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第1部   科学技術への新たな要請とそれへの対応
第3章  科学技術における国際協力の展開
2  国際協力に対する要請とそれへの対応
(2)  相手国の要請に応える開発途上国との協力


開発途上国との科学技術協力の中で最も重要なものは国連における活動である。

すなわち,「第2次国連開発の10年(UNDDII)」の発足に伴う1970年代の国際開発戦略の決定,さらにこれを具体化する「開発への科学技術適用のための世界行動計画」の提案といつた一連の動きがある。

1966年経済社会理事会(ECOSOC)が「第1次国連開発の10年(UNDDI)」後の問題について決議して以来,ECOSOCの諮問機関である開発計画委員会(テインバーゲン委員会),科学技術適用諮問委員会(ACASTD),国連貿易開発会議(UNCTAD)などでUNDDIIについて検討が進められてきたが,1968年の国連総会において,UNDDIIに関する作業を統一的に行なう機関として準備委員会が設立され,1970年1月にはUNDDIIについて作業を続けてきたテインバーゲン委員会から報告書の提出をうけて,同準備委員会は1970年5月,UNDDIIにおける国際開発戦略案をとりまとめた。これは,同年7月ECOSOC,8月のUNCTADの貿易開発理事会を経て国連総会に送付され,1970年10月の国連創設25周年記念総会において採択された。

この国際開発戦略の内容のうち,特に注目される点は,開発における科学技術の役割の重視,明確化である。同開発戦略では,その前文において現代は科学技術の進歩により,開発の加速化と成果の平準化に対して,史上例をみない挑戦の機会が提供されている時代であり,国際社会が一致団結してこれを受けて立つべきことを説いている。また,科学技術分野については,科学技術の急速な進歩が南北問題の解決に重要な役割を果たしうるという認識に基づいて,その移転,育成の緊要性を強調し,先進国の協力を要請するとともに,その達成のため開発途上国自身のこの分野における研究開発費の支出努力目標としてGNPの0.5%を設定している。

一方,このようなUNDDIIにおける国際開発戦略の目標を達成する具体的方策については,他の国連機関の協力を得てACASTDを中心に検討が進められてきた結果,1971年7月「開発への科学技術適用のための世界行動計画案」として第51回ECOSOCに提出された。この世界行動計画は2部からなり,第1部では第1-9表に示すように,13の優先研究領域と既存知識の適用に関する優先領域8項目を提案するとともに,開発途上国がもつている国有の科学的,技術的能力の育成が必要であることを述べ,これらを達成する量的目標として,

1) 開発途上国は自らの研究開発費をGNPの0.5%まで拡大すべきこと。
2) 先進国は開発途上国に対する科学技術援助をGNPの0.05%まで増大すること。
3) 先進国はその非軍事的研究開発費の5%を開発途上国のために振向けることを要請するとともに,最後に世界行動計画基金または勘定の創設を提案している。また,第2部には科学技術政策および機構,科学技術教育,天然資源,食糧と農業,産業,運輸,通信等10分野にわたつてその具体的推進方策が述べられている。
第1-9表 世界行動計画における優先研究領域等

このように,開発途上国との科学技術協力の問題が,国連を中心として大きくとりあげられており,討議の結果はいろいろの形の要請となつて現われているが,これらの要請に対して,わが国の協力内容にもいくつかの変化がみられる。

まず第1に,従来はともすれば市場の開拓や資源確保といつた目先の効果を狙つた協力が多いという印象を相手国に与えてきたが,今後は開発途上国の自助努力と結びつけて外面的な協力を推進していくことが必要であり,とくに科学技術教育・文化・保健衛生・医療・輸送・通信等の社会基盤の分野に対する協力にも重点をおいていかなければならないという認識が強まつている。現在わが国が中心となつて設立準備を進めている東南アジア医療機関(South East Asian Medical and Health Organization)の構想はその動きの一つといえよう。また教育面では研修生,留学生の受入れの面で,研修機関の整備,研修指導者の資質の向上,研修生の待遇改善さらに帰国後も継続して指導援助を行なうなどの問題について検討が進められている。

第2に,従来の協力方式はわが国の科学技術を開発途上国に移植することに力点がおかれてきたが,今後は,それぞれの国,地域に最も適合した科学技術を相手国に現存する科学技術の芽から育成するという方向に転換されようとしており,その手段として,研究協力が重要視されてきている。最近における研究協力の例をみると,医療の分野では,フィリピンとの間にコレラに関する研究協力が,また農業分野では,インドネシアとの食用作物主要病害に関する研究協力が推進されている。一方,国内では,昭和45年農林省に熱帯農業研究センターが設立されたことは,開発途上国のための研究を国内で実施する体制として特筆される。

いずれにしても,研究協力,技術協力においては,相手国の真のニーズを把握し,当面の問題解決に終らず相当程度長期的な観点に立つた協力を基本とする態度が必要である。

第3に,科学技術協力の効果的推進を図るために,タンザニアの総合開発計画などにみられるようなプロジェクトの計画化,すぐれた専門家の確保,現地主導型の実施体制の確立,国内の協力支援体制の確立などが急務となつてきている。とくにこれまでの協力の過程で明らかにされた人材不足および海外での待遇問題については,,派遣専門家を国内においてあらかじめ確保しておく専門家プール制度,派遣された専門家の給与を保障する所属先補顛制度などにより有能な人材を派遣できよう条件整備が図られている。

第4に,協力事業を開始するにあたつては,徹底した事前調査により,社会構造,生活習慣,科学技術事情等を十分把握し,さらに相手国との対話を通じて彼らの要請や目ざす目標を察知し,その中から可能性のある有効妥当な方途を探りだし,プロジェクト化していくことが,重要となつてきている。従来から種々の機関によつて,開発途上国に関する一般的な調査研究が行なわれているが,今後,開発途上国との科学技術協力を効果的に推進していくためには,とくに相手国の科学技術事情について組織的な調査が必要であり,この目的に沿つて,科学技術庁,通商産業省等が調査を手がけている。


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