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第3部   政府の施策
第2章  政府機関等における研究活動
2  特殊法人研究機関における研究活動
(2)  特殊法人研究機関の研究成果


特殊法人研究機関においても国立試験研究機関と同様,それぞれの分野で貴重な研究成果をあげている。以下,昭和44年度および昭和45年度を中心とした主な研究成果についてその概要をみることとする。


(1) 理化学研究所

〔原子核〕

宇宙線の観測と研究,サイクロトロンを用いた原子核の研究,核融合の基礎的研究によつて,新しい放射性同位元素100Ag,104nの発見,医学的に重要な同位体18F,52Feの製造法の確立,85Srの高純度分離法の考案などの基礎的な成果を得た。

〔物性物理〕

高分子,金属,結晶など物質の物性については,フェライトをX線診断用の造影剤に利用することの可能性を見出した。

〔応用物理〕

新しいプラズマジェット発生装置の開発,電子計算機端末装置としての画期的な高精度,高分解能ブラウン管の開発などの成果を得た。

〔基礎工学〕

機械,精密加工,半導体工学さらに化学工学の分野では,振動切削法の開発あるいはプラスチック薄板の常温塑性加工の実用性を明らかにしたことなどの成果を得た。

〔無機化学〕

基礎応用の研究で,2ホウ化チタンの単結晶の育成,半導体ケイ素中の超微量不純物の放射化分析法の確立,ガス拡散法によるウラン濃縮のために有効な隔膜の試作の成功などの成果があつた。

〔有機化学〕

有機化学反応,触媒などにつき基礎,応用の研究を進め,先に注目されたイソプレンの直接合成法の開発に続いて,プロピレンよりアクリル酸およびそのエステル類の製造法の開発に成果をあげた。

〔生化学〕

生化学的反応および反応物質の構造等の研究では,DNA鎖切断に関する新しいタイプの酵素の発見などの基礎的,学術的な成果を得た。

〔農薬部門〕

微生物,昆虫,植物などの生物作用,薬物の薬理作用について,多くの基礎的知見を得ており,これによる新農薬の創製では,殺菌,抗ウィルス剤として有望な新抗生物質アアボマイシンの発見,その他数種の有望な化合物の合成などの成果を得つつある。


(2) 日本原子力研究所

〔原子炉の開発〕

高速増殖炉および新型転換炉については,国のプロジェクトへの協力として動力炉・核燃料事業団からの受託研究を中心に研究をすすめているが,高速炉臨界実験装置(FCA)を用いたプルトニウム炉心による臨界実験技術の確立,新型転換炉の炉心設計コード(ATRASS)の体系化,ナトリウム循環ループによる長時間連続腐食試験,高速炉核特性解析群定数セット(JAERI―FAST)の体系化などについて成果を得た。また,ウラン・プルトニウム混合酸化物および炭化物系燃料を中心とした物性研究および照射研究,バナジウム合金などの改良被覆材の研究を行ない,それぞれ有用な知見を得た。

軽水炉については,動力試験炉(JPDR)の倍出力密度達成のための改造計画(JPDR-2計画)が進行中であり,安全審査に関連した圧力容器の安全性の試験研究の結果,安全を確認する結果を得た。また,プルトニウム燃料の軽水型動力炉への利用に関する軽水臨界実験装置(TCA)を用いての炉物理実験,ハルデン炉による軽水炉燃料安全性限度試験のための燃料設計,大型モックアップ装置(ROSA)による軽水冷却材喪失事故模擬試験などを行ない,有用な知見を得た。

〔核融合・ウラン濃縮〕

核融合研究では,低ベータ軸対称性トーラス磁場装置(JFT-1)の実験で,プラズマ入射方式によるプラズマのドリフト運転と安全性について有用な知見を得た後,電子サイクロトロン共鳴加熱方式による実験では,プラズマ密度分析のダブルピークの原因究明を行なつた。また,  JFT-1のプラズマ損失を分析する実験を行ない,真空容器からの損失割合が大きいことを明らかにした。

ガス拡散法によるウラン濃縮研究については,濃縮工程の最適化のためのシステム解析,六弗化ウラン循環ループの概念設計を行なうとともに,耐六弗化ウラン材料試験などについて検討をすすめた。

〔放射線化学・食品照射〕エチレンの気相重合開発試験については,重合における圧力,反応温度など各種因子の影響,効果を明らかにしたほか,得られた粉末ポリエチレンの用途開発試験および基礎物性試験を行ない,基礎資料を得た。

トリオキサンの固相重合開発試験については,同時安定化ミゼット装置により,製品の曲げ強度と衝撃強度向上をねらつて重合試験を行ない,実用化の技術的検討に一段階を画した。

また,プラスチックの改質開発試験については,ポリ塩化ビニールおよびポリエチレンの物性向上の工学的検討を行なつた。このほか,繊維のグラフト重合,高分子材料の放射線橋かけ強化,アクリロニトリルの放射線重合による炭素繊維の製造研究,四弗化エチレンとプロピレンとの共重合によるエラストマーの製造研究などを行ない,それぞれ有用な知見を得た。

食品照射研究については,原子力特定総合研究として,米,トウモロコシ等の貯蔵試験を行ない,資料を得た。

〔アイソトープ利用〕

アイソトープの利用分野を開拓する開発研究については,大気汚染測定法の研究,水質汚濁物質の検出と汚染源追跡方法の研究,非破壊測定法の研究などを行ない,これらの成果を,石油パイプラインの移動隔壁のイリジウム線源による探知方法,千葉石油コンビナートでの拡散物質の調査,ジェット機エンジンのイリジウム線源による検査法などに適用し,開発技術の実用化をはかつた。


(3) 日本原子力船開発事業団

〔原子力船〕

わが国の原子力第1船「むつ」の開発については,昭和42年11月,メーカーへの発注以来建造工事が進められている。

原子力船「むつ」は船体の建造,タービン主機関,甲板,機械など原子力炉部機器を除く主要機器の搭載,二次遮蔽の取付けおよび打設などの船体工事を完了して,昭和45年7月事業団へ引渡され,青森県むつ市の定係港へ回航された。その後,定係港において,船体工事と併行して,製造が行なわれていた原子炉機器の搭載,ぎ装工事が進められている。


(4) 動力炉・核燃料開発事業団

〔高速増殖炉〕

昭和60年代初期に,高速増殖炉を実用化するための実験炉(49年臨界)9原型炉(53年頃臨界目標)の建設設計に関する研究を進め,高速増殖炉の冷却材であるナトリウムについては,高温ナトリウムの伝熱流動特性,ナトリウムの原子炉機器材料におよぼす影響などについて研究を行ない,また,炉物理実験,設計コードの開発,遮蔽研究,計測制御,ナトリウム機器の開発なども行ない,これらの成果は原子炉本体の設計,製作に反映されつつある。

高速実験炉(第1期出力5万キロワット)は昭和45年2月,原子炉等規制法に基づく設置許可を受け,同年3月,茨城県大洗町に建設を開始した。また,高速増殖原型炉は第1次設計が終了した。

〔新型転換炉〕

核燃料の利用効率の高い新型転換炉開発のため,大洗工学センターにおいて重水臨界実験装置を用いた炉物理実験ならびに伝熱流動試験施設および部品機器試験施設を用いた燃料集合体の伝熱流動試験を実施したほか,設計コードの開発,安全性実験などを行ない,その成果を原型炉(50年臨界目標,電気出力16万5千キロワット)の二次設計に反映させた。

この原型炉は,昭和45年11月原子炉等規制法に基づく設置の許可を受け,福井県敦賀市に建設を開始した。

〔再処理施設の建設〕

原子力発電所の使用済燃料中の有用物質であるウランおよびプルトニウムを回収し,あわせて有害な放射性核分裂生成物を安全に処理するため,使用済燃料を処理する再処理施設を昭和49年度に操業開始させる計画であり,このため,同事業団では茨城県東海村において昭和45年度内に再処理施設の建設に着手する予定である。

〔遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発〕遠心分離法によるウラン濃縮技術の研究については,引続いて3号遠心分離試験装置によるウラン分離試験を実施し,さらに六弗化ウランガスの抜出し方式を変えた4号遠心分離装置の製作を進めた。

また,高性能軸受,軸封,回転胴などさらに開発を進めるべき遠心分離装置の構成要素についての開発試験を行ない,有効な資料を得るとともに濃縮工程の最適化のためのシステムの解析およびシステム試験装置の設計を進めた。

〔国産ウラン資源による一貫製錬法の確立〕動力炉・核燃料開発事業団が独自に開発したウラン製錬法(PNC法)の技術の確立をはかるため,人形峠鉱山山元に小規模のプラントの建設を行ない,操業を開始した。


(5) 宇宙開発事業団

〔人工衛星〕

電離層観測衛星について,ブレッドボードモデル,熱モデル,構造モデルなどによる最適システムの検討,コンポーネント部品等の試作および疑似宇宙環境下の試験ならびにそれらの成果をもとにしたエンジニアリングモデルの試作試験などを行なうとともに,プロトタイプモデルの開発を進め,フライトタイプモデル設計製作のための貴重なデータを得た。

また人工衛星の高性能追跡装置の開発としてレンジアンドレンジレート追跡装置の部分試作を行なつた。

〔ロケット〕

人工衛星打上げ用ロケットエンジンについては,地上推力約3.5トンの液体ロケットエンジンを試作し,地上燃焼試験を行なつて,冷却方式,燃焼室の機構,燃料および酸化剤の吹きこみを行なうインジエクター部の形状などについて検討を加えるとともに,そのエンジンに装着されるジンバル機構の試作試験ならびに燃料および酸化剤の供給機構の部分試作試験などを行なつて有効なデータを得た。また,種子島宇宙センターにおいて,LS-C型ロケット3号機および4号機の飛しよう試験を行ない,上に述べた液体ロケットシステムの飛しよう時の性能について検討を加えた。

搭載機器等については,ガスジェット装置,ロケット誘導制御用電子機器,テレメータ機器等について,エンジニアリングモデルの試作試験,コンポーネントの試作試験,疑似宇宙環境下の試験などを行なつて,人工衛星打上げ用ロケット製作のための貴重なデータを得た。また同センターにおいてJCR型ロケット3号機および4号機の打上げを行ない,ロケット用各種コンポーネントおよび誘導制御関係機器の飛しよう時の性能試験を行なつた。


(6) 農業機械化研究所

〔農業機械の開発改良〕

トラクタなど各作目共通の機械の研究については本年度は,非常の場合にヘリコプタから切離せる吊下げ式農薬微量散布装置を試作した。また米麦用機械の研究では,苗取り作業を省力化する畑苗代用の苗取機を試作し,乗用型の土付苗用6条田植機の改良を続けるとともに,収穫機については,バインダとコンバインを併用できる自脱コンバインを試作し,1つの新しい方式を示した。

さらに畜産用および園芸用機械の研究については,傾斜地に適応するフォレージハーベスタの試作や,現在要請の強い家畜糞尿処理法について実用化試験を実施し,また,収穫作業省力化のため,りんご等果実の振動収穫機,沖縄向けのさとらきび収穫機を試作した。なお,検査部では国営の農機具型式検査を委託されており,44年度はトラクタ等4機種34点の検査を行なつた。


(7) 日本てん菜振興会

〔てん菜の育種および栽培技術〕

てん菜の優良品種の育成については,早熟で収量,糖分が多く,生産性が高い品種の育成をはかることを目標として,現在までに2品種を公表したが,さらにこの2品種に比べ優れた特性をもつ数品種を近く公表できる段階に至つた。

栽培技術の向上については,品種のもつ特性と収量の形成並びに糖分蓄積の仕組みを明らかにして,生産性の高い栽培方式の確立に役立てた。

てん菜の主要病害のうち,褐斑病については病源菌の生態を明らかにし,新農薬の開発とあわせて効果的な防除法を確立し,黄化性障害については,その病源として主にモモアカアブラムシの媒介による2種類の病源ウイルスがあり,これがてん菜以外のある種の稙物に寄生して越冬することを明らかにし,その防除法を確立するための有用な知見を得た。


(8) 日本専売公社

〔たばこ〕

新品種の育成については,黄色種緩和性(低ニコチン・低タール)新品種GH,MC系統の育成に成功し産地導入の予備段階にはいつた。

製造たばこの香喫味改善と低ニコチン,低タール化をはかるため,原料葉たばこの特殊加工処理法,新原料としてのシートたばこの開発,材料品としての新香料,高気孔度巻紙および高ろ過性フィルターの開発を行ない,新製品の商品化に貢献した。

新製品を商品化するための製造工程について,量産のための設備開発,各工程の大容量化,自動化,高速化,連結化などの改良研究により,製造技術合理化の全体計画の一部を達成した。

さらに,たばこ作の一貫機械化体系の確立と現行栽培体系への導入のため,小型移植機,半自動収穫機について実用機の開発を終わり,ほぼ実用化の段階に達した。また,収穫,乾燥作業の省力化をはかる密吊幹干乾燥法について従来の乾燥技術の集大成をはかり,たばこ生産技術教本を作成した。

〔塩〕イオン交換膜法製塩における膜の高能率化については,カチオン膜の選択透過性付与剤を開発し,実用化の準備を進めており,また装置および操作の改良による生産性の向上をはかるため,高電流(密度)透析技術を確立した。

蒸発法の研究については,さきに開発したステンレス製LTV型蒸発缶による長期無洗缶運転操作が確立され,せんごう工程における装置の生産性と熱経済性の向上に貢献した。

また,海水総合利用に関する研究としては,海水ウランの採取についての研究で,チタン酸によるウランの採取が有望であることを明らかにするとともにフラッシュ蒸留法,ハイドレート法,逆浸透法などによる海水淡水化の研究で有用な知見を得た。


(9) 日本電気計器検定所

〔電力量計等〕

電力量計の性能改善の研究については,現在有効期限が7年であるのを15年にするための研究調査,寿命試験法の確立等を行なうとともに,完全屋外形計器の研究も行ない,耐久試験法の確立を行なつた。

また,ピーク電力も測定するため,わが国最初のデジタル表示方式の超精密形多回路総合最大需要電力計を開発した。

〔電気計器の試験法〕

大量に試験検定を行なうため,オートメーション方式についてコンピュータを利用した大型自動試験装置SA-2形と中型自動試験装置SM-形を開発した。

また,計器の試験については,基本的には円板回転数を光電式に計数するため,ノイズの影響の無い新しい方式について実験研究を行ない,良好な結果が得られた。

〔電気標準開発〕

電気量計等の器差試験のための標準器の研究では,従来の円板にかわり,今回静止形の標準電力量計を開発し,各検定局所に設置した。

また,交流電力の標準として,高性能のデジタル式標準電流発生器の試作用研究を行なつた。

次に,変流器の誤差を小さくするため,電子回路の適用により自動誤差補償形変流器の開発研究を行ない,精度向上の見通しがついた。

直流抵抗に関しては,超高抵抗の測定が困難であつたが,コンデンサの充放電を利用した自動平衡方式の超高抵抗測定装置を開発し,測定できるようになつた。

〔電気計測〕

電気計測,試験のための電源としての電動発電機などの回転機にかえ,電子技術を応用した静止形三相平衡電源を開発し,保守,占積率ともに向上させた。

コンデンサの損失角と誤差を直読できる装置を開発し,大量試験を可能にし,また電界効果トランジスタを利用した電力計および計器用変成器の簡易試験器を開発した。

コンピューターのレンタル使用時間計測について,その試験法確立と試験装置の開発を行ない,実用に供した。

自動検針については,端末機器,中継器等について実験研究し,技術的には可能であることが判明した。


(10) 日本国有鉄道

〔輸送改善〕

在来線のスピードアップ化のため,曲線高速運転用試験電車の試作や高速分岐器の開発試験を行ない,実用化のめどを得た。

新幹線に関する新技術の開発については,時速250キロを目標として試作した新幹線試験電車の定置試験および走行性能試験を,また,この試験電車を使用して定速度定時運転装置および定位置停止装置の試験を行ない好結果を得た。

大容量高速運転に対し変電設備の減少とトロリー線局部摩耗を防止するためのATき電方式については,実地試験で総合機能を確認した。

架線方式については,従来の方式よりも経済性の優れた重コンパウンド方式の実地試験を行ない,ほぼ時速250キロ程度の高速性能を有することが確認された。

販売および輸送情報処理としては,電話予約システムについて端末機および音声応答装置の試作試験を,貨物情報処理については,貨車番号自動読取装置の開発を進め,44年度はレザー光方式と電磁誘導方式について実車による比較試験を実施した。

鉄道用地利用のパイププランについては,パイプライン建設基準専門委員会においてパイプライン建設基準案を作成した。

〔超高速鉄道〕

前年度に試作したリニアモータ高速特性試験機により,リニアモータの高速特性をほぼ解明することができた。また,最適な二次導体を開発するため,銅と鉄の複合2次導体を試作した。

車体支持方式については,各方式の技術的限界を追求するため,5分の1模型独立車輪台車,空気浮上特性試験装置を試作した。

〔省力化〕

保守のかからない軌道の開発については,路盤上スラブ軌道および直結分岐器の試作鋼橋上直結軌道の現場試験で成果をあげた。また,線路保守の機械化については,混雑する線区を対象に中小形保線機械群を開発した。

架線および信号設備の検査を自動化するため,各種装置の試作改良と,これらを装備した電気検測車を試作し,また,車両出力の増大,短時間負荷増による架線電圧降下を抑制する架線電圧補償装置を開発試験し,成果をあげた。

車両保守の機械化,自動化については,電車の電磁弁,車両用ブレーキ装置の主要部品である制動梁などの検修作業を自動化する装置の開発等を行なつた。

出改札業務自動化として,自動改札を対象とする定期券印刷発行機(光学印刷式,磁気膜式)を試作し,また,精算業務を自動化するための自動精算機を開発した。

ハンプヤードにおける貨車の分解,仕訳作業の自動化のため,気象条件の悪い地域に適したリニアモータ方式による貨車転送制御装置の試験を行ない,また,入換作業の一元化と入換作業の能率化をはかるため,貨車進路制御装置を開発し,現地試験で有用な資料を得た。

〔輸送保安〕

貨物列車の途中脱線事故防止については,脱線事故技術調査委員会を中心に検討し,引続き脱線の原因解明と対策の効果確認のための各種試験を行ない,2段リンク貨車のN踏面化,ボギータンク車の改造,脱線防止ガードの敷設などの対策を実施した。

列車の速度に関係なく踏切警報時分を均一化するための列車速度選別式警報装置,運転情報が列車の位置に応じて機械的に表示される乗務員運転指示表示装置など運転事故防止のための機器を開発した。


(11) 日本放送協会

〔視聴科学〕

将来の新しいテレビ方式の開発や図形・文字あるいは音声の自動認識装置の実現を目標として,人間の色覚心理,動物の視聴覚神経生理機構および認識論理の研究を行ない,その結果をもとに視覚および聴覚のモデルを構成し,情報処理機構のシミュレーション実験を進めている。

〔固体物性〕

新しい機能素子の開発については,放送技術に関連の深い光吸収・発光現象を示す材料, レーザ材料および透明あるいは半導性磁性体材料の特質を究明し,資料をうるとともに,諸物性に大きく影響する結晶欠陥の観測方法や欠陥の発生防止の研究を行ない,大形単結晶の育成条件の検討を進めている。また,X線顕微回折法により,点欠陥の観測技術を開発した。

〔カラーテレビジョン〕

カラーテレビ番組の画質を向上し,内容をさらに充実するために,高性能撮映管の研究および小形カラーカメラの開発を行なつた。

また,欧州とのカラー番組の交換に必要な全電子式テレビ標準方式変換装置を完成した。

〔UHF放送〕

UHF帯放送技術の開発では,大都市における大電力放送の開始に備えて,スロットアンテナやクライストロンの研究および電波伝搬特性の調査で,また,受信機についても,選局を容易にするため,新しいUHFチューナーの研究で,それぞれ成果をあげた。

〔テレビ音声多重放送〕

テレビジョンの音声を2ヵ国語あるいはステレオ放送とするための音声多重方式の研究を進め,東京と大阪において,FM-FM方式による実験放送に成功した。

なお,この副チャンネルを利用して,ファクシミリ信号を放送する方式についても研究を行ない,受信用アダプターの開発を進めた。

〔衛星放送〕

放送分野への衛星の有効な利用形態を明らかにするため,その一環としてABU(アジア放送連合)地域向放送システムおよび衛星放送受信システムの研究を行ない,ABU総会やITU(国際電気通信連合)などに報告した。

なお,衛星からの電波の伝搬特性やテレビ信号の伝送方式の調査研究でも成果を得るとともに,衛星放送用の低雑音受信機の研究試作を行なつた。

〔受信障害防止と難視聴対策〕

テレビ共同受信における隣接受信機からの局発妨害を除去する新形分岐器や低雑音の高圧水銀ランプを開発するとともに,航空機騒音の調査でも有用な資料を得た。

なお,雑聴対策として,高規格の共同受信施設の研究を行ない,その仕様を明らかにした。


(12) 日本電信電話公社

〔電子交換〕

将来の各種新電話サービスの導入に適する電話交換方式の実現を目的とした電子交換機については,室内実験用交換機の経験をもとに現場試験用交換機の設計・試作を進め,44年12月から東京牛込電話局において試験的運用を開始した。さらに,今後,電子交換機の大量導入を行なうモデルになる試作機を東京霞ケ関電話局に設置した。

〔データ通信〕

情報革新の中核となるデータ通信については,多数の端末装置から通信回線を通して中央の電子計算機を共用する共同利用情報処理方式(DIPS計画)の実用化を48年を目途にすすめている。この方式の基礎検討用としてDIPS-0の研究をすすめ,45年度後半から販売在庫管理サービスおよびプッシュホンによる電話計算サービスが試作的に開始されている。

〔画像通信〕

テレビ電話について試作し,所内および万国博会場において試行サービスを行ない,将来方式について多くの知見を得た。

ファクシミリでは,電話網を利用する加入ファクシミリの実用化を完了し,引続きA4版を30秒で送ることのできる高速ファックスを試作し好成果を得つつある。

〔入出力機器〕

押しボタンダイヤル電話機(プッシュホン)による短縮ダイヤルの新サービスが開始されており,電話機の小形化,ハンドフリー電話機の研究のほか,各種プリンタ,数字読取装置,宅内用および局用の各種表示装置,自動音声回答の各種応答装置,磁性線などの新素子による記憶装置の研究でも成果を収めつつある。

〔伝達方式〕

今後の伝送方式として,電話のほかにデータ通信,画像通信などの急増に備えて,各種の大容量伝送方式の研究を進め,PCM伝送方式については100MビットP CM方式の最終設計を完了し試作を行なつている。

周波数分割伝送方式については,標準同軸ケーブルを使用し,世界最大の容量を誇る60MHz同軸伝送方式の総合試験で成功を収めた。

海底同軸中継方式については,電話20,000通話路の長距離海底同軸中継方式の研究を進め,さらに,36MHz 2,700通話路の深海用海底同軸中継方式の実用化を進め,現場試験実施までに進展した。

ミリメール波導波管伝送方式については,45年2月には新しく改良した中継器などを用いて,43年度に引き続いて再度総合実験を進め,電話約30万通話路の超多重導波等伝送方式としての設計諸元をかためた。

衛星通信方式については,将来の国内衛星通信を目的とした準ミリ波帯を中心とした実験用地球局の諸装置の設計を完了した。

さらに,移動無線については,900MHz帯を使用する大容量自動車電話方式について部分試作を行ない,設計資料を集積している。また携帯無線電話機については,小形軽量化,簡易化の検討を行なつて,技術的,運用的,人間工学的問題点の研究を進め,成果を得つつある。

〔部品・材料〕

部品・材料では小電力の高速論理回路(NTL)を発明し,これにより100ゲート以上を収容した大容量集積回路(LSI)の研究が進んでいる。

また,光応用技術では,3.3cm角の乾板に1,000万ビットを記憶することのできるホログラムメモリやマンガン・ビスマス薄膜を用いた光磁気記録あるいは光磁気表示,液晶表示などの研究で成果を得た。


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