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第1部   希望にみちた社会をめざす科学技術
第1章  科学技術への期待
第1節  科学技術と人間生活


科学技術がこれまで多くの先人のたゆみない努力により,人間生活の高度化に大きく貢献してきたことは過去の例をみてもあきらかである。

たとえば,動力面では,18世紀後半の蒸気機関の実用化は,それまでの畜力,水力および風力を動力源とした人間活動を一変させ,さらに,タービン,電動機,内燃機関などの実用化が加わつて産業活動を飛躍的に発展させるとともに,交通輸送面での著しい進歩をもたらした。また,医療面では,18世紀後半の種とうの発明,19世紀におけるモルヒネの麻酔作用および鎮痛効果の発見,コレラ菌および結核菌の発見,狂犬病ワクチンの発明など一連の科学技術の進歩は,多くの尊い人命を救った。さらに,20世紀に入り,科学技術の進歩発展は,ペニシリン,ナイロン,テレビジョンなどの革新的な製品を生み出し,近年では,ジェット旅客機,コンピュータ,原子力発電,人工衛星,高速鉄道などを実現している。

これらは,現代のわれわれの生活にとつて不可欠なものとなつているので,そのなかのいくつかの例について具体的にみてみよう。

まず,エネルギーについてみると,国民1人当りのエネルギー消費量は, 第1-1図 に示すとおり,国民所得の増大に伴い年々増加しており,われわれは,炊事,照明,暖冷房をはじめとし各種産業や交通機関の動力源に至るまで,科学技術の活用により豊富にエネルギーを利用し,その恩恵に浴している。

第1-1図 国民1人当りエネルギー消費量と1人当り国民所得の推移

また,医療保健についてみると,ペニシリン,ストレプトマイシンなどの各種抗生物質は,細菌感染症による死亡を激減させ,ワクチン技術の進歩は,ウイルス性疾患の予防効果を高め,日本脳炎,小児まひなどの発生を著しく減少させてきている (第1-2図)

第1-2図 日本脳炎,小児まひの患者発生数とワクチン販売量の推移

さらに,食品についてみると,加工技術の向上,流通輸送技術の進展,包装資材の開発,包装工程の機械化などは,インスタント食品や冷凍食品などを通じ食生活の多様化,高度化に寄与している。また,プラスチックなどの利用による施設栽培技術の改善,品種改良の進歩などは,トマト,きゅうりなどの季節野菜の平準化をもたらしている (第1-3図)。

第1-3図 季節野菜の取扱高変動の推移

これらのほかにも,各種合成繊維の出現による衣生活の向上,各種電気製品の開発による家庭生活の合理化などわれわれの生活に貢献している例は数多くみられる。

しかしながら,科学技術が社会・経済に広く深く浸透していく過程で,人口の無秩序な集中,社会資本整備の相対的立遅れなど種々の要因と複雑にからみあつて,われわれの生活にとつて好ましくない問題もいくつか表面化してきている (第1-4図)

第1-4図 われわれの生活にとつて好ましくない問題の例

たとえば,熱源として利用する石油消費量の増大は,亜硫酸ガスなどによる大気汚染をもたらし,さらに,プラスチック製品の需要の拡大は,処理の難しい廃棄物の増大を招いている。また,モータリゼーションの進展は,交通渋滞,交通事故による死傷者の増加をもたらしている。

このように,科学技術がわれわれの生活のあらゆる面を支えている一方,種々の要因とからみあつてわれわれの生活に好ましくない問題も生じさせているので,現代社会の諸課題を適確に把握し希望にみちた社会の実現をめざして科学技術の適切な活用を図つていく必要がある。


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