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第1部   希望にみちた社会をめざす科学技術
第3章  資源の有効利用に取り組む科学技術
第2節  資源の現状と技術開発の動向
5  木材資源



(1) 現状と問題点

森林資源は,木材生産,国土保全,水資源のかん養,レクリェーション,野生鳥獣の保護,炭酸ガス収支の確保,気候緩和等といつた多面的諸機能を有している。なかでも木材資源としての価値はきわめて高いものがあるが,また,最近は,環境汚染の進行,価値観の変化,多様化などによつて,木材生産以外の森林の持つ公益的機能も重要視されつつある。

FAO(国連食糧農業機構)によると,世界の森林の総面積は3,779百万haで,陸地の約30%弱を占めている。

この森林の林相は,約3分の1が針葉樹林であつて,主に北半球の温・亜寒帯地帯に分布しており,ソ連の45%,北米の36%で世界の針葉樹林の80%以上を占めている。これに対して広葉樹林は南米およびアフリカにその4分の3以上が存在している。

森林の総蓄積は2,378億m3 で,北米,南米,ソ連の3地域に多くの森林資源が存在している。

世界の木材需要の動向をみると,1950年代までは燃料としての木材利用が多かつたが,その後,パネル,紙・パルプ等の工業用材の需要が上昇した。

しかしながら,開発途上国においては,依然として燃料の占める比率が高い。

森林資源は,天然更新,人工造林等によつて再生可能な更新資源であることから,年成長量に相当する木材を伐採利用することによつて,量的な森林保続を図ることは可能である。しかしながら,将来世界的な人口増加や開発途上国における生活水準,文化水準の向上などによる木材需要の著しい増大が予想される上に,森林用地の農業,工業,居住用地としての土地利用による減少と,公益的利用のために積極的な木材利用が制限されることなどから世界の木材需給はますますひつ迫することが懸念されている。

わが国の森林面積は,2,522万haで国土の68%を占めている。わが国の森林資源の現況を示すと 第1-22表 のとおりであるが,木材資源としてばかりではなく,保安林,自然公園等多面的に利用されている。

第1-22表森林資源の現況

わが国の木材需要は, 第1-33図 に示すように近年の経済の発展とともに伸長を続けている。用途別には,需要の過半数を製材用材が占め,パルプ用材,合板用材が次いでいる。

第1-33図木材需要の用途別推移

パルプ用材の需要は,わが国の紙の生産量の著しい伸びに伴つて,40年以降年率10%に近い高い伸び率を続け,45年には用材需要の24%を占めるに至つている0また,合板は,加工技術水準の向上によつて,建築様式の多様化に即応し,建築部門における需要が著しく伸びている。

以上のように木材需要の増大は著しいが,その供給は主に輸入材によつて支えられ,輸入比率は昭和46年度には54.7%に達した。用途別では,合板用材のうち輸入材が95%を占め,最も需要の大きい製材用材においても過半を占めることとなつた。

輸入材を材種別にみると,最も多いのは南洋材で,全体の40%強を占め,次いで米材が30%弱,ソ連材が20%弱で,これら3大材種で全体の約90%に達している。


(2) 技術開発の動向

将来の増大する木材需要に対して,木材資源を安定的,長期的に確保するため,国内においては,資源の高度利用を図るとともに,資源の開発,資源の培養,代替資源の利用などの技術開発を進める必要がある。

(1) 資源高度利用技術

木材は従来,主として素材のまま利用されてきたが,最近では,加工技術の進歩,とくに接着剤の進歩により,合板,ファイバーボード,パーティクルボード,スライス板として高度利用を図る技術が定着している。

以下,資源高度利用技術を省資源化技術,再利用技術,未利用資源の資源化技術等に分けて述べる。

省資源化技術としては,製材部門においてX線,超音波による原木内部欠点の探知とコンピュータによる配材・木取り判断の技術開発が行なわれている。また,合板,ファイバーボードの表面化粧として,プラスチックや金属を複合加工する技術やアセチル化によつてプラスチックとの共重合をほどこす技術等の開発が行なわれている。

再利用技術としては,従来ファイバーボードの原料として林地残材,工場の残廃材が利用されていたが,さらに,木材以外の産業残廃材や都市廃棄物を再利用する技術の開発が行なわれている。

未利用資源の資源化技術としては,間伐材などの小径木の能率的な製材方式の開発,ラワン,ブナ,ナラ以外の未利用樹種による合板製造技術の開発,小径木,製材背板などの削片を粗解繊にし,パーティクルボードの原料にする技術の開発が行なわれている。

以上の資源高度利用技術のほか,防腐,防虫,防燃加工による製品の耐用年数の増加,性能の向上に関する技術がある。

(2) 資源代替技術

木材資源を代替するものとしては,鉄,アルミニウム,セメント,プラスチックなどがあげられるが,今後プラスチックの期待が大きい。われわれの日常生活をみても家具,什器などの一部において木材にとつてかわりつつある。これはプラスチックが,腐敗しない,加工が容易である,安価である,染色性がよい,一定の強度を有しているなど数々の利点を有しているためである。なかでも,プラスチックの低発泡成形品としての合成木材は,外観に木材模様が印刷でき,軽く,木質感もあるので,建材や家具に急速に使用されつつある。しかし,強度が劣るため,金属材料との組合わせにより強度をもたせる技術やプラスチック自体に剛性をもたせるためガラス繊維等の繊維状物質を入れる技術などの開発が行なわれている。

(3) 資源開発技術

木材資源の開発は,公益的機能との調和を図りつつ,地力維持,更新の確保により,資源保続に留意して行なわれなければならない。この意味において,とくにエゾマツ・トドマツ林,ブナ林については,天然更新を主とした天然林施業技術によつて,成長量の増大ならびに公益的機能の確保を図るよう,北海道,東北地方の一部において実験的試みがなされている。また,人工林についても従来の短伐期施業とをあわせ,より価値の高い木材の生産を目的として長伐期施業技術が取り入れられつつある。

伐出については,アメリカで行なわれているヘリコプタロッギングが一部実用化に至つており,また,カナダでのバルーンロッギングの日本への適用のための研究開発が行なわれつつある。

また,緩斜地での資源開発にあたつては,高密路網を新設することを軸とする生産技術の体系化が各地で行なわれている。

(4) 資源培養技術

木材資源の培養は自然環境の制約を強く受けることから,適地,適樹種,適品種を原則とした育種,種苗,更新,管理といつた個別の技術開発とその体系化が必要である。

育種,種苗においては,機械植えに適するポット育苗技術,育苗期間の短縮のための無床替技術,遺伝質のよい苗木を確保するためのサシ穂の貯蔵技術,発根促進技術の開発が行なわれている。

更新においては,省力化のためヘリコプタ利用による苗木運搬,施肥等の技術,機械造林技術,無公害除草剤の開発,マツ類などの天然更新の促進技術等の開発が行なわれている。

管理面においても,早期うつ閉による下刈りの省力技術,列状保育間伐技術,成木施肥技術等の開発が進められている。


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