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第2部   科学技術活動の動向
第1章  研究活動の動向
1  研究活動の概況
(1)  研究費


わが国における研究費の推移(昭和36〜45年度)を 第2-1図 に示す。昭和45年度におけるわが国の研究費の総額は,1兆1,953億円で,前年度の332億円に対し28.1%の大幅な増加となつた。この伸びは岩戸景気といわれた昭和36年度の33.0%に次ぐもので近年にない高い増加率である。


注1)人文科学を除く自然科学の研究活動に限る。


注2)会社等とは法人である会社(資本金100万円以上の会社)および営業を主たる業務とする特殊法人をいう。

研究機関とは国公私営の研究機関および研究開発を主たる業務とする特殊法人をいう。

大学等とは国公私立大学,短期大学,高等専門学校および国立養護教諭養成所をいう。

第2-1図 わが国の研究費の推移

これは国際競争の激化に対処して以前にも増して本格的な自主技術開発への努力が迫られていること,環境問題,都市問題などの例にみられるように新しい研究テーマが生じ,これらの問題を早急に解決しなければならなくなつたこと,研究の分野が複雑化し,多数領域にまたがる研究プロジェクトが出現するなど研究自体が大規模化,高度化して多額の研究投資を必要とするようになつたことなどのためと思われる。

近年における研究費の増加率は,国民所得のそれをかなり上まわつており,とくに42年度以降はめざましい経済成長に支えられて毎年20%を越えており,旺盛な研究活動が行なわれていることを裏づけている。

主要国の研究費を比較してみると, 第2-2図 に示すように,アメリカ,ソ連が他を大きく引き離しているが,わが国は近年の活発な研究活動によつて,西欧諸国との差を著しく縮めてきており,45年度にはわが国の研究費はおそらく西欧諸国を凌駕したものと推定される。主要国の36年度以降の研究費の平均増加率は

第2-2図 主要国の研究費の推移

第2-1表 主要国の研究費の平均増加率

第2-1表 のとおりで,わが国が最も高く,フランス,西ドイツがあとに続いているが,イギリス,アメリカは伸び悩んでおりいわゆる研究費の頭打ち現象があらわれている。次に,研究費を国民所得との比でみると45年度には2.02%となり,初めて2%の大台にのせた。これは前年度の1.89%に対し0.13ポイントの増加であるが,この増加は41年度につぐ高い値である。

主要国の研究費の対国民所得比の推移を 第2-3図 に示す。これによると,アメリカ,ソ連,イギリスが3%台,フランス,西ドイツが2.5%以上となつている。また,ソ連を除く欧米諸国は42年度を境にして伸び悩みの現象を呈している。

第2-3図 主要国の研究費の対国民所得比の推移

これに対し,わが国はすでに述べたように諸外国を大幅に上回る研究費の伸びを示し,絶対額ではこれらの国の多くを凌駕しているが,国民所得の伸びが高いことから2%程度にとどまつている。今後多様化,高度化する社会・経済の要請に応えていくためには研究投資の一層の拡大を図つていく必要があり,科学技術会議の「1970年代における総合的科学技術政策の基本について」に対する答申のなかでも,研究費の対国民所得比率3.0%をめざして1970年代のできるだけ早い時期に西欧の主要国なみの2.5%に到達すべきであろうとしている。

わが国の使用研究費 注) の推移を組織別にみると, 第2-4図 のとおりで,会社等の占める割合が高く,しかも年々高くなる傾向にある。42年度から45年度までの4ヵ年間の平均の増加率をみると,会社等が28.0%で,研究機関の18.8%,大学等の19.9%に比べ著しく高い伸びを示しており,その結果, 第2-5図 にみられるとおり会社等の割合が徐々に増加し,全体の70%に達しようとしている。


注)使用研究費とは会社等,研究機関または大学等の内部で使用した研究費で人件費,原材料費,固定資産購入額およびその他の経費を含む。また,このなかには内部資金による研究費のほかに外部から受け入れた資金による研究費を含むが,委託研究や共同研究などのため外部へ支出した研究費は含まない。

第2-4図 使用研究費の組織別推移

このように会社等,すなわち産業界における研究活動は,主要国においてもそのウエイトが高く,とくにアメリカ,西ドイツにおいては7割を占める。また,研究活動の特徴を主要国と比較してみると,わが国は大学等の占める割合が高く,近年は減少傾向にあるとはいうもののアメリカ,イギリスなどに比べるとまだかなり高い水準にある。なお,アメリカ,イギリス,西ドイツなどでは非営利研究機関 注) が高い割合を占めているが,わが国では1.5%を占めるにすぎない。

第2-5図 使用研究費の組織別割合の推移

第2-6図 国民1人当たりの研 究費負担額

第2-7図 研究費の負担割合の推移

研究費を国民1人当たりの負担額でみると, 第2-6図 のとおりで,アメリカが4.6万円と他を大きく引き離しているが,ヨーロツパの主要国がいずれも1.5万円から2.0万円であるのに対し,わが国は45年度においてようやく1万円台にのせたばかりである。

次に,わが国の研究費の政府と民間の負担割合をみると,第2-7図のとおりで,45年度における政府の負担は3,014億円で25.2%,民間の負担は8,935億円で74.7%となつている。35年度以降41年度までは,政府の負担割合が25.3%から32.0%まで漸増したが,42年度以後は民間企業における研究活動が活発化して民間の負担割合が上昇する傾向にある。


注)非営利研究機関とは営利を目的としない民営の研究機関をさすが,わが国では研究機関のうちの民営と特殊法人の研究機関がこれに相当する。

第2-2表 は,わが国の45年度における研究資金の使用額と負担額をまとめたものである。これをみると政府負担の研究費の大部分が,国公営の研究機関と国公立の大学等の政府関係の組織に,民間のそれは,会社等をはじめとする民営の組織へと流れており,政府と民間の間の研究費の流れは非常に少ないことがわかる。

第2-2表 わが国の研究費の使用額と負担額(45年度)

一方,主要国の政府と民間の負担割合は 第2-8図 のとおりで,政府の負担割合が民間に比べて高くなつている。また,これらの資金の使用額と負担額を 第2-3表 に示すが,欧米の主要国ではいずれも多額の政府資金が民間に流れており,アメリカの場合を例にとると,民間の使用研究費1兆9,800億ドルのうち8,200億ドル(41.4%)を政府が負担している。

第2-8図 主要国の研究費の負担割合

今後の研究開発においては,先導的,基盤的科学技術に関するもの,低生産性部門における技術に関するもの,社会開発関連技術に関するもの,開発途上国のニーズに応えるためのものなど政府が研究費を負担すべき分野が増大することが予想される。

第2-3表 主要国の資金の使用額と負担額


研究費の費目別構成比率の推移を 第2-9図 に示す。これを見ると人件費の占める割合が最も大きく,38年度の42.4%から41年度の46.0%まで徐々に増加してきたが,その後減少に転じ,44%程度となつている。原材料費,その他の経費の占める割合は毎年ほぼ一定しており,人件費の占める割合が高い年度は固定資産購入額の割合が低くなつている。また,組織別にみると,大学等における人件費の割合が高く,45年度は59.3%にも達している。 第2-10図 は主要国における研究費の費目別構成比率を示したものであるが,イギリス,フランスでは人件費の割合が50%に近く,わが国よりも高い。

第2-9図 研究費の費目別構成比率の推移

第2-10図 主要国の研究費の費目別構成比率

性格別に研究費の構成比率をみると, 第2-11図 のとおりで,基礎研究23.3%,応用研究27.6%,開発49.1%で,開発がほぼ半分を占めている。これを主要国と比較すると,いずれもわが国よりも開発に重点を置いていることがわかる。わが国の研究費を組織別にみると,会社等における基礎研究は9,3%と低く,開発が63.5%でその大部分を占めている。これは会社等における研究の主体が製品や製造技術の開発に向けられており当然のことといえよう。また,研究機関においては応用研究のウエイトが高い。

第2-11図 研究費の性格別割合

次に,45年度におけるわが国の研究費を原子力開発,宇宙開発,海洋開発,情報処理および公害防除関係の5分野についてみると,第2-4表のとおりである。

これらの5分野は70年代の科学技術の中核となるべき分野で,原子力開発が409億円で研究費総額の3.4%を占め最も多く,ついで情報処理の313億円(2.6%),公害防除の169億円(1.4%),宇宙開発の162億円(1.4%),海洋開発の54億円(0.5%)となつている。

これを,組織別にみると,原子力開発は主として研究機関で行なわれ,全体の73.9%に達している。宇宙開発は会社等,研究機関,大学等でほぼ均等に行なわれている。海洋開発は研究機関が58.8%,会社等が30.6%を占めている。情報処理は,会社等が95.1%を占め,ほとんどの研究を行なつている。

第2-4表 目的別研究費(45年度)

第2-12図 研究者1人当たり研究費の推移

最近,技術開発が強く要請されている公害防除関係では,169億円のうち88.3%を会社等て行なつており,研究機関および大学等の占める割合はきわめて小さい。近年,公害問題は,大きな社会問題となつており,その早急な解決が叫ばれている。このため,公害の発生源とみなされている企業がその責任において問題の解決を図るため積極的に努力しなければならないが,他方,最近の大気汚染,水質汚濁,騒音,振動,悪臭,地盤沈下などの公害にみられるように問題が複雑化し,かつ,広範多岐にわたるにいたつていることなどから政府が自ら研究し,解決策を講ずべき問題が多いといえる。そこで,国公立研究機関や大学においてすでに公害防除に関する研究開発が積極的に実施されつつあるが,その緊急性,重要性の高いことにかんがみ,引きつづき強化拡充が望まれる。

第2-13図 主要国の研究者1人当たり研究費

おわりに,研究者1人当たりの研究費注)の推移( 第2-12図 )をながめてみよう。45年度は平均695万円で,前年度の594万円に比べて17.0%増加になつている。組織別では会社等が875万円で最も多く,大学等が394万円で最も少なくなつている。なお会社等は大学等を上まわる伸びで増加しているので,両者の差はさらに拡がる傾向にある。


注)研究者1人当たり研究費とは当該年度の研究費を当該年度の始まる4月1日現在の研究者数で除したものである。

これを主要国と比較すると, 第2-13図 のとおりで,フランスが1,803万円で最も多く,アメリカ1,641万円,カナダ1,541万円と続き,わが国はソ連とともにかなり低い。


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