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第1部   技術革新の歩みと新たな展開
第2章  社会・経済に対する技術革新の影響と近年の動き
2  環境汚染問題に対する科学技術活動の現状
(1)  環境汚染問題に対する研究活動の現状


環境汚染防止に当つては,汚染因子を排出する当事者による積極的な研究開発が必要であるが,それだけでは抜本的解決が難しく,また国全体としての環境保全の実現を図るためにも,環境汚染防止のための研究開発に果たす政府の役割は大きい。

そこで政府における環境汚染防止のための研究活動を,研究投資の面からみると, 第1-18図 に示すように,昭和45年度の環境汚染防止のための研究費(人件費,共通経費等を除く)は約14億円である。

この研究費を対象別にみると,大気汚染が37.8%と最も多く,次いで水質

第1-18図 政府における環境汚染防止研究費の対象別構成比(昭和45年度)

第1-19図 公害防止研究の性格別研究テーマ数

汚濁が27.8%,騒音・振動が2.8%,悪臭2.5%となつている。

環境汚染防止研究の内容について,国立試験研究機関が採択し,とり組んでいる研究テーマ数を性格別に分けると, 第1-19図 のようになる。全研究テーマ数は昭和43年度以降年々増加しており,昭和45年度では現象の解明,検出測定,処理技術を目的とする研究テーマ数は,前年に比してそれぞれ増加している。

次に,民間企業の環境汚染問題に対する研究活動をみてみよう。民間企業の昭和44年度における環境汚染防止に関する経費は, 第1-7表 に示すように資本金5億円以上の企業287社で約115億円である。

第1-7表 昭和44年度における民間企業の環境汚染防止技術開発費

これは,これらの企業の全体研究費の4.5%に相当している。この比率は,環境汚染防止の研究を実施している企業だけのものであるので,民間企業全体でみると,その比率は4.5%,よりさらに低くなると思われる。このように民間企業の公害防止関係の研究活動は充分とはいえない状況にあり,環境汚染問題が多様化,複雑化しつつ進展していることを考えれば,民間企業においても社会的責任の大きさを自覚し,一層の努力を重ねることが望まれる。

第1-20図 公害防止技術開発の対象分野別企業構成比 (昭和44年度)

研究開発の対象分野をみると,水質汚濁を対象とする企業が最も多く34.3%である。ついで大気汚染の31.2%,騒音・振動の21.4%となつている( 第1-20図 参照)。

また,研究開発を目的別にみると,自社で発生あるいは発生のおそれのある公害汚染因子の防止のためや,自社で発生あるいは発生するおそれのある公害汚染因子の実態把握にとり組んでいる企業が比較的多く,機構,原理の転換などによつて公害を発生しない代替商品の開発を行なつている企業はわずかである( 第1-21図 参照)。

また,環境汚染防止技術の研究開発においてプロジェクト研究として取り上げられている件数は366件を数え,この種の研究開発を実施する企業1社当り1件強の割合でプロジェクト研究が行なわれている。

これらのプロジェクトの研究開発費の規模をみると, 第1-22図 に示すように,1千万円以下の規模のプロジェクト研究が約7割を占めている。

以上,環境汚染問題に対する研究開発活動を研究投資などの面からながめてきたが,近年のこれらの問題の解決の緊急性からみると,政府および民間企業とも,より一層の努力が必要である。

すなわち政府は,環境汚染の現象の解明,環境基準設定に必要な研究,監視測定のための研究,緊急性が高く,かつ広範囲な汚染防止に役立つ防止技術,防止システムの開発など国家的見地から重要と思われる研究分野で,より一層の努力を払うことが必要であろう。

第1-21図 民間企業における公害防止技術開発の目的別構成比

第1-22図 民間企業におけるプロジェクト研究の研究開発費の規模と件数(昭和44年度)

また,民間企業においても,社会的責任の大きさを自覚して,自らの企業が排出する汚染因子については,自ら防止するという姿勢が必要であり,防止技術の実用化研究を中心に,積極的に取り組んでいくことが望まれる。

さらに,今後,研究開発の実施に当つては,この種の技術の開発には,多分野の技術知識の結集が重要であると同時に,基礎研究から実用化研究までの広範囲な研究を短期間で行なうことが必要であることにかんがみ,産,官,学のそれぞれの機関の特性を生かしつつ,有機的な連携を図つていくことが重要であると思われる。


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