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第1部   科学技術発展の展望
第5章  新分野の開拓と科学技術水準の向上
2  基盤的科学技術の培養
(5)  微生物利用技術


微生物を利用する技術は,生物科学の発達とともに,食品,医薬品,工業原料等の製造分野に導入され,著しい発展をみせてきたが,これら広汎な分野における基盤技術として,なお一層の発展が期待されている。

近年の微生物利用技術の応用は,溶剤,有機酸の製造への応用から,抗生物質,アミノ酸などの製造へと推移してきたが,その主体原料は,でんぷん,糖みつなどの糖質類であつた。しかし最近では,これら農産資源に代つて安価で供給が安定している石油,天然ガスなどの炭化水素やメタノールなどの石油化学製品を原料とする技術の開発が進められ,その顕著な例として石油のたんぱく資源化があげられる。

また,微生物のもつ物質の分解,合成,集積などの機能は,鉱石の製錬,ホルモンの製造などの新しい分野にも利用されてきている。さらに,これらの機能は廃水の処理にも利用され,石油化学コンビナート廃水の処理や,有害,有毒物質の分解処理などにその応用範囲を拡大している。

酵素の利用では,ブドウ糖を果糖に変えるイソメラーゼ,てん菜糖の収率に寄与するメリビアーゼなどをはじめ,新しい酵素が開発され,その応用技術の進展により,微生物工学の新しい分野が確立されつつある。そして,これらの酵素は無機触媒のように繰り返して使用され,連続反応も可能となつてきたため,その工学的応用には大きな進展が予想されている。

そのほか,微生物の物理化学的機能を利用する生物化学電池,微生物を利用する農業病害虫の防除等も研究されており,微生物を利用する技術分野は,今後ますますその範囲が拡大されるすう勢にある。

このように微生物の利用技術が発達したのは,生物科学の著しい発展によるところが大きいが,有用な微生物や酵素が発見され,その利用技術が進展しつつあるのに加えて,酵母,抗生物質,有機酸の生産などに広く利用されている深部通気培養,アルコール,アミノ酸をはじめ各種の発酵に応用されている連続発酵法などの新しい微生物工学技術が確立されたためである。

微生物利用技術としては,今後,さらに,新微生物の工業的処理への利用,新食糧資源の開発の利用,新酵素(生体触媒)の発見とその高度活用等が期待されている。

これらの期待にこたえるためには,有用菌株の探索と生産,微生物の増殖速度,酵素の反応速度などの究明,連続工程におけるプロセス特性の解析などが必要とされている。


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