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第2部   科学技術活動の動向
第1章  研究活動の動向
2  企業の研究活動
(6)  企業における研究管理


近年,企業においては,研究開発の重要性が増大したこと,研究開発が大規模化,複雑化したことによつて,その効率化,迅速化の要請が強まり研究管理に対する関心が高まつている。

ここでは,科学技術庁が昭和43年度に行なつた「企業における研究活動に関する調査」を中心に,企業の研究管理の現状を開発方針の決定から予算配分,研究開発の運営,研究投資効果の検討へと順を追つてみることとしよう。


(1) 研究開発方針の決定機関
第2-39図 研究開発方針を決定する特別の機関の設置

個人や現場だけの判断で研究開発方針が決定される時代は去つたといわれる。たとえば,新製品会議,研究開発会議等と呼ばれる研究開発方針などを決定する特別な機関を設置する企業が増加しつつある。

第2-39図 は,研究開発方針を決定する特別の機関の設置状況を示したものである。これによると,設置している企業は,昭和42年現在で全体の半分をやや上回つたところであるが,今後さらに増加する傾向にある。

第2-40図 は,これを産業別および資本金階層別にみたものである。化学工業,電機機械工業,輸送用機械工業,一般機械工業では,いずれも全回答企業における設置割合を上回つており,研究開発努力の高い産業ではこうした方式で研究開発方針を決定している場合が多いことがわかる。また,資本金階層別にみると資本金50億円以上の企業では70%以上がこのような機関を設置しており,研究開発努力との相関がきわめて強いことが示されている。このような研究開発方針を決定するための特別の機関は概して,企業経営層のリーダーシップで運営されており,事実これらの機関の99%が,社長,副社長,あるいは重役が出席するものとなつている。

それでは,研究開発部門は企業のなかでどのような位置にあるのであろうか。 第2-41図 は,科学技術庁の行なつた経年的な調査を比較したものであり,傾向として,経営層に直属するものがますます増加しつつあることが明らかである。

第2-40図 規模別,産業別にみた研究開発方針を決定する特別の機関の設置状況(昭和43年)

従来,研究開発部門は,製造部門あるいは技術部等に従属していることが多かつたが今や独立した部門として経営層の直接指揮下にはいることとなつたのである。これは研究開発部門の重要性が一般に強く認識されたことを示すものであるといえよう。

第2-41図 企業における研究開発部門の位置

次に,個々の研究プロジェクトを実質的にだれが決定するかをみてみよう。 第2-42図 によれば,研究段階が,基礎,応用,開発へと進むにしたがつて,研究者みずから決定する場合が減少し,審議機関において決定される場合が増大している。これは,研究プロジェクトの規模が,研究段階の進むにしたがつて大型化することや,判断にあたつて,製品化の可能性,市場性など多くの要素が複雑に関係してくる度合が強まるためであろう。

第2-42図 研究プロジェクトの実質的な決定主体(昭和43年)


(2) 予算編成方法

決定された研究開発方針にそつて適正な研究開発を実施するために必要な経費を確保するために,どのような予算編成方式がとられているかをみてみよう。 第2-43図 は,予算の編成方法を昭和38年と43年とで比較したものである。ここで総額方式とは,何らかの基準(過去または将来の売上高,利益,過去の研究開発費等)に基づいて総額だけを決める方式であり,積上げ方式とは,研究課題別に予算を積み上げ,または研究者1人当たりの実績に特別の経費を加算する方式であり,折衷方式とは,両者を折衷する方式である。経費の支出については,これらのほかに研究の進捗状況に応じてその都度決定する方式もあり,これは,研究開発を弾力的に進める利点もあるが,この方式が減少し,積上げ方式が漸次増加していることは,研究開発計画がより計画的,合理的に行なわれるようになつてきたことを物語つている。

第2-43図 研究開発予算の編成方法


(3) 研究開発の実施方式

ここでは,研究開発の実施方式についてみてみよう。 第2-44図 は,基礎,応用,開発の各研究段階における実施方式を昭和38年と43年で比較したものである。基礎研究については,現行の組織で実施する場合が増加しているが,応用,開発へと研究段階が進展するにつれて,新たに研究チームを編成する等機動的な組織による場合が多くなつている。応用,開発段階の研究については,研究プロジェクトを中心として適材適所の人員配置による組織を編成する必要があることがうかがわれる。

第2-44図 研究開発の実施方式

決定された研究プロジェクトや研究テーマの進捗状況に関して,経営者は,当然強い関心をもつているはずである。 第2-45図 に,進行中の研究プロジェクトおよび研究テーマに関する経営層の管理の仕方を示したものである。これによると,研究プロジェクトについては,昭和38年に比して,研究開発実施責任者に一切を任せる企業が減少し,経営層が定期的に検討し,指示する企業が増加する傾向がみられる。

第2-45図 研究開発の実施における経営層の関与の仕方

研究テーマについては,研究プロジェクトの場合に比べて,研究者にまかされる度合が強いようである。


(4) 研究投資効果の検討

研究投資効果の検討の状況をみるにあたつて,まず,これに対する関心の度合を知る一つの指標となる研究開発費の経理処理の状況についてみてみよう。

第2-46図 研究開発費のプロジェクト別の経理処理の状況

第2-46図 は,研究開発費の経理処理をプロジェクト別に行なつている状況について調査したものである。これによると,昭和38年に比べて43年には,すべての研究プロジェクトについてプロジェクトごとに経理処理を行なつている企業は2倍に増加しており,まつたく行なつていない企業は相当減少している。しかしこのような企業は,まだ40%以上を占めており,研究開発を有効な投資として取り扱う体制が必ずしも十分ではないようである。資本金階層別にみると,大企業ほどプロジェクト別の経理処理を行なつている割合が高く,資本金100億円以上の企業では,すべてのプロジェクトについて行なつている企業が半数をこえている。一般に,大企業の方が研究開発費も多く,また,多数の研究プロジェクトを実施しているので,これらを管理する上でその必要性が高いことを示しているといえよう。

第2-47図 研究投資効果の検討状況 (昭和43年)

次に,研究投資効果の検討がどのように行なわれているかを, 第2-47図 および 第2-48図 に示した。これによると,研究投資効果を検討した経験があると答えた企業は,全体の5.4%に達し,将来検討する予定のあるものまで含めると85%になる。前述の経理処理の場合とは対比して研究投資効果に対する関心の高いことがわかるが, 第2-47図 の研究投資効果の検討状況についてみると,定性的方法によるものが定量的方法によるものよりかなり多い。また,これによると,研究投資効果の検討方法については,企業規模による差は,経理処理の場合ほど著しくないが,やはり大企業ほど定量的方法を採用している場合が大きい。

工業技術院の行なつた「研究開発および技術交流に関する調査」によれば,研究評価の実施状況は, 第2-49図 の通りである。

この調査によれば,研究評価を行なつている企業は71%であり,かなり高い。研究段階別にみると,研究段階が進展するに伴つて,研究評価の実施率が高くなつている。その研究評価の方式についてみると,定量的方式を採用している企業は20%で,かなり低い。

第2-48図 研究投資効果検討の方法

最後に,企業の発展と研究開発との関連を企業はどうとらえているかをみるために,企業成長と研究活動の関連モデルを作製した経験の有無を 第2-50図 に示した。作製した経験のある企業または現在検討中の企業はまだ少ないが近い将来検討する予定の企業が半数以上の56%に達しており,非常に関心が高まつていることを示している。これを企業規模別にみると,大企業におけるほど多く検討されているようである。産業別では,化学工業,電気機械工業において検討されている割合が高く,研究集約産業としての性格が表われている。

以上のことから,全般的に研究開発を重視する傾向は年々強まつてきており,企業は,研究開発を企業戦略に結びつけるため種々の努力を払つていることがわかる。

研究管理は,まだ,工程管理,品質管理ほどはつきりした理論体系をもたず,いわば模索段階にある。とくに定量的な管理技術については,地道な努力の積重ねが必要であるといえよう。

第2-49図 研究段階別研究評価実施状況(昭和43年)

第2-50図 企業の成長と研究活動との関連モデルの作成状況(昭和43年度)


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