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第1部   科学技術への新たな要請とそれへの対応
第2章  動き出した70年代の科学技術活動
2  テクノロジー・アセスメントの確立への努力
(1)  わが国における動き


わが国におけるテクノロジ・ーアセスメントの確立への動きはまだその緒についたばかりで,その対象技術や一般的手法などについては,目下鋭意検討が進められている。政府関係では,まずいくつかの技術分野についてケース・スタデイを行ない,その後にアセスメントを実施すべき範囲の決定や,一般的な方法論を開発することにしている。アメリカでは,すでにかなりの数のケース・スタデイが実施されており,そのいくつかは完成しているが,国情の違うアメリカの手法をわが国にそのまま適用することは必ずしも適当とはいえないので,わが国独自の方法論開発を目指してケース・スタデイを開始している。

このようなケース・スタデイは,政府関係のほか,公社や民間のシンクタンクあるいは一般企業でも,それぞれの立場から実施されており,近い将来その成果がでるものと期待さたている。

そこで代表例として科学技術庁と通商産業省で検討されているケース・スタデイについて,その考え方と進め方について紹介してみよう。

科学技術庁では,46年度からケース・スタデイを開始したが,初年度は技術の分野,影響度,普及度などを考慮して農薬,高層建築,CAI(Computer Assisted Instruction)の3テーマを選んだ。

これらの3テーマについて,その社会的な影響をみると,「農薬」はすでに環境汚染源の一つとして問題が顕在化しており,各種の対策が実施されている技術分野であり,「高層建築」は現在わが国において次第にその社会的な影響が問題にされ始めている技術分野である。また,「CAI」は現在のところ研究開発段階の技術であるが,近い将来実用化が予想され,教育分野を中心に大きな社会的な影響の考えられる技術分野である。これら3テーマのケース・スタデイの実施にあたつては,それぞれのテーマの性格上最も適当と思われる手法によつて実施し,ケース・スタデイの終了時に改めて,一般的な手法を検討することにしている。現在進められているケース・スタディは,おおよそ次の順序で実施されている。

1) 対象技術の範囲と目的の明確化
2) 経済社会および技術に関する関連データの収集
3) 主効果の分析
4) 副次効果の明確化と評価
5) 対応策の検討
6) 総合評価

そこで,テーマごとにその進め方をみると,「農薬」では,新しい農薬のもつ毒性と残留性によつて,人間や環境にどのような影響を及ぼすかを調べるためにその影響を受ける分野を 1)人間(身体,心理など),2)環境(土壌,水,空気など),3)社会(農民,地域住民,消費者など),4)産業(農林水産業,農薬関連産業など)に分け,検討することにしている。

「高層建築」では,建物の高層化にともなつて,日照権,交通事情の悪化,犯罪,プライバシーの侵害など,今までみられなかつた新しい種類の影響が出はじめており,これらの影響を調べるためにその影響をうける対象を 1)居住者(居住性,プライバシー,火災災害など),2)周辺居住者(乱気流,日照権,電波障害,交通など),3)都市全体(公園,都市サービス,土地問題など),4)産業(鉄鋼業,不動産業など)に分け,各々について検討を行なつている。

一方,「CAI」は,また技術的にも開発の緒についたばかりであり,今後,教育分野でその重要性が高まつていくものと思われるが,他方学習者と教師との人間的つながりの欠如,人と人との対話の減少などのいろいろの問題が生じてくるものと予想されている。そこで,影響をうける対象として,1)人間(学習者,教育者など),2)教育機関(学校,企業,家庭など),3)学問および技術(教育工学,生理学,コンピュータなど),4)産業(コンピュータ・メーカー,ソフトウエア・メーカーなど),5)環境(自然,社会,生活など),6)教育(学校教育,社内教育,社会教育など),7)国および地方公共団体の7分野を想定し,これらの対象がどういう面で影響を受けるかについて調べるため,たとえば,1)人間(学習者,教育者など)については,(イ)心理面,(ロ)身体面,(ハ)経済面,(ニ)教育面,(ホ)宗教,信条,思想面,(ヘ)労働面,(ト)安全面でどのように影響を受けるかを検討することにしている。

評価は,副次的影響とその対応策を検討するために,できるだけ定量的に行なわれることが望ましい。しかし,副次的影響は自然環境に及ぼすものや人間の身体面,心理面に及ぼすものなど非常に広範囲にわたるので,現在のところこれらの影響を一括して定量的に把握することはきわめて困難である。

一方,通商産業省では,省内にテクノロジー・アセスメント研究会を設置し,対象課題の選定方法,評価の手法ならびに評価結果の活用方法などについて検討を開始している。

課題の選定については,社会的,経済的影響が大きいことなどの基準をもとに行ない,当面のテーマとして原子力利用製鉄,新送配電技術,海底鉱物資源採取法,海底沖合発電所を選定し,これらのテーマについて各々2年間でケース・スタディを行なうことによりテクノロジーアセスメントについての理解を深め,政策への適用のための基礎づくりを行なおうとしている。このため,46年9月に原子力利用製鉄に関するワーキングループを発足させ,情報を収集するとともに,当該テーマに関しテクノロジー・アセスメントの方法論および実施について研究を進めている。

ワーキンギグループの活動は,まず原子力利用製鉄に関して専門家の意見を聴取して将来の技術がどんな範囲にいかなる影響を与えるかを整理し,つぎに,その影響を,経済性,安全性,環境問題,省資源性,他産業への影響および技術面などに分類し,さらにこれらの影響について次のような考察を加えることになつている。


これらの検討をもとに手法を開発し,将来は新技術に対するテクノロジー・アセスメンを行なうことにしている。


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