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第2部   科学技術活動の動向
第2章  科学技術情報活動の動向
2  科学技術情報活動をめぐる国際協力の現状と諸外国の動向
(2)  諸外国の動向


近年,諸外国の科学技術情報活動の面で極めて特徴的な問題は,アメリカを中心とした電子計算機利用の進行である。昭和44年現在で磁気テープサービスを可能にしているシステムは,OECDの報告によれば,化学分野11,生物医学分野11,物理分野9,工学分野4,その他8,特許関係7,統計関係2,図書館関係2で合計54のシステムが存在する。この中には商業的システムまたは国家的システムで国際的流通性のないものも含まれてはいるが,これらのシステムを国家的情報流通システムの中に採用することにより,経済性,網羅性,合理性を追求する姿勢をうかがうことができる。たとえば,西ドイツがケミカルアブストラクツ・サービス(CAS)との提携により伝統的なChemisches Zentralblattを昭和44年末に廃刊にするなどはその現われである。

各国の動向を述べるに際して,参考のため科学技術情報活動に関連する主要機関を各国別に第2-28表として一覧表に掲げた。


(1) アメリカ

この国の特徴は,分野ごとに,独立の情報機関が発展し,整備されてきた伝統と歴史をもつており,分散主義の典型である。連邦政府としては,分散主義を基本としながらも,相互の協力と調整を図るため,大統領府の科学技術局に,科学技術情報委員会を(COSATI)を設けている。

近年,情報量の増加と情報需要の多様化に対応するため,政府,学界,産業界の密接な協力関係の必要を感じ,科学,工学両アカデミーの合同委員会(SATCOM)に情報流通の調査を委託し,昭和44年に,報告書が提出された。

一般の情報サービスを行なう主な情報機関としては,商務省傘下の,国家技術情報サービス(従来科学技術情報に限られていたサービス範囲を拡大し,貿易統計データまで含めるように昭和45年9月改組)が,各省庁から集めた資料または,その複写の提供を行なつている。また,現在進行中の研究開発課題内容,研究開発従事者などに関する情報を提供する機関としてスミソニアン協会の科学技術情報交換所(SIE)がある。このほか議会図書館に付属して国立レフェラル・センターがあつたが,昭和45年議会図書館科学技術部に吸収され,研究機関および文献の案内をあわせて行なうことになつた。


(2) ソ連

ソ連は,アメリカとは対照的に,集中主義の徹底した情報組織を確立した。すなわち,1966年全ソ科学技術情報組織法が制定された。これは,1)科学技術情報活動の全国的組織の改善と各種情報機関の業務活動の明確化,2)科学技術情報の地方ネットワークおよび専門別システムの創設と企業および研究機関内情報組織の設立,3)科学技術国家委員会の科学技術情報活動に関する指導方針の決定権限の確立,4)クリアリング機構としての全ソ科学技術情報センターの設立と同センターへの研究の内容の登録の義務づけ,5)科学技術文献への抄録添付の義務づけ,6)図書館活動および書誌活動の調整の改善,7)科学技術情報の蓄積,処理,検索の機械化,自動化の推進などの内容から成つている。これによつて科学技術国家委員会は,中央調整機関としての機能を有し,科学アカデミーは,科学図書館業務の調整を担当するようになつた。また中央機関として,全ソ科学技術情報センターがクリアリング機能,全ソ科学技術情報研究所が二次資料の作成,情報科学技術の研究開発,情報専門家の養成を行なう。このほか,特許,発明,発見の普及などを扱う中央特許工学経済研究所,規格標準化を担当する全ソ技術情報分類コード化研究所,翻訳センターおよび技術書誌分野の調整センターとしての機能を有する国立公共科学技術図書館などがある。これら中央機関とは別に,産業別の情報システムが,各省所管の企業,研究所,設計局などを結ぶネットワークとして組織され,また地域別情報システムは,15の共和国において地域別情報センターを中心としたネットワークが組織され,全体として全国的なつながりを持つた情報流通システムを形成している。国際協力の面では,MEDLARS,INISとの協力関係が進行中であり,また,コメコン諸国との間に,情報ネットワークを作ろうとする動きにも,指導的役割を果たしている。このように,体制としては整備されているが,システムが必らずしも十分な効果を発揮しているとはいえない面もあり,情報の迅速な処理と分析,出版物の迅速な刊行などを要求する声も強く,情報機関の活動のあり方の改善が望まれているようである。

第2‐28表 主要国における科学技術情報機関



(3) イギリス

政府機関は,それぞれの担当する分野において科学技術情報活動を行なつているが,とくに重要な活動を行なつているのは,教育科学省の科学技術情報局(OSTI)と通商産業省(もとの技術省)である。

OSTIは,科学技術情報活動の調整機能をもつ部局として,情報処理技術の開発や新しいシステムの開発に対して援助を行なつているが,最近重点をおいているのは,専門情報センター (アメリカにおいて情報分析センターといわれているもの)の育成である。これは,収集した情報について専門家が評価分析を行なうところに特徴があり,多くは,研究所に付設されている。

現在,OSTIが補助しているのは,腐敗,高温過程,腸吸収,エルゴノミックス,岩石力学,質量分析,結晶学,プラズマ物理の八つである。国立貸出図書館(NLL)もOST工によつて運営されている。

MEDLARSは,OSTIの援助のもとにNLLが担当している。

通商産業省は,多くの研究機関をその傘下にもつているので,情報の生産者,需要者として大きな比重を占めている。同省のレポート・センターは,傘下研究機関から出るレポート文献を集めた抄録誌を隔月に出している。

研究組合は,産業界に対する重要な情報センターの役割を果たしている。

ASLIB(Association of SpeciaI Libraries and Information Bureau)は,専門図書館や情報機関を援助する組織として,きわめて重要である。

また,国立参考図書館は,大英博物館および特許局の科学技術文献を所蔵し,大英博物館によつて運営されている。


(4) フランス

フランスの科学技術情報組織は,分散型であるが,その中で中心的役割を果たしているのは,CNRS(文部省の科学研究本部)のドクメンテーション・センターである。ここは,年間50〜60万件の抄録を作成し,自然科学,社会科学の36部門に分けBu11etin Signaletiqueという抄録誌を刊行している。

その他に政府関係で情報サービスを行なつている機関としては,宇宙研究本部および国防省のドクメンテーション・センター,地質鉱山研究所,海洋開発センター,原子力庁等がある。農林省の国立農業研究所のような各省付属の大研究所も,それぞれの情報サービスを行なつている。

産業界に対しては,たとえば,CNIPE(Centre National de Information Pour la Productivite des Entreprises)の下にある多くの生産性センターが,技術,経済,生産方法等に関する情報を集めて,サービスおよび指導を行なつている。


(5) 西ドイツ

西ドイツにおいては,伝統的に学協会,企業などの情報活動が活発であつた反面,国家的な情報流通体制の整備は,かなり遅れをもつており,そうした認識に立つて,連邦政府は昭和42年,情報およびドクメンテーション委員会を設置し,各機関相互の調整を図つている。政府関係の情報機関としては,原子力,宇宙,国防等の専門センターのほか,マックスプランク協会にドクメンテーション研究所があり,政府機関のみならず企業,学協会,大学など西ドイツ全体の科学技術情報活動の振興および調整をはかつている。また,同協会には,機械化ドクメンテーションセンターもあり,ここで国立図書館,原子力情報センターなどの発行する二次情報の電子計算機による編集,印刷処理を一手に引き受けている。

最近の考え方としては,情報活動を,新しい科学技術の成果を流通させ,企業化に結びつけるうえで重要な役割を担うものとして重視し,政府資金の大量に投入される宇宙開発の分野をモデルに研究成果の報告,その評価,流通を通じ,技術革新の原動力としようとする試みがある。

他方,文献情報とは別に科学技術データの流通がますます重要になるとして,データセンターが設立されている。その主なものとしては,ドイツ化学会のDECHEMAマテリアル・チャートおよび自然科学全体を対象にしたランドルト・ベルンシュタインのデータ収集が挙げられる。

国際協力の面では,実用的システムであるCASINSPECなどを導入するばかりでなく,企業レベルでもヘキスト社のGREMSシステム,AEGテレフンケン社のDREシステムは同種の外国企業との協力のもとに開発が進められている。


(6) カナダ

カナダの科学技術情報流通問題の背景として,第1に地理的に非常に広域であり,各地域が,いわば独立した情報組織をもたざるを得ないこと,第2にアメリカと経済的な結合度が強いため科学技術情報活動の面でもCAS,MEDLARS,ISなどアメリカのシステムに依存する傾向が強いこと,第3に,反面では,国立研究機関,大学などにおける基礎研究の振興を図つているため,アメリカ流の開発重点型の情報活動では不充分で,独自の情報活動の必要性が高まつていることなどを考慮しなければならない。

このような観点から,科学技術情報政策の新しい方向を打出す試みが,科学大臣が設置した作業グループにおいて行なわれ,科学技術情報庁の設置を中心とする革新的な勧告として提出されたが,科学会議の同意を得られず,代つて科学会議による作業が行なわれ,昭和44年9月に勧告として提出された。これは現存の組織の強化という観点に立脚しており,国家研究会議を科学技術情報流通システムの中央調整機関とし,国立科学図書館を科学,技術,医学分野の中枢情報機関とするものであつた。この勧告より早く,新国立科学図書館法が提出されており,結局国立科学図書館は,調整権をも与えられた文字通りの中枢情報機関となつた。このように,国立科学図書館を中心とした国家的情報システムの整備が現在進められている。

国立科学図書館の主な活動としては,CAS,NSPECなどの磁気テープを使用したサービス,レアァレンス・サービス,複写サービス,翻訳サービスなどがある。その他の中枢的情報機関として,国家研究会議の技術情報サービス,建築研究部などがある。

他方,各省はその中央図書館を通じ,専門分野の情報サービスを行なつており,各地方政府は図書館,コンサルタントサービス,データバンク機能を有して,地域内の企業へのサービスを行なつている。


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