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第3部   政府の施策
第2章  政府機関等における研究活動
2  特殊法人研究機関の研究活動
(2)  特殊法人研究機関の研究成果


特殊法人研究機関においても国立試験研究機関と同様,積極的な研究活動によつて,有用な研究成果をあげている。

以下,昭和45年度および昭和46年度を中心として主な研究成果についてその概要を記述することとする。


(1) 理化学研究所

〔原子核〕

宇宙線の研究,サイクロトロンを用いた原子核の研究,核融合の研究,放射線の研究などが続けられ,各分野で多くの基礎的知見を得ており,また, 100

Ag  104

Inにつづいて,新しい同位体 81

Yの発見 54

Mn, 87

Sr, 123

Ba, 203

Pbなど各種同位体の製造法の確立などの成果も得た。

〔物性物理〕

高分子,金属,結晶,液晶など物質の物性の基礎研究が行なわれ,それによつてエレクトレッド熱分析装置の開発,プラズマ熔射法による高性能フエライト膜の作製法の開発などの成果を得ている。

〔応用物理〕

広く基礎応用の研究が行なわれ,これに基づき,プラズマジェット発生装置の各分野への応用,ホログラフィの光学計測への応用,とくに振動体の解析法の開発などの成果を得た。

〔基礎工学〕

機械,精密加工,半導体工学,化学工学等の分野で広く研究が行なわれ,例えば先に開発に成功した振動切削法,プラスチックの常温塑性加工法をさらに前進させ,また高性能の軸流分子ポンプの開発などの成果を得た。

〔無機化学〕

広い分野で基礎,応用の研究が行なわれ,その過程において,たとえば炭化ウラン中の微量酸素および窒素の高精度分析法,Lu-Hf法およびフイッショントラック法による年代決定法の開拓,原子核部門との共同による各種の同位体の製造などの成果を得た。

〔生化学〕

微生物学,生化学,抗生物質などに関して広く基礎,応用の研究が行なわれ,多くの基礎的,学術的知見を得ており,また,新しいアルカリ酵素の発見とその応用などに成果を得ている。

〔農薬〕

各種微生物,昆虫,植物などの生理作用,またこれらに対する薬物の薬理作用などについて多くの基礎的知見を得ており,これらにもとづいて,アミノ酸系新農薬の開発などの環境破壊のない新しい型の農薬の可能性を見出しつつある。


(2) 日本原子力研究所

〔原子炉の開発〕

高速増殖炉および新型転換炉については,国のプロジェクトへの協力として,動力炉・核燃料開発事業団からの受託研究を中心とし,高速臨界実験装置(FCA)を用いた高速実験炉のフルモックアップ実験,高速炉核定数セット(JAERI-FAST)の改良およびこれによる炉特性解析評価,ナトリウムインパイルループの設計,その他多くの成果を得た。

軽水炉については,動力試験炉(JPDR)の出力倍増のための改造計画(JPDR-2計画)が進められ,プルトニウムの熱中性子炉利用に関する軽水臨界実験装置(TCA)を用いての炉物理実験,ハルデン炉による国産水型炉燃料の安全性限界試験が,それぞれ進展をみた。

燃料および材料の分野では,分散型被覆粘子燃料の高温特性の研究,混合炭化物系燃料および改良被覆材の研究,乾式法による燃料用処理法の研究,燃焼率測定技術の開発等をすすめ,有用な知見を得た。

〔安全性研究〕

原子炉事故に関する熱工学的研究として,軽水炉冷却機喪失事故模擬試験装置(ROSA)による実験を行ない,有用なデータを得たほか,原子炉圧力容器の構造安全性試験を進めた。

〔核融合,ウラン濃縮〕

核融合研究では,原子力特定総合研究の一環として低いベーダトーラス磁場(JFT-1)によるプラズマ閉込めの実験をすすめ,内部導体系トーラスにおけるプラズマの安定性に関する知見を得るとともに,中間ベータトーラス磁場装置(JFT-2)の製作および関連測定装置等の整備を進めた。

ガス拡散法によるウラン濃縮研究については,原子力特定総合研究としてユニットシステム動特性実験装置を完成し,各種作動試験を行なつた。

〔放射線化学,食品照射〕

ポリエチレン等の成型品のγ線による放射線橋かけ強化をはじめとして,内部線源型試験装置によるエチレンの放射線重合試験,同時安定化重合ミゼット装置によるテトラオキサンの放射線固相重合試験,ポリ塩化ビニール,ポリエチレン等の放射線改質ならびに,ガラス繊維強化プラスチック板(FRP)の放射線キュアリングについての開発試験を行なつた。

食品照射研究については,原子力特定総合研究として,米,麦,ウインナソーセージ等の放射線保蔵試験を行なつたほか,サイロ型照射装置等による線源工学ならびに照射効果についての知見を得た。

〔アイソトープの利用〕

アイソトープの利用を開発する研究として,大気汚染,水質汚濁等の環境公害調査への利用方法の研究を進めた。

また,アイソトープ電池の開発を目ざして,チタン酸ストロンチウム線源の焼結,成形の研究を進めた。


(3) 日本原子力船開発事業団

〔原子力線〕

原子力船「むつ」は,昭和45年7月青森県むつ市に回航後,定係港岸壁で,原子炉部分を構成する圧力容器,主蒸気発生器,加圧器など主要機器の塔載,据付工事を行なつており,昭和46年度は,これら機器間の配管,配線工事を行なつた。昭和46年9月現在,これらぎ装工事はほとんど完了し,核燃料を装荷する前に原子炉プラントの機能を確認するための試験を行なつている。

一方,本船に装荷する核燃料の製造は,本船工事と並行して行なつていたが,昭和46年7月に完成した。この燃料は,昭和47年夏本船に装荷する予定であるが,これに先立ち昭和46年9月から陸上の臨界実験装置で各種の試験を行ない,炉心核設計値,燃料装荷手順,出力上昇試験方法の確認を行なつている。

これらの成果は,原子力船の安全性の確認および将来の原子力船建造に資するものである。


(4) 動力炉・核燃料開発事業団

〔高速増殖炉〕

高速増殖炉実験炉に関する研究は,格納容器が完成し耐圧の漏洩試験を実施した。高速増殖原型炉については,原型炉1次設計を発展させるとともに,第2次設計を実施し,安全性,経済性等について解析を行なつた。

高速実験炉の炉心の核データを求めるため,日本原子力研究所のFCAにおいて模擬臨界実験を行ない,その結果高速増殖炉実験所の炉心設計の確証に反映させた。高速原型炉の全炉心模擬臨界実験は,日英原子力協力協定に基づいて英国と共同で行なうこととし,ゼブラ炉での実験を開始した。

また,ナトリウム機器の開発については,大洗工学センターのナトリウム流動伝熱試験施設,ナトリウム機器構造試験施設,ナトリウム技術開発施設などにおいて各種の試験を行ない,ナトリウムに関する技術的経験を蓄積し,原子炉機器の開発を行なつた。燃料材料の開発については,実規模燃料集合体の試作試験,流動試験,海外炉における,照射試験などを実施中である。安全性の研究成果については,原子炉容器の耐衝撃試験,ナトリウムの沸騰試験等高速原型炉の安全審査に必要なデータの蓄積を行なつた。

さらに,高速増殖炉の重要機器である蒸気発生器については,ナトリウム-水反応試験を実施し,小型蒸気発生器試験装置(IMW)を完成させ,試験を開始するとともに,50MW蒸気発生器試験施設の建設に着手した。

〔新型転換炉〕

新型転換炉については,この原型炉の開発のため大洗工学センターにおいて,重水臨界実験装置(DCA)を用いて核設計の信頼性向上と改良,安全評価などのためにウラン燃料による炉物理実験を行なうとともに主要機器および燃料集合体の試作開発を行なつた。これらの機能試験および数千時間にわたる耐久試験を部品機器試験施設(CTL)などを用いて行ない,原型炉の設計製作に反映させた。排気ガスの放射能を減衰させるための希ガスホールドアップの開発は所期の目標値を得,この成果は軽水炉にも利用されることになつた。燃料集合体については,伝熱流動試験施設(HTL)を用いて伝熱流動実験によりバーンアウト,二相流動に関する実験データを得,設計に反映させるとともに,照射試験,振動試験などを行なつた。

このほか,原型炉の各種事故時の状態を把握するため,安全性試験施設において一連の一次冷却系破断実験を実施して,破断機構を解明し,原型炉の設計に反映させた。

〔ウランの一貫製錬法の確立〕

動力炉・核燃料開発事業団が独自に開発したウラン製錬法(PNC法)の技術の確立をはかるため,人形峠においてPNCプロセスの技術開発を進めるほか,1日処理量約50トンの規模で操業を行なつている。

〔遠心分離法によるウラン濃縮〕

遠心分離方式のウラン濃縮については,3号機によるウラン濃縮試験を引き続き実施し,長時間連続運転の実績をあげるとともに,六弗化ウランガスの抜出し方法をかえた4号機の試験を開始した。

さらに,高周速,長時安定性能をもつ遠心分離機の設計と軸受,軸封,回転胴などの主要要素の試作研究を行なつた。

また,ウラン濃縮工程に必要な工学的諸条件を明らかにするため,10基よりなる小システム構成を検討し,その基本構想に基づいて設計製作を進めた。

このほか,遠心分離機の高速回転と六弗化ウラン腐蝕に耐えるよう,回転胴材料等の機械要素および化学要素について試験を行なつた。

〔プルトニウム燃料の開発〕

高速増殖炉実験炉炉心燃料の製造および将来一部改造後には,高速増殖炉原型炉炉心燃料の製造を行なう施設を完成した。また,重水臨界実験装置および新型転換炉原型炉用プルトニウム燃料製造施設も完成し,操業を開始した。

熱中性子炉用プルトニウム燃料の開発については,炉物理実験およびJMTR,ハルデン炉,サクスソン炉等において各種照射試験を実施した。

〔核燃料の検査技術の開発〕

各種炉燃料の検査技術の開発を目的として,燃料棒の端栓溶接部の溶接試験,高温水蒸気中における応力下腐蝕試験を行なうとともに,超音波ビーム,を用いる非破壊検査法,音響放射法の研究開発をすすめ有用な成果を得た。


(5) 宇宙開発事業団

〔人工衛星〕

昭和45年度決定の宇宙開発計画に基づき,すでに開発を進めてきた電離層観測衛星に加えて,技術試験衛星I型の開発を進めている。

技術試験衛星1型(ETS-1)は,Nロケットにより打ち上げられる最初の人工衛星で,人工衛星の打上げ技術および追跡管制技術等の習得を主目的とするものである。電離層観測衛星(ISS)は,昭和45年度に製作したエンジニヤリング,モデルについて各種の試験を行ない,プロトタイプモデルの製作を進めつつある。

〔ロケット〕

前記の各種人工衛星を打ち上げるためのNロケットは,昭和52年度に重量約100kgの人工衛星を静止軌道に打ち上げる能力を有することを目標に開発を進めており,概念設計に引き続き,予備設計を進めている。また,それと並行して技術導入を予定している第1段については必要な各種予備調査を進め,国内技術を主体として開発する上段部については主要サブシステムについての試作試験を行なつた。

また,Nロケット上段部エンジンや誘導系の技術試験を目的として,Nロケットに先き立ち,第1段に東京大学のM-10を用いて打ち上げられる試験用ロケットについて,必要な予備設計を進めた。一方,液体ロケットエンジン,ガスジェット,塔載電子機器等の飛しよう中における技術試験を主目的とするLS-C型ロケット(液体-固体2段式)5号機,JCR型ロケット(固体2段式)5,6号機の打上げ実験を種子島宇宙センターで行なつた。

〔人工衛星の追跡〕

昭和46年2月16日試験衛星「たんせい(1971-011A)」,昭和46年9月28日科学衛星「しんせい(1971-080A)」が東京大学鹿児島宇宙空間観測所(内之浦)から打上げられ,宇宙開発事業団は,両衛星の追跡を行なつた。これらの追跡は,わが国で開発された角度測定併用ドップラ周波数測定方式により,事業団所属の勝浦電波追跡所,沖縄電波追跡所および東京大学の鹿児島宇宙空間観測所(内之浦)の3か所における追跡データを事業団三鷹分室に集中して軌道計算する追跡網によつて実施された。

今後打ち上げられる人工衛星には,より高精度の追跡が必要であるため,その要求にあわせてレンジ・アンド・レンジレート方式の一部試作を推進しており,また,これらの追跡用計算機システムを決定し,プログラムの開発を進めている。

〔地上設備〕

人工衛星およびロケットの開発および打上げ計画に基づいて,種子島宇宙センターおよび試験管制施設(筑波)の開発整備計画の検討を行なつた。種子島宇宙センターでは小型射場の整備を行なうとともに,新たに試験用ロケット,Nロケット用の射場開発整備が行なわれつつある。ロケット組立棟および中之山テレメーターステーションが完成し,また野木地区には電波系の施設を建設中である。試験管制施設(筑波)では整備を必要とする各種施設設備などの配置計画を終わり,情報処理棟,加速度衝撃試験室等を建設中である。


(6) 農業機械化研究所

〔農業機械の開発改良〕

トラクタ関係の研究においては,新たに無人耕うん装置を試作し性能向上を図る一方,安全フレームを試作し,OECDテストコードに準拠して強度の改良等を行なつた。

米麦用機械の研究においては,前年度に続き根洗苗用多条田植機,土付苗用多条田植機および成苗苗取機の試作改良を行ない,土付苗用については良好な結果を得,他方,新しい動力8条用湛水直播機を試作した。収穫機については自脱コンバインを小型高性能化するため,吸引選別方式のものを試作し成果をえた。

畜産用機械の研究においては,新たに下方取出し形の小型サイロの試作等を始めるとともに,引き続き家畜ふん尿処理法に関する実用化試験を行なつた。園芸用および特用作物用機械の研究については,りんごを振動収穫する場合の緩衝収容装置の改良や露地野菜において多目的に使用できる自走式作業車を試作したが,さらに甘しよ収穫機を改良して実用化のめどをつけた。

本年度の農機具国営検査は農用トラクタ等7機種57点について実施した。


(7) 日本てん菜振興会

〔てん菜の育種および栽培技術〕

てん菜新品種の育成については,収量,糖分が多く,生産性が高い品種の育成をはかることを目標として試験研究を重ね,これまでに「つきさつぷ」をはじめつの新品種を育成したが,昭和46年度には「きたまさり」をてん菜新品種として公表した。このほか,省力機械化栽培の関連において育成が望まれている単胚品種については,現在北海道内に栽培されている西欧の品種に比べ収量,糖分が同等ないしそれを上回る3倍体1代雑種「T1013」,「T1014」などの優良系統を育成し近くてん菜新品種として公表できる段階に至つた。

栽培技術に関する試験では,施肥位置と生育との関係を追跡調査して最も効果的な施肥法を,また,水田転換畑へのてん菜導入については,増収につながる合理的な栽培様式を明らかにした。

病理に関する試験では,最近北海道のてん菜栽培地帯において問題となつている生育異常症状について調査研究を行ない,本症状は,ポリミキサ菌の寄生により発現することを明らかにするとともに効果的な防除薬剤を探索し,その防除法を確立するための有用な知見を得た。


(8) 日本専売公社

〔たばこ〕

新製品の開発では原料葉たばこの特殊加工処理法として,ソース噴霧加工処理技術を開発するとともに,ローストおよびスチーミング処理法を研究し,新香料の創製とあわせて本格ブレンドタイプの新製品の商品化をはかつた。

原料の開発,改善では前年度までに育成に成功した黄色種緩和性(低ニコチン,低タール)新品種GH,MC系統の産地導入試験を行ない,地域に応じた栽培法確立のための有用な資料を得た。

シートたばこ製造法については,圧延法の改良研究を進めて,シートたばこ製造の規模拡大に対応する成果をあげつつあるほか,新製造方式の開発研究に着手している。

また,人工たばこ開発の研究として,植物組織培養法(カルス培養法)について量産化の条件等,今後の発展を期待し得る成果を得た。

栽培法の近代化では,たばこ作の一貫機械化体系の確立をはかるため,大型トラクタ用の施肥機,残幹処理器および傾斜地用培土器などの作業機を試作し,性能試験を行なつた。

また,近年多発している生理的斑点病の発病要因の究明と防除対策の研究を行ない,有用な資料を得た。

製造方式の合理化では,たばこ製造工場および原料工湯における設備開発,各工程の大容量化,自動化,高速化,連結化,品質管理などの開発,改良研究ならびに実用化試験を行ない成果をあげた。

〔塩〕

イオン交換膜法による海水濃縮では,高電流密度透析技術の確立による装置の生産性の向上をはかるため,前年度に引き続き試験を実施し,所期の目的を達成した。

蒸発法の研究では,イオン交換膜法によつて得られるかん水の合理的なせんごう方法を試験し,缶石付着防止対策をたてた。

塩の流通の合理化に関する研究では,近代的な塩の流通システムを確立するため,乾燥散塩のサイロによる貯蔵方法の可能性について試験検討し,有望な見通しを得た。


(9) 日本電気計器検定所

〔電力量計等〕

電力量計の性能改善の研究について,主として寿命に影響する各種因子の解明を目的とした寿命試験を行なう一方,従来の誘導型電力量計では,性能に限界があるので,回転部のない電子式電力量計の試作研究を行ない良好な見通しが得られた。

〔電気計器の試験法〕

大量に試験検定を行なうためのオートメーション方式について,始めて多線式計器を対象とした大型三相自動試験台PA-2形および単相・三相共用のPSA-1形の開発,研究を行ない実用機の設計を完了した。また,従来計器を試験台に掛けるのに人手によつていたが,これも自動化するための研究を行ない,工業用ロボットを利用する自動掛替装置の試作実験を行なつて,良好な見通しが得られた。

〔電気標準開発〕

電力量標準校正用の精密標準電流発生器を完成し実用に供せられるようになつた。

当所で開発した静止形標準電力量計を米国国立標準周(N.B.S)で比較試験し,良好な結果が得られた。

次に,自動補償形変流器の精度向上を行ない精度20ppm程度の可能性が得られ,理想変流器としての見通しが得られた。

〔電気計測〕

電気計測,試験のための電源として,従来の電動発電機に代わるべき静止形電源を研究しているが,昨年の普通級につづき,本年は精密級のかつ周波数可変式純エレクトロニクスによる三相平衡電源の実験,研究を行ない実用化の可能性が得られた。

熱電対を利用した交流精密測定システムを試作し,10ppm台の精度が得られた。

永久磁石試験用のデジタル磁束計を開発し型式試験等に使用している。

また電力量計の駆動トルク測定用デジタルトルク測定装置を試作完成した。


(10) 日本国有鉄道

〔輸送方式の近代化〕

曲線の多い線区でスピードアップをするために低重心,振子構造,横圧軽減機構をもつた特急用試作電車により試験を行ない,従来より20〜25km/h向上しても良好な乗心地と安全性が得られた。また,これと関連する地上設備についても130km/h用の高速分岐器,高速用架線(ヘビーシンプル型)を完成した。

夏期の通勤を少しでも楽にするために通勤電車用の冷房装置の実車試験を行なつた。

貨物輸送近代化の一環として,ISO規格に準じた新5t,10t,20tコンテナおよび5tコンテナを混載できる最高速度95km/hの標準コンテナ車の開発を行なつた。

パイプライン制御自動化の研究として,白系統の各種石油製品を1本のパイプで輸送すると,異種油の境界にコンタミネーションを生ずる。このコンダミネーションの発生状況,検知器の比較を行ない,さらにパイプラインの系としての制御の研究を行なつた。

〔超高速鉄道〕

超電導を利用して磁気浮上方式の基礎研究に使用する試験装置を試作し鉄道技術研究所に設置した。この試験装置は超電導マグネットと常電導コイルがあり,一方が円板の上で回転することにより超電導マグネットの磁気によつて常電導コイルに電流が誘起され,この電流と超電導マグネットによつて生ずる反力によつて浮上力となる。この特性試験を行ない,有用な知見を得た。

〔省力化〕

変電所設備の検査を自動化するための変電設備用移動式自動検測装置を開発した。この装置には操作盤と検測用カップラーがあり,プログラムによつて,全検査項目が自動的に施行される。

電車線および信号設備の保全管理のため, トロリー線,軌道回路,ATS地上子などの検測を自動化する電気検測車を開発した。

電気車両の自動検査装置を試作し,電車の制御回路,空気ブレーキ回路の各種検査を行ない判定する試験を行なつた。

出改札装置の自動化の一環として,定期券印刷発行機を試作した。これは定期券面の印刷と自動改札に必要な情報を磁気書き込みするものである。

指定券自動発売装置を開発し水戸駅に設置した。これは従来の座席予約システムに結合されるもので,旅客が指定券を購入する際,直接に自動発売装置にコインを投入して目的の列車の指定券を購入するものである。

電車線の架設工事機械化のため工事用車群を試作,とくに架線延線車は特殊な機能を有するもので,山陽新幹線,房総東線,日豊線の工事で使用した。

〔輸送保安〕

眼の生理機能は車両の高速運転の安全性に重大な影響を及ぼす。運転時における瞳孔の順応を科学的に観察,解明して視機能の問題点を把握するため車載用の瞳孔運動測定装置を試作した。

動力車乗務員の適性検査に脳波検査を行なつているが,従来の脳波計では取扱い判定が難しいので集団検診用脳波計を開発した。


(11) 日本放送協会

〔カラーテレビジョン〕

力ラーテレビ番組の画質を向上し,番組内容の多様化に即応するため,低照度下での撮像が可能な中継車塔載用高惑度カラーカメラを開発した。

また,市販カラー受像機の色再現性に及ぼす回路やカラー画質に与える直流分再生の影響を調査し,受像機の性能改善策に資した。

〔超高周波技術〕

UHF放送用クライストロンについては,大電力送信機における電力能率の改善研究および中継放送用送信機における非直線性の補償装置の実用化を行なうほか,選局が容易なUHFチューナーの検討を進め,有用な研究成果を得た。

また,SHF帯による放送技術の開発を目標として,総合技術研究所内に12GHz帯実験局を開設し,都市部における電波伝般特性の調査や送受信装置の特性向上に努めた。

〔受信障害防止・受信改善〕

高層建造物からのテレビ反射電波に起因する周辺地域へのゴースト障害対策の検討を進め,建造物の反射特性を変えてゴーストを抑圧する一方法を開発適用し,難視地域の受信改善に役立てたほか,市販FM受信機の妨害電波に対する改善策を明らかにした。

また,航空機騒音の測定や要因分析ならびに実験住宅による日本家屋のしゃ音性能の実験などの研究を進め,聴取環境の改善に有用な資料を得た。

〔衛星放送〕

放送分野への衛星の有効な利用形態を明らかにする一環として,衛星の周波数,軌道の有効利用に関する研究を進め,国別放送等のために必要なチヤンネル数などを明らかにした。

〔新しい放送方式の開発〕

放送に対する聴取者の要望や放送技術の将来予測に基づき,新しい放送形態の実現のための技術手段を開発するため,テレビジョン電波にファクシミリ信号を多重する伝送方式の室内実験,静止画による教育,情報放送方式の技術的検討および現在のテレビジョン方式にとらわれない大画面高精細度の高品位テレビ方式のシミュレーション実験などの研究を進め,有用な基礎データを得た。

また,東京,大阪テレビジョン放送局におけるテレビ音声多重実験放送の実施により,送受信装置の問題点を抽出し,改善対策を明らかにした。

〔その他放送技術の改善研究〕

選挙予測手法等電子計算機による情報処理技術の研究,新しい録画技術の研究,スタジオやホールの音響設計法の改善などの研究を進めるとともに,それらの成果を部外へ技術協力し放送技術の発展に資した。

〔視聴科学〕

将来の新しいテレビ方式開発のため色知覚,立体視など画像技術の促進や図形,文学あるいは音声の自動認識装置の実現を目標として,視聴覚系の知覚・認識機構の研究および神経生理機構の研究を行なうとともに,その結果をもとに人間の目や耳の基礎的機能を備えた電子回路モデルを構成した。

〔光・磁気に関する物性〕

将来の放送技術に有用な新しい光電変換,表示材料,磁性材料およびレーザー材料とそれらを用いた新しい技術の開拓を目標に研究を進め,新しい固体発光現象の発見,半導性磁性体の光磁気相互作用の究明,アルゴンイオンレーザーの放電雑音の抑圧方法の確立,結晶欠陥の観測と電気特性との関連などの知見と成果を得た。


(12) 日本電信電話公社

〔電子交換〕

将来の各種新規サービスの導入に適し,高度の機能と融通性を有する電子交換方式の研究実用化を進め,44年9月から東京牛込電話局において大局用電子交換機DEX-2の現場試験を行なつているが,これをさらに経済化し,データ・画像交換・全世界自動即時等の機能を付加したDEX-21が,45年12月東京霞ケ関電話局において現場試験にはいつた。本機は順調に運用されており,46年12月から商用試験に移行される予定である。さらにDEX-21を基本とした商用機D10号形電子交換機については,近く東京,大阪等に設置される見通しである。

〔データ通信〕

情報革新の中核となるデータ通信については,多数の端末装置から通信回線を通して中央の電子計算機を共用する情報処理システム(DIPS計画)の研究実用化を進めている。公社の標準データ通信方式用の大型情報処理システムを目ざすDIPS-1については,46年6月以降武蔵野電気通信研究所に所内試験用3システムが搬入,設置された。46年度後半から運用を開始し,各種プログラムの作成,整備を進める一方,現場試験機の製造を進めている。

〔画像通信〕

テレビ電話方式については,44年末から研究所内で,45年2月から日比谷庁舎内で対面通話・ 3者通話・情報案内などについて運用試験を行なつている。テレビ電話機については,万博で使用した試作機を改善して,電子ズーム,走査線数の自動切替機能,スピーカーホン等を備えたテレビ電話機を試作した,また,画像サービスの実用化を目的として,テレビ電話機用ビデオ応答装置,光学的表示装置等の試作を行ない,さらにテレビ電話による会議方式について実験し,基礎データをえた。

ファクシミリについては,48KHz帯域用の高速ファクシミリを試作した。

所要伝送時間はA4版で約30秒である。

〔入出力機器〕

電話機については,今後の顧客の要望,社会の情勢に対処するため,小形軽量で,拡声電話,着信可視表示などの新サービスを付加することをねらいとした小型電話機を45年末に試作し,試用試験を行し,現在2次試作を進めている。また,100円硬貨も使用できるボックス公衆電話機(釣銭なし)の研究を進め,46年8月から現場試験を行なつている。

このほか,低騒音化,軽量化,高速化をねらつた各種プリンタ,情報の自動応答に用いる音声応答装置等の試作,検討を進めた。また,電気書替と経済化をねらいとした電子交換機用磁性線半固定記憶装置を実用化した。

〔伝送方式〕

通信の需要増,将来の新サービスならびに通信網の信頼性向上をねらい,各種通信方式の研究実用化を進めている。

PCM(パルス符号変調)伝送方式については,新平衡ケーブルによるPCM-100M方式(電話1,400chまたは,1MHz帯テレビ電話4chあるいはカラーテレビジョン1chを伝送可能)の研究を進め,本社日比谷庁舎と武蔵野研究所間の現場試験を実施した。

FDM(周波数分割)伝送方式については,標準同軸ケーブルを使用し,世界最大容量のC-60M方式(電話10,800chまたはIMHz帯テレビ電話30chを伝送可能)の現場試験を45年初頭から実施し,電話・カラーテレビジョン・テレビ電話信号の長距離多量伝送の可能性を実証するとともに安定度試験でも良好な成績をえた。

衛星通信方式については,第2電気通信研究所(仮称)に衛星実験所の建設を進めている。

〔部品・材料〕

広帯域サービス用の新しい加入者線をねらいとし,誘導率や誘電損失の小さい発ぽうポリエチレン電線の研究を進め,ガス溶解法により製造速度の早い(従来の約10倍)新しい製造方法を開発した。

高速ICメモリの実現をめざして,Nチャンネル形MOSメモリを試作し,サイクルタイムが従来の1/2(35ナノ秒)の高速メモリを実施した。

トランジスタの高周波化をねらいとして微細構造の電極を製作する方法を開発した。この結果,しや断周波数10GHzのものを製作できるようになつた。

光通信用として,YAGレーザで1.25GHzの安定な超高速光パルスの発振に成功した。またゲリウム素子のパツシベイション(不動態化)技術により超高速の光検波用ダイオードの試作に成功した。また,光調や光偏向に用いる結晶の精密加工技術を確立した。


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