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第1部   希望にみちた社会をめざす科学技術
第2章  国民生活に密着した課題に取り組む科学技術
第3節  社会基盤の強化
1  国土開発の推進


(1) 現状と問題点

昭和30年代後半以降におけるわが国の急激な工業化は,国民所得の向上と都市化を推し進めてきたが,これらを反映してわが国の国土利用の状態も大きな変貌を遂げている。

まず,工業化等を反映して,わが国の土地利用は用途によつて変化を遂げていることである。すなわち, 第1-13表 においてみるように,ここ11年間で商工業用地や住宅用地が着実に伸長するとともに,一方では農業用地が減少しつつある。次いで,都市化を反映して,建築物の高層化が進行していることがあげられる。

第1-13表 国土利用の用途別面積および比重の推移

建築物の高層化は,都市における人間活動の高密度化という要求に対応するものであるが,わが国のそれは,4階以上の新築建築物の比重をとつてみた場合,ここ11年間で13.0%から22.6%へと伸びており (第1-22図) ,着実な高層化をうかがうことができる。

第1-22図 新築建築物中,4階以上のものの占める比率の推移

第1-23図 道路総延長および舗装率の推移

さらに,工業化や国民所得の向上を反映して道路の整備が図られたことである。工業化や国民所得の向上は,人員・物資の大量輸送を不可避とし,陸.海・空にわたる輸送網の整備を促してきた。このうち,道路の整備を取り上げてみれば, 第1-23図 においてみるように,道路総延長は比較的停滞的であるが,舗装率は,ここ10年間で道路全体では約6.3倍,道路輸送の主力である国・都道府県道では約4.4倍に達しており,道路の整備が強力に推し進められたことを指摘することができる。

以上述べたこととともに,都市環境の改善等もあわせて,活発な国土開発が進められた結果,人間活動の拡大を可能にしてきたといえよう。

しかしながら,また一面において,このような国土開発の進展にもかかわらず,これまでの工業化,都市化の急激な進展が大都市における集積の利益を求めたため,人口や人間活動の経済中心地への過度の集中と経済中心地以外における減少を引き起こしてきた。たとえば,ここ11年間の人口の移動についてみれば, 第1-24図 においてみるように,全体として,人口密度の高い地域ほど増加が著しく,人口密度の低い地域においては減少するという動きがみられる。

この結果,人口や人間活動の過度に集中した地域では,土地価格の高騰に伴う住宅取得難の拡大,住宅立地の遠隔化による通勤時間の増大などの弊害が現われている。

また,人口や人間活動の過度に減少した地域においては,人口の老令化と出生力低下による人口減少がますます進展すると予想される様相を示し,社会的機能と地域の生産機能の低下が懸念されている。

さらに,治山治水対策は,国土の保全と利用の増進という観点からますますその重要性を増しており,治山対策については新たな荒廃地発生の予防と森林のもつ公益的機能の維持・増進が,治水対策については都市河川災害の防止,都市用水,工業用水等の確保,河川の汚染防止等が重要な課題となつている。

第1-24図 最近11年間(昭和35年〜45年)の人口密度地城別にみた人口の増減

以上のような諸問題を解決していくためには,国土と自然環境の保全,適切な地域分業の確立による国土利用の再編成,大都市環境の改善,地方整備の推進などを基本方針として,工場再配置による人口や人間活動の地方分散化,抜本的な土地政策,計画的な都市開発,交通網の整備,治山治水対策の強化など国土の総合的な開発を図つていくことが必要となつている。

このような国土の総合的開発の推進には,たとえば,都市の空間利用を拡大した高層建築物,陸上交通網のネックを克服した長大トンネルおよび治水に画期的な効果をもたらしたダムなどがすぐれた技術に立脚して実現されていることからもうかがえるように,多くの分野で科学技術の長足な進歩が不可欠の条件であるといえよう。

以下,このような国土開発に関連する技術について,建設技術を中心にその開発の動向を述べることにする。

(2) 技術開発の動向

国土開発に関連する技術の研究開発については,国立試験研究機関,大学,特殊法人,民間企業等によつて広く取り組まれており,活発な活動が展開されている。

建設技術全般に関しては,まず,設計の面では,電子計算機を利用した構造解析・設計法が開発され,耐震能力の確保,施工の合理化などに大きな貢献をしているが,さらに,新耐震設計法等に関する研究が進められている。

工法の面では,軟弱地盤に対処するため,地中水分を除くドレーン工法,地盤密度を増す自然圧密工法,土地に化学物質を加える化学的工法,土地を凍結させて工事を安全確実に行なう凍結工法などの開発が行なわれたが,さらに,水中コンクリートの施工法に関する研究が進められている。材料の面では,高張力鋼,合成高分子材料,フライアツシュや粘土を造粒した人工骨材,黒鉛やほう素等からなる複合材料等が開発されてきたが,さらに,各用途に適合した建築材料の開発をめざして研究が進められている。これらのほか,大型建設機械の開発により,大規模な工事が可能となるとともに,工事の省力化,能率化に大きな改善が加えられているが,さらに大型化,自動化された機械の開発が進められている。

都市建設技術に関しては,建築物を「より高く,軽く,簡易に」つくることをめざして開発が行なわれている。その1つとして,高層ビル建設技術の開発があげられる。これは高層建築物における剛構造理論から柔構造理論による設計への転換および軽量な壁面構築を可能としたカーテンウォール技術の開発により支えられたものであり,さらにその改良をめざして研究が進めうれている。いま1つとして取り上げられるのは工法簡易化技術である。すなわち,中高層のプレハブ建築などのためのブロック組立工法やプレキャスト(PC)工法等の研究開発が進められており,建築物のコストダウン,工事の省力化に大きく貢献するものとして期待されている。これらのほか,高層ビルの安全工法としての積層工法,都市下水処理技術等の開発が進められている。

交通網整備に関する技術については,工法の大幅な改善が図られている。

道路では,アスファルト・フィニシャーの開発などが行なわれ,舗装の自動化,機械化が進んでいる。トンネルでは,坑道周囲をセメント等で固めて掘り進むセメント注入法,全断面掘削工法,トンネル管を水底に沈めてトンネルを組み立てる沈埋工法,シールド工法等の開発が行なわれ,これらにより地下鉄道網の整備や,青函トンネル等の建設が進められている。

橋梁では,工場で製作した橋げたを架設するリフトアップ・バージェ工法,海中構造物建設技術等の開発が行なわれており,これらの成果をもとに本州四国連絡橋の設計等が進められている。これらのほか,高速道路の安全性,道路の環境基準の設定等について研究が進められている。

治山治水技術に関しては,アーチダム・中空ダムの建設技術等が開発されたが,さらにフイルタイプダム設計方法に関する研究,森林の整備に関する研究,造林法の研究,河川水質および流量の管理システムの開発等が進められている。

計画技術に関しては,土地利用計画立案に関する研究など国土の総合的利用に関連する研究が進められている。また,諸機能のまひしつつある都市について,システム技術の導入により,都市内における複雑な人および物の動きと交通機関の利用特性等の分析が進められており,総合的な都市開発計画策定に貢献することが期待されている。

最近の都市開発については,人間生活に必要な諸施設として,住宅,下水道,防災施設,交通機関,各種建物などの都市構成要素を適切に配置するとともに,土地そのものとの調和を図りつつ,都市全体を設計する技術あるいは交通輸送システムなど都市の基本的なサブシステムを構築する都市計画化技術の発展が重要となつており,このような研究開発の推進が望まれている。


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