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第1部   科学技術発展の展望
第4章  経済の効率的発展における科学技術への期待
3  産業構造の高度化と技術開発
(1)  経済発展と産業構造の高度化


わが国の産業構造の高度化は,重化学工業化を推し進めることによつて達成されてきた。重化学工業は,経済発展の主導的な役割を演じてきたが,その過程で,めざましい技術革新がその大きな基礎となつたことはいうまでもない。

すでに,わが国の産業構造は,重化学工業化率でみる限り,先進諸外国のそれをこえている。

したがつて,産業構造高度化の今後の課題は,生活水準の上昇に伴つて多様化し,高度化する消費構造に対応するとともに,輸出市場での競争力を強化していくために,より効率的な生産構造を形成していくことである。したがつて,ここでは,技術の集約化,高度化という観点から産業構造の高度化について検討しよう。

所得水準の向上に伴つて,国民生活は高度化,多様化し,個人消費のなかに占める交通通信,教養娯楽,保健などの比重が高まり,一次的な消費からより高次な消費と移行しつつある。そして,自由時間の増大,生活圏の拡大,情報ネットワークの高度化は,これに拍車をかけることとなろう。

このような需要の質的変化に対応するためには,消費財の高度加工化,技術集約化が必要となつている。すなわち,高度加工製品,技術集約製品の需要増大は,他製品に比べてはるかに大きいものとなつている。 第1-17表 にみられるように,衣服などの繊維二次製品,家具装備品,医薬品,染料,化粧品,農薬 などの精緻化学製品,工作機械,自動車,医療機械,電子部品などの高度加工製品の出荷額は,昭和33年から41年までに4〜6倍,付加価値額でも5〜6倍以上となつており,それぞれの業種全体の伸び率よりもはるかに大きい。

一方,わが国の輸出構造からみると (第1-18表参照) ,先進諸国に比して技術集約製品のシェアはあまり高いものとはいえず,より技術集約的な製品の開発が期待される。

次に,わがの産業構造を,材料・物質系,加工系,組立系という加工段階別の分類によつて加工の高度化を概観してみよう。

第1-19表 によると,工業製品出荷額の構成比でみると,昭和33年は材料・物質系のウエイトが高く,ついで加工系,組立系となつている。しかし,昭和41年には加工系の比重が高まり,材料・物質系のウエイトは減少した。また,付加価値額でみても,まつたく同様のことがいえる。高度加工製品の付加価値生産性の高いことと考え合せると,わが国の産業構造の高度化は,実は加工段階の高度化という形で進展してきたとみることができよう。

第1-17表 高度加工製品の出荷額,付加価値額の伸び

第1-18表 技術集約製品の輸出シェア

第1-19表 材料物質系,加工系,組立系別,出荷額,付加価値額構成比

一方,アメリカの産業構造を同様の観点からみてみると,わが国よりも,材料・物質系の比重は低く,加工系のウエイトが高い。

さらに,加工系,組立系の構成比は高まりつつあり,材料・物質系は減小しつつある。これは,わが国の産業構造は,アメリカと比較してまだ十分に高度化していないことを示すものであろう。

一方,わが国の研究費構造を加工段階別に分析してみると, 第1-20表 に示すように,政府負担分を含めた研究費の配分では,先進諸外国に比べて,材料・物質系の比重が高く,加工系,組立系の比重が低い。すなわち,わが国の場合,材料・物質系での使用研究費は42.4%を占め,アメリカの16.2%,イギリスの18.0%,フランスの25.6%よりも高い。逆に,加工系,組立系は,いずれもわが国の方が低い。

第1-20表 材料・物質系,加工系,組立系別研究費および総技術費の国際比較

これからみると,わが国の研究費構造は,高加工度化という産業構造の高度化に十分適応するものとなつておらず,研究投資を行なうにあたつては,この点にも留意する必要があろう。

また,新たな社会的,経済的需要に対応して生まれつつある情報産業,海洋開発産業,微生物工業などの新産業は,経済,産業の発展に重要な役割をもつてくるものと予想されている。これらの新産業の育成を図つていくにあたつて技術開発が重要な鍵をにぎつている。

以上のように,わが国の産業がきびしい国際環境および労働力不足に対処して,需要構造の多様化等の変化に適応しつつ産業構造を高度化していくためには,技術集約化,高度加工化が重要な鍵となつており,科学技術の振興は,最も重要な課題の一つになつている。

そして,わが国産業の生産技術が,現在主要国のそれと比肩しうる水準に達し,今までのような導入技術を主体とした科学技術振興には限界があるので,わが国の企業が外国企業の挑戦と互角に対抗し,さらには,積極的に海外進出するためには,自主技術開発ないし技術開発力の強化以外に方法はないといつても過言ではなく,自主技術開発を基調とした科学技術振興の推進が必要となつている。

このような観点から,当面必要とされている技術的課題を要約すると,次のようになる。


1) 労働力節約のための技術開発の推進

すなわち,工程の各部における自動化,省力化,無人化等による工程の連続化である。これに該当する技術的課題の例としては,工作機械の群自動制御,複雑局面の自動設計加工システム,マシニングセンター等の金属加工装置,時計,ラジオ,集積回路等の自動組立装置,プラントの直接デイジタル制御,全自動鋳造プラントなどの開発課題があげられる。そして,これらの技術開発の一環として,新しい制御素子としての純流体論理素子などの高性能自動制御器,計数制御技術等の開発がある。


2) 新加工法,新工程の創出など生産性向上のための技術開発の推進

これに該当する技術的課題の例としては(多くは1)と関連するが),直接製鋼法および一貫製鉄所の自動操業方式,高性能摩擦溶接機,原油からのオレフィン製造技術,複合塑性加工機械,レーザー応用機器,連続製本装置,紡糸用高速度ワインダー,超高速自動織機,高速度電線被覆成型機,汎用プラスチックの新プロセス,微生物応用技術(ノルマルパラフィン)からのたんぱく資源の開発などがある。


3) 製品の高度加工化,品質の向上あるいは技術の高性能化

これに該当する技術的課題の例として,超高性能電子計算機,大容量集積回路,新規半導体素子,高密度集積回路,応用電子機器(教育用電子機器,医用電子機器,交通用電子機器など),超高速度ファクシミリ,新規高分子化合物(ポリアセダール),高性能分離・ろ過・乾燥機器,中型短距離旅客機用ファンジェットエンジン,高精度各種試験機,高性能燃料電池,高性能特殊工作機械,高品質精緻化学製品(高級染料,合成樹脂塗料,油脂加工製品),新規合成繊維,板ガラスの新製造技術などがある。

これらの開発課題のなかには,技術革新の進展が急速で,技術水準の向上または技術開発力の培養がとくに必要なもの,あるいは今後の当該産業の発展の中核となるものが含まれており,産,官,学の適切な協力のもとに,これらを効率的に開発し,普及する等の技術振興方策の確立が期待されている。


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