を行ない,リハビリテーション施設の建築計画指標を明らかにした。また,病院等について,各種死亡率や患者数など病床量決定に関する要因について分析を行なつた。

(8) 農林省

〔畜産〕

最近の養豚経営における大型種の増加に対応して,大型肉豚に適した飼料給与基準を作成した。畜産公害に関連して,乳牛に使用する自然流下式ふん尿溝の望ましい構造を明らかにした。

近年肉牛に多発する尿石症に対して,野外での臨床検査に応用できる簡易診断法を開発した。さらに,アナプラズマ病について,本病に特異性の高い診断液(補体統合反応用抗原)を開発した。

〔園芸〕

キャベツ類,イチゴ等でやく培養による植物体の育成に成功したが,これによりイチゴのウイルスフリー株の育成方法を簡単なものとした。

トマトのい凋病抵抗性台木やフザリウムおよびタバコモザイクウイルスによる病害に抵抗性を持つトマトを育成した。

このほか,フリージアの開花抑制とユリの種子繁殖の実用化および害虫防除のための天敵微生物活用の研究を行ない,成果を収めた。

〔水稲〕

透水性が小さく,排水の悪い重粘土水田地帯を対象として,暗きょや心土破砕等の工学的方法および水管理による土壌改良法に関して,実施上の技術的条件を解明した。また,いもち菌の生産する生理活性物質とその類縁化合物を抽出単離し,これらがいもち病に対し防除効果を持つことを明らかにした。

〔蚕糸〕

人工飼料による大量飼育について共同研究を行ない,大量飼育の場合に問題となつていた飼料の腐敗防止,飼料組成の改良,飼料効率の改善などについて成果を得た。

また,稚蚕飼育の省力化のため,らせん循環式稚蚕飼育装置の開発および繭検定のため,新型自動繰糸機の試作をそれぞれ行なつた。

〔流通〕

放射線利用によるばれいしょの発芽抑制について,照射時期等諸条件の解明を行なつた。

〔林業〕

大気汚染については,80種の樹木の亜硫酸ガスに対する耐性を解明した。

また,4か所の試験流域における水文資料の解析により森林伐採と洪水流量や年間総流量等との関係を明らかにした。

除草剤散布の影響については,適切な塩素酸ソーダ散布では裸地化は起こらず,鳥獣や魚類に対しても悪影響のないことを明らかにした。

関東以西において広範囲に発生しているマツ類の枯損について,マツノザイセンチュウがその主要な原因であり,マツノマダラカミキリの成虫によつて伝ぱすることを明らかにした。

〔水産〕

漁具漁法分野では,夜間,海底を離れて浮上する中層トロール網用新型オッターボードおよび底びき網漁業における漁獲物鮮度保持のためのFRP製船内小型コンテナー(保冷式)を開発した。

増養殖分野では,エゾアワビの増殖について,水温管理による周年産卵の技術を開発した。

また,水産庁調査船「開洋丸」によつて,アフリカ大西洋沿岸海域における漁業生産力および同海域の主要魚種についての網目選択性に関する調査研究を行ない,成果を収めた。

(9) 通商産業省

〔機械工業のシステム化〕

データ通信適応制御マシニングセンター加エシステムの開発を行ない,日本電信電話公社専用回線によるオンライン実験を実施した結果,実用化の見通しを得た。また,オンライン適応制御旋盤の改良を行なつた。

〔標準の確立〕

物理定数の研究については,安定化レーザー装置の改良を行なつたが,パワースペクトルにより安定度を試験した結果,2桁以上の精度向上を認めた。

〔安全工学〕

自動車走行の安全性については,簡易型高速自動車シミュレーターと特殊環境模擬装置の組合わせによる実験に成果を収めた。

ロボット自動車については,方向制御のため,コースずれ検出装置を製作し,テストコースに設置して実車走行実験を行ない,所要のデータを得た。

このほか, FRPボデー車と金属ボデー車との衝突実験を実施し,データの解析を行なつた。

〔公害防止〕

窒素酸化物については,所要の研究を行ない,空気比1.05でその生成が最高となり,また都市ガス,メタン,軽油,重油の順にその生成が多くなることを明らかにした。

汚染物質の拡散については,風胴実験,水槽試験,現地調査等を行ない,産業公害総合事前調査に対し,データを提供した。

産業排水処理については,泡末分離法,電気透析法等により工場排水に含まれる溶存物を分離・除去して排水を工業用水化する方法につき,実用化の見通しを得た。また,排水中の微量重金属について,原子吸光法による分析技術を確立した。スラッジ処理については,各種スラッジを遠心脱水法により脱水した結果,ほぼ完全に脱水されることが判明し,本方法は有効な処理方法であることを認めた。

〔触媒技術〕

触媒の構造と物性については,コバルト・モリブデン・アルミナ触媒の細孔容積と脱硫活性との関係を解明し,また,金属カルボニル錯体触媒を用いたカルボソ酸エステル合成法の研究を行ない,さらに,NOxの除去に用いられる酸化物担持触媒の研究を行なつた。

触媒反応の部分では,新プロセスによるO-フェニールメタノール合成触媒の研究,過酢酸を中心とした過酸の製造における接触酸化反応の実用化,新触媒によるフェノールとメタノールからの2・6キシレノール合成法の実用化ならびに重油の直接脱硫のための触媒および反応装置に関する研究を行ない,多くの成果を収めた。

〔高分子工学〕

新機能をもった高分子材料の創出を目途として,選択的に金属を結合させる官能基をもつキレート性あるいはイオン交換性高分子材料に関する研究を行ない,基礎的資料を得た。

既存の合成樹脂の改良,適正利用については,高分子の理想的な極限強度を出すために,高圧下における結晶化を試み,極限構造高分子材料合成のデータを得,これをもとに新紡糸法を開発した。

光崩壊型高分子の研究については,抗酸化性成分を導入し,崩壊性成分とのバランスを図ることにより,寿命の設定が可能なことを認めた。

〔電子〕

電子部品材料についてば,新磁気バブル,半導体不揮発性メモリ,強誘電体を用いたアナログメモリ等コンピュータ用メモリの開発を行なつた。情報処理については,知能ロボットの研究,神経細胞にシミュレートした学習モデルの開発,人工知能の一手段とみなされる拡張閾値論システムの開発等人工知能の研究を行ない,多数の成果を収めた。

〔新材料〕

新しい工業材料開発のため,高強度,育弾性率を持つ炭素系複合材料の製造条件についての研究を行ない,品質向上,コストダウン等の成果を得た。

また,金属含浸炭素複合材料では,軸受用材料,耐海水用摺動材料等の実用化のための研究を行ない,データを得た。

〔産業保安〕

火薬類の爆発災害防止については,野外爆発実験を実施し,データを得た。また,可燃性ガスの爆発防止については, LPG大型模型タンクの耐震性能試験等を行ない,保安基準作成のための資料を得た。

〔住宅関連〕

けい酸カルシウム等の無機充てん材を配合した強化ポリ塩化ビニル発泡体について,連続製造技術の開発を行ない,また,シラスバルーン・アルミ系複合板の開発を行なつた。

〔消費科学〕

塗膜,メッキ膜,接着剤等を対象として屋外ばく露下における劣化および腐食の進捗状況を解析し,その支配的因子を求め,所要の試験装置の開発に貢献した。

〔微生物工学技術〕

微生物に含まれるたん白の食糧化については,天然ガスの主成分であるメタンガスを炭素源として利用する細菌を自然界より分離し,その中から大量培養に適する細菌を選択した。また,ガス体を原料とするため,これに適した加圧培養装置を開発したが,その結果,菌体の生産速度を大気圧下での倍とし,菌体濃度の高密度化を可能とした。

〔宇宙開発〕

ロケットとう載用分光装置,高速高荷重歯車および位置測量用スーパーシュミットカメラの試作を行なつた。また,宇宙機器用電子部品の信頼性確保のため,加速寿命試験および放射線照射試験を行ない,基礎データを得た。

さらに,人工衛星用推進機制御技術の開発,プラズマロケットの真空内における性能試験および超真空下における物性研究を行ない,成果を収めた。

〔海洋開発〕

海底地下資源賦存の可能性を把握しようとする日本周辺海域地質構造総合研究については,野外における調査研究を終了し,200万分の1海底地質図作成に着手した。第三系たい積盆地形成機構については,石油・天然ガスを胚胎するしゅう曲構造の形成と発展過程などを解明し,「本邦油田第三系の構造地質学的研究」として公表することとしている。陸棚海域地下資源について,その賦存把握に資するため,陸棚海域の地球物理学的構造図の作成を行なつた。

海底地質調査技術については,海底の一部に露岩が分布し,かつ支持基盤が深いと予想される海底下地質につき,調査技術の開発を行なつた。

(10) 運輸省

〔船舶〕

大型コンテナ船の建造に欠くことのできない多軸化や船体構造材に関する研究開発を行なつた。その結果,多軸船型は一軸船型よりも個々のプロペラの荷重度を軽減できるので効率およびプロペラのキャビテーション性能を改善できることおよび2軸より3軸によるものがすぐれた性能をもつことを明らかにした。また,船体まわりのポテンシャル流を求める簡易計算法,プロペラ起振力のベアリング・ホースの計算法,定常のプロペラの性能を理論計算によつて求める方法および船体構造材として使用される高張力鋼の最終強度値を推定する方法を開発した。

〔港湾〕

東京湾における海水交換および大阪湾内の大規模埋立地が海水交換に及ぼす影響に関する大型水工実験を行なつた。東京湾については,湾内に流入する汚水の潮流による拡散現象特性ならびにそれに対する沿岸埋立地や湾口の影響を,大阪湾については,紀伊水道,明石海峡から潮汐現象を与えて新関酉空港等の大規模埋立が潮流および流出入汚水の拡散に及ぼす影響を,それぞれ研究した。これらの結果から新関西空港埋立に伴う沿岸各地の波浪諸元の変化を予測する計算方法および東京湾ロシーバース計画に関連して台風による沿岸の波浪状態の推定方法を開発した。

港湾施設の耐震性については,強震の観測値を使用して,けい船岸,海岸堤防および地中構造物の耐震設計に関する研究を行ない,所要の資料を得た。

〔安全対策〕

船舶については,液化メタン運搬船の実用化に伴い,その安全性を確保するため,運搬船特有の超低温防熱タンクの保温構造に関する問題および液化ガスの水面上への流出・拡散・気化に関する問題の解明を行なうとともに,防熱材の超低温域における諸特性の研究を推進した。その結果,防熱材としてグラスウールをクッション材に使用し,硬質ウレタンフォームを超低温側に使用する方式が有効であることを明らかにした。また,各種防熱材の諸特性および硬質ウレタンフォームの接着強度を明らかにした。

航空機については,新東京国際空港に設置した着陸事故防止ローカライザシステムにつき評価試験を行なうとともに,将来の航空の要求に備えるため,マイクロ波ILSおよびエリアナビゲーション方式に関する基礎研究を行ない,成果を収めた。

自動車については,車両欠陥の発生防止,高速走行時の安全性確保,灯火の性能向上およびげん惑防止に関する研究等を行ない,車両構造の安全性・耐久性評価手法の確立,追突防止に必要なブレーキ要件の究明および制動特性の評価方法ならびに後部灯火の静的有効性について資料を得た。

〔気象・自然災害の防止〕

東京,大阪等の大都市における大気汚染の発生を予知するため,最近5か年間の地上観測資料,高層観測資料を使用し,関東地方をモデル対象として局地気象と大気の大規模運動との関係を調べ,24時間先までを予測する統計的シミュレーションプログラムの研究を行ない,成果を収めた。

地震予知については,電子計算機により地震計からのデータを自動解析する各種プログラムの開発,改良を行なつた。その結果,P波発震時に関しては,人手による精度またはそれ以上の精度で観測できる見通しがついた。

地球大気開発計画(GARP)に基づく総合研究では,大気大循環の数値モデルの開発,大気境界層の構造および雲・エーロゾルの放射効果の解明を骨子とした研究を推進し,資料を得た。

自動車排気ガスについては,排気ガス清浄装置に関する研究,自動車排気ガスの測定法ならびに評価試験方法に関する研究を行なつた。このなかで,排気ガス清浄装置の機能劣化要因を解明するとともに, 一酸化炭素,炭化水素の減少と窒素酸化物の増加の関係および微小粒子の排出機構を究明した。

またディーゼル機関の排出ガス測定法および排出ガスの重量評価に関する実験を行ない,所要のデータを得た。

〔原子力船〕

原子力船内におけるガンマ線線量率分布の予測を行なう従来よりも高精度かつ簡易な計算式を開発した。また,アイソトープを用いた原子炉圧力容器溶接部分の非破壊検査に関し,必要な資料を得た。

さらに,舶用軽水炉の小型化のため,自己加圧に関する模擬実験および内装型蒸気発生器の熱特性に関する解析を行ない,一体型舶用炉の熱的動特性を解明した。

〔宇宙開発〕

静止気象衛星については,その熱設計および三軸安定方式姿勢制御に関する調査を行ない,その成果等をもととして放射計やセンサ等の開発に着手した。

航行衛星については,米航行衛星システム(NNSS)の利用研究を中心に, NNSSの測位精度および衛星信号の受信時間の予測とその精度に関する研究を行なつた。その結果,高い精度を保ちうることを認めた。

衛星航法システムについては,将来の衛星航法の精度に関するシミュレーション研究を行ない,衛星の位置の誤差計算法およびその評価方法を開発した。

〔海洋開発〕

海洋構造物については,箱型作業台船の大型模型を製作し,静的実験および強制動揺実験を行なつて,その流体力学に関する資料を得た。

埋立および地盤改良については,軟弱な粘性土の自重圧密による乾燥の効果と経過時間との関係を模型槽実験により解明した。また,軟弱地盤の力学的安定工法開発のため,サンドパイルの適正粒度を決定する実験を行ない,海洋構造物の基礎工事に有益な資料を提供した。

岩盤しゅんせつについては,電磁波による岩盤破砕の研究に着手し,岩石の電磁波吸収特性および破砕特性等のデータを得た。

(11) 郵政省

〔人工衛星〕

電離層観測衛星の製作に関し,とう載用プラズマ・中性大気組成測定器のエンジニアリング・モデル(EM)のチェンパテストを行ない,プロトタイプモデルの仕様を確定した。

通信衛星関係では,3種のミリ波中継器(EM)を完成し,さらに,第2段階EMの試作を進めた。また,中継器の試作とともに,多周波共用機械式デスパンアンテナ2種の試作,ミリ波伝搬実験用の衛星とう載用発振器等の開発を行なつた。

〔宇宙通信〕

将来における電離層観測衛星の運用に備え,国際協力により行なわれている電離層観測衛星のデータ取得に必要な施設を完成し,47年9月,わが国として初の外国衛星に対するコマンドを行ない,成功した。

衛星通信方式の研究では,周波数拡散多元接続(SSRA)通信実験をA TS-1号衛星を利用して行ない,回線設計,信号品質等に関する基礎的データを得た。

〔海中情報伝送〕

海中情報伝送にすぐれた特性を持つ緑色レーザーに関して,その伝搬特性を明らかにするため,濁度をパラメータとした各種水中伝搬実験を行ない,散乱光成分を含んだ伝搬特性について基礎的データを得た。

また,海中居住等の高圧ヘリウム環境下で発されたヘリウム音声の簡易復元装置の製作を行ない,良好な結果を得た。

〔周波数および時刻標準〕標準周波数および時刻の精密供給手段としてTV電波の利用研究を進め,2地点で同時受信した同期パルスを仲介して時間間隔を測定し,2台のセシウム時計の時刻差を0.2マイクロセカンドの精度で比較できる見通しを得た。

また,中継されたカラー・サブキャリアにより,周波数(位相)測定を行ない,従来の長波やロランCを利用する方法に比べ,短時間で1〜2桁良好な精度を得た。

(12) 労働省

〔産業安全〕

機械的災害については,研削作業の安全のため,ビトリファイドといしの疲れ強さを解明し,また,金属の破壊原因の究明のため,疲れ破面のストリエーションを解析し,さらに安全帽改良のため,従来の試験方法の再検討により試験基準を作成した。

建設関係では,墜落防止用安全ネットの強度について試験研究を行ない,構造および使用の基準を定めた。

また,爆発火災については,脂肪族アルコール類の平均炭素鎖長と発火温度との関係および高圧過剰酸素中のプラスチックや布の燃焼危険性について解明を行なつた。

電気関係では,高圧治療室や海底作業基地の安全化のため,高圧の酸素・窒素混合ガス中の絶縁電線の発火危険性を究明した。また,静電気による爆発火災の防止のため,導電性繊維を用いた除電器を開発した。

〔労働衛生〕

カドミウムの有害性については,生体内にあつてカドミウムをほそくすると考えられるたん白について研究を進め,動物に少量のカドミウムを与えた場合,速やかにそれが増加して,次に投与する大量のカドミウムの毒性を減弱させることを明らかにした。

また,慢性カドミウム中毒患者の尿中のいわゆる低分子たん白がどのようなたん白種からなつているかについて研究・し,データを得た。

職業がんについては,がん源であるβ-ナフチルアミン,ベンジジンおよびその可能性の考えられる芳香族炭化水素の定量法を確立した。

(13) 建設省

〔測量・地図〕

日本全国を対象とする基本的測地基準点のくり返し測量により,地殼活動に関する情報の収集解析を行ない,地震予知の実用化に資している。

また,地震の多発地帯である大陸棚(海底)についての地磁気永年変化観測装置を開発した。

さらに,地殼における微小変動について連続観測を南関東地区で実施した。一方,各種の海底建設工事に利用することを目的として海中測量用カメラを試作した。また,新たに水深50メートル以浅の沿岸海域を対象として開始された沿岸海域基礎調査を進め,海底地形図,海底土地条件図を作成中である。

〔都市計画・建築〕

都市計画に関する研究については,東京50キロ圏における居住者の生活行動調査に基づき,土地利用と交通体系との関連についての解析を行なつた。

都市防災に関する研究については,市街地火災,類焼安全距離に関する実態調査を行ない,空間の防災効果に関するデータを得た。

建築物の防災性向上に関する研究については,8階建量産住宅の実大模型実験による地震応答の測定および解析を行ない,その成果は日本住宅公団における高層量産住宅の標準設計に反映された。

〔土木〕

河川に関する研究では,河川改修工事および河川管理を合理的かつ能率的に行なうための研究や地震時の堤体内構造物および堤体の安定性についての研究を実施し,多くの成果を得た。また,有毒物の自動分析装置の開発などを行なつた。

海岸に関する研究では,海岸堤防について越波,波圧,根固め等の問題を,防砂突堤および離岸堤について配置効果等の問題および漂砂現象を含んだ時などの問題を,それぞれ解明し,海岸構造物の計画,設計を一層合理的なものにした。

下水道に関する研究では,下水道施設設計の研究,下水処理施設維持について経済性を高める研究およびより高い処理水質をうるための研究を行ない,多数の成果を収めた。

砂防に関する研究では,土砂流出の実態の把握,土石流阻止工法,斜面崩壊対策工法および地すべりの予知と対策工法の研究を行ない,所要の成果を得た。

ダムに関する研究では,利水,治水ダムに関する研究として,軟弱地質の力学的,透水的性質,処理工法等に関する研究を行ない,水資源の総合的開発に資した。

道路,橋梁,建設機械に関する分野では,道路について,道路交通の管理,安全対策および公害の防止に関する研究,軟弱路床上の路盤および舗装構造,すべり等の研究を行ない,また,橋梁について,上部構造,下部構造に関する研究,耐震設計法の開発等を行ない,さらに,使用ひん度の高い道路構造物を設計するための電子計算機器の開発等に関する研究を行なつた。

これらは総合的な交通体系の整備のために不可欠の課題であつて,東京湾および大阪湾の河口部,湾口部等に計画されている湾岸道路の建設をはじめとして,その成果が幅広く利用されている。

(14) 自治省

〔消防〕

大震時に予想される市街地の火災について,建物間隔による延焼度,延焼時の加熱環境,火焔の合流等延焼の諸特性を把握するため実大に近い規模で野外火災実験を行なうとともに,大震時の地上消防力減衰に備えて,ヘリコプターによる空中消火活動の可能性とその限界を究明するため所要の野外実験を行ない,これら両者の成果をふまえて具体的な大震時火災対策の研究を進め,成果を収めた。

一方,近年のビル火災における死者の増加にかんがみ,濃煙やガス発生の主因たる高分子物質の燃焼抑制作用について基礎的研究を進め,データをうるとともに,火災現場での避難者や消防隊員を対象とした軽量かつ長時間使用可能な高性能呼吸器の開発を行なつた。

このほか,油火災の消火には天然たん白系泡剤が使用されているが,これは老化性という欠点をもつているので,新たな合成系泡剤の開発を進め,有望と考えられる泡剤の試作を行なつた。


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