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第1部   技術革新の歩みと新たな展開
第2章  社会・経済に対する技術革新の影響と近年の動き
2  環境汚染問題に対する科学技術活動の現状
(2)  環境汚染防止技術の動向


環境汚染は,工場排出ガス,自動車排出ガスなどによる大気汚染,工場排水,鉱山排水,家庭下水,し尿,船舶廃油などによる水質汚濁および騒音,振動,悪臭,固形廃棄物,農薬などによる汚染がある。環境汚染防止技術の研究開発は広範な分野にわたつて進められているが,ここでは,大気汚染関係については,工場排出ガス中のばいじん,いおう酸化物,窒素酸化物の防止技術,自動車排出ガス中の一酸化炭素,炭化水素,窒素酸化物,鉛化合物の防止技術,水質汚濁関係については,有機物,無機物などの汚濁物質,重金属やシアンなどの有害物質の防止技術,自動車,航空機,鉄道,建設工事などの騒音,振動の防止技術,化学工場,へい獣処理場などの悪臭の防止技術,ゴミ,プラスチックなどの固形廃棄物の処理技術,農薬による環境汚染の防止技術についてのべることとする。これらの防止技術の開発の方向をみると,電気自動車,新農薬の開発などにみられるような機構,原理の転換,自動車エンジンの改良などのような機構,方法の改良,物理的,化学的あるいは生物的処理による処理技術の開発,環境汚染防止のためのトータルシステムの開発などに大別される。

環境汚染防止の技術的方法を技術開発の方向と関連づけて整理すると, 第1-8表 のとおりである。

第1-8表主要な環境汚染防止の技術的方法


次に,環境汚染防止技術の現状について概観することにしよう。


(1) 大気汚染防止

ばいじん防止の技術的方法には重力式,慣性力式,遠心力式,洗浄式,ろ過式,電気式などがある。

粒径が20μ以上のばいじんに対しては重力式,慣性力式が適しており,20μ以下のばいじんに対しては,ろ過式,電気式が適している。

すでに, これらの集じん装置はそれぞれ実際に使われているが,微細粒子の除去,微量有害物質の除去,経済性の面でまだ十分とはいえない。

そのため,各集じん装置の性能の向上,各集じん装置の特性を生かした組合せ方式,有害ガス,悪臭なども同時に除去する方法などの開発が重要となつている。

いおう酸化物防止技術では,排煙脱硫技術についてみると,小規模の脱硫にむいている湿式排煙脱硫技術(排煙に水もしくはアルカリ溶液を作用させていおう酸化物を除去する方法)が,一部ですでに使われている。また大規模脱硫を可能にする乾式排煙脱硫技術(活性酸化マンガン法,活性炭法)は990%以上の脱硫率を目標にしており,すでにパイロットプラントによるテストは完了した。

第1-9表 いおう酸化物防止のための研究の目標

重油直接脱硫技術についてみると,金属などの含有量の少ない重油の脱硫にむいている固定床方式による重油直接脱硫技術(反応塔中に触媒を固定した状態で充てんし,この中に,原料重油と水素を通して脱硫する方法)は,一部ですでに使われている。また連続脱硫が可能で,そのため,金属などの含有量の多い重油の脱硫を可能にする懸濁床方式による重油直接脱硫技術は,いおう分4%程度の重油からいおう分1%程度の重油を製造することを目標としており,現在,パイロットプラントによるテストを実施している段階にある( 第1-9表 参照)。今後は乾式排煙脱硫装置の実際の適用による改良研究の推進,主流に占めると思われる懸濁床方式による重油直接脱硫技術の開発が肝要となつている。

窒素酸化物防止技術は,まだ基礎的研究の段階にある。現在,燃焼方式の改変による抑制技術として,二段燃焼法(理論量以下の空気をバーナーに送り,次いでバーナーの下流で残りの必要空気量を送つて燃焼する方法),排ガス再循環法(燃焼排ガスを燃焼室に戻す方法)など,排煙からの除去法として,メタンあるいはアンモニアガスを用いて還元分解する方法などが研究されているが,今後,長期にわたる研究が必要とされている。自動車排出ガス防止技術では,排ガス中の一酸化炭素,炭化水素の減少を目的として,エンジンの改良(エンジンの気化器,吸気系統,燃焼室の形式の改良など)と排気マニホルド空気噴射方式(排気マニホルドの近くで,排ガス中の可燃物質を再燃焼する方法)がすでに使われている。しかしこれらの方法には限界があり,これにつけ加えて排気マニホルドリアクタ(排気マニホルドを大きくして断熱するようにしたもの),一酸化炭素,炭化水素を接触酸化させる触媒式コンバータなどの研究が進められている。

第1-10表 自動車排ガス防止のための研究の目標

排ガス中の窒素酸化物の減少方法として窒素酸化物を接触還元させる触媒式コンバーター,75〜90%程度窒素酸化物を減少することができる排ガス再循環法が研究されている。これらの成果によつて昭和50年の自動車排ガス低減目標値を達成することができるものと期待される( 第1-10表 参照)。また,現在のガソリン車に代わるものとして電気自動車の開発が進められている。排ガス,騒音,振動などを解決するものとして期待されているが,今後,電気自動車のシステム設計,電気自動車固有のコンポーネントの開発,各種構成機器の改良,改善,電気自動車利用システムの開発が重要となつている。


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