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第1部   科学技術への新たな要請とそれへの対応
第3章  科学技術における国際協力の展開
2  国際協力に対する要請とそれへの対応
(3)  全地球的問題に対する協力


先進国,開発途上国をとわず,環境汚染問題に代表される全地球的な問題に対する国際協力が強く要請されているのも近年の特色である。

まず, 1972年6月ストックホルムにおいて開催予定の「国連人間環境会議」に代表される人間環境問題に対する一連のアプローチがある。

その問題は1965,1966年ECOSOC理事会において「環境汚染」および「環境の保全と合理的利用」の二つの相関連した問題として討議されたのが発端であり,その際,世界保健機関(WHO),国連食糧農業機関(FAO)から各国における環境汚染問題の実情,この分野での国際協力の必要性等にふれた報告書が提出された。それを契機に環境問題が国際的に論じられるようになり,1968年5月のECOSOCにおいてスエーデンから「国連人間環境会議」の招集が提案され,7月の理事会で開催が決議され,その年の第23回国連総会において実施が決められたものである。

この「国連人間環境会議」はその目的を「人間環境を保護改善するため先進国政府および国際機関によつてとられるべき措置を奨励し,そのためのガイドラインを提供するとともに開発途上国に対しては,このような問題の発生を予め防止せしめることの特別の重要性に留意しつつ,国際協力により人間環境への被害を除去し,防止するための具体的手段として役立てること」とし,全世界的参加を呼びかけており,現在準備委員会を中心に会議開催の準備が進められている。

わが国としても,「国連人間環境会議」の準備段階で積極的な協力を行なつており,わが国の環境問題を全般的な角度からとりまとめた報告書を作成し事務局に提出している。

また,OECDの大気管理研究セクターグループ(環境委員会)が昭和47年9月ごろ東京で開催される予定であり,大気汚染のモニタリング,汚染防止技術の開発などの分野でめざましい成果をあげているわが国は同グループ会合で大きな貢献をなしうるものと期待されている。

このほか,環境問題はユネスコ,世界保健機関(WHO),国連食糧農業機関(FAO),政府間海事協議機関(IMCO),国際民間航空機関(ICAO)等の専門機関をはじめ,二国間においても検討が進められており,わが国はこれらの環境問題に関する国際協力に積極的に参加している。

次に,この分野における特異な活動として,ローマクラブ(60頁の注参照)は,科学技術の進歩が人間社会に及ぼす影響のなかには,破壊的な要素(天然資源の枯かつ,環境破壊,食糧不足等)も多く含まれており,科学技術の進歩変化に押し流されていると人間社会は大きな危険にさらされる可能性のあることを種々のシステム分析によつて明らかにし,その処方せんをまとめようとしている。これらの活動は,世界の知識人の国際的協力によつて科学的立場から取り組まれ,わが国からも経済学者,科学者,経済人がこれに参加しており,人類繁栄の危機に対する世論の喚起と国際協力による迅速かつ的確な対策を訴えている。同クラブの当該分野における業績は,国際社会で高く評価されており,国際機関の活動内容にも大きな影響を及ぼしている。

さらに国際共同事業についてみると,地球科学関係では,ICSU等による地球大気開発計画(GARP),国際地球内部開発計画(UMP)などがあり,1973年からはユネスコにより国際地質対比計画(IGCP)が発足しようとしている。

また,生物科学では,国際生物学事業計画(IBP),「人間と生物圏(MAB)に関する政府間事業計画」がそれぞれICSU,ユネスコで行なわれている。

これら事業は,いずれも人類の環境としての地球およびその資源や実態を明らかにし,人間と自然のバランスのもとに自然の合理的利用と保全を行なう科学的基礎を提供しようとする目的をもつており,昭和47年6月開催のストックホルム国連会議の開催と関連がある。同会議の結果は,両計画の事業計画に盛込まれる予定であり,わが国もこれら問題の重要性にかんがみ,日本学術会議に特別委員会を設置するなどして積極的に参加,貢献している。

このほか,世界科学情報システム(UNISIST)の構想がユネスコで固まり,1973年には活動を開始する予定であるが,わが国もそれに対応する国内の科学技術情報の体制整備を進めるとともに,他の国際機関との連絡調整を図りながら,同システムに積極的に参加しようとしている。

以上,国際協力の新たな展開への動きについてみてきたが,これらの協力の実効をあげていくためには,つねに科学技術をとりまく国際的動向を十分にみきわめ,わが国が国際社会の一員として協調と相互協力の精神をもとに国際社会に貢献し,あわせてわが国の発展と福祉に資するという態度で国際協力に臨むことが,必要と考えられる。

次に,効果的な国際協力は整備された国内体制,国内の研究活動のもとにはじめて可能であるといわれており,今後国際協力を拡充強化していくためにはこの面での整備充実が不可欠である。

さらに,わが国が今後国際協力とくに共同研究開発や研究協力などを積極的に推進していくためには,国際機関でも提唱されているセントラルファンディングの構想について検討する必要があると考えられる。

なお,現在科学技術会議は,「国際協力における研究開発目標の策定について」検討を進めており,今後の研究開発のための国際協力の指針が打ち出されるものと期待されている。

最後に,先進諸国間における科学技術協力から全地球的な問題に対する科学技術協力まで広範多岐にわたる国際協力を成果あるものにするには,政府自らが格段の努力を払うとともに,国際協力によつて国際社会に果たすべきわが国の責務あるいは役割について国民一般の理解と協力をうることが何よりも重要になつてきている。


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