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第1部   技術革新の歩みと新たな展開
第1章  わが国の技術革新の特徴と進展要因
2  進展要因からみた技術革新
(2)  技術革新と社会・経済の要請


社会・経済の要請を,産業活動,生産活動の場における種々の要請すなわち産業上の要請,衣食住など個人的財に対する要請すなわち個人的要請,輸送・通信,医療,生活環境などに対する要請すなわち社会的要請に分け,戦後から今日までのこれらの要請の変化と技術革新の関連を概観する。

まず,産業上の要請への技術の対応についてみていこう。

昭和20年代においては,石炭,鉄鋼などの業種を中心として,わが国の産業の復興がはかられ,この分野での技術の蓄積と相まつて,戦後の産業が立ち直る原動力となつた。

さらに,昭和30年代に入ると,エレクトロニクス,高分子化学などを中心に,数々の革新技術が出現し,従来存在しなかつた新しい機能を有する製品が登場し,新たな市場が開拓されていつた。また,各産業において,大型化,自動化,直接化などの合理化技術が出現したことによつて生産工程の改善がなされ,大量の製品を,安価に生産することが可能となつた。ついで昭和30年代後半になると,各種の省力機器が開発され,深刻化してきた労働力不足に対応して,広く普及しつつある。また,近年,情報化の進展に対処して,データ通信などの情報システムの開発が活発化してきている。

つぎに,個人的要請への技術の対応についてみよう。

食生活関連では,農業における増産技術の進歩により,主食については,昭和20年代後半に,かなり量的に充足され,以後,副食を中心とする食生活の高度化が図られた。すなわち,ハム,缶詰などの多種類の加工食品,コーヒーなどのインスタント食品,廉価な肉,乳,卵,果実などの食品,電気冷蔵庫,電気釜などの耐久消費財の普及が進んだ。

これらは,所得水準の向上もさることながら,技術の進歩によつて,可能となつた面が大きい。

40年代に入るとさらに高級化,便宜化,多様化への欲求が強まるにつれ,技術の進歩は,冷凍食品,ジユーサー,電子レンジなどの新製品を登場させ,また,不時野菜,果実の供給などにより,バラエティに富んだ食生活を可能とし,技術は,高級化,便宜化,多様化などの要請に十分応えることができた。

衣生活関連についても同様のことがいえる。戦後まもなくは,下着など身につけるものの確保が先決であつたが,繊維品の生産量の増大にともなつて,この点は,昭和20年代でほぼ量的に満たされた。その後,ナイロン,ビニロンなどの合成繊維の技術の進歩によつて,低廉でかつ,耐久性のある繊維が大量に生産されるようになり,さらに染料,染色,デザインなどの技術の進歩によつて,個性的でかつカラフルな衣料が豊富に普及していつた。

つぎに,住生活関連や知識,余暇などについてみると,衣食における生活水準が一応の水準に達した昭和30年代になると,さらに余裕のある豊かな文化的な生活への欲求が高まり,住宅の建設や知識の向上,余暇の利用に関連した消費財の購入に,国民の関心が高まつてきた。

住生活関連では,従来の白熱電灯にかわつて螢光灯が普及し,また,アルミサッシなど新建材の出現により,住宅を簡単にかつ美しく,建設できるようになつた。

知識の向上,余暇の利用などに関連した消費財では,テレビ,ラジオ,乗用車などが大量生産技術の確立によるコストダウンにともなつて,急速に大衆化し,個人生活を高度化していつた。

さらに,これらの部門での要請が,より高級なものへと変化するに従い,カラーテレビ,ステレオなどの新製品が出現し,要請の高度化に対応してきた。

つぎに,社会的要請への技術の対応について述べよう。

昭和20年代から30年代前半までは,個人的要請を満足させることが先決であり,また社会・経済活動も充分に活発化していなかつたため,輸送,通信の分野における技術に対する要請は,あまり大きくはなかつたが,その後,経済の高度成長,経済の国際化,急速な都市化などを背景として,活動範囲は広域化し,また情報伝達量も増大するにつれ,これらの分野で,技術に対する要請は急速に高まり,数々の新しい技術によつて,これに応えるに至つた。例えば,東海道新幹線,名神・東名高速道路,ジエット旅客機,市外ダイヤル化,宇宙通信,データ通信などである。

また,医療の分野では,国民の健康の保持,増進という要請が戦後まもなくからかなり強かつたため,早い時期から技術がその要請に応えており,数々の有効な新薬や新医療機器などが開発されてきた。例えば,カナマイシン,ブレオマイシンなどの新薬,エックス線テレビ,胃カメラ,脳波計などである。

社会・経済の要請と技術との総括的な対応を工業製品出荷額の構成比でみると, 第1-2表 のとおりである。これによると,昭和25年には,衣食関連製品の出荷額は,約40%を占めていたが,このウエイトは徐々に減少し,これに代わつて,住関連,社会的財に対する要請に対応する製品の出荷額のウエイトが高まつてきている。

また総理府で毎年実施している「国民生活に関する世論調査」をみても, 第1-15図 に示すように社会的要請は,昭和38年には21.5%であつたが,昭和43年には,29.9%と増加しており,その高まりを裏付けているといえる。この面での技術革新の展開が,今後大いに期待される。

第1-2表  機能別出荷額の比率

第1-15図 社会からの要請の変遷


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