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第2部   科学技術活動の動向
第3章  ソフトサイエンスおよびテクノロジー・アセスメントの動向
1  ソフトサイエンス


ソフトサイエンスとは,現代社会における複雑な社会問題-環境問題,都市問題,交通問題等-を解明するために,最近発達した情報科学,行動科学,システム工学等を基礎とした総合的,科学的手法である。

わが国におけるソフトサイエンスの研究開発は,きわめて未発達の状態にあり,政府においても昭和46年度から総合研究開発調査に着手し,ようやく本格的なソフトサイエンスの振興にのりだしたところである。この調査研究は,経済企画庁,科学技術庁および通商産業省が共同で,

(1) 直面する政策課題を解明する政策指向型の総合的研究開発機構構想を推進するため,研究企画調整者および研究者の確保,研究開発に必要な環境条件,研究開発管理制度などに検討を加え,具体的な研究開発を通じて研究開発機構の設立準備のための調査を行なうこと,
(2) 海外における調査研究を通じて地域開発に関する科学的方法論の解明とその推進を図るため総合的研究開発機構のあり方について調査を行なうこと,
(3) ソフトサイエンス研究開発を振興するため,応用課題「日本型科学技術開発システムの基本設計」の実施を通じて多分野にわたる研究体制の整備,人材の養成,研究成果の蓄積を図ること,および
(4) 民間シンクタンクの活用および育成を図るため,新しい委託,発注方式,価格決定方式,研究管理方式,研究成果の評価方式等を確立することを目的とし実施しているもので,わが国における主要な民間研究機関(シンクタンク)に対する委託研究を中心として実施されており,今後とも継続される予定である (第2-16表)
第2-16表 昭和47年度総合研究開発調査


この調査とともに,環境問題,交通問題,都市問題などの解明のため,関係各省庁,地方公共団体,民間企業等においても,ソフトサイエンスを用いた研究開発が展開されつつあるが,経済社会および国民生活上の諸問題に関連する要求が急速に増大する見通しの強いことから,総合的な研究開発を機動的に実施できる研究開発体制の整備が不可欠となつている。したがつて,この体制の中核機関として,総合的な研究開発を行なう機構を官民共同で設立する準備が進められている。

この機構は民間シンクタンクの助成を図りつつ,総合的な研究開発を実施し,複雑な社会問題を解明することを目的としており,あわせて新しい要請に応える研究者,研究企画調整者の養成,研究開発情報の収集・整理,内外の研究開発機関との交流などを行なう予定である。

シンクタンクは,上述のように政府等からプロジェクトを受託して研究する機関として,わが国のソフトサイエンス研究開発に重要な役割を担うものであるが,シンクタンクにおける活動は近年かなり活発化してきたとはいえ,わが国ではこれまでこの分野の立遅れが著しかつたため,現在の研究活動,研究体制,研究人材はまだ不十分であり,今後複雑化する社会の諸問題に対処するためには強力にこの分野の研究開発の促進が図られる必要があろう。

昭和46年度に科学技術庁はわが国の研究機関を対象としてソフトサイエンスに対する意識を調査した。その結果によればソフトサイエンスが立ち遅れているかどうかの質問に対し,業種別には差異があるが,一般的には「諸外国との較差が非常に大きい」と答えた機関が44%に達し,「現在はそれほど大きくない」(35%)がそれに次いだ。また「現在はそれ程大きくないが将来は非常に大きくなる」が16%を占めているのに対し,「現在,将来とも非常に小さい」と答えたのはわずか2%にすぎなかつた (第2-30図) 。その原因については「関係者の意識や価値観の低さ」を46%の研究機関が指摘している。「研究者の不足」を指摘したものが21%,「教育制度の歪み」15%であつたが「研究費の不足」はわずか7%であつた(特定分野の結果は 第2-31, 2-32図)

第2-30図 ソフトサイエンス較差 全般

第2-31図 ソフトサイエンス較差 公害

第2-32図 ソフトサイエンス較差 都市開発

第2-33図 1機関当たり必要なソフトサイエンスの専門家の数の現状と将来

また,この調査でソフトサイエンス専門家の現在の実用数と5年後の必要数を予測したが,それによると,全業種平均では現在約30名が必要とされ,5年後には2.4倍の70名が必要になるものと考えられている(資本金100億円以上の企業及び国公立研究機関を対象)( 第2-33図 )。

一方,外国におけるソフトサイエンス分野の動向を見ると,米国では,従来から研究活動は活発で,既に大規模な研究機関が多数存在し,社会問題の解明等にあたつている。バッテル記念研究所,ランド・コーポレーション,スタンフォード研究所などが有名である。

英国では,大学に特別な研究ユニットを設置して長期的研究を進めるとともに,各省庁附属の研究所においてソフトサイエンスの推進を図るなどの施策を講じて社会問題解決のための研究開発を実施し,公害問題の解決などに多大な成果をあげている。西ドイツでは,連邦政府及び州政府が協力して,行政機構の再編成などを通じてソフトサイエンス研究開発の整備を行うとともに,民間研究機関へのプロジェクトの発注,資金の助成などを積極的に行い,環境問題,交通問題などへの対応策を推進している。このように各国とも,それぞれの国情に応じて,独自の研究開発を進めているといえよう。

また,現在解決が望まれている諸問題には国際的に取り組まなければならないものが多く,国際間の協力なしには推進できないものも多いので,ソフトサイエンス分野の研究開発を国際的シンクタンクを通じて実施しようとする動きが活発となつてきたが,昭和46年10月に国際応用システム分析研究所(International Institute for Applied Systems Analysis,IIASA)がウィーンに設立され,わが国を初めとして,アメリカ,ソ連など12か国が参加することとなり,今後,国際的視野に立つた研究活動が期待されている。


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