ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   科学技術発展の展望
第4章  経済の効率的発展における科学技術への期待
1  経済の国際化と技術開発


先進諸外国の戦後における経済政策の基調は,自由な競争による貿易拡大の方向であつた。このため,貿易や国際的な経済取引における各種の制約,障壁を除去することに努力がはらわれてきた。

わが国においては,昭和39年のIMF8条国移行に伴い,貿易,為替の自由化を推進し,43年には,自由化率は93%に達した。さらに42年7月には第1次資本自由化,43年3月には第2次資本自由化が行なわれ,引き続いて同年6月技術導入の自由化措置が実施され,いよいよ本格的な国際化へと踏みだしたのである。

このような経済の国際化に伴つて,いわゆる多国籍企業ないしは世界企業と呼ばれる巨大企業の積極的なわが国への進出がみられる。また,一方,発展途上国の工業化の進捗と相まつて,わが国の海外市場の浸食などいわゆる発展途上国の追い上げ問題が顕在化し,とくに,中小企業に重大な影響を与えている。

多国籍企業の多くは,アメリカの巨大企業であり,かなり高度に資本取引が自由化している西欧などにおいて,激烈な企業競争を展開し,重要産業分野でのアメリカ系企業の市場独占など多くの重要な問題を生ぜしめた。

アメリカ企業の対ヨーロツパ進出分野は,化学,輸送機械,一般機械,電気機械,石油精製業など基幹的,技術集約的産業に集中しているが,最近では化学,金属製品工業,電気機械工業への進出が著しい。すなわち,アメリカの対ヨーロツパ直接投資額は,昭和42年に1,442百万ドルに達しているが,そのほとんどが,石油精製業と製造業によつて占められている。製造業のなかでは,化学工業が最も多く,ついで電気機械,金属製品,輸送用機械,一般機械となつている (第1-10表参照)

第1-10表 アメリカの対ヨーロツパ直接純投資額の推移

これらの産業は,いうまでもなく成長力の高いいわゆる主導産業といわれるものであると同時に,アメリカの技術的優位性の高い産業である。

このような特定業種への集中的な進出の結果,アメリカ系企業は,主要製品についてヨーロツパ諸国の市場を席巻し,市場独占の様相を呈したといつて過言ではない。イギリス,フランス両国における電子計算機,自動車,医薬品,トラクター,農業機械などのアメリカ系企業の市場シェアは,20〜40%以上に達しているのである (第1-11表参照)

ヨーロツパ諸国を中心に昭和41年頃から議論された技術格差問題をはじめとして,政府の助成による国産技術の育成,技術開発の国際的提携の強化などの動きは,直接投資受入国にとつて重要な産業分野への圧倒的な外資の進出が,受入れ国の経済,産業の発展および技術の開発に重大な影響を与えずにはおかないことを端的に物語るものであろう。

第1-11表 西欧におけるアメリカ系企業のシェア

ひるがえつて,わが国への外国資本の進出状況をみると,まだ十分に自由化されていない業種もあるが,ヨーロツパの場合と同様に,化学,一般機械,電気機械に集中している。昭和43年の調査によると,上述の3業種で190社に達している (第1-43図参照)

わが国側企業の外資との提携動機についてみると,技術導入のためであるというのが多く,国内市場の確保,輸出の拡大といつた積極的な動機は少ない (第1-44図参照)

第1-43図 外資系企業の進出状況

さらに,外資系企業の成長に貢献しているのは,外国側出資会社が提供した技術およびこれを改良,発展させた技術であり,日本側出資会社が提供した技術およびこれを改良,発展させた技術は少ない (第1-12表参照)

このように,わが国への外国資本の進出は,優秀な技術,いいかえれば優秀な特許権,ノウハウを武器として,技術集約産業に集中しつつある。さらに,外資系企業自体,技術的には,ほとんど外国側親会社に依存していることに注目しなければならないであろう。

第1-12表 外資系企業の成長に貢献している技術

多国籍企業の多くは,研究開発を本国の本社でコントロールし,現地での研究成果としての技術を一般に本社に帰属させる方式をとつており,重要な技術については技術独占ひいては市場独占といつた事態が起こるおそれがある。

第1-44図 外資との提携の動機(最重要の動機)

第1-45図 外資進出の動機 (最重要の動機)

また,外資系企業の研究活動は,多数のわが国の研究者を使つて実施されており,その成果が外資系企業の本社に帰属することになると,実質的には頭脳流出と同じ結果をもたらすとともに,優秀な研究者が不足する傾向を促進することになろう。

以上のように,自由化の進展に伴い,科学技術の振興の重要性は,ますます増大している。技術開発にあたつては,総合的,計画的,重点的,かつ効率的に自主開発することが肝要である。もちろん,すべての技術を自主開発することは,わが国の国情からいつて不可能であり,また効率的ではないので,科学技術の調和ある発展を阻害しない限り,技術導入することも必要であろう。しかし,少なくとも科学技術の画期的な発展をもたらす先導的,中核的技術については,自主的な技術開発の推進に留意する必要がある。

一方,経済の国際化に伴い,各国においては経済活動の場を広く世界に求めている。したがつてこのような情勢にあつて,わが国がより一層効率的な経済発展をとげていくためには,国内市場だけでなく,海外市場の開発にも力を入れていくことが要請されている。昭和43年度以降わが国経済は,国際収支の黒字基調の下で発展し,外貨の準備高は増大しており,海外投資の基礎的な条件は整つてきたといえよう。

第1-46図 業種別海外投資の割合

これまでのわが国の海外投資は,商業,鉱業が中心であり,資源の開発輸入,輸出市場の防衛,確保のためである場合が多かつた。すなわち,わが国の対外投資を業種別にみると,鉱業が最も多く31%を占め,ついで商業が26%であつて,製造業の各業種は10%以下と少ない (第1-46図参照) 。また,海外進出の動機についてみると,製造業では,輸出市場の確保,農林水産業,鉱業では資源の開発を目的とするものが多い。

また,わが国から資本と技術を提供し,開発途上国の豊富な労働力を活用するという分業によつて,開発途上国の発展を図りつつ,低コストの製品を製造する形態の企業の進出もみられる (第1-47図参照)

一方,わが国が技術輸出を行なう場合の契約条件として,わが国企業が資本参加を要求する場合が少なくない。すなわち,昭和43年アンケート調査によると,これは,技術輸出件数の20%弱を占めている (第1-13表参照)

第1-47図 日本企業海外進出の動機(製造業)

このように,わが国も,科学技術水準の向上につれて技術を主体にして海外市場を開拓することができるポテンシャルをもちつつあることを示している。技術が企業の競争力の大きな要因となつている今日,わが国独自の技術を開発することは,きわめて重要である。

さらに,わが国の国際的地位の向上,経済規模の増大に伴つて,経済協力,技術協力の要請も高まつており,これら協力活動は,資本不足,技術不足などの問題をかかえている発展途上国の経済発展に寄与するとともに,わが国にとつても多くの面で益するので,相互にプラスになると思われる。

第1-13表 技術輸出に伴う資本参加の割合


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ