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第3部   政府の施策
第2章  政府機関等における研究活動
1  国立試験研究機関の研究活動
(2)  国立試験研究機関の研究成果


国立試験研究機関においては,各分野にわたつて多くの試験研究の成果をあげているが,以下,昭和44年度および昭和45年度を中心とした主な研究成果について,その概要を述べることとする。


(1) 警察庁

〔血液型〕

最近,血清タン白質や血球酵素に遺伝的多型現象のあることが明らかとなり,それらのうち,血清型として,Gc型,Hp型,Gm型などの検査法を,また,血球酵素型としてPGM型, PGD型の検出法を検討し,犯罪鑑識に利用し得ることを確認し,その実用化を図つた。

〔LSD関連化合物〕

新しく麻薬に指定された幻覚剤LSDおよびその関連化合物の分析法について検討し,現場におけるスクリーニングテスト法を開発した。さらにLSDの体内における代謝を検索し,新代謝産物2個を確認した。

〔広域交通管制〕

都市交通の管制技術として,プログラム形成方式による広域管制の技術を開発し,現在東京中心地区120交さ点において,電子計算機による制御を完成して,その効果測定を行つており,実用性を保証するに至つている。


(2) 北海道開発庁

〔寒地土木〕

積雪寒冷地における道路交通に関する研究においては,機械除雪と併用した薬剤散布による除雪および結氷路面のすべり対策のめどを立て,冬期道路輸送の高度化にとつ有効な成果を得た。寒冷地における土木施工技術に関する研究では,泥炭地における盛土および橋梁基礎の築造,道路の凍土対策,橋梁のプレハブ化,コンクリートの凍害対策など寒地特有の土木施工技術の向上に貢献。災害の防止に関する研究では,融雪機構,融雪氷による斜面崩壊機構の解明を通し,水防計画および地すベり対策上有効な基礎資料を得た。また,寒冷地における農用地および設整備に関する研究においては,泥炭,火山灰,重粘土など特殊土壤地帯の土地利用,かんがい排水の設計施行などに必要な資料を得た。


(3) 科学技術庁

〔航空〕

V/STOL機に関しては,フライングテストベッドにより,拘束実験を行なつていたが,その結果が極めて良好であつたので,昭和45年12月無拘束により,初めて高度約2.5メートル(滞空時間約3分間)の上昇に成功し,自由飛行としての実験を開始するめどを得た。

ジェットエンジンについては,エンジン制御の研究および高温タービンの研究を進めるとともに,リフトエンジンの性能向上および推進用エンジン設計のための資料を得た。

航空機の安全性に関しては,自動着陸方式の研究および操縦室の警報装置の最適化の研究を進めた。

〔宇宙〕

わが国として将来必要な基礎的,先行的研究を進めるとともに,現在進行中の開発を支援する試験研究として,誘導用センサの精度向上,固体ロケットの推力大きさ制御,液体酸素を用いるエンジンの燃焼器,ターボポンプ要素とその潤滑などに関する研究をすすめ,有効な成果を得た。

〔金属材料〕

MHD発電やリニアモーターに使われる超電導マグネット用材料として,最高の強磁場性能を有するV3Ga超電導材料の開発に成功した。

また,半硬質磁石材料として鉄―マンガン―クロム系永久磁石を開発した。この磁石合金は,とくに加工性の良好な材料で,熱処理によつて磁気的性質の制御ができることを特徴としており,各方面への利用が期待される。

〔無機材料〕

非金属無機質に関する研究としては,酸化ベリリウム(BeO)の高純度粉末(99.99%以上)を調製する新しい精製法の開発に成功するとともに,その粉末の焼結機構の解明によつて,酸化べリリウムの耐熱材料,原子炉材料などへの利用が期待される。

さらに,鉛ペロブスカイト(PbMo3)に関する研究においては,わが国では最大級の高圧力発生装置(14,000トンプレス,2,500トンプレスなど)の整備により,高温,高圧力下における鉛ペロブスカイトの合成研究について成果を収めつつあり,また,常圧における研究では,チタン酸鉛(PbTiO3)などの強誘電体を簡単に合成できる新しい方法を開発した。これらは新しい電子回路部品として注目されている。

このほか,酸化バナジウム(V02),窒化アルミニウム(AIN)などの研究分野についても成果を収めた。

〔防災〕

降ひよう抑制に関する研究の一環として,沃化銀散布機としての消滅型ロケットの開発を進めていたが,2回の打上実験によつてほぼ完成した。第3回目の実験によりロケットの沃化銀散布が雲に有効な影響を与えることが確認された。

長崎県鷲尾岳地すベり地において,試験井,試験横坑,試錐コアなどから,滑落崖,断層,すべり面亀裂などの地すべり構造要素を抽出し,当地すべり地の構造モデルを作成した。また,試験井,排水トンネルを利用し地すべり面の挙動を直接測定し,剪断変位速度が移動中に変化すること,場所により変位開始時刻の異なることなどを見出した。さらに変位と降雨,地表ひずみなどとの関係をは握し,地すべり防止対策に有効な資料を得た。

また,道路,屋根上の積雪の深さの測定が確実,安価にできるように,積雪の吸音特性を利用した積雪深計測装置を開発した。

〔放射線医学〕

放射線の大量被ばく事故に対処するとともに,放射線治療の効果の向上に資するため,造血器(骨ずい)移植に関する調査研究を実施し,移植のさいにおこる拒絶反応の機構の解明,移植後おこつてくる下痢や細菌感染などの続発症の病理形態学の面からの解明,移植された造血器の宿主のなかでの動きを知るため,造血器を構成している造血細胞の形態および機能,造血細胞の採取方法の改善,保存方法の確立などについて新しい知見を得た。

また,わが国における放射線の医学利用における研究開発促進の一環として,サイクロトロンを利用し,総合的な研究体制のもとに中性子線による悪性腫瘍の治療に関連する諸問題を解明するとともに,サイクロトロンにより生産されるラジオアイソトープの医学利用についても研究を推進し,中性子線などの測定,中性子線の生物学的効果の研究,中性子線を用いた悪性腫瘍の治療,短寿命アイソトープの医学利用,医用サイクロトロンの安全管理について基礎的な知見を得た。


(4) 大蔵省

〔醸造〕

食品添加物として清酒保全に永年使用されてきたサルチル酸の使用停止に伴い,清酒の品質保全に重点をおき,酒類の防腐に関して新防腐剤の検索,火落菌の類別について新知見を加え,検出培地も考案し,さらに火入れ殺菌の工学的検討を行なうとともに,清酒の日光着色による劣化機構を解明し,着色防止に関して活性炭の品質規格を設定した。

古米の醸造適性について,麹菌の影響,アルコール処理による改良,新フェノール物質の発見等に成果を得た。

優良酵母育成の一環として,新泡なし酵母の分離,細胞壁の構造,表層の吸着機構を明らかにし,実地醸造において検討するとともに,醸造用水および醸造過程中の微量金属の動向を追跡し,用水の処理法に目安を得た。


(5) 文部省

〔統計数理〕

不規則な統計的変動要因に支配されているシステムの特性の確定法およびその結果にもとづく制御法の実用化の研究をすすめ,不規則変動の周期的な特徴を表示するスペクトル密度の推定を半自動的に行なう方法が実用化され,電子計算機の利用により,ほとんど専門家の手を借りることなく解析をすすめることが可能となつた。同じ方法を拡張することにより,複雑なシステムの相互依存の状態を推定する方法も自動化され,その結果は,従来実用化が困難とされていた生産プロセスの制御系の設計の基礎として利用される。

〔緯度変化〕

1902年に発見されたZ項(どの緯度観測所にも北極の動きによるものとはかかわりなく共通して現われる一年周期の緯度変化量)の原因の大部分が半章動項の係数の誤差にあることが,一夜三群観測の結果からほぼ確められた。

すなわち,地球を完全な剛体として組立てられた天文定数の一部,ことに章動定数を現実の弾性地球に見合つたものに改訂すべきことを示しており,天文学研究の基礎に関する極めて重要な成果である。


(6) 厚生省

〔人口問題〕

わが国将来の人口は,変化のきわめて小さい死亡率よりも,微妙な変動を示す出生率の高低によつて左右される。このため,「出産力調査」の実施などのほかに出生制限の実態,出生と経済的,社会的条件との関係などの分析と,これにもとづく将来の予測について総括的研究を行ない新しい知見を得た。

また,出生の激減や人口移動の激化などによる都市や農村の家族構成や就業構造の変化を実地調査によつて明らかにするとともに,夫と妻については,性格のほか,生きがい,家族計画に対する考え方などのアンケートによつて,社会心理的な側面からみた人口資質という,これまでにない,重要な資料を得た。

〔精神衛生と精神障害〕

X線間接撮影と機能上類似する集団脳波計の開発について,脳波の集団検診をコンピュータを用いて行ない,抽出者に対して精密脳波検査を行なう方法が確立された。

また,有機溶剤たとえば,シンナー,ボンドなどの乱用者について,臨床所見と脳波および血液学的所見の相関を見出し,診断,治療の指針を定める根拠とした。

さらに,脳発達障害については,実験的仮死分娩による脳発達障害動物をつくることに成功し,アイソトープを使つて,脳代謝研究を発展させており,また,妊娠中に投与された薬物が,胎児脳に及ぼす影響についても検討し,知見を得た。

〔がん〕

胃がんについて,その原因,発生の過程および新しい予防および治療の方法を発見するため,その第一歩としてニトロゾグアニジンを飲料水として犬に与えて胃がんを作ることに成功した。この実験胃がんの成功により,内視鏡レントゲン検査,生検材料の検査および胃がん発生の過程の追跡が可能となり,胃がんの克服に新しい一歩を踏み出したものといえる。

〔生活環境汚染〕

牛乳,野菜中の残留農薬,特にB-BHCの毒性を明らかにするため,3ヵ月間の投与実験を行ないその毒性について知見を得るとともにカビ毒研究の一環として,国内における発ガン性マイコトキシン産生株の分布を調査し,資料を得た。

また,食品添加物である亜硝酸塩と食品の成分とから生産される可能性のある発がん性物質ニトロゾアミンの生成条件,食品中の分布について研究し,成果を得た。

なお,牛乳容器用ポリエチレン中の有害物質の試験法も作成した。

〔食生活と健康〕

高血圧および動脈硬化症と食生活とくに油との関係を明らかにし,その発生防止について知見を得るとともに,食品関係では公害によつて汚染された食品による障害の防止や軽減,食品添加物の栄養価に及ぼす影響,貯蔵のために照射した米の安全性などについて資料を得た。

さらに,栄養調査成績の解析,国民栄養状態の判定についても検討を加え,研究の成果をそれぞれ栄養指導と改善に役立たせた。

〔寄生虫〕

人消化管の好酸球性肉芽腫症(アニサキス症)の病原虫として注目されるアニサキス属幼線虫とその病原が疑われる同属近縁属幼線虫を,中間宿主である海産魚9種およびスルメイカより採集し,形態を精査するとともに,その特徴をもとに4属9種類に分類した。本症の人体への感染が感染魚の生食によつてひきおこされるので,魚体より得られるこれら多種類のアニサキス科幼線虫のいずれが人体に侵入するかは,衛生学上重要な問題であり,この業績はその解決のための基礎的な知見を与えたものとして注目される。


(7) 農林省

〔畜産〕

豚の原因不明の新生児死亡の原因が黄疸によることが判明し,その予防,治療対策を確立した。

牛の流産を起こすビブリオ病の診断液の改良を行ない,判定が容易にできるようになつた。

また,飼料作関係では,中型フォーレージハーベスターの開発改良を行ない,青刈り,サイレージおよび乾草調製に共通して使用する技術体系を確立した。

〔園芸〕

りんごの黒星病が発生したため,緊急に対策研究を行ない,防除法を確立した。また,りんごの高接病の病源ウイルスを究明し,検定法および防止対策を確立した。

施設園芸について,果菜類を定植したあとの灌水作業を自動化する装置を開発し,メロン,きうり,トマトに応用される見通しがついた。

また,すいかの果実劣変の原因がきうり緑班モザイクウイルス(スイカ系)によるものであることを明らかにし,防除対策を確立した。

〔流通利用〕

加工用トマトの品質評価にあたつて,最も重要な成分であるカロチノイドの簡易な分析定量法を設定した。

また,パンの発酵時間を短縮化するために,パン酵母の活性を強める酵母の研究を進め,時間の短縮,品質の改善の技術を確立した。

〔経営,病害虫,養蚕〕

農業経営に関する研究については,主要作目の立地配置の研究を行ない,市場競争による立地配置の適正化のための方法論を実践的なものとして確立した。

病虫害に関する研究については,稲白菜枯病の防除対策技術をほぼ確立するとともに,そさい,飼料作物,牧草の大害虫であるヨトウムシに対し天敵ウイルスによる防除の可能性をみいだし,実用化の研究を急いでいる。

また,養蚕作業の省力化を図るため,条桑刈取機および稚蚕,壮蚕それぞれの自動給桑機による蚕児飼育の機械利用法を確立した。

〔林業〕

ヘリコプターによる林野火災の空中消火技術(消火薬剤散布による)を消防庁消防研究所と共同して開発し,ほぼ実用化の見通しを得た。また,建築工法の改善に資するための部材化研究において,木質パネルの強度および接着性などの性質を明らかにし部材化方策について見通しを得た。

さらに,大気汚染による都内樹木の被害実態,調査葉中いおう含量の測定を行ない,成果を得た。

〔水産〕

沿岸,沖合資源についての合理的利用および漁況予測の精度向上のための基礎研究を実施し,とくにスルメイカの資源変動機構について研究の結果,その漁況予測の方法論を確立した。また,漁業資源調査等のためのFM魚群探知機,魚類生態調査機(遠隔計測による),魚群量計数機,底魚調査用2周波魚群探知機等電子機器を開発した。

水産増養殖分野においては,コンブの人工採苗とこれによる速成栽培技術の実用化およびまぐろ類中のキハダの採卵ふ化,仔魚の飼育等の養殖技術試験に成功した。

漁貝漁法については,沿岸の回遊魚を対象とする定置網敷設時の省力化と投資軽減のため,金錨による網固定方式の開発および透明網地,不透明網地の併用により不透明網地に反発する魚群を透明網で採捕する方式を(とくに板びき網)実用化した。また,沖合底びき網,まき網等,各漁業の合理化,省力化のためのモデル船設計を行なつた。

水産物の利用加工については,ユーファシアの液化蛋白の食糧化および漁獲物の鮮度を迅速に測定する小型装置作成の基礎条件を確立した。

また,海洋開発の一環として生物資源開発を推進する一方,調査船開洋丸により,アルゼンチン沖でメルルーサ,南ダラなどの新漁場を開発した。


(8) 通商産業省

〔電子〕

情報処理技術の重要課題であるパターン認識の研究においては,文字図形を読み取ることのできるOCR(光学文字読取装置)の試作に成功した。これは漢字,かな,手書き文字などの難しいパターンを読み取ることが可能で,今後の研究の進展が期待されている。また,工業用ロボットの研究においては物体の形状,色彩,距離を見分けることのできる工業用ロボットの試作に成功した。このロボットは認識機能,判断機能を備えており,いわゆる「人工頭脳」へ一歩近づいた画期的なものであり,工業面への応用が期待される。

つぎに,レーザーの研究においては,情報伝送への応用として,約1.5kmの距離をレーザー通信回線で結び大型コンピュータのTSS(タイムシエアリングシステム)をレーザー通信によつてオンライン化することに成功した。また,情報処理への応用としては,ホログラム技術を用いた新しい文字読み取り方式の基礎実験に成功し,情報の読み出し速度,記憶容量が格段に向上し,将来の光コンピュータに適用できるものと期待される。

さらに,長さ標準への応用については,ヘリウムネオンレーザーを用いて10-12の精度で長さを測定することに成功し,国際度量衡委員会に報告した。

本法は,将来「メートルの定義」として採用されるものと期待される。

〔高分子工学〕

高分子研究では,感光性樹脂,オプチカルプラスチック,耐放射線ポリ塩化ビニルの合成,炭素-ガラス複合材の製法などに成果をあげた。感光性樹脂は,固相重合から発展した新ナイロン板の製造,さらに一分子中にビニル基と不飽和基をもつモノマーのビニル基のみを選択的に重合し,残つた不飽和基を光重合させる新感光性樹脂である。後者で製造した感光性樹脂の解像力は極めて優秀で,多くの用途が期待される。

〔微生物工学〕

酵素「イソメラーゼ」「メリビアーゼ」の発明に関しては内外から注目され,国内ではすでに実施段階に入つているが,外国企業からの実施申込みも多く,現在引合中の外国企業は13国17社に及んでいる。

〔自動車安全〕

自動車安全走行制御系の研究について,中央高速道路のモデル試験区間に,2線方式(ステレオ型)誘導ケーブルを敷設し,世界で初めて実際の道路上走行実験を開始した。ケーブルの特性,道路内に形成される誘導磁界の分布など調査の結果,安全かつ効率的な高速道路システムへの実用化の見通しを得た。

〔産業安全〕

高圧ガスの爆発災害防止について,千葉県市原市において,また火薬の爆発災害防止については,新潟県下において野外爆発実験を実施し,保安基準作成のための資料を得た。

〔新材料〕

火山噴出物であるシラスを原料として,中空ガラス球(シラスバルーン)を安価に製造する技術を開発した。将来高分子,コンクリートプレハブ等の軽量充填材料としての利用が期待される。

〔機械工業のシステム化〕

機械部品の類形加工法の研究においては,機械工業の主流を占めている多種中小量生産に,少種多量生産の利点を導入し,経済性を増大させる手法として大規模企業に適する13桁構成の部品分類方式KK-1を作成し,企業を対象に応用してその改良を進めた。また,工作機械の適応制御の研究については,フライス加工における切削トルク,工具たわみおよび切削温度検出器を開発した。

〔海洋開発〕

前年開発した屈折式音波探査装置により,海底地質構造調査を行ない,良好な結果が得られた。

また,日本周辺陸棚海域地下資源賦存に関する基礎調査研究についても,空中磁気図の一部を刊行した。海中におけるレーザーの利用については,水槽による基礎研究からさらに海中において実験を行ない所期の成果が得られ,実用化への見通しを得た。

〔公害防止〕

活性炭酸ソーダ法による排煙脱硫技術の研究は,ベンチ・スケールの実験により脱硫率90%以上の成績を得た。

出力500Wの燃料電池による自動車の運転試験を行ない,電池の出力拡大の基礎資料を得た。

また,風洞試験,水槽試験による汚染物質の拡散の研究およびこれに伴う現地調査等の研究成果により,産業公害総合事前調査に対し,有効なデーターの提供を行なつた。

微生物による各種産業排水処理技術研究の成果は,すでに30数工場で実用化されているが,さらにバラスト排水,コンビナート排水の処理技術を開発し水島港,鹿島臨海工場等の排水処理について技術指導を行なつた。

さらに,低濃度有機性排水の処理技術を開発したほか,有機水銀を無機化する微生物を発見したのでこれによる有機水銀含有排水処理の実用化のための研究を進めている。

また,オゾンによる排水処理技術の研究は,染色排水処理について現地試験を行ない,良好な成果を得た。

産業排水の自動管理技術の開発については,すでに10数種の装置を開発し,多くの企業で実用に移されているが,この研究によつて開発された水質科学計測法は,愛知県の木曾川水質自動監視センターで実用に供されている。

亜硫酸パルプ排液の燃焼処理によつて生ずるスメルトの有効利用技術の研究によつて高純度芒硝の回収に成功した。

海面の流出油による汚濁の処理法としては,浮上油の捕集処理技術を開発し,実用に移されている。

このほか,産業排水の微生物処理により発生する余剰スラッジの流動層燃焼装置について,高性能焼却炉設計の基礎資料を収得した。


(9) 運輸省

〔船舶〕

船舶の高速化,巨大化などに関しては,推進性能運動性能,大型推進機関,構造,材料強度,ぎ装などの分野で成果をあげており,船舶建造全般の技術の向上,行政指導などに広く,活用が期待される。とくに減速歯車の小型軽量化に関する研究成果は,大型推進機関の性能向上に貴重な資料となる。また,新型式船舶のホバークラフトに関する研究,そのほか基礎的研究として工作技術,ぎ装,非破壊検査に関する研究などについても有用な成果があり,船舶建造技術の向上のために有効な基礎資料を得た。

〔安全,事故および公害対策〕

海難防止に関しては,漁船などの中小型船の荒天時における安定性能,脆性破壊および衝突などによる船体の損傷防止,救命設備具の試験方法,制限水域の船舶航行量などに関する研究で成果があり,また原子力船の安全性について貴重な資料が得られた。これらは船舶の安全設計,海難防止に関する法規制などに,また,航路計画,運航法などの運輸省所管の業務遂行に必要な基礎資料となる。

鉄道の事故防止に関しては,車両の防火試験方法および鉄道橋の補強判定方法,航空機に関しては,各種気象下における航空灯火の見え方,周囲の地形などの影響を受けやすい従来のVOR(超短波全方向無線標識)の性能向上,計器着陸の精度および信頼性向上を目的とするILS空中線系の性能向上などで成果をあげ,鉄道安全および航空保安対策に役立てられる。

自動車の安全対策に関しては,事故原因の解明および事故時の安全性向上などについて,ブレーキの摩耗性能,自動車の欠陥の発生防止,トラック荷台の安全対策などの研究で成果をあげ,自動車の安全対策に関する法規制,業界に対する指導などの活用に有効である。

船舶の公害に関しては,大型タンカーの衝突事故などにより流出する油の拡散状況,回収装置などの研究に成果があり,海水汚濁の防止,事故対策の観点から海上保安業務に貴重な資料となる。

自動車の公害については,緊急問題として,排気ガス成分の測定方法,有害排気ガスの防除方法などの研究で成果があり,これらは自動車排気ガス規制の強化に対して有効な資料となる。

〔港湾〕

港湾構造物の耐震設計法の開発においては,鋼直杭棧橋について,弾塑性地震応答の簡単な計算が可能となり,従来の静的設計法よりも合理的な動的設計法の実用化をはかつた。また,十勝沖地震における強震記録と港湾施設の被災状況から現行の耐震設計法の妥当性を調査するとともに,港湾構造物の組杭の水平抵坑について抗の曲げモーメントを考慮した組杭の設計法を開発し,港湾構造物の設計などの業務遂行に貴重な資料を得た。

沿岸波浪の調査観測方法では,港湾建設に必要な波向の把握のために定置式の常時観測用波向計を開発した。

また,港湾建設の進捗過程でおこる漂砂による港内埋没機構,高圧噴流水による岩盤掘削方法,作業船の船体に及ぼす波力,早強性プレパックドコンクリートの諸特性,港湾計画に必要な船舶諸元の標準化について成果をあげ,港湾計画および港湾建設技術上の資料を得た。

〔気象,海洋および自然災害〕

長期,短期の天気予報の精度の向上では大きな成果があがつているが,特に短期間の視程変化を予報するための研究成果は,航空機の安全な離着陸の管制業務上有効に活用できる。また,海洋環境の把握のための洋上波浪などの海洋現象の調査では,海面状況の推定,波浪予報,海洋開発に必要な海上基地の設立などの海洋開発を前提とした研究分野,遭難船救助など海上保安業務などの遂行に必要な資料を得た。そのほか,海底の総合的調査のための地形地質調査用計測器の開発,海洋循環の変動機構の研究などに成果があり,海上保安業務の基礎資料として活用される。

また,微震動による地震予知の研究では,近年の道路交通量の増加,産業機械などによる雑微動の除去のために,地震計と地下埋没深度に関する研究を進め,地震計の経済深度を求め,地震予知業務上行なう地震観測網の整備に役立つた。


(10) 郵政省

〔宇宙通信〕

SSB-PM通信方式による多元接続実験は,将来の衛星通信の一方式として,昭和44年5月から昭和45年7月にかけて,ATS-1号衛星により単一地上局一衛星折返し実験を行ない,45年度後半に予定されるロスマン・モハービ両地上局と共同の三局同時接続実験の予備資料を得,所期の目的を達成した。

また,船舶,航空機など移動小局,離島局を含めた各局相互およびこれらの小局と基地局間を同時に接続し,かつ周波数や時間割当の制約を受けず,その上,回線間の干渉が少ない新しい通信方式として将来有望なSSRA(周波数拡散多元接続)通信方式について昭和45年度から必要な予備実験と装置の開発を進めている。

さらに,国産実用実験衛星の電離層観測衛星を管制し,観測データを取得するための地上施設である管制センターの開発については,テレメータ受信機およびコマンド送信機が既に製作段階に入つている。

〔ミリ波通信〕

降雨の減衰に対するスペースダイバーシチ効果の程度を実験的に求めるため,昭和45年3月,35GHZ帯太陽電波観測装置2基(昭和44年10月発注,一部未完成)を電波研究所本所および周波数標準部の庁舎屋上に設置した。


(11) 労働省

〔産業安全〕

天井クレーン,型枠支保工,安全ネットなどについて,動的応力,衝撃加速度などを測定し,天井クレーンなどを安全基準化するための資料を得た。

鋼の疲労破面の顕微鏡写真により,その疲労条件を推定するための基礎資料を得た。

これまでデータに乏しかつたいくつかの蒸気,粉じんについて,爆発危険性を明確にし,爆発被害抑制のための爆発放散孔利用に関する基礎資料を得た。

電気回路,ガス等を種々変えて点火実験を行ない電気回路の本質的安全化のための資料を得た。

また,粉体,油類に対する帯電および除電実験を行ない,静電気による爆発火災,電撃などの防止のための基礎資料を得た。

〔労働衛生〕

絶縁体としてのポリイミド,テフロンなどの耐熱性高分子化合物の熱分解産物の毒性について研究し,新しい知見を得た。

また,悪臭物質の一つである硫化水素ガス処理のための噴霧充填装置による化学吸収除去方法を研究し,吸収効率と気相および液相それぞれの側の反応吸収状態を規定する因子の間の相関性を実験的にもとめ,反応機構を解明し,その相関性に関する実験式をもとめた。


(12) 建設省

〔土木〕

災害防止に関する研究において,異常降雨などによつて生ずる急傾斜地の土砂崩壊に関して,崩壊斜面と安定斜面との限界を花崗岩地域と古生層地域について調査を行ない,資料を得た。

水資源の有効利用に関する研究の一つとして,汚濁河川の河川流水による浄化作用について,理論式を求め,その適合性を検証した。また,レーダー雨量計により,より精度の高い,かつ省力化された雨量測定システムを開発した。

道路に関する研究では,高速道路の安全対策として舗装路面とタイヤとの摩擦係数と交通事故との関係について成果をあげた。また,本州四国連絡橋および東京湾長大吊橋の風による安定を模型風洞実験により確かめ,また長大橋の深い海中基礎を作るための水中大断面掘削機を開発した。

なお,土木構造物の耐震構造に関する研究においては,地盤と構造物の応答についての検討をさらに進めることができた。

〔建築〕

中高層量産住宅に関する研究において,PS工法8階建公共住宅(都営住宅)の実大破壊実験を行ない,合理的な量産住宅の構法を確立するとともに,すでにほぼ研究開発を完了しているPS工法5階建公団住宅の接合部に改良を加えた。また丘陵地など傾斜地に建設される特殊な形式の公団住宅の合理的な建設方式について実験解析を行ない,その可能性について見通しを得た。さらに,居住快適性について,性能項目と設計方法の考え方を取りまとめるとともに,PC工法,量産,住宅の壁,床,天井,屋根等9種の部位の要求条件に対応する性能値を提案し,住宅性能標準JIS原案の作成に役立てた。

都市に関係する研究では,火災時における防災,避難拠点内における輻射熱と一酸化炭素濃度分布を実験により測定し,その安全性を検討して,整備計画指針の原案を作成した。地下街,高層建築物などの煙災害防止に関する研究では,防煙設計の基礎理論を確立し,スモークタワー(排煙筒)の設計方法を提案した。また,地下街の空気汚染対策についても研究し,粉塵と一酸化炭素による汚染の状況を解明した。

〔測量,地図〕

測量,地図作成の分野においては,空中写真縮尺図化機の実用化,建設工事を対象とした空中写真による土地条件の判続研究,長期無人観測が可能であるように設計された地磁気2成分永年変化自動観測装置の開発を行なつた。

また,電子写真技術の導入により,連続階調の電子写真による大型地図,空中写真の迅速な再現を可能とした。

地図情報の有効な活用に関し,地図に地域メッシュおよびコード番号を設定し,各種の公共情報をデジタル化するシステムを開け発して,解析手法や自動化のための研究に役立てた。


(13) 自治省

〔消防〕

近年,林野火災の激増とこれに対処する消防団員の激減から機械力による消火活動の方法を確立するために,林野庁林業試験場と共同して,ヘリコプターを利用し空中から消火液剤を投下散布して消火する方法について実験研究を進め,大型ヘリコプター (パートル107)にナイロンゴム製水のうとこれに消火液剤を混合補給する混合補給機の試作を完了し,野外散布消火実験を行ない,その方法を確かめた。

また,ビル火災に当たつて,煙の拡がりを遮断し同時に煙中からの避難を容易にする方法として,エアーカーテンを屋内廊下に特設する研究を行ない好効果を得た。これは階段室等垂直方向への煙遮断についての有効なエアーカーテン研究への地歩を築いた。


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