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第2部   科学技術活動の動向
第1章  研究活動の動向
2  組織別の研究活動
(1)  民間企業の研究活動



(1) 研究費

わが国の研究活動において民間企業が大きな比重を占めていることはすでに述べたとおりである。

民間企業の研究活動は,新製品の開発や製造技術の改良などに結びつく開発研究に重点がおかれており,これらの研究は一般に大規模な装置や多数の研究者を必要とするため多額の研究費を要し,かつ,研究が長期間にわたるものが多い。そのため,研究開発に伴うリスクを避けるために従来はとかく安易に技術導入にたよる傾向が強く,研究活動も導入技術の消化,吸収,改良のために行なわれることが多かつた。

しかし,国際競争の激化するなかで自主技術の開発が一層重要になつており,研究活動もこの点を十分考慮して進めなければならない。

第2-6表 会社等の業種別の研究実施会社数

46年4月1日の研究実施会社数は,17,620社で全会社(資本金100万円以上の会社)数の8.8%にあたる。しかし,資本金10億円以上の大規模な企業だけをとれば,会社数871社のうち研究を実施しているのは677社で,77.7%に及んでいる。

研究実施会社数を業種別にみると, 第2-6表 のとおりで,会社数に対する研究実施会社数の割合の高い業種は,化学工業58.1%,石油・石炭製品工業32.3%,精密機械工業26.6%,電気機械工業22.8%などで,逆に低い業種は運輸・通信公益業0.5%,建設業1.4%などである。

また,全産業に占める割合でみると製造業が94.6%とそのほとんどを占めており,なかでも機械工業13.7%,化学工業10.5%,電気機械工業9.8%などが多い。また「その他の工業」が15.8%と高いが,このなかにはプラスチック製品製造業,貴金属,楽器,レコード,装飾品,事務用品などの製造業が含まれ,なかでもプラスチック製造業が多い。

第2-17図 会社等の研究費の推移

産業別の研究費の推移を 第2-17図 に示す。45年度における会社等の研究費は,8,233億円で前年度の6,284億円に対し,31.0%の大幅な伸びとなつたが,これは43年度の33.0%につぐ大きな増加率である。なお,会社等はここ4,5年は30%前後の伸びを維持しつづけており,民間企業における旺盛な研究活動を物語つている。

45年度の研究費を産業別にみると,製造業が92.4%とその大部分を占めている。45年度におけるわが国の業種別の構成比率は, 第2-18図 のとおりで,電気機械工業が27.7%,化学工業が21.3%で,この2業種で全産業のほぼ半分を占めている。この2業種は製造業の中でも研究集約的産業であり,戦後の技術革新の中心的業種であることからみて当然といえよう。これについで自動車工業を含む輸送用機械工業が11.5%,機械工業が8.8%,鉄鋼業が4.4%などとなつている。

第2-18図 会社等の研究費の業種別構成比率(45年度)

次に,45年度の研究費を36年度の研究費を100とする指数で示すと,第2-7表のとおりで,全産業の伸びは502,製造業は532である。業種別にみてその伸びが大きいのは,機械工業831,金属製品工業762,精密機械工業719,その他の工業675,電気機械工業584などで逆に伸びが小さいのは繊維工業281,鉱業226などである。ちなみにこの期間における国民所得の伸びは378であつた。

主要国における業種別の研究費の構成比率を 第2-19図 に示す。航空機・ミサイル工業はアメリカおよびフランスにおいては全研究費の3分の1を占めているが,わが国では輸送用機械工業のなかにわずかに含まれているだけである。西ドイツはわが国と非常によく似た構成比率となつているが,わが国よりも化学工業,自動車工業,航空機工業のウエイトが高くなつている。

第2-7表 指数でみた会社等の研究費の伸び

第2-19図 主要国の産業界の研究費の業種別構成比率


わが国の業種別の研究費を対売上高比率でみると, 第2-20図 に示すように全産業の平均は着実に増加しており,44年度は1.26%,45年度は1.33%である。業種別にみて高いのは電気機械工業で,44年度の2.99%から45年度には3.31%に上昇している。他の業種がここ数年はいずれも伸び悩み傾向をみせているのに対して電気機械工業だけは,着実に増加している。

第2-20図 研究費の対売上高比率の推移

主要国の対売上高比率は全産業でみると, 第2-8表 のとおりで,アメリカ4.1%,フランス3.2%,西ドイツ2.8%とわが国の1.3%よりかなり高くなつている。しかし,これら主要国の研究費のなかには政府負担がかなり含まれているので,企業負担だけについてみると,アメリカ2.4%,フランス1.94%となるが,やはりわが国よりも高率である(西ドイツ,は不明)。航空機・ミサイル工業はアメリカおよびフランスの場合,研究投資額の最も多い産業であるが,対売上高比率でもフランスの32.0%,アメリカの19.3%と他の業種に比べて著しく高い。この航空機・ミサイルエ業は国防上,経済戦略上きわめて重要な業種で,その研究開発も政府の強力な助成のもとに計画的に進められ,研究開発費も大部分が政府資金でまかなわれる特異な業種である。

第2-8表 主要国の業種別研究費の対売上高比率

研究費の費目別割合の推移を 第2-21図 に示す。人件費の占める割合は,36年度の32.7%から徐々に増加し,41年度には44.0%まで上昇したが,その後減少傾向をたどり,45年度には40%を割つた。また,原材料費の占める比率は毎年ほぼ一定であるが,その他の経費は徐々に増加している。

第2-21図 会社等の研究費の費目別割合の推移

第2-22図 会社等の研究費の費目別割合

これを主要国と比較すると 第2-22図 のとおりで,欧米諸国では人件費の割合がほぼ50%でわが国より高い。また,固定資産購入額はわが国が20%前後であるのに対し,主要国ではいずれも10%前後にとどまつている。

わが国の研究者1人当たりの研究費を業種別にみると, 第2-9表 のとおりで,全産業の平均は875万円,このうち製造業の平均は868万円である。業種別にみると,最も高いのは輸送用機械工業の1,478万円で,以下石油・石炭製品工業の1,442万円,運輸・通信公益業の1,399万円,鉄鋼業の1,175万円などとなつている。逆に,低い業種では農林水産業の272万円,出版印刷業の421万円,食品工業の473万円などである。

第2-9表 会社等の業種別の研究者1人当たり研究費


(2) 研究関係人材

46年4月1日の会社等における研究者の数は,111.2千人で,前年の94.1千人に対し18.3%の増加となつており,その増加率は研究機関の2.9%,大学等の8.2%に比べて著しく大きい。産業別にみると,製造業が102.9千人で,ほぼ9割を占めている。製造業のなかでは,電気機械工業が31.2千人て最も多く,ついで化学工業の24.7千人,機械工業の10.6千人と続いている( 第2-10表 )。また従業員1万人当たりの研究者数でみると,全産業の平均は,160人,製造業の平均は194人となつている。業種別にみて多いものは,化学工業の385人,電気機械工業の316人などで,逆に少ないものは運輸・通信公益業の27人,鉱業の60人などである。

第2-10表 会社等の従業員1万人当り研究者数

研究者を専門別に分類すると, 第2-23図 に示すごとく電気・通信・ 機械・船舶,化学の3分野で全体の7割を占めている。

第2-23図 会社等の専門別研究者数

研究関係従業者数は279.8千人で全体の65.2%を占めている。研究者の全体に占める割合が57.2%であるから,研究機関,大学等に比べて研究者以外の研究関係従業者数の割合の多いことがわかる。研究関係従業者の内訳は,研究者が111.2千人で全従業者数の39.8%にあたり,研究補助者が66.6千人で23.8%,技能者が70.9千人で25.3%,その他の関係者が31.0千人で11.1%となつている。


(3) アメリカの新経済政策によるわが国研究活動への影響

46年8月に発表されたアメリカの新経済政策は,わが国の産業界にも大きな影響をあたえており,とくに繊維,造船,機械,電気などの輸出産業において大きいものと予想される。このため,企業における研究開発活動にも,研究費の削減,研究者の削減あるいは採用の中止,研究の中止といつた影響が出はじめている。

科学技術庁において46年10月時点でこれらの影響をアンケート調査した結果は, 第2-11表 のとおりである。これによると,現在すでに何らかの影響があると答えた企業の割合は46%に達しており,さらに今後予想されると答えた企業は,68%にも達している。とくに製造業ではさらに高率となつている。これを業種別にみると,やはり輸出産業にその影響が大きく出ている。すなわち,現在すでに影響がでていると答えた企業の多い業種は,繊雑・紙・パルプ工業52%,化学工業60%,鉄鋼業67%,電気機械工業65%,輸送用機械工業69%などであるが,これらの業種は将来さらに影響が大きくなると答えている。逆に,現在影響が少なく,将来についても影響が少ないと答えている業種は,食品工業,石油・石炭製品工業,建設業,運輸・通信公益業などである。

第2-11表 アメリカの新経済政策による研究活動への影響

次に,研究開発活動に現われた影響の内容をみると, 第2-12表 に示すように,影響があると答えた企業のうち,現在研究費の削減が行なわれた企業が70%,研究テーマを変更した企業が39%もあつた。また,今後影響が,予想されると答えた企業のうち,研究費の削減を予想している企業は59%,研究テーマの変更を考えている企業は56%にも及んでいる。いずれの業種においても,研究費の削減や研究テーマの変更あるいは研究者の削減が予想されており,今後の研究活動に大きい影響が出るものと思われる。

第2-12表 アメリカの新経済政策による影響の内容



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