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第1部   科学技術への新たな要請とそれへの対応
第2章  動き出した70年代の科学技術活動
2  テクノロジー・アセスメントの確立への努力
(2)  海外における動き


アメリカにおいては,方法論開発のケース・スタディ,テクノロジー・アセスメントの実施システムについての概念設計などの予備検討から議会のテクノロジー・アセスメント法案の審議に至るまで幅広い,しかも奥行のある検討が行なわれている。

まず,議会関係では,テクノロジー・アセスメント法案がすでに科学研究開発小委員会および科学宇宙委員会を満場一致で通過し,1972年2月には下院本会議で可決された。

このような議会の動きに合わせて行政部門においても,それぞれの行政目的に沿つてテクノロジー・アセスメントの検討を行なつており,大統領府科学技術局(OST),国立科学財団(NSF),航空宇宙局(NASA)などが各種のケース・スタディを外部に委託している( 第1-3表 )。

第1-3表 アメリカにおけるケース・スタディ

また,1969年に成立した国家環境政策法は,連邦政府のすべての機関が人間の環境に相当な影響を与える立法その他の主要行動をとる際には,まえもつて環境に対する影響を克明に調ぺ,その調書を提出することが必要であると規定している。この調書は関係官庁の意見が付されて,環境審議会に提出され,公表されることになつている。これは環境への影響に限定したテクノロジー・アセスメントともいえるもので,このほかにも同様の規定を盛込んだ海洋保護法案および有毒物質法案などの法案提出の動きがあるが,これらはテクノロジー・アセスメントに対する関心を高め,方法論の開発に大きな刺激を与えている。

テクノロジー・アセスメントの方法論開発についてその必要性が強く叫ばれている一方,一般的な方法論の開発よりも既存の技術予測手法,システム分析手法等を適用すれば,十分実用化しうるとの考え方も強く,NSFの補助金によるケース・スタディでも,一般的,方法論の開発というよりもケースごとの手法の開発を主目的とした事例が多くなつている。

しかし,一般的な方法論開発のためのケース・スタディも積極的に行なわれており,その代表例としては,議会の委託による全米工学アカデミー(NAE)の成果と大統領府科学技術局(OST)の委託によるマイター社(MITRE)の成果がある。マイター社は,自動車排気,工業用酵素,海洋農場,家庭排水による水質汚濁およびコンピュータ通信システムについてのケース,スタディを取りまとめるとともに方法論についての提案を行なつている。

このようにテクノロジー・アセスメントに関する関心が高まるとともに,各地の大学でテクノロジー・アセスメントの手法開発に自らたずさわると同時にそれについての講義が行なわれるようになつている。多くは科学政策等の一部として講義が行なわれているが,テクノロジー・アセスメントを主題とする講義もかなり行なわれるようになつてきている。一方,国際機関などでもテクノロジー・アセスメントに対する関心が高まつており,昨年10月に開催されたOECD科学大臣会議における日本代表の発言の趣旨に沿つてテクノロジー・アセスメントに関するセミナーが本年1月に開催されたほか,北大西洋条約機構(NATO)でも本年9月にイタリアのミラノで,テクノロジー・アセスメントに関する専門家会議の開催を予定しており,ケース・スタディと方法論について討議を行なうことになつている。また,ユネスコでも同様な会議の開催が企画されている。

このようにテクノロジー・アセスメントは,世界的に関心を集めるようになつてきたが,現在のところ必ずしもその概念や,手法は確立されておらず,まだ試行錯誤の段階にあるといえる。しかし,このような考え方は,政府,民間を問わず,今後の技術開発計画にはぜひとも組み込まれなければならないものであることは明らかである。


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