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第1部   科学技術発展の展望
第4章  経済の効率的発展における科学技術への期待
2  労働力不足の進行と技術開発


昭和30年代の後半からわが国の労働力市場は,供給の拡大にもかかわらず,それを上回る高度経済成長による需要の増大によつて,労働力不足の基調を強めた。昭和40年代にはいるとこの傾向は顕著になり,労働力不足が生産拡大の隘路になる可能性さえでてきた。

労働力需給のひつ迫による賃金コストの増大圧力は,産業間の生産性格差とあいまつて,低生産性部門の製品価格を引き上げるという現象を生ぜしめ,物価上昇の一つの要因となつた。

最近では,とくに第二次産業や中小企業での労働力不足は大きな問題となり,それは,次第に大企業や第三次産業へと波及する様相を呈してきた。労働力需給のひつ迫は,事務管理者よりも技能者,または生産労働者の面で顕著である。また,若年労働力の不足が一層強まつていると同時に,この傾向は,漸次中年令層から高年令層へと波及しつつある。

このような労働力不足がわが国の経済発展に与える影響は大きく,労働力の効果的な活用が望まれている。

第1-48図 設備投資および合理化投資の重点

労働力不足の進行につれて,設備投資は景気変動による影響があるというものの,生産拡大を目的とするいわば単純拡大投資重点型から,次第に合理化投資重点型へと移行し,さらに,合理化投資のなかでも,品質向上を主目的とする投資から省力化投資へとその重点が変化している (第1-48図参照)

省力化は,単位生産量当たりの労働投入量の節約を目的とするものであり,労働集約産業の場合には自動化,連続化,高速化などを目的とする設備投資によつてなされ,装置系産業の場合には,設備の大型化によつて行なわれる。

第1-49図 は,このような設備投資がなされた結果,労働力を相当に節減した例を示したものである。技術開発に基づく新設備によつて,かなり大幅に省力化されている。

最近,とくに自動化が相当進歩していることもあつて,省力化を直接の狙いとする省力機器が大きくクローズアップされている。

第1-49図 労働力節減の業種別推移 (設備当たりの配置人員の低減)

機械加工部門における数値制御機械,自動車産業におけるトランスファー・マシン,紡績業にみられる空気精紡機,運搬,倉庫部門でのフォークリフト,ベルトコンベアなどの縦横の利用,事務部門での複写機や卓上電子計算機の活用などの例にみられるように,大幅な省力化,さらには無人化が試みられている。また,労働条件の悪い部門,単純肉体労働の部門に工業用ロボットが導入されつつあり,さらに単能型ロボットから汎用型ロボットの開発が進められている。農村では高性能防除機,コンバインなどが活用されている。主要な省力機械の生産高は 第1-50図 のとおりで,次第に高い伸び率で増加している。

しかし,わが国の自動化の水準を数値制御工作機械の生産高でみると 第1-14表 のように,まだ低い水準にある。わが国では,工作機械に占める数値制御工作機械の生産高比率は3.7%にすぎないのに対し,アメリカでは24.0%にも達している。

第1-14表 数値制御工作機械生産状況の日米対比

数値制御工作機械による作業の省力化の一例は, 第1-15表 のとおりである。

数値制御ボール盤の加工時間は,数値制御工作機械によつて4分の1程度に短縮され,また受注から完成までの所要時間でも従来の普通機の場合の3分の2に減少している。

第,1-50図 主要省力機器の生産台数の伸び

数値制御工作機械の場合,単に監視すればよいので作業者1人で数台の機械を運転できると同時に,作業はテープによつて指令されるから,従来のように熟練工を必要とせず,非熟練工で十分である。

第1-15表 数値制御ボール盤と普通機との比較

労働力需給関係のひつ迫からみて,これらの省力機械の需要は,ますます拡大の度を高めていくことになろう。

省力機械を大別すると,機械的な自動化,高速化,エレクトロニクス制御による自動化とがある。省力化は,単一の自動機器によつても高い効果が期待されることはいうまでもないが,これらの自動機械をうまく組み合せ,システム化することによつて,一段とその効果をあげることができる。

したがつて,コンピュータによる集中管理,集中制御システムは,省力化,無人化への今後の担い手として重要な役割を演じることとなろう。すでに,実用化されている代表的な例として,群管理システムや無人倉庫システムなどがある。

このように,省力化において重要な役割をもつているコンピュータのわが国における普及状況は, 第1-16表 に示すとおりである。G.N.P100万ドル当たりのコンピュータ数は,わが国では29.0台であり,西欧並みの水準に達している。しかし,労働人口100万人当たりではわが国は68.0台で,アメリカの586台,フランスの126台に比べ,まだかなり低い水準になる。またコンピュータ本体だけでなく,コンピュータ周辺装置の開発は,コンピュータによる省力化を一層進めるものと思われる。

省力機器の生産は,非常に多様な技術を必要とする。たとえば,マシニング・センターにしても,工作機械としての機械工学的技術と制御機械,制御装置としての電子工学的技術の有機的な結合がなければ,本来の性能を発揮しない。また,無人倉庫の場合で,は,生産および販売に関連する在庫管理を行なうため,全体のシステムエンジニアリングが必要である。

以上のように,労働力不足に対処していくために科学技術への期待は大きいものがある。個々の省力機械の開発や,より一層の高度化,自動化,高速化,低れん化などが必要であると同時と,これらの機器をシステム化する技術がとくに要請されるであろう。そのためには,情報処理技術,とくにシステム技術,エレクトロニクス技術などの発展が重要である。

第1-16表 コンピュータの利用状況(昭和41年)


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