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  序説

(現代社会の要請と科学技術)

科学技術の進歩は,より良い生活手段や生産方法の提供,新たな活動領域の開拓等を通じ生活の高度化,多様化をもたらし,また,すぐれた医療を可能にすることによつて人類を多くの疾病から解放するなど社会・経済の発展と人間福祉の向上を先導する重要な原動力となつてきた。そして,今や科学技術は現代社会に広く深く根をおろし,これを支えているが,現代社会においてもまた新たな問題が発生し,あるいはさらに高度な生活への希求が強まつていることなどから,科学技術に対する要請も数多く生まれてきている。

科学技術の社会・経済への適用は,われわれの現在の生活をよりうるおいのある充実したものにするとともに人類の長い将来にわたる福祉と繁栄に寄与することを指向すべきであるとの観点から,今日,われわれがその振興にとくに意を用いなければならない科学技術としては,1)健康の保持・増進,食住などの生活の高度化,環境汚染の防止,災害の防止,交通輸送体系の整備など国民生活に密着したもの,2)地球上のエネルギー,鉱物,水,食糧,木材などの諸資源の不足に対処するもの,3)原子力,宇宙および海洋の開発,とくにライフサイエンスの振興など新領域の開拓をめざすもの,があげられ,これらの科学技術の画期的な進歩とその適切な活用が望まれている。

(科学技術活動の動向)

このような要請に応えて,科学技術活動の一層の進展を図るため,政府,民間を問わず,研究開発投資の充実,科学技術振興基盤の整備等が進められている。

研究開発投資は,ここ5年間において年平均伸び率22形と同時期における国民所得の伸び率16%を上回る伸びを示し,昭和46年度には対国民所得比2.05%の1兆3,459億円に達している。これは対国民所得比の面では欧米主要国に及ばないが,絶対額の面では西欧先進諸国を凌駕しているものと推定される。このような急速な増加のすう勢にあるものの,昭和46年度には,民間の研究開発投資が経済活動の停滞を反映して対前年度比9.2%の増にとどまり,その伸び率が例年に比し低下している。他方,政府における科学技術関係予算は,昭和46年度には対前年度比15.9%,昭和47年度には同じく22.5%増加しており,その額は一般会計予算総額の3.3%を占める3,740億円となつている。なかでも,民間等に対する助成費等は着実に拡充されており,ここ5年間で3.3倍に伸び,昭和47年度には838億円に達している。

また,筑波研究学園都市の建設については,昭和47年5月の閣議において43の移転機関等を決定し,昭和50年度までに特殊な研究施設等を除き概成することを目標に,現在16機関が施設の建設を進めており,うち5機関はすでに研究活動を開始している。

(科学技術振興の方向)ひるがえつて,現下の社会・経済の情勢をみると,国際的には南北問題,環境問題等の解決への寄与や国際経済バランスの変化への対応が求められており,国内的には環境の保全,社会資本の充実,産業構造の知識集約化,中小企業,農業等低生産性部門の合理化などが急がれている。

このような情勢下にあつて,わが国の科学技術活動は,わが国固有の科学技術課題を自らが積極的に解決するばかりではなく,世界共通の諸問題の解決および新しい科学技術知識の創造のためにもわが国の国際的地位にふさわしい役割を果たしていく必要があるので,独創性の高い自主技術の研究開発,科学技術面での国際協力を推進するとともにすべての科学技術の基盤となる基礎研究の充実を図ることを基調としつつ,当面,とくに次の諸点に留意して展開していく必要があろう。

第1に,社会・経済の複雑化,流動化に対処して,科学技術活動を迅速かつ効率的に展開するため,科学技術活動の計画化,システム化を図ることが必要となつているので,広い視野にたつて総合的,科学的に解明するソフトサイエンスの適用,科学技術情報流通体制の整備,研究関係人材の充実および有機的連けいの確立,既存の進んだ技術開発の成果を他分野へ適用する技術移転などを推進することである。

第2に,近年,科学技術の適用が社会・経済に及ぼす影響が大きくなり,また,他の種々の要因とからみあつてわれわれの生活にとつて好ましくない影響が顕在化していることにかんがみ,科学技術の進歩が真に人間福祉の向上に役立つようその適用による影響を総合的,多面的に把握し,評価し,対策を講じようとするテクノロジー・アセスメントを積極的に実施することである。

第3に,われわれの福祉と繁栄を達成する上での科学技術の重要性および経済規模からみた欧米の研究開発投資水準を考慮すれば,科学技術会議の第5号答申でも指摘されているように研究開発投資が1970年代のできるだけ早い時期に国民所得の2.5%に達するよう努力し,科学技術諸分野の調和ある発展を図ることが重要である。

(本書の構成)

本書は,3部から構成されている。

第1部においては,科学技術がわれわれの生活向上にどのように貢献しているか,また,その適用に十全の配慮がなされなかつたことなどのためにどのような問題を発生させているかについて概観するとともに,希望にみちた社会を実現するため現代社会において期待されている科学技術は,国民生活に密着した問題の解決に寄与するもの,資源の不足や枯かつに対処するものおよび明日の人類の福祉と繁栄に寄与する新しい活動領域を開拓するものであり,また,その調和のとれた適用を図るため,ソフトサイエンスの振興およびテクノロジー・アセスメントの実施が必要であることを明らかにする。次いで,このような観点から,現代社会の諸問題に取り組む科学技術について,その動向を述べる。

第2部においては,わが国の科学技術活動について,研究投資および人材,科学技術情報活動,ソフトサイエンスおよびテクノロジー・アセスメント,技術交流および特許出願,国際交流の各面から分析する。

第3部においては,わが国の科学技術振興のため政府が実施している諸施策について,科学技術関係予算,政府機関等における研究活動,民間等に対する助成等,科学技術振興基盤の強化の各面から昭和47年度を中心に述べる。


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