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第1部   希望にみちた社会をめざす科学技術
第3章  資源の有効利用に取り組む科学技術
第1節  資源利用と科学技術
2  資源の有限性と科学技術


自然は無限であり,“ただ”であるという考え方で経済活動が進められた結果,重要資源の不足や枯渇が表面化しはじめている。

エネルギー資源についてみると,アメリカをはじめとする大量消費国においてその将来にわたる確保がしばしば問題になつている。そのなかでも世界のエネルギー供給の半分以上を占める石油は,あと30年分ほどしかないといわれており,現在のように年率9%程度の需要増が今後も続くとすれば,さらにこの期間が短縮されることが予想され,今や最も枯渇が心配される資源であるといえよう。石油は今日,われわれの生活のあらゆる分野に結びついており,石油のない生活は考えられない。この石油資源の枯渇に対処するため,石油を可能なかぎり節約しながら使用する一方で,原子力開発や太陽熱,地熱の利用など新しいエネルギー源の開発を推進しなければならない。

また,本来,自己再生力のある水産資源も再成力を上回る漁獲によつて次第にその量が減少しており,シロナガスクジラなどのように種類によつては激減し,資源として利用できなくなつたものすらでてきている。循環可能な更新資源である木材資源においても,成長量を上回る伐採によつて資源の保続が懸念されている。さらに,工業化,都市化の進展によつて人間性喪失の問題が表面化している昨今,森林ひいては緑が人間にとつてますます重要視されつつあることから,森林のもつ意義をもう一度見直す時期にきているといえよう。

重要資源の不足や枯渇に関連するもう1つの大きな因子は,人口の増加である。人口の増加は,種々の資源の消費を増大させているが,とりわけ食糧資源の消費の増大に直結する。

今世紀にはいつてからの人口の増加率はきわめて高く,現在37億人といわれる人口は,21世紀初頭にはその2倍に達するだろうといわれている。現在すでに慢性的食糧不足に悩まされているアフリカ,アジア等の開発途上国の人口増加はとくに著しく,食糧資源の不足が世界的に大きな問題になろうとしている。われわれは地球上のスペースと資源は有限であることを認識し,人口問題へも配慮しつつ食糧生産技術の進歩発展を図つていかなければならない。

その他,主として都市においては水資源の確保が重要な問題となつている。生活の高度化,産業の巨大化,都市の膨脹に伴つて,水の使用量は著しく伸びており,もはや天然の河川水や地下水だけでは賄いきれないところまできている。

一方,重要資源の枯渇とともに重要な問題は,資源の大量消費に伴う環境汚染の問題である。自然は無限であるという考え方は廃棄物の浄化という面でも無限の能力があるという錯覚を生み,わが国においても経済成長を急いだ一時期には,不用なもの,経済的に採算の合わないものは自然界に捨てられることが多かつた。さらには黒々と勢いよく吐き出される煙は繁栄の象徴とみなされ,むしろ好ましいこととする考え方さえあつたことは否定できない。現実にそれらの廃棄物が少ないうちは,自然界は巧妙にそのサイクルのなかに飲み込んで,何ら不都合を生じさせなかつた。

しかし,資源利用の大量化,集中化が進行し,高密度経済社会を形成している今日においては,大都市地域を中心に廃棄物の量が自然の浄化力を上回る結果となり,各地で環境汚染の問題が表面化している。

このような資源や環境の有限性に根ざす問題は,狭く資源に乏しい国土に高密度経済社会を形成しているわが国においてとくに強く表面化している。

したがつて,大量生産一大量消費一大量廃棄というこれまでの経済活動を改め,資源や環境の有限性に配慮し,使い捨ての経済を反省し,産業構造についても知識集約型に移行していくことにより,資源を有効に利用し,環境を汚染しない経済活動へ転換を図る必要がある。

この新しい経済活動への転換を可能にするものこそが科学技術であり,この面での研究開発も活発に推進されつつある。

そこで,広範にわたる資源のなかでもとくに不足や枯渇が心配される重要な資源として,エネルギー資源,鉱物資源,水資源,食糧資源および木材資源を,さらに資源の節約と環境汚染の防止のための技術として,廃棄物の資源化技術をとりあげ,これらに関する現状と問題点および技術開発の動向を述べる。


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