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第1部   科学技術への新たな要請とそれへの対応
第2章  動き出した70年代の科学技術活動
1  社会的要因を重視する研究開発への動き
(3)  多分野の連携への努力


公害,都市問題などのように,様々な要素がからみ合つて複雑な現象を呈しているいわゆる現代社会の諸問題を科学技術の適用によつて解決していくためには,多分野の専門的知識の連携が極めて重要となつてきている。

第1-15図 多分野の専門知識の結集の重要性

第1-15図 は,近年の研究開発は多分野の専門家の連携によつて取り組んでいくことが重要になつてきているか否かを,実際に研究開発を行なつている民間企業にアンケート調査した結果を示したものであるが,96%の企業が重要となつてきていると指摘している。また, 第1-16図 は,その連携がどの範囲に及んでいるかを示したものであるが,それによると自然科学分野の範囲内でが,44.4%,自然科学分野に止まらず,人文科学分野にもおよぶ範囲が55.6%という結果がでている。

このように,近年の研究開発は多分野の研究者の連携によつて取組んでいくことが重要となつており,特に研究者の専門知識の連携が,人文科学分野にもおよんでいる。

第1-16図 多分野の専門知識の連けいの範囲

こうした事態に対処して,研究を効率的に行ない,現在当面している諸問題ならびに将来生じるであろう様々な問題を解決していくためには,それなりに多分野の研究者がそなわつていることが必要である。そこで,研究人材の確保の面からその現状をみてみよう。

第1-17図 は,多分野の専門的知識を得るために必要な人材の確保の程度を示したものであるが,これによると不足している企業が最も多く,全体の60%を占めており,十分でないが一応確保しているが38.7%を占めているものの十分確保しているのはわずか0.7%に過ぎない。この調査は,人材獲得が比較的容易な資本金10億円以上の民間企業を対象にしたものであるため,実際はもつと不足している企業の比率が多いものとみられる。

第1-17図 多分野の専門知識を得るために必要な人材の確保の程度

不足している専門分野をみると,自然科学部門では業種によつて大きな違いがあるが,全体では電気・通信の人材不足を訴えている企業が最も多く,ついで機械・船舶・航空,土木・建築,化学,数学・物理などの不足を訴えている企業が多い。一方,人文科学部門ては心理学の人材不足を訴えている企業が最も多く,業種別にみても大部分の業種が心理学の人材不足を最も多く訴えている( 第1-18 , 第1-19図 参照)。

第1-18図 自然科学分野における専門分野別の研 究者不足状況(企業数比率)

このことは,近年の科学技術が解決しなければならない近年の問題が,人間の心理などにも関連する場合が多くなり,問題解決には人文科学分野の知識の助けを得なければ十分な成果をあげられなくなつていることを物語つているといえよう。

こうした多分野にわたる連携の必要性と研究人材の不足といつた背景のもとに現在当面する諸問題ならびに将来の要請に応えていくためには,研究開発において,国公立研究機関,大学,民間研究機関などの個々の研究所内ではもちろんのこと,これら研究機関相互の研究者の交流や共同研究を積極的に行なうことが有効な方法であろう。

第1-19図 人文科学分野における専門分野別 の研究者不足状況(企業数比率)

このような観点から,つぎに共同研究,研究者の交流などによる専門知識の連携について現状をながめてみよう。

第1-20図 は,工業技術院傘下の試験所と民間企業との共同研究の件数の推移をみたものであるが,その件数は年々増大している。また,研究者の交流を積極的に行なうため,工業技術院と農材省は流動研究員制度を設け,科学技術庁では流動研究官を置き,実績をつむにつれて,研究者の知識の向上や研究開発の一層の効率化などの面に成果が見えはじめてきている( 第1-21図 参照)。

第1-20図 工業技術院試験研究機関(15試験所) の対民間企業との共同研究推移

第1-21図 流動研究員の推移

一方,民間企業においては,不足している専門的知識を大学や試験研究機関あるいは他の民間企業の専門家から導入し,研究開発を行なつているが,自然科学分野における不足については,自社以外の者,とくに,大学の先生から知識を得ている企業が非常に多いのに対して,人文科学分野においては,他の民間企業の研究者から30.3%,自社の研究者者以外の者から29.4%,大学の先生から27.3%とほぼ均衡した割合を示している( 第1-22図 , 第1-23図 参照)。

第1-22図 不足分野の専門知識の導入先 (自然科学)

第1-23図 不足分野の専門知識の導入先 (人文科学)

このように人文科学分野で,自社の研究者以外の者から専門的知織を得ている比率が3割近くもあることは,研究開発において,人文科学分野の専門的知識の必要性が大きいにもかかわらず,現在のところ,自然科学分野の研究者と一緒に本格的に研究開発にたずさわつているケースが少ないことをあらわしているといえよう。

次に,共同研究の動向をみると, 第1-24図 にみられるように,35年項すでに70.9%の企業が共同研究を行なつていたものが,最近ではほとんどの企業が共同研究を行なうようになつており,個々の企業の共同研究の件数も,5〜6年前に比べて著しく増加してきている( 第1-25図 参照)。

第1-24図 共同研究の有無

第1-25図 共同研究の増減

以上述べてきたように,政府ならびに民間企業では,ますます複雑化しつつある諸問題を,より多くの専門的知識の結集によつて解決しようとする動きがみられるが,今後一層多分野の連携を強化していくためには,不足している研究者の育成充実が必要であり,さらに研究者は今日の科学技術に課せられた問題の性格,科学技術の社会・経済に与える影響力の大きさを十分に認識して,その責務に応えていく必要がある。


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