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第1部   技術革新の歩みと新たな展開
第2章  社会・経済に対する技術革新の影響と近年の動き
3  技術革新の新たな展開
(3)  技術革新の新たな展開のための科学技術活動


新たな技術革新を展開していくための科学技術活動の推進にあたつては,次のようなことがとくに重要といえよう。

第1に独自の技術を開発していくことが必要である。技術革新の起動力となる技術進歩は,従来のように海外からの導入技術に大幅に依存していくことは困難になりつつあることを認識しておく必要がある。

すなわち,わが国が海外から技術を積極的に導入し,吸収してきた結果,一部のものを除けば,技術水準としては,ほぼ国際的水準に達しつつあることもあつて,海外から学ぶ技術が減少していること,また新しい技術が外国に存在していても,わが国が強力な競争相手となつてきたため,そのような技術の導入条件が次第に厳しくなつていること,さらに,環境汚染問題に対する科学技術は世界的にみても開発の緒についたばかりで,海外に多くを期待できないことなどの条件を考慮すると,もはや従来のように海外の技術開発に追随していくような形でなく,積極的に独自の技術を自らが切り開いていかねばならなくなつている。

第2に,社会的要因を重視した態度で技術開発を行なう必要がある。

従来の技術開発は,とかく,技術的要因と経済的要因が重視され,社会的要因が軽視されがちであつた。その結果,現代社会の歪みといわれる環境汚染問題や人間疎外などを,より一層深刻化させたことは否めない事実であろう。

このような観点から,今後の技術開発は新たな視点に立ち,社会・経済の変化に十分対応できるよう留意することが必要であろう。今後の社会・経済は,先にも述べたように急速に変貌しようとしており,国民の価値観にも多様化や変化がみられる。今後新たな技術革新を展開していくためにも,技術開発は,経済的要請のみならず,社会的要請も十分考慮したものであることが必要であろう。

また,科学技術が解決すべき近年の諸問題は,技術的,経済的なものだけでなく,社会的条件も含まれている場合が多く,問題を解決するには,広範囲の知識が必要になつていること,また,社会が複雑化するにつれて1つの問題について解決すれば事たりるというわけにはいかなくなつている。

このようなことから,今後の技術開発は,人間や社会現象を含めた広い対象を科学的手法によつてアプローチするソフトな技術を駆使し,あるいは,問題をトータル的な面でとらえるいわゆるシステムズアプローチによつて検討していくことが必要であろう。

第3に,技術を社会に適用していくにあたつては,テクノロジーアセスメントを導入することが必要である。

科学技術が進歩し,技術革新が進展するにつれ,技術の影響は多方面にわたり,予知せざる悪影響が生じたり,大量消費,使用密度の著増など,量的拡大により,悪影響が顕在化するなど,問題は一層複雑なものになつている。

そのために,問題発生後に行なわれる対策では,もはや十分な解決は望めなくなつている。したがつて,今後,技術を適用する場合は,その技術が自然や社会・経済に与える影響を予め広く評価,分析し,悪影響が生ずる恐れのあるものについては事前に対策を講ずるか,もしくは悪影響の少ない代替手段を選択するなど事前の調整が必要であろう。このような観点から,テクノロジーアセスメントの導入が重要である。

テクノロジーアセスメントに関する手法は,未確立のものが多く,その重要性からもその手法の開発を行なつていくことが緊要である。

以上,70年代を迎えて,技術革新の新たな展開の方向とそれに必要な科学技術活動の態度を述べてきた。技術革新は,70年代においても,社会・経済の多くの面で展開されていくであろうが,それが及ぼす影響の大きさを想像するとき,その展開の方向は重大な意味をもつているといえよう。このような点から,今後の科学技術活動は過去の経験を基にし,また,反省しつつ新たな視点に立つて,大胆に社会・経済の変化に対処していく態度が必要である。そして科学技術の本来の目的である「人間の幸福」を追求することによつて,科学技術に対する国民の信頼と支持を拡大していかなければならない。


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