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第1部   科学技術発展の展望
第5章  新分野の開拓と科学技術水準の向上
1  先導的技術分野の推進
(3)  海洋開発



(1) 技術発展の傾向

海洋開発は,鉱物資源の開発,生物資源の増養殖,海洋空間,海洋エネルギー,海水の利用等多岐にわたつており,広汎な分野の技術が必要であり,また,海洋のもつ特殊な環境条件から各分野間の技術的共通性,関連性も強い。このような海洋開発のための海洋調査,技術開発などの海洋科学技術の体系を例示すれば, 第1-59図 のとおりである。これは,第3部で述べるとおり海洋開発に関連する省庁で構成する海洋科学技術開発推進連絡会議が定めた第1次実行計画に基づき,国が中心となつて推進すべき開発プロジェクトを体系図化したものである。

第1-59図 第1次実行計画プロジェクト体系図(海洋科学技術開発推進連絡会議)

この体系図にみられるとおり,海洋開発に関し当面の目標となる主要な技術は,海洋の実態および現象を把握するための海底地形地質の調査技術および海洋環境の調査観測技術,生物資源の増養殖のための技術,海底石油,天然ガスの採取のための技術ならびにこれらに共通して必要な潜水技術および海洋構造物に関する技術等である。以下,それぞれについて,その発展の動向を述べることとする。


(a) 海底地形,地質調査技術

これは,海底の地形,地質調査は,海底の鉱物資源の開発をはじめ,海底の土地利用その他,多方面にわたる海底の開発利用にとつて欠くことのできない重要な基礎的作業である。


1) 海底地形調査

海底地形調査は,主として音響測深機,音波探査機器によつて実施されている。音響測深機は,従来から広範囲に使用されているが,精度をより高くするために,発信音の周波数を高くして鋭敏な指向性をもたせるなどの改良が必要である。また,現在の音響測深機や音波探査器による地形測量は,点あるいは線としてとらえる調査である。海底の起伏をより正確にとらえるには面的な調査を行なうことが必要であり,このためボトムソナーの開発が行なわれつつある。

海底土木工事等における海底の地形や土地の調査は,限られた小範囲ではあるが,きわめて詳細に行なわねばならない。このため,陸上の三角点に相当する基準点を海底に設置し,これを保持する技術,解析力のすぐれた海中カメラの開発とこれを使用した測量技術の開発が必要となつている。


2) 海底地質調査

広域にわたる海底地質調査の主力は,磁力,重力および地震の各種物理探査であり,必要に応じて海底堆積物や岩石の採取等が行なわれている。

磁力探査には,現在わが国はプロトン型磁力計が使用されているが,微弱な磁気異常をつかむには不十分である。このため,高感度のセシウム型磁力計の使用が要望されているが,その開発には外国特許部品が多いなどの問題がある。

重力探査機器には,海底重力計と船上重力計とがある。前者は精度が高いが作業能率が劣り,後者は,迅速な測定を行ないうるが精度が落ちるという欠点がある。アメリカではすでにきわめて精度が高い船上重力計が開発されているが,きわめて高価であるため,低廉な国産品の開発が要望されている。

地震探査には,発震源として従来,爆薬が使用されてきたが,近年は取扱いが安全かつ簡便,発震制御が容易,漁業補償問題が少ないなどの長所をもつ非爆薬方式に移りつつある。この方式には,圧縮空気を利用したエアガン,放電によるスパーク,その他機械振動やプロパンガスを利用するものなどがある。しかし,これらの非爆薬方式は,爆薬方式に比較して発震エネルギーがきわめて小さいため,より深部の地質がつかめないという欠点があり,各種の改良研究が関係機関で行なわれている。また,地震探査の測定記録方式は,世界的にみると,従来のアナログ方式からデイジタル方式へと切りかわりつつあり,良質の記録が迅速に得られるようになつた。わが国でも記録装置のデイジタル化が一部で行なわれ始めた。

各種物理探査の精度を向上させ,これを能率的に行なうには,上に述べたような機器装置の開発,改良もさることながら,調査船や航空機の位置決定,航法,各種記録の収集,解析,処理まで一貫して自動的かつ迅速に行なえるシステムを確立することが最も必要である。しかし,わが国は先進諸国に比して,この面での立遅れが著しく,海外油田開発において外国調査企業に依存している現状から脱するためにも,早急に技術開発がなされるよう強く望まれている。

海底地質試料の採取については,従来,船上から操作するドレッジャー,スナッパー柱状採泥器等がある。しかし,海底の地下資源探査には,堆積物の下に伏在する岩盤の採取も必要である。わが国では,すでに,船上より遠隔操作する沈置式ボーリング装置が開発されているが,今後の課題として,海底地質調査の進展に伴い,稼動水深200m,掘削能力20〜50mの性能を有する小型で迅速な簡易ボーリング装置の開発,海底調査基地等による海底地質調査技術の開発が必要となつている。


(b) 海洋環境調査技術(自動観測技術)

海洋の資源および空間の豊かな可能性を開発し,利用するためには,まずその対象となる海洋について,海流,波浪,海上気象などの海洋環境を把握し,さらに的確な予測を行なうことが必要である。今後海洋開発の本格的推進にあたつては,その前提として,海洋調査を強力に実施する必要があり,そのため海洋調査技術の向上を図り,海洋観測網を拡充強化する必要がある。その際,多大の人員と経費を要するとなれば海洋観測網の急速な拡大は期しがたく,そのため,今後の方向として海洋調査機器および技術の自動化,遠隔操作技術を強力に推進することが不可欠である。

海洋観測網を構成するものは,固定点で観測するものとして,沿岸および島の観測所,観測ブイ,およびプラットフォーム,また,移動して観測するものとして,観測船,一般船舶,航空機,人工衛星などがある。これらは,それぞれ長所,短所があるので,これらの適切な組合せにより,海洋観測網の整備を進めるべきであり,そのため,これらの自動化等の技術的発展性を十分考慮に入れて,システム分析等を行なう必要がある。

海洋自動観測としては,観測船上の自動観測およびデータ処理,沿岸および島の観測所の無人化などが現在一部で行なわれているが,今後はブイロボット,自動観測送信装置などが主役になるであろう。後者は,一般船舶に塔載され,海洋環境データの観測および陸上局への送信を自動的に行なう装置である。その技術上の問題点は,自動観測するセンサーの開発およびその精度の向上,船舶への装備の簡単化,さらに,その観測地点の位置測定の完全自動化などがある。

ブイロボットは,主として錨留によつて固定された地点において,時間的に連続したデータを自動的に観測し,送信する装置であり,海洋環境の変動について予測を行なうには不可欠である。そのため先進諸国においては,その研究開発に力が注がれており,アメリカでは,その中核をなすものとして約135トンのモンスターブイを開発し,実用化試験をこの数年来行なつている。

わが国においても,科学技術庁の特別研究促進調整費による「日本海に関する総合研究」において,  1〜2トン程度のブイロボットによる観測を行なうこととしており,昭和43年度に1号機を試作し,昭和44年度においてこれを設置し,観測を続けている。さらに,同年度に2号機を製作し,昭和45年度に設置する予定である。

また,大型ブイロボットの開発に必要な技術的問題を解決するため,科学技術庁の特別研究促進調整費による「海洋観測用ブイロボットに関する基礎研究」を,昭和44および45年度の2年間実施する。この研究課題としては,各種センサーの自動化,電源,データ伝送方式,本体の耐侯性などがあり,一年間程度無保守で海洋のきびしい環境に耐えて,しかも無線伝送された海洋環境のデータは,直接電子計算機で処理することとしている。将来は,海面から離れた上空あるいは深海を観測すること,データ伝送において人工衛星を利用することなどが考えられている。

このように,海洋調査には,自動化技術の開発が求められており,これは上記の観測伝送のみならず,処理,予報,広報の全過程に及ぶ大規模かつ総合的な情報管理網システムとしてとらえる方向に進んでいる。


(c) 増養殖技術

わが国の食生活は,水産物に対する需要が強く,近年は,単に天然の資源を採取するのみならず,し好に合つた水産物を増殖することが強く要請されてきている。このためわが国では古くから,のり,かきなどが沿岸で養殖されてきたが,最近は,さらに,技術の進歩が著しく,多くの水産生物の増養殖業が可能となりつつある。

この種の技術は,わが国が世界に誇るべき技術の一つであり,各技術分野についての動向を示すと,次のとおりである。


1) 種苗生産

天然における水産生物の産卵量は,一般に一尾の親魚について数十万から数百万位と莫大であるが,稚,幼魚までを人工的にふ化,管理するだけでも,その生残率は,飛躍的に増大させることができる。現在,人工ふ化管理の実用化されているものには,さけ,くるまえび,あわび,まだい等があり,はまち,うなぎ等についてもその実用化試験が行なわれつつある。

さらに種苗の育成における重要な問題の一つに,餌付けの問題があるが,金魚など淡水魚で行なわれているように,水槽に施肥をして大量のプランクトンを発生させ,そのなかに稚仔を移殖する方法が海産魚でも成功している。

将来は,対象生物によるプランクトンの選定とその連続大量培養システム化が一つの課題とされている。また,種苗培養の実用化にとつて生産の大量化という課題があるが,現在くるまえびで1億尾程度の生産が可能になり,この技術開発も多魚種に拡大されつつある。


2) 漁場造成

大型タンクで餌付けされ,馴らされた種苗は,いけす等に移され,さらに天然の海に放流されたり,飼育漁場に移殖,放流される。従来,磯魚などの繁殖を図るため,コンクリートブロック等の投入による人工魚礁の設置,浅海漁場の耕うん,浚渫,掘削および岩礁爆破等が行なわれてきたが,今後大規模な資源培養を行なうため音波,気泡,ジェット水流等を用いた魚群の遮へい,浮防波堤などによる波浪の制御,漁場の生産力を向上させるための導潮施設および湧昇発生装置等の開発の研究が行なわれている。

これらの技術開発が成功すれば,現在利用されている一部の沿岸域から広く大陸棚全域にまで増養殖漁場を拡大していくことができる。


3) 飼育管理

増養殖における飼育管理の改善のためには,対象生物の生理,生態等の究明により,それぞれに適した環境を造り,移殖,放流すべき成長段階,移殖,放流尾数,移殖密度等の決定を行なわなければならない。

現在,のり,かき,真珠,はまちなどの養殖については,企業として成り立つているが,さらに多くの生物について養殖を実現するためには,前記2)の漁場造成とあわせて,対象生物の生理,生態,とくにその生活史の解明,飼育飼料の問題が解決されねばならない。

すでに企業化されている魚種については,その生活史等についてかなり解明されているが,まだ多くの魚種について不明の点が多く,最近水産研究所や水産試験場等関係機関において積極的な研究が進められている。

また,飼料については,現在いかなご,かたくちいわし,さんまなどの多穫性の安い魚が大量に使われているが,最近では,さらに安価な飼料をうるため,石油などから造られる人工飼料の研究が進められている。


(d) 石油掘削技術
1) 海底石油掘削技術の現状

海底石油掘削は,固定式または移動式の装置によつて行なわれており,現在実用化されている。これら装置の型式および水深限度の概要は, 第1-38表 のとおりである。

第1-38表 石油掘削装置の概要


2) 海底石油掘削技術の将来

海底油田の開発は,現在,世界的にみて約100m以浅の浅海域が主な対象となつているが,その開発の進展とともに,今後はこれをより探く,陸から遠く離れた海域あるいはよりきびしい環境の海域へと拡大せざるを得ない。

これに対処するためには,海象,気象の影響が大きくなること,掘削作業に人間が直接関与できなくなることなどの問題を解決する必要があり,その方法として,装置の一部あるいは全部を海象,気象の影響の少ない海底に設置し,遠隔操作により海底油田を掘削する技術の開発が重要である。

また,海底石油掘削自体の歴史が浅く,海底石油掘削技術はいぜん発展段階にあるので,上記の装置が完成する間にも,従来の掘削方式について開発すべき技術項目がある。

さらに,海底石油掘削に伴い,作業の安全の確保,海洋汚染防止などの諸点についての対策を講じる必要があるので,これに必要な技術の開発が要請されている。


(e) 潜水技術

海洋における鉱物,生物等の資源の開発,あるいは海洋空間の利用等の各種の活動において,人間が海中へ潜水して調査,海中施設の管理等の作業を行なわねばならない場合が多く,近年の潜水技術の進歩は,水深300m程度までの作業を可能としている。しかし,高圧,低温,暗黒等のきびしい海中環境で人間が活動するにあたつては,単に行動が不自由であるのみならず,常に生命の危険が伴うので,海中環境における人体生理の研究を基礎として,合理的かつ安全な潜水技術を確立すべきである。

このためには,海中医学と各種工学技術とを総合した研究が必要となつてくる。

わが国では,土木関係の基礎工事として,従来から行なわれているケーソン工法その他の圧気工法におけるケーソン病(減圧症)対策として潜水病等の減圧治療法および高圧医療の研究が,大学および病院の一部で行なわれてきており,また,安全基準についても,労働省において海中作業を含む高気圧下作業に伴う障害の防止規則が制定されている。しかしながら,いずれも今後の海洋開発の進展に伴つて本格化する潜水作業のためになお不十分である。一方,海中作業基地等高気圧環境においては,火災,爆発の防止等について細心の措置を講じる必要があるが,これらについての十分な安全基準は,まだ確立されていない。

ここ十数年間,アメリカ,フランスをはじめ諸外国における潜水医学の進歩はめざましく,これに基づく潜水技術の向上も,かなりの水準に達している。わが国でも遅ればせながら,この有用性を認識し,独自の「海中作業基地に関する研究」に昭和43年度から5か年計画で着手しており,最終的には,4人の潜水技術者が100mの海底で約1か月間にわたる海底居住生活を行なうと同時に,試験的な海中作業を実施する予定である。

今後,海洋開発のための水中活動は,深度および時間の両面から高圧環境を克服することを一層要求されている。

しかし,その理論的な背景となる高圧生理学を展望してみると,まだ明らかではない多くの問題を抱えており,とくに高圧適応に至つては,若干の知見からその可能性が推測されているにすぎない。

わが国でも浅海(水深40m以内)における潜水病対策については,減圧の対策,治療法についてかなりの方法が解明されているが,残念ながら陸上において水深200m,300mといつた海中の環境を再現しうるような潜水シミュレーター設備等がきわめて不完全であるため,より深い水深を対象とした本格的な潜水医学の研究は,外国と比ベて数年以上の遅れがみられ,解決すべき多くの課題を残している。今後,基礎潜水医学の分野における諸研究を進め諸外国との格差を縮めていく必要があるが,そのためには,基礎研究の系統的な研究体制の確立および各種施設の整備を急がなければならない。


(f) 海洋構造物に関する技術

一口に海洋構造物と称されるものの範囲は非常に広く,石油,天然ガス等の掘削,採取のための設備を塔載する構造物から,沿岸利用のための構造物,あるいは水産増養殖のための構造物に至るまで多くのものがある。

従来,わが国においては国土が狭いこと,海運との結びつきが便利なこと等の理由により,沿岸海湾の埋立てがさかんに行なわれ,またこれと並行して大規模な掘込港湾が建設されるなど,沿岸の有効利用への動きは著しく,これに伴い,各種の技術も進歩してきた。しかし,今後の海洋開発における沿岸利用の形態は,従来の陸上の延長ではなく,深い海域もそれなりに利用していこうとするものであり,海上空港,沖合発電所,海上都市などの構想が検討されている。

水深の増加とともに構造物建設の方式は,従来の埋立て方式から,逐次,脚柱支持式,浮遊式へと発展するものと考えられ,現にここ10年来にわかにさかんになつてきた海底石油開発のための掘削装置では,水深の増加につれ,脚柱式から浮遊式への移行がみられる。

しかし,海上空間利用構造物では,ようやく埋立て方式から脚柱式のいわゆる棧橋構造へ移行しようとしている。このような海上空間の利用として,実に多くの構想が提出されているが,現在の水準で最も現実的と考えられるものは,海上レクリエーション施設,海上空港,海上発電所等である。

海上都市の構想については,緑地の確保などの問題があり十分な検討を要することとなるが,生産,貯蔵あるいは輸送,レクリエーションの場としての海洋の利用は,今後大いにさかんになるものと考えられる。

現在,海底杭打ち,井筒,ケーソン等の工法により水深20〜30m程度における基礎工事が可能となつているが,水深50m程度にこれを増すためには,新しい工法,新しい作業機械の開発が必要である。とくに,海上では気象条件,海象条件ともに非常にきびしく,作業可能日数が大幅に減少するが,今後,海上作業の舞台がより探い水深,より沖合いへ進むにつれ,気象海象条件に大きく影響されるような工法は本質的に不適当であり,この面からも新しい工法の開発が進められるであろう。

また,海洋構造物では構造物の複雑化,巨大化につれ,きめの細かい保守点検は不可能となることが多いので,さらに高性能の耐食構造材料の研究開発が必要である。


(2) 期待される効果

地球表面の約70%を占める広大な海洋には,石油,天然ガス等の有用鉱物,魚類をはじめとする生物資源,広大な海洋空間,潮汐,海流等のエネルギー等無限ともいえる多種多様の資源が包蔵されている。海洋開発は,今後の技術の進歩とともに将来長期にわたり産業経済の発展と国民生活の向上に大きく貢献するものとして,近年,著しく期待をあつめている。

海底鉱物資源についてみると,近年における産業の急速な発展と生活水準の高度化に伴い,各種資源の需要が著しく増大し,陸上資源に加えて,海洋における資源の開発利用の必要が高まつてきた。すなわち,陸域資源は次第にコストの高い地域を開発せざるを得なくなつており,より遠い将来の時点においては,陸域資源だけではとうてい需要に応じきれなくなつて,資源の価格上昇や供給の不安を招くおそれがある。このような事情から,とくにエネルギー資源として重要な石油については,すでに海底石油比率が世界の総産油量の16%(昭和42年)に達している。また,きわめて需要の強い銅,ニッケルコバルトを多量に含むマンガン団塊が大洋底に莫大に存することが現在までの調査で判明しているが,これら数種の鉱物の経済的採取の期待はますます増大することとなろう。その他,従来から海底の石炭,砂鉄,砂錫,砂金等が採取されているが,これらは現在のところ,いずれも小規模なものにとどまつており,今後の調査および技術開発によつてその進展が期待される。

現在のところ,これら海底鉱物資源の経済的採取が革新的な段階を迎える時期は,次に述べる多くの技術課題を解決する必要があつて,10〜20年の長期を要することとならざるを得ない見通しである。しかし,それがより早期に可能となれば,有用鉱物資源に恵まれないわが国にとつては,大きな利益になるものであり,今後の技術開発に対する期待はきわめて強いものがある。

また,海洋生物については,近年の水産技術の向上等により,その漁獲高は著しく増加しているが,なお開発可能な総量に比べれば,ごく一部にすぎず,まだ多くは未開発のまま残されており,今後の技術開発に期待がよせられている。

一方,今後の本格的な増殖技術の開発による海中牧場,海底農場といつた栽培漁業への発展は,常に需要に見合つた水産物を効果的に生産することが可能となるもので,今後の国民の食生活の高度化の増大に大きく寄与しうるものである。

さらに,広大な海岸空間の利用については,最近の工業化,都市化の進展に伴い,陸上の利用可能用地が相対的に狭隘化したこと等により,その積極的利用が注目されている。今後の技術開発の目標は,より高度な海中観光施設,海中倉庫,海底輸送ライン,海上発電所,海上空港等の建設に進展することになると見通されている。

その他,海外の淡水化技術と海水溶存物の回収技術,潮汐,波浪,温度差利用発電技術,あるいは,長期気象予報技術,沿岸防災技術等の開発は,それぞれの分野で大きな期待がよせられている。このように,海岸の開発利用に対する技術開発の効果は,産業経済,国民生活の各分野に大きな波及をもたらすが,そのほかに,科学技術の向上そのものの観点からみても大きな効果が期待される。すなわち,海洋に関する各種の調査技術の向上は,海岸に関する科学の水準を高め,その結果は海洋開発技術の水準を高めることはいうまでもないが,そのほかに,今後の海洋開発技術は広汎多岐にわたる最新の科学技術を総合的に駆使する必要があることから,システム技術の進歩とあいまつて,各関連分野の科学技術の相互発展を促進する効果もきわめて大きなものがあると期待される。


(3) 技術的問題

今後本格的に海洋開発を進めるためには,まず海洋の環境の実態,海底の地形,地質等の的確な調査と,このための科学技術の研究開発が不可欠である。海底鉱物資源,海洋生物資源等の開発利用をはじめとする新しい海洋開発を強力に推進するためには,海上気象,海況に関する予報精度の一層の向上を図ることはもとより,海底の地形,地質や海中,海底における海洋変動の状況についてもこれを的確に把握することが必要である。このため,海洋に関する調査研究の方法および装備の近代化,情報管理システムの強化充実,国際協力による調査,観測の推進等が当面の重要な課題となつてきている。

このような海洋に関する調査研究に基づき,海洋に賦存する莫大な資源の開発目標を明確にして技術開発を本格的に推進していくためには,海底鉱物資源の採取技術をはじめとする各種の海洋科学技術の研究開発をプロジェクトとして,これを総合的に進めていくことがなによりも必要である。すなわち,海洋資源の開発は,つねに陸域で確保しうる資源との相対的なコスト差という現実の壁を最終的に乗り越えうるものでなければ,その開発価値はないに等しく,困難なコストの壁を破るための大幅な技術革新が必要となる。ところで,海洋開発技術は多岐の分野にまたがるものであり,しかも,海洋のもつ特殊な環境に適合する必要性があるところに共通の課題をもつているとともに技術開発要素相互間の関連性がきわめて大きいという点に特色がある。

したがつて,海洋開発はより大きな組織,規模によつて,計画的に研究開発投資を分担し,その成果を各分野で広くわけ合うことが必要であり,総合的なシステム化が重要な課題である。

将来,深海底におけるマンガン団塊の開発等,海洋開発の場も大陸棚から深海底へと逐次その範囲を拡大していくものと考えられる。これらの深海底資源の開発に備えて,深海調査船,深海作業船,ロボット制御等に必要となる先端的な科学技術について,先行的,計画的に研究を進めることが,重要な課題である。

以上先導的技術分野は,その開発規模が大きいこと,多くの科学技術分野と関連していること,またそれらを開発することによる技術的経済的効果が多大であることなどにかんがみ,国の積極的推進が肝要であろう。


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