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第2部   科学技術活動の動向
第1章  研究活動の動向
2  企業の研究活動
(3)  研究関係人材



(1) 研究者の推移と構成

会社等における研究者の数は,昭和44年においては前年に対して1.0%増加して約83,000人となつた。これを業種別にみると, 第2-23図 にみるように,全体の約4分の1を占める電気機械工業が9.4%の増加を示し,輸送用機械工業も15.1%と高い増加率を示した。

第2-23図 業種別研究者の推移

次に,会社等における研究者の業種別の構成比率についてみると, 第2-8表 に示すように昭和35年と昭和44年とでは変化がみられ,電気機械工業と化学工業の割合がそれぞれ3%以上増加し,あわせて全体の50%を占めるに至つた。このほか,機械工業,輸送用機械工業も増加している。

第2-8表 研究者の業種別構成比率

一方,繊維工業,精密機械工業の場合は,逆に減少している。

会社等の従業者千人当たりの研究者数は全体では13人であり,製造業では16人である。最高は化学工業の34人で,ついで電気機械工業の25人となつている。一方,少ない方の産業としては,運輸通信公益業の2人をはじめ,農林水産業の4人,鉱業,建設業,出版印刷業の6人,繊維工業の7人,鉄鋼業の8人などがあげられる。

35年と44年の従業者千人当たりの研究者数を比較してみると,化学工業が22人から34人へと12人増の最高の伸びを示し,ついで,電気機械工業が22人から25人と3人増加し,鉱業も3人から6人と3人増加している。これに対して,減少したのは石油製品・石炭製品工業で29人から15人と14人減少している。ついで食品工業(7人),非鉄金属工業(4人),金属製品工業(3人),精密機械工業(3人)となつている。また,繊維工業,建設業,窯業,運輸通信公益業は横ばい状況となつている。

なお,アメリカでは製造業の従業者千人当たりの研究者数は27人(1967年)で,わが国の全産業の場合のほぼ2倍である。

次に,化学工業,機械工業,電気機械工業および輸送用機械工業における研究者の専門分野別の分布状況を 第2-24図 から 第2-27図 に示す。

化学工業( 第2-24図 )

この業種の場合,化学を専門分野とする研究者が65%以上を占めている。

2番目に高い比率を占める薬学も化学と同様構成比にあまり変動がない。繊維等これに続く各専門分野ではわずかに増加の傾向を示しているが,全体に占める割合は小さい。

第2-24図 化学工業における研究者の専門分野別構成

機械工業( 第2-25図 )

この業種においては,機械・船舶・航空を専門分野とする研究者の割合が年を追つて増している。反対に,化学,電気・通信,鉱山・冶金,数学・物理等の割合は,次第に少なくなつてきている。

第2-25図 機械工業における研究者の専門分野別構成

第2-26図 電気機械工業における研究者の専門分野別構成

第2-27図 輸送用機械工業における研究者の専門分野別構成

電気機械工業( 第2-26図 )

この業種においては,従来から高い割合を占めていた電気・通信が低下し,反対に機械・船舶・航空の割合が上昇した。数学・物理,化学も比較的高い。

輸送用機械工業( 第2-27図 )

この業種においては,機械・船舶・航空が昭和35年においては75%以上を占めていたが,その後その割合はやや低下し,約70%となつている。次に化学,数学・物理,電気・通信がそれぞれ%程度になつている。


(2) 研究関係者

昭和44年の研究関係人材は総計229,000人となり,このうち研究者は,36%の83,000人,研究補助者は26%の59,000人,技術関係者は,26%の60,000人,事務その他の関係者は11%の26,000人となつている。

次に,研究者1人当たりの研究補助者数をみると,全産業では0.71人であり,最も高いのが鉱業の0.93人,最も低いのが建設業の0.44人である。

製造業では,食品工業が0.98人と最も高く,ついで電気機械工業が0.87人,輸送用機械工業が0.86人であり,パルプ・紙工業は0.51人,ゴム製品工業は0.54人,窯業は0.55人と低い。


(3) 研究者の適性

研究成果の向上を図るには一般に2つの面からの方策が考えられよう。その1つは量的な面からの研究活動の拡大であり,もう1つは質的な面からの研究活動の充実である。とくに後者は人手不足のおりからもまた研究活動は元来個人の才能,努力に負うところがきわめて大きい活動であることからもますます重要となつていく問題であろう。

研究活動の充実を図るうえにおいて研究者の適性が重要な要素であるので,この研究者の適性として具体的にどういうものが考えられているかを科学技術庁が昭和44年度に行なつた「企業における研究者の適性に関する調査」からみてみよう。


1) 研究者の適性

研究者に要求される適性は,研究が基礎研究か応用・開発研究かによつて異なる。

第2-28図 および 第2-29図 は研究所の管理者が基礎研究および応用・開発研究について,それぞれどういうものを研究者の適性項目として重視しているかを示したものである。これによると,基礎研究の研究者には圧倒的に「独創力」が要求されており,次に「理論的考え方」,「ねばり強さ」,「直観」などがあげられている。一方,応用・開発研究の研究者には,「計画性」,「独創力」,「広い知識」,「協調性」などが要求されている。このことは基礎研究の研究者には独創力が秀でて理論的な考え方をするねばり強い努力家が要求されており,応用・開発研究の研究者には,独創力とともに計画性があり,いろいろな方面に広い知識をもち,他人との協調性の高い人が要求されているといえよう。なお,これは管理者からみた一つの望ましい研究者像を示すものと考えられる。

第2-28図 基礎研究の研究者の適性として重視されるもの

第2-29図 応用・開発研究の研究者の適性として重視されるもの


2) 研究者の適性の判断

次に,日常の研究活動において具体的にどのような行動を示す人が研究者としての適性を持つているとみなされているかをみてみる。

第2-9表 および 第2-10表 は,研究管理者が自分の職場において学歴,勤続年数および研究分野がほぼ同じで入社3年以上8年未満の男子研究者の中から研究に対する適性があると思われる人と適性が劣ると思われる人を1人ずつ選び,それぞれその人に該当すると思われる項目を選んでみた時の得票率を示したものである。この表では,全80項目のうちから,適性,不適性の両面からみて得票率の差の大きい項目を10個ずつ選んで示してみた。これによると研究適性があるとみなされている研究者は独創力があり,理論的で指導力がある人であり,前に述べた研究機関の長および研究管理者の要求する適性とも一致していることがわかる。その逆に適性が劣ると思われている研究者は,ほぼ,これと反対に近い行動をとつていることがうかがえる。

第2-9表 研究者の適性を判別する項目

したがつて,これらの項目は,研究者の適性を判別する一つの有力な目安とみることができる。しかし,これだけでは研究者の適性を判別する方法として十分とはいえないので,今後さらに調査研究していく必要があろう。


3) 研究者採用時の適性判別

研究者を採用する場合,研究者としての適性を備えているかどうか判別することが望ましい。そこで,この実状を 第2-11表 からみてみよう。同表は研究者の採用選考にあたつてどのような方法が用いられ,また,研究管理者等は何を重視すべきであると考えているかを示したものである。

第2-10表 研究員の不適性を判別する項目

これによると大多数の企業で用いられているものは面接所見,大学の成績,筆記試験などである。これはまた管理者等が重視すべきであると考えているものとほぼ一致している。

適性試験の一種である性格知能テストを重視項目として指摘した者は研究機関の長においては1〜3位までの合計でも7.8%にすぎなかつた。しかし,研究管理者になると,これが26.7%と増加しており,研究機関の長と差がみられる。

第2-11表採用選考資料の使用率及び重視すべき順位

ところで,このように研究者の採用時に適性判断はあまり行なわれていないが,これは次のような理由からとみられる。

1) 博士採用の場合と中小企業における採用の場合を除けば研究者の採用は本社人事部門が研究者以外の者と一括採用し,その中から研究機関の意見をききながら,配属を決める企業がほとんどであること,2) 企業側が新卒者のすでに所有している知識・技術を基礎として,本人の専攻学科だけで配属先を決めてしまうきらいがあること,3) 知識・性格テストなどを含めた各種適性テストが研究者の適性と具体的にどのように結びついているかを明らかにしたものが少ないことなどである。


(4) 企業における研究者の再教育

科学技術の進展に伴つて,産業の各分野で流動する研究者に対しては,その知識,技術の陳腐化を防ぐため,積極的に再教育の機会を付与し最新の知識,技術を常に補充することが重要となつている。その実態を科学技術庁の「企業における科学技術者の再教育等に関する調査報告」によりみてみよう。このような研究者に対する再教育は,教育内容として電子計算機関係,組織工学など広範な領域にわたり,実施方法も多岐にわたつている。

資本金10億円以上の企業に対する前述の実態調査結果から,昭和43年度の実状をみると,企業単位の実施状況では,研究者に対して一定期間,組織的に再教育を実施した企業の割合は全体の59%に達している。

また,この割合は,企業規模の大きいほど高く,資本金100億円以上の企業では80%,50〜100億円では63%,10〜50億円では52%となつている。業種別にみると,機械工業75%,輸送用機械工業72%などが高く,反対に食品業48%,窯業44%などが低い。

一方,調査対象企業全体の研究者に対し,昭和43年度に再教育を受けた研究者の割合は,全体の14.3%となつている。とくに,建設業の36%,鉄鋼業の27%,機械工業の25%が高い。

実施方法については, 第2-30図 に示すとおり,研究者の場合は企業内教育が64%を占めており,技術者と比べてみると,国内派遣および海外派遣という企業外教育の割合が大きい。なお,この調査によると研究者,技術者が従事する職務のなかで,再教育の必要性が強まつてきた部門の第一には研究,試験部門があげられており,ついで生産技術部門となつている。

第2-30図 企業内・企業外教育別割合(研究者一技術者)

企業における研究者の再教育の現状は,以上のとおりであるが 第2-31図 に示すように,過去5ヵ年において再教育を実施する機会を年々増加する傾向にある企業は37%程度を占め,これに反し,減少しているという企業はごく僅かである。

第2-31図 研究者の再教育実施傾向(資本金階層別)

一般的に研究者の再教育の問題に対する企業の認識と意欲は高く,今後,量的にも質的にもますます拡充されて行くことが予想される。


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