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第1部   科学技術発展の展望
第6章  科学技術の効率的振興
2  科学技術振興上の問題点
(1)  技術導入依存の限界


外国からの導入技術を効果的に消化,吸収し,さらにこれらを改良発展させてきたわが国は,一般的には生産技術の水準では,欧米先進諸国に比肩しうるまでになつているといえる。このことは,科学技術庁が調査した戦後に導入された技術(2,685件)の分析結果からみることができる。すなわち,これら技術は,導入された時点では,基礎研究,応用研究の段階にあつたものが62%も占めており,またわが国が技術的におくれを認められていたものが79%で,しかも,圧倒的に遅れていたものが33%にも達していたが,昭和42年度末の時点では,これらの技術について遅れを認めるものが26%になり,また圧倒的に遅れていると認められるものは4%に減少しており,時間の経過とともに技術格差は急速に縮小していることがわかる。

このような技術水準の急激な上昇に支えられて,わが国の1958〜1966年までの鉱工業における労働生産性の伸びは2.15倍となり,主要国のそれをしのぎ,また生産量でも造船の第1位,鉄鋼,石油化学,合成繊維の第2位をはじめ,世界の上位を占める産業が多くみられるようになつた。さらに製品輸出も順調な伸びを示し,世界の平均輸出増加率を凌駕している。

わが国は,今や先進国にとつて貿易市場での強力な競争相手にまで成長し,技術交流上にも大きな変化がみられるようになつて,従来のように導入技術に多くを依存することは次第に困難になつてきている。

このことは,第1には,導入技術のうち,わが国にとつてまつたく新しい技術の割合が減少し,すでに導入実績のある同種の技術の割合が増加していることに示されている。

昭和38年度では,導入件数のうち64.5%がわが国に初めて導入された技術であつたが,43年度ではその比率は29.7%となり,43年度における導入技術の70%以上がすでに導入されたものと同種類の技術となつている (第1-39表参照) 。昭和43年度の導入技術では,全般的にみて,画期的なものは少なく,電気,機械関係では,過去において導入されたものと同様な技術の改良に関するもの,あるいは部分的な性能向上を図つたものなど,漸進的進歩をした技術の導入が増加している。一方,化学関係では,原料生産技術の導入はほぼ終了したとみられ,中間製品ないしは最終製品を生産するための技術が多数を占めている。

このことは,わが国が諸外国で長期間かかつて蓄積された技術を短期間に急激に導入したために,新しい優秀な技術の種が減少したことにその原因の多くを求めることができるであろう。しかもまた,一般に優秀な技術であればあるほど,特許網を張りめぐらし,独占的,排他的であるか,または公表を避けて門外不出にしている例が認められるようになつてきており,このような傾向は,国際競争の激化とともに次第に強まることが予想される。わが国が技術的先進国の仲間入りをした現在,このような技術こそ必要となつているが,このような事情のため新しい技術の入手が困難になつていることがその一因になつているのではないかと思われる。第2には,導入に際して,技術と技術との交換を求めるいわゆるクロスライセンスとか,製品販売地域の制限のような条件の伴うものが多くなつており,また対価の支払条件がきびしくなつていること(ロイヤルティの上昇,ロイヤルティを支払う対象製品の拡大)である。

とくに,クロスライセンス契約は,昭和38年度において初めて現われ,以後は 第1-65図 に示すように増加の一途をたどり,43年度には著しく増加し,37件にも及んでいる。

第1-66図 は,昭和42年度と43年度の両年度における対価の支払対象がランニングロイヤルティによつて支払われているものについて,その支払条件を比較したものである。

第1-39表新技術の導入状況

第1-65図 クロスライセンス契約の推移

これによると,43年度は,42年度に比較して全般的にロイヤルティの上昇がみられる。

これらのことは,最近技術導入を経験した企業150社(科学技術庁振興局昭和43年度調査,調査対象企業の約50%)が契約条件がきびしくなつてきていることを認めていることにもあらわれている。

第3には,導入技術による生産量が,全生産量に占める割合は,昭和34〜36年度には約10%に達していたが,昭和42年には7.4%(科学技術庁振興局調査)に減少していることにうかがわれるように,導入技術の生産に対する貢献度が低下していることである。

第1-66図 導入技術の対価支払条件

これらの事実は,発展したわが国の産業が外国企業に警戒されるようになつたこと,わが国の消費水準の向上に伴つて,わが国市場が外国企業にとつて魅力あるものになり,技術を売るよりはみずから生産して販売する方が得策であるとみられるようになつてきたことなどをあらわしているものと思われる。

優秀な技術を有利な条件で導入し,生産に寄与させる度合が小さくなつていることを考えると,今後は一方的に外国技術に依存していては社会・経済の飛躍的な発展を図ることは困難であり,本格的な国際化に対処して,単に自由化を受身の形で受け止めるにとどまらず,外国市場に積極的に乗りだしていく気構えと,それらに必要な高度かつ独創的な自主技術の開発が,何よりも重要になつているものといえよう。

また同様に,社会開発面でも,公害問題,交通事故問題のようにわが国の事情がきわめて深刻化しているために,他国の技術に依存していたのでは十分な解決が望めないものもあり,わが国がみずから諸外国に先行して,わが国の風土,国情に合致した自主技術の開発が必要となつている。


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