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第1部   希望にみちた社会をめざす科学技術
第2章  国民生活に密着した課題に取り組む科学技術
第2節  環境汚染と災害の防止
2  災害防止



(A) 自然災害

(1) 現状と問題点

わが国はその地理的,地形的条件により,世界的に災害の多い国であつて台風,豪雨,地震など数多くの自然災害によつて受ける被害にはきわめて大きいものがあり,毎年尊い人命と財産が失なわれている (第1-11表)

最近における災害の特徴としては,都市への人口,産業の集中が進む過程で,従来とは異なつた災害が発生し,しかも形態において大型化,多様化していることがあげられる。わが国の大都市では,地震,強風,豪雨などの自然災害に対して空地の確保など十分な予防対策が講じられないままに,高層建築や地下街の増加,石油類などの危険物の集積および新建材,プラスチックなどの使用といつたいくつかの潜在的災害要因が加わつてきているため,火災,爆発,交通事故などの各種災害を二次的に誘発し,災害を大きくすることが危ぐされている。

第1-11表 1946年〜1970年における主要な自然災害による被害

(2) 自然災害の防止技術

自然災害の防止技術は,現象究明,予知・予測,防災などの多分野にわたつているが,各種の自然災害に対して国立試験研究機関,大学を中心に研究開発が進められている (第1-12表)

(1) 現象究明技術自然現象の発生機構については,未知な点が多く,これらを科学的に解明することのできる科学技術への期待は大きなものがある。なかでも,広く国民が期待する地震の基本的な解明には,地球に関する基礎的研究が不可欠であり,地震の発生機構,地震に伴う地殼変動,地震断層に関する研究が行なわれているが,現時点では,地磁気の研究成果に基づいて地殼下のマントルの運動と地殼に現われる変化に関する研究が進み,地震の原因も一部解明が進んでいる。
第1-12表 災害の防止に関する主要な研究分野

また,強風については,台風,低気圧などの強風の性状,地形と強風の相関,都市における強風の性状に関する研究が進められており,予測技術の精度向上や耐風設計基準の設定に寄与している。 集中豪雨の発生機構の解明についても,気象力学的な研究を中心に行なわれており,豪雨のメソ気象(比較的せまい範囲に起こる気象現象)と地形の相関に関する研究などが当面重要な研究課題として取り組まれている。 このほか,都市における大地震の際にはパニック現象(緊急時には正しい判断を下すことが困難であり,誤ちを連続して引き起こす現象)が発生しやすく被害を拡大する危険性があるので,人間の行動・心理などを解明する研究が急がれている。
(2) 予知・予測技術大きな被害をもたらす災害の発生を未然に予知,予測する技術は,完全な防災技術がまだ確立されていない限りでは,災害に対して被害を最小限にとどめる重要な手段である。 地震予知については,近年その可能性が見い出されつつあり,実用化に向つて研究が国立試験研究機関,大学などで鋭意進められている。なかでも,東京は人口が集中しており地震対策強化が叫ばれているため,関係機関の専門家によつて総合的に研究を推進するとともにデータの収集と総合判断も行なう地震予知連絡会が設置されている (第1-21図) 。 台風については,気象衛星,レーダー ロケット等の利用による台風,低気圧の観測技術の開発,台風,低気圧の発生,盛衰,進路などの予測精度の向上,一般住民をはじめ交通機関等に情報を伝達する予報,警報システムの開発などが進められている。 集中豪雨についても,豪雨の観測計器の開発,レーダー等の整備と観測データの有効利用法などに関する研究が予報技術の一環として行なわれている。 このほか,渇水,豪雪,地すべりなどの災害に関連して予知技術の改良,予知システムの開発および警報システムの開発が取り組まれている。
第1-21図 地震予知推進体制


(3) 防災技術強風災害については,超高層ビルや長大橋などの巨大構造物の耐風性および耐風設計基準に関する研究や風害防止技術に関する研究が主体として進められているが,都市での強風災害は二次的な災害を誘発することもあつて,強風と火災との関連性に関する研究,予報システムの開発が進められている。 集中豪雨については,河川のはんらん等による被害を防止するため,洪水制御システムの開発が重点的に進められている。 地震については,強い震動を受けても壊れない構造物の耐震性の研究に重点が置かれており,耐震工法の開発,耐震設計基準の確立に関する研究,既存構造物の耐震性の測定法および改修工法の開発などが進められている。 また,地震への緊急対策に関して,地震を即時に探知し,危険物を非常処理するシステム,緊急に交通・輸送を制御するシステムあるいは避難・誘導システムなどの開発が取り組まれている。 火災については,建材の不燃化,石油ストーブなど自動消火装置の開発,火災の感知通報機器の開発,各種火災の消防システムの開発など種々の技術開発が実施されている。

(B) 産業災害

(1) 現状と問題点

産業災害は,逐年減少の傾向をたどつてはいるものの毎年150万人の死傷者を出しており,近年の技術の進歩と労働態様の変化に伴い新たな災害が発生してきている。生産方法,建設工事等の機械化が進むに伴い機械による災害が増加しており,さらに設備の大型化,複雑化あるいは新しい工法の導入によつて,災害が大型化する危険性が増大している。

他方,産業災害の大型化等により大都市における地下建設工事,高層建築物の建築工事などにおいて被害が第三者に及んでいる例もみられる。

(2) 産業災害の防止技術

産業災害を防止するため,科学技術に期待されるところは近年とみに大きくなつており,1)災害原因の科学的究明,2)機械・設備の本質的安全化を図る産業災害防止技術の開発,3)職業性疾病の早期発見および労働環境の改善に重点が置かれて進められている。

1)としては,労働環境などの変化に対応して新しい規制基準の設定や再発防止のために,災害の原因を徹底的に究明し,科学的な裏づけをすることが必要である。

土木建設,鉱山における災害,高圧ガス,火薬などの危険物による爆発などについては,その発生機構の解明に関する研究および測定機器,測定法,標準化など各種基準の設定に必要な研究が行なわれている。

また,作業者の側から災害要因の排除を図るため,人間工学的見地からみた作業者の適性に関する研究,人間の心理・行動など精神面から安全確保を図るための研究が進められている。

2)としては,安全な生産工程,機械,装置の開発・改良,危険警報システムの整備などが技術的な対策として取り組まれている。

鉱山における災害や高圧ガス,火薬などの爆発防止では,保安計測技術,安全な採掘技術,爆発防止技術をはじめとする種々の災害防止技術の開発が進められている。

3)としては,作業者の定期健康診断の徹底を図るとともに,作業者の精神衛生に関する研究,新しい物質の人体に及ぼす影響に関する研究などが進められており,その成果に基づいて労働衛生環境が改善されつつある。


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