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第1部   希望にみちた社会をめざす科学技術
第3章  資源の有効利用に取り組む科学技術
第2節  資源の現状と技術開発の動向
1  エネルギー資源



(1) 現状と問題点

わが国の昭和46年度の一次エネルギー供給は, 第1-29図 のとおり3億2,061万kl(石油換算)で,その構成比率は 第1-30図 のとおり石油73.5%,石炭17.5%,水力6.7%,原子力0.6%,その他1.7%となつており,石油は一次エネルギー供給のほぼ4分の3を占めている。これを10年前と比較してみると, 一次エネルギー供給は1億0,801万klで,そのうち,石油は39.9%に過ぎなかつた。したがつて,この間における一次エネルギー供給の増加量2億1,260万klのうち,約90%にあたる1億9,267万klが石油によつて賄われてきた。

第1-29図 一次エネルギー供給量

第1-30図 一次エネルギー供給構成と輸入比率 の推移

このような石油中心の一次エネルギー供給パターンは,原子力の開発が進んでいるとはいえ,わが国のエネルギー資源の実情,世界のエネルギー需給動向からみて,早急に変るとは考えられない。したがつて,石油資源に恵まれないわが国のエネルギー資源の海外依存度は,昭和46年度の85%から今後さらに高まるものと見込まれる。

通商産業省の総合エネルギー調査会では,昭和60年度のエネルギー需要を現在のほぼ3倍にあたる9.3〜10.3億klと推定しており,そのうち石油はほぼ7億klと見込んでいる。しかしながら,エネルギー資源の供給は,石油資源の枯渇問題とからんで近い将来重大な問題になろうとしており,楽観は許されない状況にある。

現在のところ,われわれはあらゆる形でエネルギーを豊富に利用できる環境にある。また,エネルギー消費は,世界のあらゆる国でますます増大している。一般に1人当りのエネルギー消費量は先進国になるほど多く,また,産業構造が農業中心から工業中心へ,さらに工業中心のなかでも軽工業中心から重工業中心へと進むにつれて多くなる傾向にある。わが国はGNPが自由経済世界第2位であり,かつ重化学工業中心の産業構造であるため,単位面積当りのエネルギー消費量は,諸外国と比較してきわめて高い。このため,将来のエネルギー源確保の困難性とあわせて,石油消費の増大に伴ういおう酸化物等による大気汚染が大きな問題となつている。世界の石油資源のうちいおう分1%以下の低いおう原油は3割程度ともいわれ,わが国が消費している石油の大部分を占めている中東地域の石油はその9割が高いおう原油である。したがつて,わが国は低いおう石油への指向を強めるとともに脱硫技術の開発や原子力,天然ガスなどへの転換を図ることにより,汚染を生じないエネルギー源の確保に努める必要がある。

そのなかでも,原子力エネルギーは,資源の安定供給,環境の保全などの点で将来のエネルギー源として最も有望視されているので,その開発が鋭意進められている。

エネルギー資源には,このほか水力,石炭などがあるが,これらによるエネルギー供給量が今後大幅に増加することは考えられない。


(2) 技術開発の動向

エネルギー資源は再使用のきかない資源であるから,その利用技術の開発方向も,できるだけ消費量の少ないいわゆる利用効率の高い技術を開発することと,現在のエネルギー資源に代替する資源を開発することに重点を置かれるべきである。したがつて,その技術開発の動向を述べるとともに,資源開発技術,環境対策技術についても概観する。

(1) 利用効率向上のための技術開発利用効率向上のための技術開発は,経済性の向上を図るという意味において,これまで盛んに行なわれてきた。前述の火力発電所における発電プラントの熱効率の向上,送電損失の低下の例をまつまでもなく,あらゆる分野で努力がなされてきたため,現在ではほぼ限界に近づいている。このため既存技術の改良というより,今までとは全く異なる方法による技術開発が試みられている。 重油などを燃やして得られる2,800°C近くのプラズマを強い磁界へ高速で流して発電するMHD発電は,これまでの火力発電に比ベエネルギーの変換率が高く,従来の火力発電設備と合わせて利用すれば,熱効率は50〜60%にまで高められるものと期待されているが,プラズマに耐える材料の開発などまだ幾多の問題が残されている。 また,天然ガス等を直接電気エネルギーに変換する燃料電池は,燃料を燃焼させずに直接電気に変換するので変換効率が高く,大気汚染物質の排出量も少ないという特徴を有しているので,これの実用化のための研究開発が世界的に行なわれている。 このような電気エネルギーへの変換効率をあげることのほかに,総合的な熱利用効率の向上をめざす技術の研究開発も進められている。たとえば,熱エネルギーの発電への利用と工業用プロセス蒸気,地域暖冷房,海水淡水化等への利用とを組み合せ,総合熱利用効率を70〜80%まで上昇させようとする熱併給発電方式に関する研究開発が進められており,わが国においてもすでに一部の地域で実用化されている。
(2) 資源代替のための技術開発枯渇が心配される石油に代るエネルギー源としては,原子力が最も有望視されている。現在,原子力による発電が軌道にのりつつあり,通商産業省の総合エネルギー調査会によれば,昭和46年ではエネルギー供給に占める原子力発電の割合は0.6郊に過ぎないが,60年にはほぼ10%を占めるようになると推定されている。現在,稼動している原子力発電所は,大部分軽水炉型であり,当分は軽水炉を中心として原子力発電が推進されるものと思われる。 軽水炉型はすでに技術的に実用性が実証されており,発電原価も火力発電と競合できるものとなりつつある。 しかしながら,軽水炉はウラン資源の有効利用の点で十分なものとはいえず,また,将来にわたつて燃料の濃縮ウランを大量に安定して確保することは困難である。 このため,わが国では新型転換炉および高速増殖炉の開発が積極的に進められている。新型転換炉は1970年代後半に実用化することを目標に原型炉の建設が進められている。また,将来の動力炉の本命と期待されている高速増殖炉については,1980年代後半に実用化することを目標に実験炉の建設が進められるとともに,原型炉の建設に必要な研究開発が行なわれている。また,エネルギー問題を半永久的に解決するといわれる核融合についても鋭意研究開発が行なわれている。 一方,最近になつて再認識されようとしているエネルギー資源として,太陽エネルギー,地熱エネルギー,海洋エネルギーなど,自然界のエネルギーの利用がある。 地球上にふりそそぐ太陽エネルギーは莫大な量に達するが,そのエネルギーは受光面積1m3 当り約1KWという低いエネルギー密度であり,また,太陽エネルギーはそのものを貯蔵することが困難である。このことが長い間人類が太陽エネルギーを工学的に利用することを阻んできた最も大きな原因である。 太陽エネルギーの利用は,現在わが国では温水器,太陽電池等の形で行なわれており,太陽電池はすでに無人の灯台や無線中継基地で広く利用されている。また,太陽炉は2,000〜3,000°Cの高温領域における高温工学の分野での研究に威力を発揮しており,わが国はこの分野で国際的な水準にある。 将来の太陽エネルギーの有望な利用方法としては,選択吸収材(可視光線や近赤外線を吸収しやすく,かつ吸収した熱を放出しにくい吸熱材)を利用した太陽熱発電が注目されており,アメリカでは人工衛星を打ち上げ,宇宙で発電して地上ヘマイクロウェーブとして送電する1千万KWの太陽熱発電を実現しようと検討中である。 地熱エネルギーの利用については,現在イタリアで約39万KW,アメリカで30万KW,ニュージランドで19.2万KWの発電が行なわれており,わが国では松川(2万KW)と大岳(1.1万KW)の2発電所が操業中である。地熱資源としての利用可能エネルギーは,わが国では約2,000万KWといわれている。わが国における地熱発電がこれまで発展しなかつたのは,探査技術の開発が遅れていたためで,新技術開発事業団では岩手県の雫石地域で新しい探査技術,掘削技術を使つて地熱開発を進めている。将来大気汚染を伴わないエネルギー源として大いに期待されている。 海洋エネルギーの利用としては,波力発電,温度差発電,潮汐発電などが考えられるが,現在わが国では波力発電が浦賀水道で灯台用電源として実用化されている。波の持つエネルギーは,1,3mの波高で進行幅1m当り13KWといわれており,離島などの電源として数10KWの規模の発電について,現在研究が進められている。さらに,将来は1万KW級の波力発電の実現が考えられている。温度差発電としては,現在フランスの海岸エネルギー開発公団が開発した3,500KW2基がある。温度差の大きいわが国の南海においては,有望な地域があるが,まだ技術的に困難な点が多く,その開発が急がれている。潮汐発電は潮の干満差によつて発電するもので,現在フランスのランス発電所が24万KWの発電を行なつている。わが国では干満差の大きい有利な地点に恵まれず,潮汐エネルギーの利用はかなり困難と見られている。
(3) 資源開発技術資源開発技術とは,資源を探査する技術と資源を実際に取り出す技術の総称である。これらの技術開発の動向は次の「鉱物資源」の項にゆずり,ここでは最近とみに活発になつている海底の石油資源の掘削に関する技術開発の動向を述べる。 最近は海域における石油探鉱が増加しつつある。すでに全世界の埋蔵確認量のうち,2割は海域にあるといわれており,毎年海域部の埋蔵確認量は伸びている。これは陸上部の埋蔵確認量が探査技術の進歩によりほぼ確定してきたため,探査の主体が海域部に移つているからである。海底油田の掘削技術としては,すでに500mまで可能となつているが,世界の海底油田掘削井の98%以上は水深100m以浅で行なわれているのが現状である。 それは,100m以浅の油田開発コストが,それ以上の水深海域のそれに比し格段に安いためである。今後の技術開発の方向は,掘削コストの低減のための技術開発と大水深度における掘削技術の開発である。そのため,掘削自動化技術,軽量な掘削装置,大深度遠隔操作掘削装置などの開発が進められている。
(4) 環境対策技術エネルギー資源の利用に伴う環境汚染には燃焼ガスによる大気汚染,採掘による地盤沈下,輸送に伴う海洋汚染などがあるが,なかでも重油,ガソリンなどの燃焼に伴ういおう酸化物などによる大気汚染が大きな問題となつている。 わが国が消費している石油の約90%を占める中東産の石油は,そのほとんどがいおう分1%以上の高いおう原油であるため,脱硫技術を確立する必要に迫られている。 重油脱硫技術には間接法と直接法とがあり,わが国では昭和46年度末で,直接法は112,760バーレル/日(541,248kl/日),間接法は356,500バーレル/日(1,711,200kl/日)の設備が稼動している。 しかし,間接法は脱硫率が低いので,今後は効率のよい直接法の技術の確立が必要となる。通商産業省工業技術院は,大型プロジェクト制度によつて,この直接脱硫方式の技術の開発を行ない,今後,民間におけるその実用化が期待されている。 排煙脱硫技術には湿式法と乾式法とがある。これらの方法についてはすでに基本的技術が確立し,実用化段階に入りつつあるといえるが,今後さらに経済性,信頼性のある実用装置の開発が望まれている。通商産業省工業技術院は,大型プロジェクト制度によつて乾式法に属する活性炭法と活性酸化マンガン法の開発を45年に終了し,この技術を用いた実用化装置が東京電力鹿島発電所と中部電力四日市発電所で稼動している。なお,わが国の排煙脱硫の実用化の現状は 第1-17表 のとおりである。

第1-17表 わが国の排煙脱硫実用化の現状 昭和47年10月現在

最近脱硫技術として注目されるものに,重質油をガス化して脱硫する方法がある。 この重質油ガス化脱硫には,高い発熱量のガスを生成する方法と,低い発熱量のガスを生成する方法とがあり,前者は都市ガス,化学工業の原料として,後者は発電用燃料として研究開発が行なわれている。さらにアメリカ,西ドイツでは脱硫という目的も含めて石炭の加圧ガス化法について研究が進められており,すでに西ドイツでは,この方式による17万KWの発電設備が運転を開始している。

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