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第1部   希望にみちた社会をめざす科学技術
第3章  資源の有効利用に取り組む科学技術
第2節  資源の現状と技術開発の動向
2  鉱物資源



(1) 現状と問題点

エネルギー消費量の大きな伸びとともに,鉱物資源の消費量もまた急速に伸びている。 第1-18表 は,わが国における主な鉱物資源の消費量の推移を示したものであるが,これによれば,年平均増加率はアルミニウムの22.7%を筆頭に鉛を除けば,いずれも10%以上の高い伸びを示している。

第1-18表 主な鉱物資源の消費量の変遷

この間の実質国民総生産の伸びが約11%であるから,資源の消費量はそれを上回つており,また世界的にみてもわが国はとびぬけて高い増加率を示している。

わが国では,これらの資源に恵まれていないため,その供給の大部分を海外資源に依存している。とくにアルミニウム,ニッケルは全面的に海外に依存している状況である。今後もこれら資源の消費量が増大することが予想されるので,ますます海外への依存度を高めていくことになろう。

一方,近年における技術革新は,新しい金属の利用と資源の代替を可能にしている。原子力発電分野におけるウラン,ジルコニウム,航空宇宙分野におけるチタン,電子機器分野におけるゲルマニウム,ガリウム,インジウム,イットリウム,その他特殊鋼原料としてタングステン,モリブデン,バナジウム,ニオブなど今まで工業用に利用されなかつた元素の需要が増大している。

しかし,これらの鉱物資源はいずれも世界的にみて偏在しており,かつ,これらの資源の不足や枯渇が近い将来の問題になろうとしている。

したがつて,わが国は国際協調により,これら資源の確保に努めるとともに,その有効利用を図る技術の開発を進めていく必要がある。

また,資源利用に伴う鉱公害問題も忘れてはならない。鉱物資源の採取,選鉱,製錬については,坑廃水,堆積物,廃坑などさまざまな鉱害の要因を抱えており,現にカドミウムなど重金属による人体被害,ぼた山の崩落,地盤沈下等の公害をひき起すに至つている。

以上のような鉱物資源利用上の問題を解決するために,科学技術の果たす役割はきわめて大きいので,以下に鉱物資源の有効利用に資する技術の動向を述べる。


(2) 技術開発の動向

(1) 省資源技術

資源の使用量を減少させることは,直ちに経済性の向上に結びつくため,従来からあらゆる分野で技術開発が進められてきた。

第1-31図 タンカーの積載重量と鋼材使用量

たとえば,タンカーの建造技術の進歩により積載重量当りの鋼材の使用量は, 第1-31図 にみるとおり大幅に減少している。これは設計技術の進歩により肥大船型の実用化が可能になつたことと,高張力鋼の開発により鋼材重量の軽減を図ることができたことなどの理由による。

また,製鉄産業においては,銑鉄をつくる際の石灰石やコークスなどの単位当り原材料使用量は年々少なくなつており,技術進歩の成果がみられる (第1-32図) 。とくにコークスの原料となる強粘結炭はほとんどを輸入にたよつているため,その意義は大きい。

第1-32図 銑鉄1トン生産するための原料 消費量の推移

このほか,コンピュータによる板取り技術の進歩,建築技術の進歩による鋼材使用量の減少,あるいは電子部品における真空管からトランジスタヘ,さらにICからLSIへと進歩することによる配線用銅線の使用量の減少など,資源利用の節約効果をあげている例は数多くある。

(2) 資源代替技術

(イ) 類似物質での代替 まず,電線における銅からアルミニウムへの代替がある。銅地金のうち70%は電線に使用されているが,銅資源はアルミニウム資源に比べて少ないこと,アルミニウムの価格は銅価格の半値であることなどから,アルミニウム電線による代替が進行している (第1-19表) 。アルミニウムには,導電率が銅の60%程度であり電線が太くならざるを得ないこと,強さが銅の半分であること,酸化しやすく接続部に絶縁性が生じやすいことなどの欠点があるものの,アメリカにおいてはすでに40%程度のアルミニウム化率を達成していることからみて,わが国においても,将来の超電導技術の開発などにより,アルミニウム化率が上昇するものとみられている。 しかし,アルミニウムの製錬には大量の電力を要するため,新たな製錬技術の開発が望まれている。 また,一般炭のコークス化技術がある。現在,製鉄用のコークス炭は粘結性の高い石炭からつくられているが,粘結炭の不足と一般炭の有効利用のため, 一般炭のコークス化技術が研究されている。わが国では成形炭を利用する方法が開発されつつあるが,これは石炭の繊維質部分の強度を人工的に成形化することによつて増大させるもので,最近ではその圧縮強さは7.8kg/cm2 から19.6kg./cm2 増大している。西ドイツでは,熱間成形を行なつて乾留する方法が開発されている。
第1-19表 電線需要部門別見通し


(ロ) 人工物質での代替 鋼材や鋳鉄などの金属材料の代替物質として顕著なものはプラスチックである。近年,金属材料に十分対抗できる機械的強度と耐久性を有するFRP(ガラス繊維強化プラスチック)が開発され,急速に置換しつつある。鋼板とFRPを同一剛性で比較すると 第1-20表 のとおりであり,鋼板をFRPに置き換えることによつて,重量は4割ほど軽減できることになる。
第1-20表同一剛性での比較

自動車について置換の状況をみると,その低廉性と軽量性から可能なところは,ほとんど置換されているといつてよい。現在,自動車1台当り15kgのプラスチックが使用され,全重量の2%程度となつている。

(3) 未利用資源の利用技術

鉱物に関する未利用資源としては,低品位であるため経済的に採算がとれない資源,探査・採掘技術の未発達により利用できない海底の資源およびあまりに希薄であるため利用されなかつた海水溶存資源をあげることができる。

これらの資源は,現在利用している資源が不足するにつれて,ますます重要になつていくものと思われる。そこでこれらの資源の利用について,その技術開発の動向を述べる。

(イ) 低品位鉱の製錬 利用技術の開発が進んでいるものに,低品位ニッケル鉱の製錬がある。わが国のニッケル消費量の伸びはアルミニウムとともにずばぬけて高く,最近5年間の年平均伸び率は26%にも達している。しかし,わが国で利用しているニッケル鉱はニューカレドニア島など一部に集中しており,採掘される鉱石の品位も年々低下して,現在2.6%程度にまでおちている。しかも,世界のニッケル鉱の大半を占める硫化鉱は枯渇する心配がでてきている。 したがつて,今後増大するニッケル需要を賄うためには,低品位鉱石とくに豊富に賦存しているラテライト鉱を対象とする製錬法の確立が急がれている。 低品位鉱は,電気炉法を改良した優先還元法によつて1.5%程度の鉱石まで処理することが可能である。 さらに,品位の低い鉱石を対象とする場合は,鉱石の前処理によつて品位をあげる方法や,湿式処理法などの技術を確立する必要がある。このため,セグリゲーション法,アンモニア抽出法,カーボニル法などの実用化に関する研究が世界の各地で行なわれている。 このほか,ハイシリカボーキサイトの利用技術も研究開発中である。
(ロ) 海底鉱物資源 海底の資源については,石油,天然ガス,石炭など主にエネルギー資源の開発を中心に行なわれてきた。しかし,近年,探査技術の進歩により海底には多種多量の鉱物資源が埋蔵されていることが確認されるにつれ,大規模な開発が進められようとしている。 とくに,深海底に存するマンガン団塊は,きわめて高品位のマンガンを含有しているほか,ニッケル,銅,コバルトなど多種の鉱物を含んでいるので今後の鉱物資源として有望視されている。しかし,水深3,000〜5,OOOmの深海底の表層に薄く存在しているので,その採掘技術が問題となつている。採掘技術は現在2つの方式の技術開発が進められており,1つは,バケットをつけたロープを連続して海底に循環させる連続バケット方式であり,もう1つは吸引力を利用したサクションポンプ方式である。また,製錬技術についても,多種の金属を含んでいるので,それに対応した方法の開発が進められている。
(ハ) 海水溶存資源 海水には地球に存するすべての元素が存在しているといわれている。しかし,その利用となると,食塩をはじめとしてマグネシウム,臭素,カリウムぐらいで,その他はほとんど利用されていない。海水からのウランの採取は,陸上ウランの枯渇が予想されるので注目されているものであるが,海水のウラン含有率が低いので,工業的に採取するまでには,今後多くの研究開発が必要とされている。

(4) 資源開発技術

資源開発技術は,資源を探査する技術とそれを実際に取り出す技術とに分けられる。探査技術のなかには物理探査技術,地化学探査技術,試錐探査技術などがある。物理探査技術では磁力探査法,地震探査法,重力探査法,電気探査法等があり,これらの方法は航空機,資源衛星等からの遠隔探査にも応用されている。

磁力探査は,はじめは磁鉄鉱などの高磁力鉱の探査などに利用されていたが,最近では,含油層の発見などにも用いられている。

地震探査法は,従前は海底に強力な爆薬を仕掛け,地震波をキャッチする方法であつたが,最近では一種の大型コンデンサの放電を利用したスパーカーにより波動を起こし,海底下の石油層や石炭層の探査を行なつている。

重力探査法は,地下埋蔵物の種類により重力が変化することを利用するもので,現在では微少な重力変化を測定できるような装置が種々開発されている。

電気探査法は,地下の埋蔵物の違いによつて,比抵抗値が違うことを利用するもので,現在は単に地下資源の発見のみならず,地下に敷設されているガス管や水道管の位置を発見することなどにも利用されている。

地化学探査技術は,主として地下水や河川水,土壌,草木,樹木などを化学分析し,地下資源の発見を行なう技術で,この技術が進歩するにつれ元素の微量分析法が種々開発され,現在ではこの微量分析の方法が排水中の微量金属の分析にも利用されている。

これらの探査法により,ある程度状況がつかめると試錐探査を行ない,資源の賦存状態を確認する。

地下資源の採掘技術についても,多くの技術が開発されている。たとえば,微生物を利用したバクテリア・リーチングがある。これはバクテリアを含む水を鉱石に注入し,銅を含む流出溶液として取り出し,精製する方法であり廃鉱となつた鉱山の再開発の可能性をもたらしている。対象になる鉱種としては,銅,ウランだけでなく,その他の金属についてもバクテリアの作用を受けるということが研究の結果明らかにされている。しかし,バクテリアが地下水,一般河川等へ流出した場合の影響と対策について,実用化に先だつて十分検討しておくことの必要性が指摘されている。

また,坑道を掘削する機械についても大型化,高能率化が進められており最近では断面積24m2 程度の坑道を1か月に300mも掘進できる機械が開発されている。

さらに,鉱石採掘に伴う事故が跡を断たないことから,採掘の安全性を確保するための研究も鋭意進められている。

(5) 環境対策技術

鉱山および製錬所の排煙,廃水,廃棄物などによつて生ずる大気,河川,土壌の汚染は,鉱害と呼ばれている。このうち最も問題となつているのは重金属による河川の水質汚濁,さらには土壌の汚染であり,これは主として坑内水や選鉱廃水の流出,鉱石や鉱さいの飛散と流出,製錬工程におけるダストや廃水などによつて引き起こされている。

鉱山や製錬工程における廃水処理方法としては,廃水に炭酸カルシウムや消石灰を投入し,含有イオンを水酸化物として沈澱させる方法が多く採用されている。この中和法に関しては沈降速度を早めるために凝集沈澱剤の添加や放射線照射法の併用などが試みられている。一般に廃水処理方法としては,中和法のほかに硫化法,還元法,酸化法,イオン交換法,活性炭吸着法,イオン浮選法,生物処理法などがあり,中心である中和法の補助手段として,水質に応じ組み合わせて採用されている。また,廃水処理の結果生ずるスラッジの無害化等の処理についても研究されており,有害成分の完全分離あるいはスラッジの固定化を図る方向で種々の技術が開発されつつある。

製錬工程におけるダストや排煙については,炉の型式を変更しあるいは炉を集約することによつて,飛散の防止や処理を高能率かつ確実に行なう技術の開発が進められている。

鉱物資源利用に伴う環境対策技術としては,以上のような発生源防止対策技術のほかに,鉱さいからの軽量骨材の製造,スラグからのガス吸着剤の製造,アルミニウム製錬の廃さいである赤泥からの顔料やセメントの製造など廃棄物資源化技術 (本節6参照) についても研究されており,これらを総合した有害物質の自然界への排出を極力少なくするクローズド・システムの完成をめざしている。


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