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第1部   希望にみちた社会をめざす科学技術
第3章  資源の有効利用に取り組む科学技術
第1節  資源利用と科学技術
1  資源利用の拡大と科学技術


古来,人類は自然を天与の資源として利用してきた。自然の山野,海浜での狩猟,採取をはじめ,土器,石器や火の使用を通じて人類はその生存と種族の維持のため自然を利用してきた。さらに,冶金法の発見による銅や鉄の利用,石炭や石油の燃料としての利用,農耕技術の開発などにより資源の利用範囲を広め,自然の豊かな恵みを享受してきた。

その後,文明の発達に伴つて,人類が資源を利用する方法も変化し,一次利用から高度加工利用へと移行してきた。石炭は燃料から製鉄用の原料炭や各種化学製品等の原料へと利用が高度化しており,また石油は重要なエネルギー源としてだけでなく,石油化学工業の原料としても不可欠の存在となつている。鉱物資源をみても,最初は銅,鉄等の比較的冶金技術の簡単な金属のみが使われていたが,冶金技術の発達によつて各種の特性を有する合金をつくり出すとともに,利用可能な金属の種類も大幅に増えている。アルミニウム,ニッケルをはじめ,超硬合金のためのチタンや超電導材料に使われるニオブ,ジルコニウム等に至るまで金属元素のほとんどが利用されるようになつてきている。

また,木材は,以前は燃料,建材としての利用がほとんどであつたが,現在では,製紙用・化学繊維用のパルプ原料としての利用比率が大幅に増えている。

水は,以前は飲料水,かんがい用水としての利用が大部分であつたが,近年は都市化,工業化の進展に伴い,生活用水,工業用水の需要が大幅に増加してきている。

このような資源利用の拡大は,高度工業化社会を形成しているわが国においても大いに進められてきている。わが国は昔から国土が狭く,天然資源の乏しい国である。わが国の37万kmの面積は全地球の陸地面積の0.2%で,しかもそのうち主として国民生活の場となつている低地と台地は約30%にすぎない。この国土に世界人口の2.8%を占める約1億の人口を擁しているので,平地面積当りの人口密度は諸外国に比べ圧倒的に高くなつている。また,鉱物資源についても,わが国は標本室といわれるほど各種の鉱物を産出するが,海外の鉱山開発が進み安価に鉱石が入手できるようになつた現在では,わが国の鉱山は賦存量や質の点で産業として採算ベースにのるものが少なくなつてきた。わずかに石灰石と石炭が鉱物資源としては量に恵まれているものといえるが,その石炭も石油に押されて生産,利用が減退しつつある。

したがつて,わが国はエネルギー資源,鉱物資源あるいは木材資源を大量に海外から輸入して,経済規模の拡大を図つてきた。このため,これらの資源を利用する基幹産業は,いずれも臨海地帯に集中し,巨大なコンビナートを形成して,資源を安価に利用でき,不用なものを容易に廃棄できる経済効率の高い産業活動を展開してきた。

このようにして経済規模が拡大し,国民の生活水準が向上すると,消費性向も一般消費財から耐久消費財へと移行し,いわゆる資源の大量使用と大量消費,そして大量廃棄の時代を迎えている。

このような形態の経済成長を追求するために,科学技術は大いに利用され,科学技術もまた大きく進歩した。すなわち,科学技術は大型化,自動化,効率化などを可能にし,生産コストや流通コストの低下をもたらした。

石油の利用がそのよい例である。石油はわが国で利用するエネルギー資源の7割強を占めているが,国内ではほとんど産出しないため,中東をはじめとする海外資源に全面的に依存している。この石油については,1960年代の相次ぐ油田の発見により原油価格は最近までほとんど変動をみなかつた。また,タンカーの大型化が進み,20年くらい前には3万トンタンカーが標準船型であつたものが,現在では25〜30万トンタンカーが標準船型となつた結果 第1-25図 にみるとおり輸送費の大幅なコストダウンがもたらされた。

第1-25図 原油の輸送コストと船型の関係

石油を利用する火力発電は,現在では全電力供給の4分の3を占めているが,発電プラントの大型化による建設コストの低減や超臨界圧,再熱サイクルの採用による熱効率の向上等の技術開発が進められた結果,発電効率は大きく向上した (第1-26図) 。さらに,送電による電カロスは,超高圧・大容量送電技術の確立により大幅に減少してきた (第1-27図)

第1-26図 事業用発電所熱効率(発電端)の推移

第1-27図 送配電損失率

わが国の電灯料金は,諸物価の値上りにもかかわらず,ほとんど横ばいに推移しているが (第1-28図) ,これは以上のような石油の輸送や発電に関連する科学技術の進歩に負うところが大きい。

第1-28図電灯料金の推移

以上のように科学技術の発達は,資源利用を拡大し,大量生産,大量消費,大量廃棄という現在の経済システムの出現をもたらしたが,そこには,多くの解決すべき問題が残されている。


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