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第2部   科学技術活動の動向
第1章  研究活動の動向
2  企業の研究活動
(2)  研究投資



(1) 研究投資の動向

昭和42年度において企業が支出した研究費は総額3,790億円で,前年度に対して29.7%増であり,昭和36年度につぐ大幅な増加を示した。わが国の総研究費に占める企業の研究費の割合も63%で,昭和41年度まで下降傾向にあつたが,再び上昇した。 第2-15図 は,産業別研究費の推移を表わしたものである。全産業の90%以上を占める製造業の伸びが著しく,これの帰すうが産業界の研究投資の鍵を握つているといつても過言ではない。他方,全体への寄与率は小さいとはいえ,運輸・通信・公益業の研究投資は,昭和39年度以来30%近い伸びを続け,3年間でほぼ倍増した。また,農林水産業においては,長い間横ばい傾向にあつたが,昭和42年度は16.3%増の大幅な増加を示した。このような研究投資の増加をもたらした背景として,企業の設備投資が39.4%増加したことが指摘される。すなわち, 第2-16図 に示すように,過去の企業の設備投資と研究用固定資産購入額の動向をみると,両者の間にはかなり強い相関関係がみられ,従来の研究用固定資産購入額は,景気の好・不況に左右される減が強かつた。昭和42年度の増加も,2年続きの好況を反映したものとも考えられるが,前年度に対して59.9%に及ぶ増加の状況は,きわめて大幅なものとして注目される。さらに,研究設備投資の内容は,機械・器具・装置等に重きを置いたものであり,中央研究所の設立が盛んであつた昭和35年〜36年頃の土地建物に重きが置かれたのと様相を異にしている。

第2-15図 産業別研究費の推移

第2-16図 企業設備投資と研究設備投資の相関

第2-17図 は,産業別の研究費の対売上げ高比率の推移を示したものである。この比率は,企業の研究開発に対する努力水準を表わすものと考えられるが,とくに製造業においては,2年連続の増勢であり,これまで最高であつた昭和36年度の1.21%を上回る1.27%となつた。

また,他産業に比して,製造業は,はるかに高水準を保つており,運輸・通信・公益業および鉱業が第2グループ,建設業および農林水産業が第3グループを形成していることがわかる。しかし,昭和42年度に最高値を示した製造業についても,国際水準から見るとかなり低い。

第2-17図 産業別研究費の対売上比の推移

第2-5表 は,研究費の売上高に対する比率の上位10業種を一覧表にしたものであるが,全産業平均では,アメリカ,フランスに相当な隔りがある。諸外国の上位業種でとくに比率の高いのは,政府資金が大量に投入されていることにもよるが,第1部でみたとおり,これを差し引いて,民間資金で比較してもまだ及ばない状態である。各国の統計のとり方が必ずしも一致していないため,完全な比較はできないが,わが国第1位の医薬品についても,4か国中で最も比率が低い。第2位の通信・電子機器は,アメリカ,フランスともに政府が資金を投入しているため,わが国との格差は著しい。化学関係では,各国とも大分比率が低くなつており,わが国の化学工業は,アメリカの化学製品の水準に近い。わが国の精密機械,一般機械は比較的順位が下位であり,諸外国に比してかなり比率が低くなつている。

次に1社当たり研究費が産業によつてどのような違いがあるかをみるために,1社当たり研究費の上位10業種の一覧表を第2-6表として掲げた。

第2-5表 研究費の対売上げ高比率の高い上位10業種国際比較

通信電子工業が第1位であり,電気機械工業,化学工業などのいわゆる研究集約的産業および自動車工業などが上位を占めている。


(2) 費目別研究費

企業の研究費を費目別に分析することによつて,その研究活動をより詳しく見ることにする。 第2-18図 は,費目別研究費の推移を示したものである。全体的に順調な伸びを示しているが,人件費は,そのなかでもとくに著しい。しかし,近年の物価上昇率をも上回る賃金上昇率を考慮すると,この伸びがただちに研究スタッフの充実と結びついているとはいえない。

第2-6表 1社当たり研究費の高い上位10業種(昭和42年度)

第2-18図 会社等における費目別研究費の推移

第2-19図 は,各年度の費目別研究費を昭和35年度を100とする指数で表現したものである。7年間で人件費は4倍,消耗資材費が3倍,固定資産購入額が2倍弱となつている。研究費全体の40%以上を占める人件費が4倍になつていることは,研究費の増加に大きく影響しているわけである。この期間に,企業における研究関係従業者は23%増加しており,人件費の4倍の増加は,この研究関係従業者の増加と賃金水準の上昇に帰する。これを研究関係従業者1人当たりの増加率に直してみると3.27倍になつており,おおよそこれが7年間における賃金水準上昇の分とみられる。これを年間平均伸び率に換算すると約18%となり,民間賃金水準が昭和43年に29年以来の最高の上昇率14%であつたことを考慮すれば,非常に高い伸び率であると考えることができよう。

第2-19図 会社等における費目別研究費の指数

このことは,研究開発に対する認識の高まりを反映し,企業が研究関係人材の質量にわたる確保のため非常に努力していることを示すものと思われる。

第2-20図 会社等における研究費に占める人件費の割合の国際比較

第2-20図 は,研究費に占める人件費の割合の国際比較を行なつたものである。各国とも50%弱であり,日本はやや低く,フランスがやや高い。このことは研究投資額および研究関係従業者数をあわせ考えるとき,わが国の場合,待遇が改善されつつあるとはいえ,諸外国に比較して,その賃金水準に,なお格差のあることを示しているといえよう。

次に,固定資産購入額についてみると, 第2-21図 に示すように,その全研究費に占める割合は漸次減少する傾向にあつたが,昭和42年度には増加した。これは固定資産購入額のなかの機械・器具・装置の割合が高まり,その充実が図られたことによるものである。


(3) 研究者1人当たり研究費

研究活動を実施する研究者が,どの程度研究費を使用しているかということは,研究活動の充実度をみる一つの指標である。

第2-22図 に,企業における研究者1人当たり研究費の推移を示した。全産業平均をみると,昭和36年度に大きく増加したが,以後41年度まで平均5%弱の上昇率である。42年度には再び約100万円の大幅な増加を示した。参考のために,特殊法人についてみると,その研究者1人当たり研究費は,企業の約2倍の水準となつている。これは,研究の性格の相違によるものとも考えられるが,近年固定資産購入額の大幅な増加によつて,急速に上昇したことによるものと思われる。

第2-21図 固定資産購入額構成額構成比の推移

第2-7表 は研究者1人当たり研究費の大きい上位10業種を一覧表にしたものであり,これからみると,1社当たり研究費と同様であつて,公益業,輸送用機械工業に属する自動車工業,化学工業,鉄鋼業など大型装置産業といわれる業種が上位にあることがわかる。なお,研究集約産業といわれる通信・電子工業は,第13位である。

さきに,研究費としては順調な伸びを示していることを 第2-1図 で明らかにしたが,物価上昇を考えて,どの程度研究用の機械・器具・装置類購入額と消耗資材費が充実したかを示したのが 第2-23図 である。これによると,全産業平均で約60%の増加となつているが,昭和36年度から41年度の間はほとんど増加していない。研究費総額は,この間に75%増加しているが,研究者1人当たりの消耗資材費,機械・器具・装置類購入額に対する寄与は6%以下であつた。しかし,昭和36年度と42年度は大幅に増加したため,35年から42年度の7年間で60%増という結果になつている。

第2-22図 企業の研究者1人当たり研究費の推移

第2-7表 研究者1人当たり研究費の高い上位10業種(昭和42年度)

第2-23図 企業の研究者1人当たり消耗資材費および機械・器具・装置類購入額の推移

第2-24-1図 企業における研究者1人当たり研究費の国際比較(1965年)

第2-24-1図 は,1人当たり研究費について国際比較をしたものである。研究費のなかには人件費がかなり大きな比重を占めており,人件費を公定為替レートにより換算する点に問題があり,正確な比較を期し難いが,これを念頭において比較を試みると,フランス,アメリカ,イギリス,日本の順になつており,とりわけわが国の場合は,これらの欧米先進国に比べて,格段に低い。ことに,研究者1人当たりの人件費について同様の比較を行なうと, 第2-24-2図 に示すように,その格差は,さらに大きなものとなつている。このことは,わが国では,国民所得水準の格差を反映して研究者の賃金水準がまだ低く,また,研究者に対する研究補助者の割合が小さいことによるものであると考えられる。たとえば,企業における研究者1人当たりの研究関係者数は,フランスの3.4人に対して,わが国は1.7人という状況にある。しかし, 第2-7表 に示された自動車工業,高炉による製鉄業,化学繊維工業や,公益業に属する特殊法人の研究者1人当たりの研究費は,イギリスの水準に近いものであるといえよう。

第2-24-2図 研究者1人当たり人件費の国際比較(1965年)


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